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ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド14

1 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:26:58 ID:PFplfhri
このスレはギャルゲ・ロワイアル2ndの本スレッドです
ギャルゲ・ロワイアル2ndを一言で表すのならば、ギャルゲーの人気キャラを用いてバトルロワイヤルをするというリレー小説企画です
基本的に作品の投下・感想共に、このスレで行って下さい

前スレ
ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド12
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1214475188/

ギャルゲ・ロワイアルしたらばBBS(1st・2nd兼用)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/8775/

ギャルゲ・ロワイアル2nd 議論・毒吐き専用スレpart2(上記したらば内)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1203171454
※議論はこちらでどうぞ

ギャルゲ・ロワイアル2nd避難所スレ(同上)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1205659483
※本スレが荒れている場合の感想・雑談はこちらでどうぞ。作品の投下だけは本スレで行って下さい

ギャルゲ・ロワイアル2nd予約専用スレ(同上)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1205656662/l50

ギャルゲ・ロワイアル2ndまとめwiki
ttp://www7.atwiki.jp/galgerowa2

ギャルゲ・ロワイアル2nd毒吐きスレ(パロロワ毒吐き別館BBS)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1203695602
※毒吐きスレ内での意見は、基本的に無視・スルーが鉄則。毒吐きでの話を他所へ持ち出さないように!

テンプレは>>2以降に


2 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:30:54 ID:PFplfhri
・参加者一覧
2/3【THE IDOLM@STER】
   ○高槻やよい/○菊地真/●如月千早
3/5【アカイイト】
   ○羽籐桂/○千羽烏月/●浅間サクヤ/●若杉葛/○ユメイ
4/5【あやかしびと −幻妖異聞録−】
   ○如月双七/○一乃谷刀子・一乃谷愁厳/○アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ/○九鬼耀鋼 /●加藤虎太郎
3/5【機神咆哮デモンベイン】
   ○大十字九郎/○アル・アジフ/●ウィンフィールド/○ドクター・ウェスト/●ティトゥス
0/4【CLANNAD】
   ●岡崎朋也/●古河渚/●藤林杏/●古河秋生
3/4【CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
   ○黒須太一/○支倉曜子/○山辺美希/●佐倉霧
2/2【極上生徒会】
   ○蘭堂りの/○神宮司奏
3/4【シンフォニック=レイン】
   ○クリス・ヴェルティン/○トルティニタ・フィーネ/○ファルシータ・フォーセット/●リセルシア・チェザリーニ




3 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:31:54 ID:PFplfhri
1/4【School Days L×H】
   ●伊藤誠/●桂言葉/○西園寺世界/●清浦刹那
1/2【Strawberry Panic!】
   ●蒼井渚砂/○源千華留
2/6【つよきす -Mighty Heart-】
   ●対馬レオ/●鉄乙女/○椰子なごみ/○鮫氷新一/●伊達スバル/●橘平蔵
1/3【To Heart2】
   ○柚原このみ/●小牧愛佳/●向坂雄二 
2/3【Phantom -PHANTOM OF INFERNO-】
   ●アイン/○ドライ/○吾妻玲二 
1/4【Fate/stay night[Realta Nua]】
   ○衛宮士郎/●間桐桜/●葛木宗一郎/●真アサシン 
4/4【舞-HiME 運命の系統樹】
   ○玖我なつき/○深優・グリーア/○杉浦碧/○藤乃静留
3/6【リトルバスターズ!】
   ●直枝理樹/●棗鈴/○来ヶ谷唯湖/○棗恭介/●宮沢謙吾/○井ノ原真人

【残り35/64名】




4 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:32:40 ID:PFplfhri
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → 舞台である島の地図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。




5 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:33:17 ID:PFplfhri
【禁止エリアについて】
放送から2時間後、4時間後に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。

【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。

【舞台】
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/ed/c29ff62d77e5c1acf3d5bc1024fe13f6.png

【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24




6 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:33:54 ID:PFplfhri
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述する。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。




7 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:34:30 ID:PFplfhri
【首輪】
参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
放送時に発表される『禁止エリア』に入ってしまうと、爆発する。
無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できない。

【デイパック】
魔法のデイパックであるため、支給品がもの凄く大きかったりしても質量を無視して無限に入れることができる。
そこらの石や町で集めた雑貨、形見なども同様に入れることができる。
ただし水・土など不定形のもの、建物や大木など常識はずれのもの、参加者は入らない。

【支給品】
参加作品か、もしくは現実のアイテムの中から選ばれた1〜3つのアイテム。
基本的に通常以上の力を持つものは能力制限がかかり、あまりに強力なアイテムは制限が難しいため出すべきではない。
また、自分の意思を持ち自立行動ができるものはただの参加者の水増しにしかならないので支給品にするのは禁止。





8 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:35:02 ID:PFplfhri
【能力制限】
ユメイの幽体問題→オハシラサマ状態で参戦、不思議パワーで受肉+霊体化禁止
ユメイの回復能力→効果減
舞-HiME勢のエレメントとチャイルド→チャイルド×エレメント○
NYP→非殺傷兵器で物理的破壊力も弱い
     ただし、超人、一般人問わず一定のダメージを食らう
     NYPパワーを持ってるキャラはその場のノリで決める
リセとクリスの魔力→楽器の魔力消費を微小にする、感情に左右されるのはあくまで威力だけ
ティトゥスの武器召喚→禁止あるいは魔力消費増
士郎の投影→魔力消費増
アルの武器召喚→ニトクリスの鏡とアトラック・ナチャ以外の武器は無し。
            または使用不可。バルザイの偃月刀、イタクァ&クトゥグア、ロイガー&ツァールは支給品扱い
            またはアル自身、ページを欠落させて参戦
            または本人とは別に魔導書アル・アジフを支給品に。本の所持者によってアルの状態が変わる
武器召喚全般→高威力なら制限&初期支給品マイナス1&初期支給品に武器なし
ハサンの妄想心音→使用は不可、または消費大、連発不可。または射程を短くする
ハサンの気配遮断→効果減
虎太郎先生の石化能力→相手を石にできるのは掴んでいる間だけ

その他、ロワの進行に著しく悪影響を及ぼす能力は制限されている可能性があります


9 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:36:24 ID:PFplfhri
【予約について】
書き手は事前に書きたいキャラを予約し、その予約期間中そのキャラを使った話を投下する義務がある。
予約無しの投下は不可。
予約期間は3日間(72時間)で、その期間を過ぎても投下がなかった場合、その予約は無効となり予約キャラはフリーの状態になる。
但し3作以上採用された書き手は、2日間の延長を申請出来る。
また、5作以上採用された書き手は、予約時に予め5日間と申請することが出来る。
この場合、申請すれば更に1日の延長が可能となる。(予め5日間と申請した場合のみ。3日+2日+1日というのは不可)
期限を過ぎた後に同じ書き手が同じキャラを予約することはできない。(期限が六日、九日と延びてしまう為)
予約の際は個人識別、騙り防止のためにトリップをつけて、 したらばで宣言すること。
投下の際には予約スレで投下宣言すること。




10 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:57:26 ID:fuDy4LcP
「僕は……シズルを止める事が出来なかった。彼女を暗い闇の底から救えなかったんだ」

静留について語るクリスの声は、深い無念と苦渋に満ちている。
なつきとてその様子を見れば、クリスが嘘を吐いてないと判断するしか無かった。

「静留……本当に、馬鹿だ。お前がそこまでする価値なんて、私には、無いのに……」

なつきは視線を落として、力無く項垂れる。
自分にとって何よりも大切な親友、藤乃静留。
普段は人を食った態度だけど、本当は物凄く優しくて。
そんな彼女が自分の為に悪業を重ねていると思うと、どうしようもないくらいに胸が痛む。

「お前がそうやって必死に戦っている間、私は何も出来なかった。
 若杉や伊達と一緒に行動していたのに……結局生き残ったのは、私一人で」

嘗てなつきの同行者であった若杉葛と伊達スバルは、もうこの世にはいない。
悪夢の第一回放送を引き金として。
葛は、スバルの暴走によって殺されてしまった。
スバルは、なつきが自らの手で命を奪った。
残されたのは、人殺しの十字架を背負ったなつきだけ。

「あの怪物に襲われた時だってそうだ。私は加藤虎太郎に逃がされて、何とか命を繋いだ。
 だが……結果的に、加藤虎太郎は放送で名前を呼ばれてしまった。一緒に残った狐だって、きっと助からなかった筈だ」

なつきが怪物から逃げ出した後、何があったのか想像するのは余りにも容易い。
恐らくは加藤虎太郎も小狐も、あの怪物の前に破れ去ってしまったのだろう。
なつきは戦う力があるにも関わらず、一人と一匹を犠牲にしておめおめと逃げ延びたのだ。

11 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:58:22 ID:PFplfhri
 

12 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:59:09 ID:rlQcab2b


13 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:59:09 ID:PFplfhri
 

14 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:59:20 ID:Xys5Pygs


15 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:59:20 ID:W9VWqYMz


16 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/19(土) 23:59:24 ID:fuDy4LcP

「そんな私に、価値なんてある訳無いだろう……?
 静留が手を汚して守る価値なんて、私には無いんだ」

少女は自身の辿ってきた道程を振り返って、口元に皮肉な笑みを浮かべた。
それは、自分自身に対する嘲笑に他ならない。
しかしそんな彼女の自嘲を、クリスは許そうとしなかった。

「それは違うよ、ナツキ。君の事を大切に想ってる人がいるんだから、自分に価値が無いなんて云っちゃ駄目だ。
 君に価値が無いだなんて……そんなの、シズルが可哀想過ぎるよ」

一度深い自己嫌悪に陥ったクリスだからこそ、今のなつきは認められない。
なつきが自分を無価値だと断定すれば、そんなモノの為に戦っている静留は一体何なのか。
だからこそ、クリスはなつきの言い分を絶対に認めない。

「それに、今まで何も出来なかったとしても……。これから頑張れば良いだけなんじゃないかな」

告げる声に迷いは無く。
クリスはなつきの視線を一身に受けながら、話を続けてゆく。

「いや……君は頑張らなくちゃいけないんだ。シズルを救えるのは、ナツキだけなんだから」
「私、だけ?」
「うん。シズルは本当に……心の底から、君の事を大切に想っているみたいだったから――」

クリスはそう云って、なつきへと歩み寄った。
割れ物を扱うかのような優しさで、そっと少女の手を握り締める。

17 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:00:17 ID:d2lJ22L9


18 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:01:03 ID:fuDy4LcP
「君がこの手を差し伸べさえすれば、きっとシズルを救えるよ」
「…………」

なつきは口を閉ざしたまま、何も語らない。
ただ手に伝わる暖かさのみを感じている。
向けられた言葉は、そのどれもが真摯な想いに満ちたものだった。

「もしシズルを救いたいと思うのなら力を貸して、ナツキ。
 君の力が、必要なんだ」

エメラルドの瞳が、真っ直ぐになつきを射抜く。
なつきはゆっくりと――本当にゆっくりと、頷いていた。



    ◇     ◇     ◇     ◇



「さて、妾が考えた今後の方針を発表するぞ。心して聞くが良い」

すっかり闇の落ちたリゾートエリアで、幼い声が響き渡る。
全ての情報交換を終えた後、アルは皆を代表する形で話し始めていた。

「妾と桂、それに真は、駅を経由して教会に行く。
 クリスとなつきは、島の中央を捜索する。
 つまり二手に別れるという形になるが、これについては異存無いな?」

19 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:01:10 ID:Xys5Pygs


20 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:02:32 ID:7ZPZhMa2
アルのその問い掛けに、反対意見を述べる者は居なかった。
クリスが最後に静留と別れたのは、島の中央付近。
真が最後にやよいと別れたのは、北西の教会。
クリスやなつきとしては静留を救いたいし、真としてはやよいを守りたい。
ならば、此処で二手に別れるのは殆ど必然だった。 

「そして別れる以上は、再会する場所と時刻を決めておかねばならん。
 次の集合場所はツインタワー、時間は第六回放送が行われる頃だ」

そうやって話しながらも、アルは決して足を止めない。
アルが立ち止まっても、真は構わずに駅の方へと進んでゆく。
今の真には、やよいの保護以外に意識を向ける余裕など無いのだ。
故にアルも、他の者達も、真に付いてゆく形で歩き続けるしか無かった。

「妾・桂・真の最優先目的は高槻やよいの保護。クリス・なつきの最優先目的は、藤乃静留の説得並びに来ヶ谷唯湖との合流。
 しかし、それだけでは無いぞ? 妾達の最終目的はこの島からの脱出だと云う事を、決して忘れてはならぬ。
 道中で信頼出来る者に会えれば、可能な限り仲間に引き込め。それが無理でも、ツインタワーに集合する旨を伝えるのだ」

目先の目標に固執するあまり、大局を見失ってはいけない。
仮にそれぞれのグループが最優先目的を果たしたとしても、それだけでは未だ不十分。
この殺戮の孤島から脱出しなければ、いずれ殺されてしまう事には変わりないのだ。

21 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:03:26 ID:jxjc6g18
 

22 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:04:10 ID:ovtSlUDN
 

23 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:04:24 ID:7ZPZhMa2
「妾の知る限り、特に重要だと思われる人物がドクター・ウェストだ。
 ふざけた態度の男だが、アレは紛れも無い天才。奴ならば、きっと首輪の解除も可能な筈。
 それにウェスト以外にも、首輪を解除出来る人間が居るかも知れんし、主催者に関する有力な情報を持った者達も居るかも知れん。
 他にも、役立つ支給品を持った者。卓越した戦闘能力を持った者。可能性を上げればキリが無い」
「そうだね。確かにアルちゃんの云う通り、人を集める事は重要かも知れないね」
「ああ。一人でも多くの人間を味方に引き込めば、それだけこの島から脱出出来る可能性が高まる。
 故に今は、人を集める事こそが肝要なのだ」
「待て、アル。お前の云っている事も分かるが、人の選別にはもっと慎重を期すべきじゃないのか?
 源千華留のような『本性を隠して集団の中に潜む危険人物』が、紛れ込んでしまう可能性もあるんだぞ」
「確かにその可能性はあるがな。この遊戯を覆すには、出来るだけ多くの人材が必要となるだろう。
 多少のリスクを恐れていては、好機をみすみす見逃してしまう事になりかねんわ」

答えるアルの表情は険しい。
首に嵌められた絶対の枷に、異能力の制限。
元より圧倒的に不利な状況なのだ。
安全にこの島から脱出する方法など無い以上、リスクを承知の上で動いていくしか無かった。

「さて、次に――」

アルは少し間を置いてから、更に話を続けていこうとする。
しかしそこで、なつきが横からアルの肩を叩いた。
なつきはアルの首輪を左手で覆い隠しながら、右手で一枚の紙を示してみせる。

『主催者は盗聴や盗撮をしているのだろう?
 なら作戦会議は筆談で、監視カメラに映らないようにしながら、行うべきじゃないのか?』

それは、当然の懸念。
情報交換の際にアルと桂が主張した内容――元は棗恭介によって齎された情報――によれば、首輪には監視カメラが備え付けられている筈だった。
しかしそんななつきの懸念を、アルはあっさりと一蹴する。
白く小さな手が、素早く鉛筆を走らせた。

24 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:06:31 ID:jxjc6g18
 

25 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:06:45 ID:7ZPZhMa2
『たわけ。作戦会議の度にそんな方法を用いていたら、主催者共に警戒されてしまうわ。
 余程重要な、それこそ主催者の打倒に直結するような情報以外は、口頭で話した方が良い。
 妾達が勝つには、主催者共の油断を突くしか無いと知れ』
『そうか……それもそうだな。分かった、話を続けてくれ』

アルの主張はなつきを納得させるのに、十分過ぎるものだった。
直ぐになつきは退き下がって、アルが話を再開する。

「先程も云った通り、クリス達は島の中央部に向かう。それは分かっておるな?
 そこで、だ。その時に、余裕があれば周囲の施設を調べてみて欲しい」
「周囲の施設を? 僕は別に構わないけど、どうして?」
「脱出の鍵が施設に隠されている可能性も、決して零では無い。ならば、打てる手は全て打っておくべきだ。
 勿論、調べるのは汝達だけではない。妾達も教会に向かうまでの道程で、施設を発見すれば出来るだけ調べるようにしよう。
 尤も……やよいの捜索が最優先である以上、そう長く時間は掛けられんがな」
「だろうな。私達だって、来ヶ谷唯湖とやらや静留を探すついでに、通り道に施設があれば調べてみる程度だろう」
「うむ、それで一向に構わん。捜索の支障にならぬ範囲で良いから、あらゆる可能性を探ってみてくれ」

そこまで話すと、アルは一旦言葉を切った。
仲間達一人一人に視線を移しながら、最後に一つ問い掛ける。

「さて――話は以上だ。反対意見のある者は居るか?」

潮風が一同の間を吹き抜けて、アルの髪を優しく舞い上げる。
もう誰も反対意見を述べる事は無く、一同の方針は決定と相成った。

そして二手に別れる事が決まった以上、これ以上一緒に行動するのは効率が悪い。
各々が最短距離で、自身の目的地を目指さねばならない。
なつきはクリスと共に、進路を北へ取ろうとして――不意に振り返った。

26 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:08:00 ID:jxjc6g18
 

27 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:08:08 ID:ovtSlUDN
 

28 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:08:34 ID:7ZPZhMa2

「それでは私とクリスは行くが……羽藤。一つ良いか?」
「うん? 何かな?」
「お前の探していた尾花と……若杉の事だ」
「――――っ」

ごくりと、息を呑む音。
桂は暫くの間躊躇していたが、やがて意を決したような表情となった。

「葛ちゃんは……なつきちゃんの目の前で、殺されちゃったんだよね。
 それになつきちゃんの話に出ていた狐って……白い子狐だよね? だったら、その狐は尾花ちゃんだよ」
「そうか……。なら余計に、私はお前に謝らないといけないな。
 私は若杉も尾花も救えなかった。本当に……すまない」

そう云って、なつきは静かに頭を下げた。
静寂が場を支配する。
ザザア、ザザアという波の音だけが、遠くから聞こえてくる。
暫く時間を置いた後、桂はゆっくりと口を開いた。

「ううん……なつきちゃんだけの責任じゃないよ。わたしは葛ちゃんを見付ける事が出来なかった。
 尾花ちゃんに酷い事をしてしまった。だから、わたしにだって責任があるの」

桂はなつきを責めたりはしなかった。
葛を救えなかったのは桂とて同じ。
尾花に至っては、自分自身の手で傷付けすらしてしまったのだ。
そんな事実を差し置いて、なつきだけを責める事など出来る筈が無かった。

深い後悔と共に、視線を地面へと落とす二人。
やがて桂は顔を上げて、正面からなつきの瞳を見据えた。

「……死なないでね。尾花ちゃんや葛ちゃんの分まで、わたし達は生きないと駄目だから」
「ああ、分かっているさ。お前こそ……絶対に死ぬんじゃないぞ」

29 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:08:53 ID:ovtSlUDN
 

30 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:09:11 ID:jxjc6g18
 

31 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:10:12 ID:7ZPZhMa2
出会って間もない二人だったが、交わされた言葉には強い想いが籠められている。
そして訪れる、別離の時。
互いの目的を果たす為には、これ以上此処で時間を潰してなどいられない。
短時間で打ち解けた二人は、しかし別々の道へと進んで行った。



    ◇     ◇     ◇     ◇



沈まぬ太陽など無いのだから、この殺戮の孤島にも夜は訪れる。
何時の間にかすっかり暗くなった町の中。
羽藤桂達と別れたなつきは、クリスと共に一路島の中央部を目指していた。

「なあ、クリス。静留はどうだった? 何処か怪我をしていなかったか?」
「えーと……確か足を怪我していた筈だよ」

答えるクリスは護身用に、二振りの短剣――ロイガー&ツァールを握り締めている。
ロイガー&ツァールは、元は魔導書アル・アジフのページの断片である。
しかしアルは自身のページを、クリスから取り戻そうとはしなかった。
『武器が無くても戦える妾よりは、只の人間に過ぎぬ汝が持つべきだ』との事だった。

「な、何だと!? 静留は大丈夫なのか!?」
「落ち着いてよ。シズルは自分で応急処置を施したみたいだったし、割と平気そうに動き回っていたから」
「そ、そうか……」

静留について尋ねるなつきと、素直に答えるクリス。
先程から、ずっとこんな調子のやり取りが続いている。


32 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:10:55 ID:ovtSlUDN
 

33 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:11:53 ID:7ZPZhMa2
「静留……頼むから、私が行くまで早まった真似はするんじゃないぞ。
 絶対に、私がお前を救ってみせるから」

強い決意と共に、なつきが一人拳を握り締める。
そんななつきの様子を見ていれば、クリスにも彼女と静留の絆の深さを窺い知る事が出来た。

「シズルが君の事を大切に思っているのは、知っていたけど。
 君も、シズルの事を本当に大切にしているんだね」
「……ふん、当然だ。静留は私の親友だし、この世でたった一人の味方でもあるからな。
 尤も最近はもう一人、妙なのが増えたが」

なつきは頬を紅く染めながらも、クリスの言葉を否定しなかった。
そして、なつきが示唆した『もう一人の味方』。
それは、風華学園で出会ったお人好しの教師だった。
なつきは星空へと視線を移しながら、この島には居ない筈の彼へと語り掛ける。

「なあ……高村先生。先生は今頃何をやっているんだ?
 先生は、――――ッ!?」

言葉が最後まで紡がれる事は無かった。
なつきは大きく目を見開いて、上空のとある一点だけを直視する。

「ナツキ、どうしたの?」

クリスの問い掛けにも、なつきは直ぐには答えられない。
そんな余裕は一瞬で吹き飛んだ。
なつきの眺め見る先――月の真横で、紅い凶星が禍々しく煌めいていた。

34 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:11:58 ID:ovtSlUDN
 

35 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:12:05 ID:jxjc6g18
 

36 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:13:03 ID:jxjc6g18
 

37 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:13:36 ID:7ZPZhMa2
「媛星(ひめぼし)……だと……? それでは此処は、私の居た世界なのか……?」
「媛星? 何なのそれは?」

クリスが当然の疑問を投げ掛けてくる。
なつきは暫しの間考え込んでいたが、やがて首を左右へと振った。

「……すまない、今は教えられない」

なつきは申し訳無さげに答えて、それきり口を閉ざした。
クリスの事を信頼していない訳では無い。
クリスが静留と出会ったのは、この島が初めての筈。
にも関わらず必死に静留を救おうとしている彼は、所謂お人好しであると判断して間違いない。
十分に信頼出来る人間だ。
しかし、クリスに話した所で事態は解決しないのだ。
絶望的な事実によって、無駄に動揺させてしまうだけだろう。

(くっ……不味い事になったな)

天に煌めく紅い凶星。
通称『媛星』は、なつきが住んでいた世界に於いて、三百年周期で訪れる強大な厄災である。
姿を表した媛星はいずれ地球へと落下して、全ての生命に逃れようのない滅びを齎すのだ。
それを防ぐ手段は、なつきの知る限りただ一つ。
『星詠みの舞』という儀式を行う事のみである。

(なら……今回の殺し合いは、星詠みの舞を行うのが目的なのか?)

星詠みの舞――十二人のHIMEが最後の一人になるまで潰し合うという、悪夢の儀式。
一人しか勝ち残れないその儀式と今回の殺し合いは、余りにも状況が似過ぎている。
本来ならば蝕の儀式にはHIMEしか参加出来ないが、この殺人遊戯の主催者は、様々な平行世界から人間を拉致してのけた怪物。
何が得体の知れぬ力によって、HIME以外の者達をも星詠みの舞に巻き込んでいるかも知れなかった。

38 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:13:36 ID:ovtSlUDN
 

39 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:14:09 ID:ovtSlUDN
 

40 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:14:53 ID:ovtSlUDN
 

41 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:15:23 ID:7ZPZhMa2
(それに、先程の放送は炎凪が行っていた。奴も私と同じ風華学園の人間――星詠みの舞に関わっている可能性は、十分ある。
 そんな奴が、主催者側に付いているんだ。なら、この殺し合いは星詠みの舞に関連している、と考えるのが自然か)

しかし、となつきは考察を続ける。

(一方で……この殺し合いが星詠みの舞とは無関係な可能性も捨て切れない。
 何しろ、参加させられていないHIMEも大勢いるんだからな)


鴇羽舞衣や美袋命、結城奈緒と云った面々は、此度の殺人遊戯に参加させられていない。
本来ならば星詠みの舞に欠かせないHIME達が、何故か見逃されているのだ。
星詠みの舞が此度の殺人遊戯に関わっている、と断定するのは早計だろう。

(だが……どちらにせよ、媛星の対策は必要だな)

今確かな事実は一つ。
天から滅びの凶星が迫って来ている、という事だけだ。
本来ならばそれは絶望的な事実だったが、この島には様々な人間が居る。
豊富な魔術の知識を持つアルや、卓越した頭脳を持つらしいウェストならば、何が良い対策を思い付くかも知れなかった。
媛星に関する情報を悪戯に広めるのは、要らぬ混乱を招くだけだが、相手によっては話すべきだろう。
と、そこまで考えた辺りで、なつきは横から注がれる視線に気付いた。

「何か用か、クリス?」
「いや、そういう訳じゃないよ。ただ……凄く深刻そうな表情をしてるなって。
 僕で良ければ、話くらい聞くよ?」
「……ふん、良いから行くぞ。今は余計な事を考えている暇なんて無いんだ。
 私達は一刻も早く、静留を止めなければならないからな」

42 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:16:13 ID:ovtSlUDN
 

43 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:16:43 ID:jxjc6g18
 

44 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:17:07 ID:7ZPZhMa2
そうしてなつきは、媛星に関する考察を打ち切った。
――まずは静留を止める事に集中しなければいけない。
媛星の対策など、静留を救った後で考えれば良い。



(……伊達。私は確かにお前を殺した。呪いたければ呪うが良い。
 だが私は誰に恨まれようとも、何としてでも静留を救ってみせる)

少女はもう迷わない。
親友を救いたいという想いが、そのまま少女の原動力へと変換される。



(僕は悲しみの連鎖を止めるんだ。僕はシズルを止める。ユイコを守る。
 もう……リセのような悲しい犠牲は、一人も出したくないんだ……)

少年はもう立ち止まらない。
救うべき者、守るべき者の存在が、嘗て消極的だった少年を突き動かす。



少年と少女は足並みを揃えて、絶望の孤島を歩いてゆく。
各々の決意を、その胸に秘めて。


45 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:17:17 ID:ovtSlUDN
 

46 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:17:44 ID:jxjc6g18
 

47 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:17:59 ID:WPDjlXZp
 

48 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:18:40 ID:ovtSlUDN
 

49 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:18:47 ID:7ZPZhMa2
【F-7 北西/一日目/夜中】
【クリス・ヴェルティン@シンフォニック=レイン】
【装備】:和服、防弾チョッキ、アルのページ断片(ニトクリスの鏡)@機神咆哮デモンベイン
【所持品】:支給品一式、ピオーヴァ音楽学院の制服(ワイシャツ以外)@シンフォニック=レイン、フォルテール(リセ)、
 ロイガー&ツァール@機神咆哮デモンベイン、刀子の巫女服@あやかしびと−幻妖異聞録−、情報の書かれた紙
【状態】:Piovaゲージ:50%
【思考・行動】
 基本:哀しみの連鎖を止める
 0:まずは島の中央部へ。
 1:静留を止める、救う。
 1:唯湖を探し出して、守る。
 3:首輪解除の有力候補であるドクター・ウェストを探す。
 4:一人でも多くの人間を仲間に引き入れれる。即座に同行出来ないようならば、第六回放送時にツインタワーに来るように促す。
 5:機会があれば、通り道にある施設を調べる。
 5:第六回放送頃、ツインタワーでアル達と合流する。

【備考】
 ※西洋風の街をピオーヴァに酷似していると思ってます
 ※リセルート、12/12後からの参戦です。
 ※トルタに暫く会う気はありません。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照

【玖我なつき@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備】:ELER(二丁拳銃。なつきのエレメント、弾数無制限)
【所持品】:支給品一式×2、765プロ所属アイドル候補生用・ステージ衣装セット@THE IDOLM@STER、カードキー(【H-6】クルーザー起動用)
 双眼鏡、首輪(サクヤ)、ベレッタM92@現実(9ミリパラベラム弾 15/15+1)、ベレッタM92の予備マガジン(15発入り)×3
 七香のMTB@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜、クルーザーにあった食料、情報の書かれた紙
【状態】:軽度の肉体的疲労、強い決意
【思考・行動】
 基本:静留と合流する
 0:まずは島の中央部へ。
 1:静留を止める、救う。

50 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:19:45 ID:ovtSlUDN
 

51 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:19:49 ID:jxjc6g18
 

52 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:19:51 ID:7ZPZhMa2
 2:来ヶ谷唯湖を探す。
 3:首輪解除の有力候補であるドクター・ウェストを探す。
 4:一人でも多くの人間を仲間に引き入れれる。即座に同行出来ないようならば、第六回放送時にツインタワーに来るように促す。
 5:機会があれば、通り道にある施設を調べる。
 6:第六回放送頃、ツインタワーでアル達と合流する。
【備考】
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照
 ※媛星に関する情報については、今の所ごく一部の人物(アルやウェストのように、媛星への対策を思い付き得る者)以外に話すつもりはありません。






【F-7 南東/一日目/夜】
【羽藤桂@アカイイト】
【装備】:今虎徹@CROSS†CHANNEL〜toallpeople〜
【所持品】:支給品一式、アル・アジフの断片(アトラック=ナチャ)、魔除けの呪符×6@アカイイト、古河パン詰め合わせ27個@CLANNAD、
 誠の携帯電話(電池二個)@SchoolDaysL×H、情報の書かれた紙
【状態】:強い決意、全身に擦り傷、鬼、アル・アジフと契約、若干貧血気味、サクヤの血を摂取
【思考・行動】
 0:真についていく。まずは駅を経由して教会へ。
 1:高槻やよいを探し出して保護する。
 2:烏月が殺し合いに乗っているのなら、止める。
 3:首輪解除の有力候補であるドクター・ウェストを探す。
 4:一人でも多くの人間を仲間に引き入れれる。即座に同行出来ないようならば、第六回放送時にツインタワーに来るように促す。
 5:機会があれば、通り道にある施設を調べる。
 6:第六回放送頃、ツインタワーでクリス達と合流する。
 7:第四回放送までにカジノに戻れなかった場合は、恭介たちに別行動を取ると連絡する。

53 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:20:26 ID:7ZPZhMa2
【備考】
 ※桂はサクヤEDからの参戦です。
 ※サクヤの血を摂取した影響で鬼になりました。身体能力が向上しています。
 ※桂の右腕はサクヤと遺体とともにG-6に埋められています。
 ※クリスの事を恭介達に話す気は今のところない。
 ※第四回放送の頃に、カジノで恭介たちと合流する約束をしています。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照

【アル・アジフ@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:サバイバルナイフ
【所持品】:支給品一式、ランダムアイテム×1、情報の書かれた紙
【状態】:羽藤桂と契約、健康
 0:真についていく。まずは駅を経由して教会へ。
 1:高槻やよいを探し出して保護する。
 2:首輪解除の有力候補であるドクター・ウェストを探す。
 3:一人でも多くの人間を仲間に引き入れれる。即座に同行出来ないようならば、第六回放送時にツインタワーに来るように促す。
 4:機会があれば、通り道にある施設を調べる。
 5:烏月が殺し合いに乗っているのなら、止める。
 6:第六回放送頃、ツインタワーでクリス達と合流する。
 7:九郎と再契約する。
 8:戦闘時は桂をマギウススタイルにして戦わせ、自身は援護。
 9:時間があれば桂に魔術の鍛錬を行いたい。
10:第四回放送までにカジノに戻れなかった場合は、恭介たちに別行動を取ると連絡する。
【備考】
 ※アルからはナイアルラトホテップに関する記述が削除されています。アルは削除されていることも気がついていません。
 ※クリスの幻覚は何かの呪いと判断
 ※クリスの事を恭介達に話す気は今のところないです。
 ※第四回放送の頃に、カジノで恭介たちと合流する約束をしています。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照
 ※恭介、トルタに対して疑心を抱いています。

54 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:20:59 ID:ovtSlUDN
 

55 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:21:18 ID:7ZPZhMa2
【菊地真@THEIDOLM@STER】
【装備】:電磁バリア@リトルバスターズ!
【所持品】:支給品一式(水なし)、金羊の皮(アルゴンコイン)@Fate/staynight[RealtaNua]、
 レミントンM700(7.62mmNATO弾:4/4+1)、予備弾10発(7.62mmNATO弾)、情報の書かれた紙
【状態】:背中付近に軽度の火傷(皮膚移植の必要無し)、深い深い自責の念、精神疲労(極大)
【思考・行動】
 基本:何としてでもやよいを守る。
 1:やよいを守る。まずは駅を経由して教会へ。
 2:やよいや、他の女性を守る王子様になる。
【備考】
 ※元の世界では雪歩とユニットを組んでいました。一瞬このみに雪歩の面影を見ました。
 ※『空白の二時間』の間に、懺悔室の主になにかをされた可能性があります。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照

56 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:22:44 ID:ovtSlUDN
 

57 : ◆guAWf4RW62 :2008/07/20(日) 00:23:27 ID:7ZPZhMa2
投下完了致しました
数多くの支援、本当に有難う御座いました
物凄く助かってます
容量的に二分割になると思われるので、後編は本スレ>>18
>「さて、妾が考えた今後の方針を発表するぞ。心して聞くが良い」
からで、
タイトルは、『Mighty Heart、Broken Heart』でお願いします

58 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:23:34 ID:ovtSlUDN
 

59 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:25:41 ID:jxjc6g18
投下乙!
おお、これは良いフラグ把握+考察話。
媛星と舞-HiMEの世界についても把握できるし、とても良い情報纏めの話でした。
クリスくん、第二の誠にでもなるつもりか、そのフラグの乱立っぷりはw

そして地味に千華留様に暗雲が……そしてステルスも受け入れやすい環境になりましたね。
このチームにドクターウェストと九鬼のチームが合流すれば、一気に首輪解除へ近づけるな、これは。

60 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 00:27:17 ID:ovtSlUDN
投下乙です。
クリスがなつきに対して恋愛フラグの切っ掛けを……w
恐ろしい子だw
情報交換などわかり易く今後に期待


61 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 01:41:39 ID:AVwoKt5O
投下乙!
媛星のおかげ(?)でようやくなつきに見せ場がw
アルもリーダーしててかっこいいな。
実にいい考察でしたGJ!

62 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 01:50:58 ID:9Iyl+4mw
投下乙!
「情報の書かれた紙」いいねえw
しかし今一人の千華留様が大丈夫なのだろうかw

ともあれGJでした。

63 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 01:52:01 ID:9Iyl+4mw
sage忘れ、吊ってくるorz

64 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 02:19:43 ID:hXct0FJD
投下乙です

今回はなつきメインの話って感じでしたね。
なつきをここまでメインに感じたのは初めてかもしれないw
それから、高村先生の名前も出てきて少し感動を覚えました
しかしいくら舞Himeの主人公といっても、高村先生の存在意義の全てといっても
過言ではない草薙の剣は双七君が持ってるし、全く必要ないんですよね彼は。哀れな主人公だw
何はともあれ、フラグまとめと考察によるナイス繋ぎGJでした

65 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/20(日) 21:24:19 ID:xm1JuT8F
投下乙です。
見事なまとめとわかりやすいHIME☆説明あざーすです。
大所帯だと動かし憎いところを、うまく分散させたところも評価大きいです。

序盤のパヤパヤといい、まとめといい、アルは本当に頼れる子ですね!
HIME☆が出てきたことで今まで空気気味だった舞HIME勢にスポットあたりそうなのもいい予感。
また今のところまだ一般人である真が能動的に動き始めたのも、アル桂がサポートに入れば活躍出来そうな感じがいいです。
でもアル! お前は教会へいってしまったらヤバいんじゃないか!?
情報の書かれた紙の
>・ドクター・ウェストは大馬鹿だが本物の天才
を見たときのウェストのリアクションとか楽しみでなりません。

状態表もすっきり最新版にまとまっていて、放送後投下乙でした!

66 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:00:35 ID:9kHAPpJP
地獄の孤島が夕闇に包まれ幾多の星が輝き始めた頃。
そして強い光が失われ闇が全てを侵食し始める頃。

つまりは果てしない夜の始まり。
その始まりに音が響く。
その音は哀しみを告げる放送。
幾多の命の終わりを告げるもの。
それを飄々とお茶らけた声の少年が告げる。

そのある意味諦観を漂わせた放送に参加者はどう思うのだろうか?
手始めに見てみるのは3名の組。
一人は涙脆く思いやりが深い少年、如月双七。
一人は固有の存在である少女、山辺美希。
そしてただ一人の主を思慕し続ける人に果てしなく近く、されど人ならざる存在、深優・グリーア。

地獄の孤島で3名のもがきはどう映るのだろうか?
さあ、少し覗いてみよう……





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「そんな……会長……加藤教諭……そんな」

無骨のビルの群が乱立してる中でひっそりと佇む児童公園の中で双七がガクッと膝をつく。
炎凪といった飄々とした少年が告げた放送。

67 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:00:46 ID:uaAV4U7n


68 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:01:46 ID:4GdKLaxa
 

69 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:01:48 ID:uaAV4U7n


70 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:01:53 ID:9kHAPpJP
その中で遂に呼ばれた双七の知り合い。
覚悟はしていたはずだった。
黒い侍、ティトゥスや九鬼耀鋼のような圧倒的な力の持ち主がこの島には沢山いるのだ。
一乃谷愁厳や加藤虎太郎がどんなに強くともそういった力の持ち主とあたった場合勝てると決まった訳ではないのから。
自分だってティトゥスに勝てたのは幸運に近いのだから。
だから呼ばれるのは覚悟していた、いやしていたつもりだった。
だが呼ばれた直後に双七を襲った脱力感。

余りにも。
余りにも重く。
とてもとても哀しくさせるものだった。

双七は思う。
二人とも呼ばれてはいけなかった人物だと。
いや、名前を呼ばれた人達皆だ。

加藤虎太郎。
双七は彼とはあまり深く話をした事はない。
だけど一段と生徒思いなのは双七にもわかっていた。
あのタバコを咥え飄々でけだるそうな姿が目に浮かぶ。
もう会えないとなるととても寂しかった。

一乃谷愁厳。
美希から聞いていた情報、彼が殺し合いに乗っていたという事。
でもそれは今はもう確認する事はできない。
乗っていたとしてもう彼の道を己の拳で治す事はできないのだ。
彼の愚直なまでの生真面目さに触れ合う事はもう出来ない。
そう、永久に。


71 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:02:46 ID:uaAV4U7n


72 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:02:49 ID:9kHAPpJP
(刀子さん……)

刀子は大丈夫だろうかと双七は思う。
刀子は兄とずっと共に生きていた。
兄を失って彼女はどうなるのだろうか?
果たして兄を失って一人で生きていけるのだろうか?
そして双七でさえ深い哀しみにおちているのだ。
絶望に打ちひしがれていないだろうか。
それが心配で双七には堪らなかった。

「如月さん……泣いてるのですか?」

そんな双七に深優は話しかける。
深優にはわからなかった。
何故双七が知り合いの為に涙を流せるのかを。
双七自身はないてることに気付くことなく。
指摘され己の頬を触る事でやっと気付いたのだが。

「あ、本当だ……何でだろうな?……わからない……でも悲しいんだ……とても」
「哀しみ……ですか?」
「ああ……」

深優は双七の答えに少し驚いた。
それが哀しみなのかと。
双七は一乃谷愁厳と仲が良かったという。
だからといって涙を流せるとは思わなかった。
……いや、深優にとってはその涙を流すほどの悲しみが理解できないかもしれない。
しかし理解の切っ掛けはしっかりと残っていた。


73 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:03:18 ID:uaAV4U7n


74 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:03:38 ID:4GdKLaxa
 

75 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:03:53 ID:uaAV4U7n


76 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:03:56 ID:9kHAPpJP
(アリッサ様を失った時……私は……いえ、考えても仕方ないのことです。今はただアリッサ様の為に)

海での戦闘、その時アリッサを失った。
その時、深優の心を占めていたのは何だったのだろうか?
深優にはわからなかった、まだ。
……それこそが悲しみである事に。
そして今は殺し合いが始まる直前に会ったアリッサの為に。
それが深優の使命だった。

「取り敢えず休憩しましょうか? 美希も疲れましたです。美希はトイレに行ってきます、如月さん覗いちゃだめですよ?」
「ああ……って誰が覗くか!」

あははと美希がニコニコと笑う。
淀んだ空気を吹き飛ばすくらいの破顔一笑。
少なくともその笑みに双七は笑うことが出来た。
そして思う。

(そうだよな……俺は会長や加藤教諭の分まで頑張ろう。頑張って生きないと)

生きようと。
皆の分まで。
必死に必死に生きようと双七は誓う。
大切な友に誓うように。

空は宝石箱をひっくり返したぐらいの満天の星空だった。





77 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:04:56 ID:4GdKLaxa
  

78 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:05:08 ID:uaAV4U7n


79 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:05:27 ID:4GdKLaxa
 

80 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:05:39 ID:9kHAPpJP
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




ジャーと水が流れる音が聞こえる。
美希はトイレの洗面所の鏡をじっと見ていた。
移るのは自分の姿。
笑っている自分の姿。
何の感慨も無いはずだった。

『加藤虎太郎』

この名前が呼ばれた時何処かハッとした。
ただの盾であったはずなのだ。
なのにどうしてこんなにも心に残るのだろう。
美希には解らなかった。
いや解らないふりをしてるだけかもしれない。
霧を守りきれなかった虎太郎。
そして自分を護った虎太郎。
果たしてあの戦闘の後死んだのだろうか。
虎太郎は満足して逝けたのだろうか。
それは美希が知る由ではないのだけど。

ただいつまでも蛇口から流れ続ける水と。
鏡に映り続けている自分の姿。
ニコニコと。
けれど何処か憂鬱そうな。
そんな笑みだけがずっと映っていた。
そして奏で続ける水の音。
ジャーと。

81 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:06:00 ID:uaAV4U7n


82 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:06:32 ID:uaAV4U7n


83 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:07:02 ID:9kHAPpJP
絶え間なく聞こえていた。

ずっとずっと。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




(炎凪……一番地の者でしょう……彼もここに居たのですか)

美希がトイレに行った後残された深優と双七はベンチに座り星を見ていた。
無数の星はただ綺麗にずっと輝き続けていて。
深優が考えるのは放送を行なった存在。
炎凪。
深優のメモリーチップに残されていた事は一番地の人間だということだけ。
そしてさらに重要なものを深優は見つけた。
耀く星の中。
月の脇に紅く光る凶星、そう

(媛星……何故こんな所に?)

媛星を見つけたのだ。
最初は驚愕に染まったが今は落ち着いている。
そして深優が推測した事。
恐らくこの殺し合いは蝕の祭に関連しているのではないかと。
恐らくワルキューレ――HiME――三名、玖我なつき、藤乃静留、杉浦碧の3名の脱落。
もしくは参加者の六十三名の脱落をしなければ軌道が変わることはないだろう。

84 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:07:53 ID:uaAV4U7n


85 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:08:22 ID:9kHAPpJP
そして一番地の人間が関与している事が明らかになったのなら。

(この殺し合いを管理してるのは一番地……?)

この殺し合いを管理しているのは一番地となる事になるのではないかと。
何せ一番地の目的は媛星の力を得ることを目的としているのだから。
となると神崎黎人、言峰綺札も一番地の人間である事は容易に推測できるはずだ。
だけどそこで深優にとって不可解な事は一つ。

(一番地にこんな計画を遂行できる力などあるのでしょうか?)

深優のメモリーチップに組み込まれている知識の中には少なくともそんな力は無い。
では何故遂行できたのだろうか?
シアーズ財団がどんなに大きくてもここまでの計画を実行する事は不可能だろう。
そしてシアーズ財団以上の組織がこの世界に存在するとは思わない。
ならばいったい何処がと深優は思う。
だがしかし

(考えても仕方ないですね……アリッサ様を守るのが私の使命ですから)

そこで深優は一旦推測を止めた。
どんな理由であろうと深優がアリッサを守るのは何処であろうと変わらない。
優勝をする事でアリッサを救えるならそれを行なおう。
殺し合いを円滑に進めることがアリッサを守る事に繋がるなら行なおう。
アリッサのためならなんだって行なおう。
それがアリッサに課せられた使命なのだから。
それがアリッサの存在意義なのだから。

「なあ……深優」
「……はい、なんでしょうか?」


86 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:08:29 ID:uaAV4U7n


87 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:08:30 ID:4GdKLaxa
 

88 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:09:16 ID:uaAV4U7n


89 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:09:27 ID:9kHAPpJP
そんな時唐突に双七が深優に向かって話しかけ始めた。
双七は星を見上げたまま、何処か懐かしそうに。
そんな双七に深優は不思議そうに見つめる。

「深優って大切な……家族みたいな人っているか?」
「大切な……人?」
「そう、俺に一人いるんだけどさ、すずって妹がね。本人は姉ぶってるけど」

それから深優に話し始める、如月すずの事を。
如月すず、双七が式部涼一だった頃に出会った存在。
彼女は人ではない狐である。
それでも双七には今まで生きていた中で何よりも大切な存在だった。
ずっとずっと幼い時から今まで支えてきてくれた。
そして護りたいと思う大切な存在。
人を嫌いつつも次第に寄り添っていくのが双七にとって微笑ましくそして嬉しいものだった。
少し生意気な所もあるけど寂しがり屋でと。
とりともなく、ただ溢れる思いを深優に話す。
深優はその話をとてもよく聞いていた。
彼女にとっても興味深かった。
まるで自分に対するアリッサのようで。
深優にとっては稼動を始めてからはずっとアリッサだけだった。
双七の語る思いもなんとなく理解できた。

「俺は帰る。皆と一緒に。そしてすずに会うんだ。あいつは俺を待ってるから……」
「如月さん……」


90 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:09:49 ID:4GdKLaxa
  

91 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:10:14 ID:9kHAPpJP
深優は考える。
自分にとってアリッサはなんだろうかと。
メモリーチップに刻み込まれた知識は守り抜くもの。
だけどそれ以上に感じるのだ。
埋め込まれた知識以上のものが深優の中にあると。
そして今。
深優はアリッサの為に何ができるのかと。
双七は言った、皆と帰って鈴に会うって。
じゃあ自分は?
守り抜くというプログラム以外に。
深優は思考する。
定められた思考以上のことを。
アリッサはとても大切。
その為には何ができるのかと。
護る以外に。
深優が、深優自身の手で。
何ができると。

(私は……アリッサ様の為に……何ができる?)

そう深く疑問に陥った時の事だった。

「深優! あぶない!」
「っ!?」

ドンと強く深優の体を双七が押す。
直後深優と双七がいた場所に穴が開く。
まるで隕石が振ってきたような勢いで。

「ちっ……外したか」

双七が見つめる先にいるのは見覚えがある赤毛の少年と黒髪の少女。

92 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:10:48 ID:uaAV4U7n


93 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:11:25 ID:uaAV4U7n


94 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:11:28 ID:4GdKLaxa
 

95 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:12:09 ID:9kHAPpJP
赤毛の少年は九鬼とであった時のあの少年だった。
赤毛の少年は衛宮士郎。
黒髪の少女は椰子なごみ。
殺し合いに乗った2人だった。

「マルティプル・インテリジェンシャル・イグドラシル・ユニット起動……」

深優は冷静に仕込まれている左腕のブレードを出す。
蒼い綺麗な剣を。
目の前の参加者を打ち倒す為に。
アリッサを守る事に繋がるならと。

「お前はあの時の……!?」
「……桜の為、死んでもらう」

士郎は魔術により作り出した剣で双七に向かって疾駆する。
それを捌く双七。

「……っ……また」
「……くぅ……何だ」

直後双七と士郎を襲う不快な嫌悪感。
最初の時あったあの互いが互いを嫌がるあの不快なもの。
二人は襲われる不調によって少し距離をとる。
双七はそのまま叫ぶ。

「二人とも逃げろ!」
「……ふたり?」

なごみが二人という単語に反応する。
ここにいるのは双七、深優のはず。

96 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:12:55 ID:uaAV4U7n


97 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:13:15 ID:4GdKLaxa
 

98 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:13:23 ID:9kHAPpJP
そしてその回答になるのがなごみの視界の脇に映る人。
それは公園の別出口から逃げようとする美希だった。

「逃がすか! この二人は任せました」
「……解った」

なごみは士郎に深優と双七の相手を任せると美希に向かって走り出した。
なごみにはなに嫌な予感を感じたのだ。
レオに関する。

……そう、それははからずしも当たっていた。
レオと共に行動したのが美希で。
そしてレオを殺したと思われる人物も知っていて。
その人物、一乃谷愁厳がこの世にいない事も。
復讐する相手などもうこの世にいないことという。
悲しい定めを知らずなごみは走る。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





(……ったく……使えねー……どうしていることを教える……)

美希はビル街を走りながら双七の愚かさにを呪う。
なごみは依然美希を追いかけている。
トイレからこそっと逃げ出そうとしたのに双七が余計な事を言ったせいでばれてしまった。

99 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:13:26 ID:uaAV4U7n


100 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:13:59 ID:uaAV4U7n


101 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:14:13 ID:9kHAPpJP
結果また命の危険が迫っているというのだ。
とりあえずはなごみを撒くことが必須だ。
このまま北に向かい駅を行く事を選択する。
しかし中々なごみも足が速い。
追いつかれる可能性も否定は出来ない。
もしそうなったら

(……その時は)

美希は走る。
胸に黒い決意を従えて。
ただ、ただ。

【C-7 市街地/1日目 夜】
【山辺美希@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
【装備】:イングラムM10@現実(32/32)
【所持品】:支給品一式×2、木彫りのヒトデ7/64@CLANNAD、投げナイフ4本、ノートパソコン、MTB、
     『全参加者情報』とかかれたディスク@ギャルゲロワ2ndオリジナル、イングラムM10の予備マガジンx3(9mmパラベラム弾)
【状態】:健康
【思考・行動】
 基本方針:とにかく生きて帰る。集団に隠れながら、優勝を目指す。
 0:なごみを撒きながら北に行き駅を目指す。もし追いつかれたら……
 1:自身の生存を何よりも最優先に行動する
 2:最悪の場合を考え、守ってくれそうなお人よしをピックアップしておきたい。
 3:バトルロワイアルにおける固有化した存在(リピーター)がいるのでは?という想像。
 4:太一、曜子を危険視。深優を警戒。
 5:詳細名簿のデータを見て、状況に応じた処置をする。

【備考】
 ※千華留たちと情報交換しました。深優、双七、なつきと情報を交換しました(一日目夕方時点)
 ※ループ世界から固有状態で参戦。
 ※理樹の作戦に乗る気はないが、取りあえず参加している事を装う事にしました。

102 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:14:51 ID:uaAV4U7n


103 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:14:53 ID:9kHAPpJP
 ※把握している限りの名前に印をつけました。(但しメンバーが直接遭遇した相手のみ安全と判断)




【椰子なごみ@つよきす-MightyHeart-】
【装備】:スタンガン、コルト・パイソン(6/6)
【所持品】:支給品一式、357マグナム弾13
【状態】:肉体的疲労(中)、右腕に深い切り傷(応急処置済み)、全身に細かい傷
【思考・行動】
 基本方針:他の参加者を皆殺しにして、レオの仇を討つ、そして、優勝する。
 0:美希を追う
 1:殺せる相手は生徒会メンバーであろうと排除する
 2:衛宮士郎と共に、他の参加者を殺しつくす。
 3:役に立たなくなったら、衛宮士郎を切り捨てる。
 4:黒須太一を残酷に殺す
 5:伊藤誠、ブレザー姿の女(唯湖)、京都弁の女(静留)、日本刀を持った女(烏月)も殺す
 6:出来るだけ早く強力な武器を奪い取る
 7:死者の復活には多少懐疑的。
【備考】
 ※なごみルートからの参戦です。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







104 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:14:55 ID:4GdKLaxa
 

105 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:15:21 ID:uaAV4U7n


106 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:16:08 ID:9kHAPpJP
二人の人間が去った後、残されたのは3人。
如月双七、深優・グリーアそして衛宮士郎。

士郎はそのまままた剣を構える。
望むのは桜の蘇生。
サクラノミカタであり続ける事。
その為には目の前の二人を殺す。
ただそれだけの事だった。

「お前、なんで殺し合いにのった?」

そう士郎に問い掛ける双七。
見た感じ徒党を組んでいる事が多いこの少年はティトゥスの様な己が至福の為に乗るとは思えなかった。
何か理由があるのではと。
その問いに答えようか考える士郎。
この男と戦うのは士郎にとって2回目で何か不思議な縁があるように感じた。
それ故に彼は答える。

「桜のためだ……たった一人の大切な人の為に」
「……大切な……人?」

ああ、と頷く。
士郎にとっては桜が全てだから。
だがその考えに双七は納得がいかない。

「そんなの……その子が喜ぶとは思わない! キチンと胸を張って護ってやることが大切だろう!」
「……護れなかったんだよ、護ろうと必死に足掻いてその前に逝った」
「……え?……ならどうして?」
「桜を蘇生させる。それが俺のできる事だ」
「そんなっ!? そんなの望むわけが無い!」
「……それでもだよ、もう二人も殺めたんだ。今更退く訳にはいかない」

107 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:16:56 ID:9kHAPpJP
「……っ!?」

双七には解らなかった。
すずはきっとそんな事を望まないだろう。
だから例えそうなっても双七はそんな事を考えない。
今の双七にとって皆で力を合わせて帰ることが大切だと思うから。
すずの元に胸を張って帰ること自分は頑張ったと言って貰える様に。
鈴に笑って貰える様に。
逝ってしまった愁厳や虎太郎の為に。
皆を守りたかった。
それが大切な人を守る事に繋がると。
そう思って。

だけど士郎は違った。


108 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:17:14 ID:4GdKLaxa
  

109 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:17:19 ID:uaAV4U7n


110 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:17:50 ID:uaAV4U7n


111 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:18:02 ID:9kHAPpJP
「そんなの! 絶対に正しくない!」
「正しくないてもいいんだ。俺は桜の味方でありたい。桜の事を殺そうとするものがいたら殺す。桜を助ける為になるんだったら殺す。
 どんな手を使っても殺す。どんなに汚れたとしても、穢れたとしても桜を救う。桜のためだったらなんだってする。
 桜が蘇るんだったら殺す。桜を蘇える為に俺の命が必要なら喜んで奉げる。桜が生きて笑ってくれるなら俺はなんだってする。
 桜が笑ってくれるのなら、桜を護れるのなら、桜が生きてくれるのなら―――俺は迷わない。桜に対して全てをかける」

士郎は誓う。
桜を守るならどんな事でもする。
桜が蘇る為なら殺す事もいとわない。
例え桜が望まなくても。
それが桜の為になるなら。
桜がいるのだったら。
士郎は戦い続ける。
――道を変える気などない。

両者は譲らない思いをぶつける。

だから


112 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:18:41 ID:4GdKLaxa
 

113 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:18:45 ID:uaAV4U7n


114 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:19:50 ID:9kHAPpJP
「如月双七、九鬼流。皆を守って帰る為にお前を倒す!」

双七は告げる。
士郎を倒すと。

「衛宮士郎、桜の為にお前を殺す!」

士郎は告げる。
双七を殺すと。

士郎はこう呟く

「俺はどんな時でもどんな場所でもたった一人の――――」

愛しい人を思って。

「―――――サクラノミカタだから」


そして両者は疾駆する。

胸に滾る思いを宿して。


【C-7 児童公園/1日目 夜】
【如月双七@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備】:クサナギ@舞-HiME 運命の系統樹、双身螺旋刀@あやかしびと −幻妖異聞録−
【所持品】:支給品一式×3(食料-2)、予備弾丸18、首輪(リセ)、
      刹那の制服と下着、ファルの首飾り@シンフォニック=レイン、良月@アカイイト
【状態】:強い決意、肉体疲労(小)、精神疲労(小)、右膝と右肩に貫通射創(処置済み)、桂の血に惹かれている。
【思考・行動】

115 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:20:11 ID:uaAV4U7n


116 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:20:37 ID:4GdKLaxa
 

117 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:20:59 ID:9kHAPpJP
 基本方針:仲間の確保と保護。
 0:士郎を倒す
 1:深優の動向を見守り、彼女が人を殺めようとするならば阻止する。
 2:九鬼先生、刀子、トーニャ、虎太郎と合流する。
 3:恭介たちと連絡を取りたい(電話が使えないかと考えている)
 4:向かってくる敵は迎撃。必要なら手を血で汚すことにも迷いはない。
【備考】
 ※双七の能力の制限は使い続けると頭痛がします。
 ※金属との意思疎通が困難になっていますが、集中すれば聞くことができます
 ※贄の血に焦がれています。見える範囲に居なければ大丈夫です
 ※深優のメモリーチップを読み取りましたが、断片的な情報しか読めていません。
  (対ウィンフィールド戦、対HiME戦withアリッサ・シアーズ、OP前のグリーア神父による最終整備)
  また現段階では集中力が高まらず、これ以上の情報の入手は難しいようです。
 ※深優、なつき、美希と情報を交換しました(一日目夕方時点)


【衛宮士郎@Fate/staynight[RealtaNua]】
【装備】:ティトゥスの刀@機神咆哮デモンベイン、木製の弓(魔術による強化済み)、赤い聖骸布
【所持品】:支給品一式×2、維斗@アカイイト、火炎瓶×6、木製の矢(魔術による強化済み)×16、
屍食教典儀@機神咆哮デモンベイン
【状態】:強い決意(サクラノミカタ)、肉体&精神疲労(小)。魔力消費小。身体の剣化が内部進行。脇腹に痛み。ずぶ濡れ。
【思考・行動】
 基本方針:サクラノミカタとして優勝し、桜を生き返らせる
 0:双七を殺す
 1:なごみとともに、参加者を撃破する
 2:優勝して言峰と交渉、最終的には桜を生き返らせる。(場合によっては言峰も殺す)
【備考】

118 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:21:02 ID:uaAV4U7n


119 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:21:24 ID:4GdKLaxa
  

120 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:21:47 ID:uaAV4U7n


121 :想いの果て ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:21:47 ID:9kHAPpJP
 ※登場時期は、桜ルートの途中。アーチャーの腕を移植した時から、桜が影とイコールであると告げられる前までの間。
 ※左腕にアーチャーの腕移植。赤い聖骸布は外れています。
 ※士郎は投影を使用したため、命のカウントダウンが始まっています。
 ※士郎はアーチャーの持つ戦闘技術や経験を手に入れたため、実力が大幅にアップしています。
 ※維斗の刀身には罅が入っています
 ※現在までで、投影を計二度使用しています
 ※今回の殺し合いが聖杯戦争の延長のようなものだと考えています





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







122 :大天使の息吹 ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:22:29 ID:9kHAPpJP
(私は……)

深優はただ思いを聞いていた。
士郎の桜への思いを。

そして深優は思う。
自分はアリッサの為にできるかと。

士郎のように。
身を挺してまでアリッサの事を思えるかと。
どんな時でも。
どんな場所のでも
アリッサの為に殺す事ができるかと。

自分は双七や士郎のような思いを聞いて。

アリッサの為に何ができるかと。
アリッサが生きてくれるなら。
アリッサを護れるなら。

自分は何ができる?

アリッサの為に。
アリッサの為に。

何をすればいい?


123 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:22:44 ID:uaAV4U7n


124 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:23:33 ID:uaAV4U7n


125 :大天使の息吹 ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:24:19 ID:9kHAPpJP
(私は……私は……アリッサ様の為に何ができるのですか? 何をすればいいのですか? アリッサ様の為に アリッサ様だけの為に)

深優は思う。

アンドロイドという枠を飛び越えて。
ヒトとして。

ただ。
ただ。

思っている。


そう。

大天使の息吹は。

もうすぐそこまで。

訪れている。


【C-7 児童公園/1日目 夜】
【深優・グリーア@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備】:ミサイル(1/2)、遠坂家十年分の魔力入り宝石、グロック19@現実(8/7+1/予備48)、Segway Centaur@現実
【所持品】:支給品一式、拡声器
【状態】:肩に銃創(治療済み)、刀傷(治療済み)、全参加者の顔と名前は記憶済み
【思考・行動】
 基本方針:アリッサを救うために行動する。
 0:???????
 1:"優勝を目指すが、積極的な殺しはしない"。
 2:できるだけ"殺し合いが加速するように他の参加者を扇動する"。

126 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:24:39 ID:4GdKLaxa
 

127 :大天使の息吹 ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:25:45 ID:9kHAPpJP
 3:ここにいるHiME(玖我なつき、杉浦碧、藤乃静留)を殺す。殺す時はバレないようにやる。
 4:必要に応じて内通者は複数人いると思わせる。
 5:美希を警戒。
【備考】
 ※参加時期は深優ルート中盤、アリッサ死亡以降。
 ※場合によってはHiME能力に覚醒する可能性があります。
 ※アリッサが本物かどうかは不明。深優のメモリーのブラックボックスに記録されたジョセフ神父の独白にその事実が保存されています。
  しかし現在のプログラムのまま動いている深優では検索不能です。
 ※双七に記憶を読まれた事に気付いていません。
 ※万全の状態で戦闘可能になるまでは若干の時間を要します。
 ※なつき、双七、美希と情報を交換しました(一日目夕方時点)



128 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 03:25:55 ID:uaAV4U7n


129 :大天使の息吹 ◆UcWYhusQhw :2008/07/22(火) 03:28:49 ID:9kHAPpJP
投下終了しました。
支援有難うございます。
誤字矛盾があったら指摘お願いします。

タイトルは「想いの果て/大天使の息吹」です
元ネタは大天使の息吹は運命の系統樹のBGMから。



130 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 11:28:13 ID:Q/lyDhJf
投下乙です。
レオの情報を持つ美希を追うなごみ、再び対決の双七vs士郎、覚醒しかけの深優。
どれも続きが気になるいい繋ぎです、GJ。
特に深優がアリッサのために何ができるかと悩むところが良かった。

ちょっと指摘
美希が虎太郎以外スルーですが、理樹たちには反応なしなんでしょうか。

>>85
>それがアリッサに課せられた使命なのだから。
>それがアリッサの存在意義なのだから。
ここはアリッサではなく深優だと思うんですが。

>>89
>とりともなく、ただ溢れる思いを深優に話す。
とりとめもなく、でしょうか。

あと深優は以前士郎を見かけている事があるんですが、まあここはどちらでもいいですね。

すいません、長々と。

131 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:49:24 ID:zb8TIVl9
投下乙!
おお、これは良い繋ぎ。
覚醒まで後一歩の深優と、そして再び対峙する士郎と双七。
おまけに美希となごみんの追跡戦など、おいしい要素盛りだくさん!

誤字がちょっと気になったのは、勿体無いとも思いますw

132 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 16:51:19 ID:CPpVNtIn
『――やあ、参加者の皆さん、気分はどうだい?』 

 まさか、橘教諭まで命を落とすとは。彼は生徒に随分頼られていたのではないだろうか。
残された生徒は訃報を聞いて、絶望に打ちひしがれているかもしれない。共にいた碧君も少し心配だ。

 そして、理樹君……君まで逝ってしまったか。私は大きくため息をついた。

 彼と鈴君こそがリトルバスターズの存在理由の全て。特に恭介氏は、彼の死を聞いて修羅の道を歩んでも不思議ではない。
おそらく、恭介氏の道を正すのは、今の私では無理だ。

 理樹君は眠り病という爆弾持ち、いつかはこの時が来ると予感がしていた。それでも、もし私が真剣に探していたら、彼を救えたかもしれない。
だが、私はクリス君を亡くしたと勝手に勘違いして、そして、心を求めるもその術を知らず、ただ無為に彷徨ってしまった。

 私は哀しみの連鎖を断ち切るどころか、広げてしまったようだな……。

 クリス君、こんな情けない私だがもう一度、君の側にいさせてくれないか。そして、私の心の空洞を埋めてくれ。
君は今、何処にいて何をしているのだろうか。そして、何を考えて何処へ向かっている?

133 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:51:59 ID:CPpVNtIn
(……川べり、だろうか)

 そこは私がクリス君と離れ離れになった場所。そして、旅館、森、大聖堂へ――彼なら、私と出合った場所を逆に辿って行きそうな気がする。

 いや、自意識過剰か。クリス君はそこまで私を必要としているのか分からない。
もしかすると、彼は私に流されていただけで、他の誰かでも良かったのかもしれないのに。
いや、そうであっても、私は君に会ってこの不思議な気持ちを確かめたい。

 だから、今は先へ進む、しっかりと前を見据えて。

 私は穏やかな風を浴びながら歩を進める。そして、ふと気付いた。
理樹君を失った時の感情は謙吾君や鈴君の時とは微妙に違っていたことに。
もしかすると、虚構世界に留まり続けていたなら、彼にクリス君と似た感情を抱いたのかもしれないと。

 ああ、そういえば、旅館で太一少年とも待ち合わせをしていたな。今からだと遅刻になるが顔見せくらいはするか。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

134 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:52:43 ID:zb8TIVl9
 

135 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:52:44 ID:Q/lyDhJf


136 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 16:53:00 ID:CPpVNtIn
「ぷはーっ、この瞬間のために生きてるなぁ」

 黒須太一はコーヒー牛乳を親父スタイルで一気飲みする。こうしている間にまた何人か死んでそうだけど、この幸福感は限りなく神に近い。

 死後数時間も経てば血液の凝固能力は失われる、と誰かが言ってた気がする。要するに、俺は死体の首を切れば確実に血を見てしまうわけだ。
他人の血は苦手。首輪の方は無理せずに、グロに強そうな来ヶ谷何某、通称姉御に頼むことにウッドボール(木鞠→きまり→決まり)。

 自分に妥協して、浴衣を纏ってみたら文豪の気分になった。なので、紙とペンを用意。放送が来るまで、徒然なるままに書き下ろしてみる。

『――やあ、参加者の皆さん、気分はどうだい?』 

「8点、もちろん100点満点だ!」

 拡声器で天に向かって吼えてみる。司会者は変わったが、形式は前回と殆ど同じ。お前さんたちの放送はツマラン、本当にツマラン。

 きっと、エイリアンの母星でもコネや枕営業が幅をきかせてるのだろう。この業界の未来にスプーン一杯の同情をする。後で姉御に第一回目の放送もこんな感じだったのか聞いてみよう。

 非難するだけならサルでもできるので、先に何パターンか放送案を書いてある。我ながらなかなかの力作だと思う。
この島には上級エイリアンとのスパイがいるらしいので、そいつを見つけたら渡したい。
もちろん、エロスとタナトスまぐわる(微妙に太一語)放送カテゴリー2だ。
どうせ、採用されないだろうけど、己の力量のなさを知ってもらえればいいなと。

137 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:53:19 ID:zb8TIVl9
 

138 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 16:53:34 ID:CPpVNtIn
 士郎はまだ生きてたんだな。詰めが甘すぎるぞ、なごみん。
なごみんが殺さなくても、廃人になってそのまま野垂れ死にでもしてると思ったんだが、
どこかの心優しいサマリア人が拾ってくれたんだろう。
それはとても美しく、人間的な行為だ。まだ、誰も士郎を拾ってなかったら自分が拾ってみよう。

 それにしても姉御の来るのが遅い。もしかして、自分は見捨てられたのか。
俺はロンリーハートを紛らわすために、荒らされたロビーを綺麗にする。部屋を片付ければ気分すっきり皆仲良し、窓ガラス理論だ
掃除の最中に身震いして大きいくしゃみを三連発。風邪気味なのにちょっと無理しすぎたかもしれない。

 そんな俺を労うためか、テーブルの上には唐突にお粥入りの鍋が置かれている。まだ温かい。
凡人なら、毒殺の罠と警戒するところだが、俺は躊躇せず茶碗によそって食う。
なぜなら、こういうことをする女に覚えがあるからだ。

「うん、これは曜子ちゃんの味だ」

 具は名も知らぬ野草とキノコ。さっぱりした味付けで病人にも優しい。
ごはんは支給品なんだろうけど、殺し合いの場でいつの間にこんなものを用意したのやら。


139 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:54:16 ID:Q/lyDhJf


140 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 16:54:16 ID:CPpVNtIn
 いつもなら、彼女相手にじらしプレーをするところだが、今は人恋しい。そこで窓に向かって拡声器で叫んでみる。
「でも、まだあんまりお腹空いてないんだよね。折角だから無理して食べちゃうけど、一人で食べるのは寂しいなあ〜」
 
「うわぁっ、これ美味しくてほっぺが落ちそう。誠や間桐さんにも負けないくらいよ。
 これだけでひとっ走りした甲斐があったわ」

 太一が後ろを振り返ると、そこには勝手に粥を食らうアホ毛の少女がいた。

「ダレですかアンタわ? 人のものを勝手に食べちゃいけないって、親御さんに習わなかったの」

 彼女は人懐っこそうな笑顔で悪びれずに応答する。
「ごめ〜ん、駄目だった? 誰かと食べたいって言ってたから、お言葉に甘えちゃおうかなあって」
「うーん、まあいいけどね」

 遠目で見た第一印象は、母性と子供っぽさのアンバランスに同居する少女。
今はウザいところもあるだろうが、将来、いい女になるかもしれない。

◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † 

141 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:54:23 ID:zb8TIVl9
 

142 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:55:00 ID:Q/lyDhJf


143 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 16:55:20 ID:CPpVNtIn

「私は神宮司奏、可愛い名前でしょ。けっこう気に入っているんだ」
「俺は純愛貴族、黒須太一。職業は正義の味方のスカウトだ」

 とりあえずはふたりで自己紹介。俺はいつものようにセクハラ奥義を仕掛けようした瞬間、
彼女の異常に気付いて思わず手を止める。
彼女の肉感的な生肌に点在する小さな蛆、蛆、蛆――

「あっ、ゴメン、ビックリしちゃった? 大丈夫、苛めたりしなきゃ酷いことはしないから。
 こうやって付き合ってると、結構愛着湧いてくるよ」

 奏たんはパレオ代わりのパーカーを外し、腹部を愛おしそうに撫でる。
そこにはびっしりと敷き詰められた蛆が治り掛けの傷口を懸命に修復していた。

 ナノマシンみたいなもんかなと思いながら顔を上げると、彼女はお粥をスプーンに付いた蛆ごと食っている。
この調子だと鍋にも蛆落ちちゃっただろうな。グッバイ、マイ晩ごはん。
こうなってくると例のカタカナ5文字が脳裏に浮かぶ。

「今までお肉ばっかりだったけど、たまにはヘルシーなのも食べないとね。栄養が偏っちゃうもん」
「そのお肉って、何処で手に入れるのかな。支給品が肉ばっかりだったの?」
「何処って、そこら中に歩き回っているじゃない」
「人間なんて食べたらクールー病にかかっちゃうよ」
「大丈夫、大丈夫。そういうのに掛かるのって、ほんの一部でしょ。
 ×野家の牛丼食べて、狂牛病になった人なんて聞いたことないし」

 奏たんは食べたそうな目でこちらを見つめている。彼女は間違いなくエイリアン、それも食人仕様だ。自分が打倒すべきターゲットである。
俺は×野家の絶妙な汁ブレンドについて、小一時間語りたい衝動を抑えつつ、彼女の対策を考える。

144 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:55:40 ID:zb8TIVl9
 

145 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:55:56 ID:Q/lyDhJf


146 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 16:55:56 ID:CPpVNtIn
 ここは必殺のカラデで、といきたいところだが、風邪と疲労でガッツが足りない。深優・グリーアの時のように返り討ちに遭う危険大。

「ブルーレンジャー、曜子ちゃんカモーン」
 太一は指笛を吹いた。しかし、その音はあたりに虚しく響き渡った。仲間の力を借りる、これも失敗。

「ロープ、ロープッ、食べないでぇ」
「失礼ね。お腹空いただけで、取って食ったりしないわよ。野良犬じゃないんだから」
 ならば戦略的撤退、降伏のポーズをとってみる。意外にも、静留の時と同じく成功。
困った時はサレンダー、太一はエイリアンの文化をひとつ理解した。
 
 共に食うと書いて共食いと呼ぶ。なら、人を食うのも殺し合いと同じくらい人間的な行為だ。
ただし、彼女にとって人間は異種族なので、人肉は純粋な文化の範疇になるだろう。
食文化論争は平行線を辿りやすいので、こちらから折れることにする。

「ごめん、ちょっと過剰反応しちゃったかも」
「別にいいよ。それより曜子ちゃんって、もしかして君の恋人?」
「えっ……いや、一緒に暮らしていただけだよ」
「それって同棲じゃない。もしかして、セフレ?」
「いや、そういうのでも、とは言い切れないか……いや、やっぱり違うや」

 曜子ちゃんの紹介から、なし崩し的に情報交換に入った。
アホ毛の君も第一回放送はあまり聞けなかったそうで、ちょっと残念。

147 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 16:56:28 ID:CPpVNtIn
「……間桐さんはお腹赤ちゃんを元気にしてくれたんだ。だから、私もあの子のために頑張らないと」
「赤ん坊は大切だよね、赤ん坊は。
 で、もう一度聞くけど、桜ちゃんが誰に殺されたかは分からないんだね?」
「うん、私が見つけた時にはもう死んじゃってたし」

 奏たんはああ言ってるが、本当は桜ちゃん、ついでに伊藤誠を殺して食ったのかもしれない。
もうちょっと、突っ込んでみようかな。
赤い人に教えたら復讐鬼として復活しそうだ。二人の鬼ごっこはどうなるかなあと妄想してみる。
ただ、こちらとしては、彼には正義の味方になってくれないと、あまり意味が無い。

 奏たんはこちらの不穏な空気に気付いたのか、唐突にこぶしで手のひらを打った。
「あっ、そういえば私、温泉に浸かりに来たんだっけ。ちょっと行ってきても良いかな?」
「どうぞどうぞ。そういや、客室に浴衣があるから探してみたら」
「ありがと。発情してエロいこと考えるなよ」
「俺はそんな変態じゃないよ。仮にそうだとしても変態という名の紳士だよ」
「最低、変態、エロス、ベー!」

 アホ毛の君は凡庸なラブコメにありがちな台詞を吐いて、ロビーから去っていった。
そして、鍋の粥は俺の身代わりとなり、(非性的な意味で)すっかり食われてしまった。おお胃袋の友よ、いつか仇を取ってやるからな。

148 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:56:51 ID:Q/lyDhJf


149 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 16:57:03 ID:CPpVNtIn
 自分を人だと思い込んでいるエイリアン。それが太一が奏と称する少女に抱いた印象だった。
自覚が無いので人への擬態も中途半端。だがそれゆえ、人でありたいという思いは自分よりも純粋だ。
いっそ、俺が女王様は裸だと叫んでしまいたい。怪物としての破壊衝動がもたげてくる。

 でも、ほんとうに壊しちゃって良いのかな?

 たとえ、いくら好戦的なエイリアンでも、母胎を危険に晒してまで、殺し合いに参加するはずがない。彼女も無理やり連れてこられた犠牲者なのではないか。

 そんなことを考えているうちに、だんだん目蓋が重くなってくる。ちょっと張り切りすぎたかもしれない。

――ごめんね……それだけしか残してあげられなくて

 太一の脳裏に映像がフラッシュバックする。どこか見覚えのある少女が壁に寄りかかり、嬰児を抱きかかえている。
これは何なのだろう。その意味を吟味する間もなく視界は暗転し、記憶に残らぬ思考の狭間に消えていった。

† † † † † † † † † † † † † † † † † †

150 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:57:10 ID:zb8TIVl9
 

151 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 16:57:45 ID:CPpVNtIn
―Plastic Lies 見つめるだけで満たされた〜♪
―Paper Heart あの頃には戻れないから〜♪

 世界は浴衣を腕に抱え、鼻歌交じりに更衣室にやってきた。腹の傷は大分治ったので、湯にひざをつける位は大丈夫だろう。

 世界はなぜ、旅館を目指したのだろうか。彼女は今の自分の身体能力をしっかり把握したいと考えた。
とは言え、平野や市街地で暴れたならば目立ちすぎる。
そこで彼女は北東の町へは山道を経由することにして、その道中で色々と試そうと決めた。
決めたのだが……ほとんど旅館まで突っ走るだけの結果で終わってしまった。

 そう、これは走力と持久力のテストよ。
ぐんぐん走ったら、昔やったローラーブレードみたいで気持ちよかったとか、走ったら土埃でまた身体が汚れたから、
いっそ旅館で温泉探しちゃうとかは、あくまで結果よ、結果。

 悪鬼の憎しみ、魔導書の狂気、贄の血の誘惑、この世全ての悪の呪い……これらはひとつだけでも人の心を壊すに十分な代物である。
まして、これら全てが重なれば、精神の弱い彼女は理性なき亡者と化すのは当然の理。
しかし、混沌の神の悪戯か、それとも恋人や親友の強い思いが奇跡を起こしたのか、
彼女の中で狂気が狂気を相殺し合い、世界の侵食を押し留めていた。

 黒須って子、バカっぽかったけど悪い奴じゃないかな。正義の味方かぁ……ウチのお母さんなら目の色変えてはしゃぎそう。

 世界は母なら司令官やりたがるだろうなと想像しながら、スカートを下ろし、上着のボタンをひとつずつ外していく。


152 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:58:17 ID:zb8TIVl9
 

153 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 16:58:22 ID:CPpVNtIn
 そして、シャツを脱ぎ終えようとしたまさにその時、背後の清掃ロッカーがバタンと開いた。
微かな火薬の臭いと強烈な殺気が溢れ出してくる。決して、ただの覗き魔ではあるまい。

 世界はしまったと後悔する。温かい湯に漬かれると浮かれてしまい、周囲の警戒を怠っていた。
確かに、彼女の五感は悪鬼の力で強化されている。だが、意識しなければその特権を十全には生かせない。

 この体勢から即座に防御や回避の行動をとるのは難しい。
ランチャークラスの直撃を食らえば、流石にただではすまなくなる。まして、デイバッグから武器を取り出す余裕はない。

 だが、世界には仲間がいるのだ。暗殺者が引き金を引こうとする刹那、世界の長く伸びた影から桂言葉が姿を現した。そして、世界の盾になるように相手に向かって突撃する。

「桂さん、ナイスアシスト!」

 世界はシャツを投げ捨てて後ろを振り返る。すると、ふざけた仮面を被った怪人が対戦車砲を持ったまま屈んでいた。
怪人は突然の怪現象に反応が遅れたようだ。この間合いで引き金を引けば本人もただではすむまい。
言葉はチップカットソーのモーターを回し、小太刀を扱う要領で袈裟懸に切り込む。

 桂さん、湖の時とは別人みたい。もうちょっとこう、ホラーゲームみたいに動くと思ってた。ほら、ああいう武器持ってるゾンビいたよね。

 怪人はロッカーから飛び出し、砲身を盾にして斬撃を受け止める。更に、そのまま力に物を言わせ、言葉を突き倒す。
言葉はわざと飛ばされて勢いを殺そうとするも、足を滑らせて着地に失敗、そのまま膝を突いてしまう。

 でも、この怪人はもっとヤバそう。そもそも仮面に穴が開いてなのに、どうしてこんなに動けるの? 桂さん、大丈夫かな……。
そういえば、黒須は支倉曜子のことをスーパーくのいちと呼んで、完璧超人ぶり説明してたっけ。

154 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:59:14 ID:Q/lyDhJf


155 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 16:59:20 ID:CPpVNtIn
「もしかして、貴女が支倉さん?」

 怪人は世界の問いかけに無反応。言葉を横目にRPG-7V1をデイバックにしまい、左手で腰のカリバーンを掴もうとする。
言葉はその隙を狙い、低い姿勢から右半身を狙って狼の刃を向ける。
相手はこれを左足をバネに左ナナメにステップして回避。その反動を利用し、デイバックの中身の一部をぶちまける!
 言葉もこのフェイントを予期していたのか、斬撃の勢いを押し殺して防御体勢をとる。だが、それでも重量の凶器を食らうのは免れまい。

「桂さん、下がって!」

 世界は慌てて右手を前に突き出し、言葉を影にしまい込む。
ただ、チップカットソーは一寸間に合わず、文壱の重量に押し潰されてしまった。

 満身創痍の状態で右半身を庇いつつ近接戦闘を続ける――本来なら無謀としか言いようが無い。
だが、怪人の強靭な意思と斉藤の仮面の力をもってすれば、不可能も可能となる。

 怪人は葛木と同じく戦闘のプロ、世界が苦手とするタイプの人間だ。ならば逃げるのか、それとも立ち向かうのか?

「……やっぱり、そうなんだよね? 支倉さん、改めて始めまして。えっと、私は神宮司奏、ということにしておいて」

 これが回答だ。世界は拳を広げたままゆっくりと曜子に近づいていく。
なぜなら、今の世界は取っておきの武器を持っているから。
それは剣でも銃でも、まして魔導書でもなく、西園寺世界そのもの。

156 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 16:59:25 ID:zb8TIVl9
  

157 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 16:59:53 ID:CPpVNtIn
「支倉さんがこんな格好をしてるのは、ボロボロの身体を隠すためかな?」

 そう、悪鬼の鼻は彼女の火傷を嗅ぎ付けていた。曜子はカリバーンを構えたまま動かない。
だが、悪鬼の耳は怪人の呼吸が一瞬止まったのを聞き逃さない。

 世界は緊張を押し隠して、声の調子を落として優しく語りかける。
「好きな子に素顔を見せられないのって辛いよね……。そうだよね、恋する乙女だもんね」

 怪人はそれを挑発と受け取ったのか、スリングで投石してきた。
世界はそれを右手でしっかり掴んで粉砕、追撃が来る前に早口でまくしたてる
「ちょっ、ちょっと待って。別に嫌味で言ったわけじゃないの! 
 私がその傷を綺麗に治してあげよっかなって」

 支倉さんから穴が開くほどの視線を感じる。これは下着姿の私が魅力的って訳じゃなくて、蛆の力が気になるのだろう。
でも、私が言っているのは天狗秘伝の塗り薬の方。まだ、使ったことないけど凄い傷薬らしい。
そう、今の私は貧しい少女にドレスを与える親切な魔女。

 私は指を口元に当ててそのまま会話を続ける。ここからが本番だ。
「だからさ、私のお願いも聞いてくれないかな。私、新鮮で無傷な死体が欲しいなって、思ってるんだ。
 それが衛宮、ファル、深優、静留だったらもっと嬉しいかも」

 でも、魔女に魔法をかけてもらうには条件があったりするわけ。で、今回はこれ。柚原さんだけは特別だから、自分で殺さないとね。
 私、皆を酷い目に合わせるぞって意気込んでみたけど、別にひとりで背負い込まなくてもよいんだよね。
私は赤ちゃん守らなきゃいけないもの。黒須の言ってたようにみんなの助けを借りればよいんだ。

158 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:00:05 ID:zb8TIVl9
 

159 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:00:55 ID:Q/lyDhJf


160 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 17:01:09 ID:CPpVNtIn
 世界は本来、他人任せの人間だ。自力で行動するのは、追い詰められた時や激情に駆られた時だけ。
そう、これは多少安定した彼女にとって、ごくごく自然の行動である。

 曜子はうんとも寸とも言わず、支給品をしまい始めた。取引を考えているのか、攻撃の隙を窺っているのかはよく分からない。

 ふっふっふっ、でもねえ支倉さん、鼓動がちょっと速くなってるよ。こういうのってなんか楽しいかも。
「恋に不器用だと、ついつい背伸びしちゃうんだよね。そういう気持ち分かるわ。
 でもさ、本音を押し殺していると、結局回りも不幸になるんだよ。
 修羅場を乗り越えた恋の先輩として、ちょっとしたアドバイス」

 あれ、あんまり反応ないね。さすがは孤高の君、ガードがかたいか。
「……えっと、相手はバラバラに殺しちゃってもいいよ。でも、ちゃんとデイバッグに入れてきてね」

 世界がそう語った時、遠くで誰かが踵を返し、走り去るのが聞こえた。
曜子にも気付いたのか、こちらに刃を向けたまま徐々に後退する。

 これじゃ全てが台無しになる。私は思いついたことをそのまま吐き出した。
「えっと、6回目、6回目の放送の時に学校で待ち合わせ。 アンダンスタン!?」

 そして、彼女は十分な距離が開くと、肯定とも否定とも取れぬ態度を示したまま、全力で走り去っていった。

 世界は言葉を影から出して、彼女の肩にぐったりと寄りかかる。
「うへぇ……桂さん、ちょっと疲れたよー。なんか、死体の中に爆弾仕掛けそうなカンジの子だし、ちょっと怖い。
待ち合わせ場所の下調べくらい、先にしておいたほうが良いかも」


161 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:01:16 ID:zb8TIVl9
 

162 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 17:01:40 ID:CPpVNtIn
 言葉はいつものぎこちない人形に戻り、世界の言葉を無言で受け止める。

「桂さん、本当はお揃いの浴衣を着せたかったけど、ペラペラの布地だと危ないよね。
 その代わり、エクスカリバーの方は桂さんに預けるよ。貴女の方が上手く使えそうだし」

 言葉は世界から騎士王の宝具を受け取ると、再び深遠の影に沈んでいった。

【D-6 温泉旅館/1日目 夜中】 

【西園寺世界@SchoolDays】 
【装備】:防刃チョッキ、桂言葉の死体(改造処理済)@SchoolDays、浴衣
【所持品】:支給品一式×4、エクスカリバー@Fate/staynight[RealtaNua] 、
BLOCKDEMOLITIONM5A1COMPOSITIONC4(残り約0.60kg)@現実、時限信管@現実×2、89式小銃(28/30)、37mmスタンダード弾×5発、手榴弾1つ、妖蛆の秘密、ICレコーダー、
きんぴかパーカー@Fate/staynight[RealtaNua]、ゲーム用メダル400枚@ギャルゲロワ2ndオリジナル、贄の血入りの小瓶×1、天狗秘伝の塗り薬(残り90%)@あやかしびと-幻妖異聞録-、
スペツナズナイフの柄、このみのリボン、アーチャーの騎士服@Fate/staynight[RealtaNua]
【状態】:疲労(小)『この世、全ての悪』受胎、精神錯乱、思考回路破綻(自分は正常だと思い込んでいます)、腹部やや損傷(蛆虫治療)、悪鬼侵食率55% 
【思考・行動】 
基本:元の場所に帰還して子供を産む。島にいる全員を自分と同じ目に遭わせる。 
0:もう一度、休もう。今度こそ、自分の身体能力をちゃんと把握する。
1:新しい服を探すため北東の中心街へ向かう。また武器を手に入れる。
  もしくは、学校に行って下調べをしておく。
2:新鮮な内臓をもっと食べたい 。
3:このみ、黒髪の女(烏月)、茶髪の男(フカヒレ)を見つけたら今度こそ喰い殺す 
4:自分より強そうな人間には闇雲に襲わず様子を見る。弱い人間を優先して喰い殺す。
  他に利用方法があれば、そっちも考えてみる。
5:支倉曜子を利用するため、黒須太一はとりあえず生かしておく。
6:名乗る必要があるときは、様子を見ながら偽名(神宮司奏)を使う。

163 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:02:07 ID:Q/lyDhJf


164 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:02:11 ID:zb8TIVl9
 

165 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 17:02:17 ID:CPpVNtIn
【備考】 
 ※誠とは今までにあった事ではなく、元の世界の事しか話してません。平行世界の事を信じました。
 ※侵食に伴い、五感が鋭くなっています。 
 ※ゲーム用メダルには【HiMEの痣】と同じ刻印が刻まれています。カジノの景品とHiMEの能力に何らかの関係がある可能性があります。 
 B-2中心部に回収出来なかったゲーム用メダル@現実が100枚落ちています。 
 ※妖蛆の秘密は改造されており、殺した相手の霊を本に閉じ込める力があります。そして、これを蓄えるほど怨霊呪弾の威力が増します。 
 そのほかのルールは他の書き手にお任せします。 
 ※腹の中の胎児に、間桐桜の中に居た『この世、全ての悪』が受肉しています。  
 ※桂言葉の死体(改造処理済)、エクスカリバー、アーチャーの騎士服は『影』の内部に収納しています。 
 ※黒須太一と情報交換しました。彼の発言には一部、妄想が混じっているかもしれません。
 ※第六回目の放送時に学校で支倉曜子と待ち合わせしています。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

166 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 17:02:52 ID:CPpVNtIn

 来ヶ谷は追撃者から逃れるため、全力で坂を下った。周囲を見回した限り、一応は振り切ったように見える。

 だが、油断は出来んな。あの仮面を被っていたということは、恭介氏と同じく心眼を使えるということだ。一筋縄ではいかんだろう。

 川べりにも旅館にもクリス君はいなかったか。いや、この状況だとその方がよかったかもしれないな。
あとは私の勘が外れて、クリス君が単身旅館に向かわないことを祈るだけだ。

 彼女の側のクリーニングカートがモゾモゾと動き、中から銀髪の青年がひょっこりと顔を出す。

「はっはっは、目覚めたかね太一少年。おねーさんは眠れる美少年を見ると、ついつい攫ってみたくなるのだよ」

 太一をそれを聞いて多少芝居じみたポーズをとる。
「お願い、食べないでぇ! 姉御ぉっ!」
「食うとは性的な意味かい? 生憎、私には先約があるのでね」

 ふむ、中性的な顔立ちと華奢な体型、女装が似合いそうだ。だが、クリス君ほどではないな。

「あっ、姉御はエイリアンじゃなかったな。じゃあ、今のは聞かなかったことに。
それから、鷲鼻の俺に向かって美少年呼ばわりは何かの皮肉ですか?」

「君のどこが鷲鼻なんだね。まあ、言われてみれば、少し曲がっているかもしれんが、気にするほどのものではないぞ」

 自己嫌悪から来る過剰な容姿コンプレックスというやつだな。
もしかすると、この少年は周囲から悪意の理由を外見に求めたのかもしれん。
他人の心理はこうも冷静に分析できるのに、自分の気持ちは分からないのだな、私は。

 彼は暫くうな垂れた後、何かを悟ったのかあっけらかんと言い放つ。
「ま、いいや、容姿なんて。偏向しきった物語の主人公が、テキストで平凡って描写されていても絵では美形なのが変わることはないのだし」

167 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 17:03:23 ID:CPpVNtIn
「はっはっはっ、君は相変わらず面白いな。本当にユニークで予測不可能だ」
 いや、この男に関しては別か。飄々としてつかみどころがない。だが、それでも彼の死に涙流す者もいるだろう。

――別にバラバラに殺しちゃってもいいよ。ちゃんとデイバッグに入れてきてね。

 太一少年は何らかの薬物で眠らされていた。そして、温泉の方から聞こえた女の声……怪人のターゲットはおそらくこの彼だ。

「君に重要なことを教えよう。いいかい、君はカーニバルの怪人に……」
「ええと、ちょっと待ってくれる。俺の拡声器、知らないかな?」

 彼は自分の命にあまりにも無用心過ぎる。少なくとも彼の仲間と合流するまでは、近くにいてやったほうが良いな。

 やれやれ、これではクリス君を探すのもままならないな。
だが、彼を見捨てるわけにはいくまい。これ以上、哀しみの連鎖を拡大させたら、クリス君に嫌われてしまう。

 クリス君、どうかそれまで無事でいてくれ。

† ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ 


168 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:03:24 ID:zb8TIVl9
 

169 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:03:29 ID:Q/lyDhJf


170 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 17:03:55 ID:CPpVNtIn
目的:
 太一の状態と安全を確認し、離脱する。
 G−4は禁止エリア指定されたため、他の変電所、発電所を用いてインフラを遮断する。

 太一は人死を見れば暴走し、激しい対立が起きても暴走する。
 よって、彼の精神を守るためには個を保つ必要がある。

 これらを遂行する際、本人に気付かれることは極力避ける。

問題A:
 太一が拡声器を所持し、利用している。
 これは参加者を無差別に呼び寄せ、彼の生命を危機に晒す。

対策A:
 非常手段として、太一の飲食物に誘眠性のある野草を混入、眠らせる。
 その間に彼の拡声器を回収、周囲の安全を確認した後、遠隔式トラップで彼の覚醒を行う。

問題B:
 神宮司奏と称する参加者が旅館へ乱入。
 彼女は高い移動速度を誇り、太一への接触阻止に失敗。

対策B:
 太一が奏から離れた時を狙って、彼女を殺害、最低でも排除。


171 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:04:26 ID:zb8TIVl9
 

172 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 17:04:31 ID:CPpVNtIn
結果B:
 奏の殺害に失敗。彼女への野草の効果は一時的に五感を鈍らせるに留まる。
 相手は身体能力が高く、未知の部分も多いため、戦闘の続行は危険。
 彼女からの提案は現時点では保留。
 治癒手段が支給品に依存し、かつリスク乏しいものならば、殺してでも奪う。

――たとえ、肉体が元に戻っても、私はすでに怪人だ。
     太一が私を受け止めれば、やはり彼は壊れてしまうのではないか。
       でも、少し、ほんの少しの時間だけならば……

結果A:
 太一の誘眠、及び拡声器の回収に成功。

問題C:
 しかし、神宮司奏の予期せぬ行動に翻弄され、
 長髪の女、来ヶ谷と推測される参加者に太一を拉致されてしまった。

対策C:
 奏はあのような提案を持ちかけてきた以上、すぐに太一を狙う可能性は低い。
 彼女の殺害は後回しにして、来ヶ谷を追跡。見失うも行き先は廃校方向と推測される。

――二人が別れた隙を突いて、彼女を殺す。
      別れないなら、一方を誘導した後に彼女を殺す。
               彼女の好意が本物であっても殺す。
    彼女の好意が擬態であっても殺す。
  殺す。

【D-7 中央/1日目 夜中】 

173 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:04:57 ID:Q/lyDhJf


174 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:05:53 ID:zb8TIVl9
 

175 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:05:57 ID:Q/lyDhJf


176 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:06:47 ID:Q/lyDhJf


177 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:07:35 ID:zb8TIVl9
 

178 :Good Samaritan ◆I9IoWegESk :2008/07/22(火) 17:07:45 ID:CPpVNtIn
【支倉曜子@CROSS†CHANNEL〜toallpeople〜】 
【装備】:カリバーン@Fate/staynight[RealtaNua]、投石器、全身に包帯、トレンチコート(男物)、バカップル反対腕章@CROSS†CHANNEL、オペラグラス
【所持品】:石材3個、首輪4つ(蒼井、向坂、橘、鉄)、工具一式マスク・ザ・斉藤の仮面@リトルバスターズ!木彫りのヒトデ×1@CLANNAD 、斧
     :真っ赤なレオのデイパック、斬妖刀文壱@あやかしびと−幻妖異聞録−、ドラゴン花火×1@リトルバスターズ、支給品一式、木彫りのヒトデ2/64@CLANNAD、怪盗のアイマスク@THEIDOLM@STER、RPG-7V1(1/1)@現実、OG-7V-対歩兵用弾頭x3 
【状態】:肉体疲労(やや大)、右半身大火傷(処置済み)、胸部に激痛(処置済み)、右目が充血(視力低下)、髪を切りました 
【思考・行動】 
 基本方針:太一の為に、太一以外を皆殺し。 
 1:来ヶ谷を黒須太一から引き離して殺す。
 2:ゲームの参加者も他の生き物もとにかく殺す。 
 3:投石器で殺す。なくなったら斧で殺す。殺したら相手の武器を奪ってそれでまた他の人間を殺す。 
 4:遠隔爆破装置を作成し、任意のタイミングで交通・通信網を分断、電力を遮断して殺す。 
 5:殺す。 
 6:(…………………………………………太一) 
【備考】 
 ※登場時期は、いつかの週末。固定状態ではありません。 
 ※佐倉霧、山辺美希のいずれかが自分の噂を広めていると確信。 
 ※支倉曜子であることをやめました。 
 ※「ゲーム」の主催者は脱出も想定していると考えました。 
 ※G-4変電所の周囲に無数のブービートラップを仕掛けました。 
 ※ドライの能力のみを信頼、確実に殺せるその時までは援護する意思があります。 
 ※第6回放送時に学校に待ち合わせという、西園寺世界の提案は保留。
  最終的には殺す気ではいますが、すぐではないようです。
 ※ 時間があれば、石材を3個まで調達します。

179 :168と170の間:2008/07/22(火) 17:08:25 ID:CPpVNtIn
【D-7 廃校付近/1日目 夜中】 

【来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!】 
【装備】:デザートイーグル50AE(6/7)@Phantom-PHANTOMOFINFERNO- 
【所持品】:支給品一式、デザートイーグル50AEの予備マガジン×4 
【状態】:脇腹に浅い傷(処置済み)、全身に打ち身 
【思考・行動】 
 基本:殺し合いに乗る気は皆無。 
 0:知りたい……
 1:クリス君……どこにいる? 
 2:哀しみの連鎖を広げないため、カーニバルの怪人(曜子)から太一を守る
 3:碧達の安否が気になる 
 4:いつかパイプオルガンを完璧にひいてみたい 
 5:他のリトルバスターズのメンバー、特に棗恭介を警戒する 
【備考】 
 ※クリスはなにか精神錯覚、幻覚をみてると判断。今の所危険性はないと見てます 
 ※千羽烏月、岡崎朋也、椰子なごみの外見的特長のみを認識しています 
 ※静留と情報交換済み 
 ※来ヶ谷は精神世界からの参戦です 
 ※美希に僅かに違和感(決定的な疑念はありません) 

180 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:08:46 ID:zb8TIVl9
 

181 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:08:56 ID:CPpVNtIn
【黒須太一@CROSS†CHANNEL】 
【装備】:サバイバルナイフ
【所持品】:支給品一式、S&WM37エアーウェイト(5/5)、ウィルス@リトルバスターズ! 
 S&WM37エアーウェイトの予備弾12、第1次放送時の死亡者とスパイに関するメモ、放送案の原稿 
【状態】:疲労(弱)、やや風邪気味(軽い発熱・めまい・寒気)、左肩銃創痕 
【思考・行動】 
基本方針:『人間』を集めて『エイリアン』を打倒し、地球の平和を守る。 
 0: 拡声器はどこだ!?
 1:『人間』や『エイリアン』と交流を深め、強大な『エイリアン』たちを打倒する。 
 2:『支倉曜子』『山辺美希』や『殺し合いに乗っていない者』に出会えれば、仲間になるよう説得する。 
 3:「この島にいる者は全てエイリアン」という言葉には懐疑的。 
 4: スパイに自分の書いた放送案を渡してみる。 
【備考】 
 ※第一回放送を聞き逃しましたが、死亡者のみ名前と外見を把握しました。 
 ※太一の言う『エイリアン』とは、超常的な力を持った者を指します。 
 ※登場時期は、いつかの週末。固有状態ではありません。 
 ※直枝理樹(女と勘違い)、真アサシン、藤乃静留、玖我なつき(詳細は知らない)、深優・グリーアを  エイリアンと考えています。 
 ※スパイに関するルールはでたらめです。 
 ※NYP兵器、ウィルス。相手に肉体的疲労を与えます。威力は個人差あり。 
 ※西園寺世界と情報交換しました。彼女の発言には嘘が混じっています。

182 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:13:06 ID:zb8TIVl9
投下乙!
おお、これもまた良い繋ぎ。
蠢き犇くクリーチャーライフw そしてまた偽名か、懲りないなワールドw
太一も太一だし、曜子ちゃんが本当に理性の怪物にふさわしい働きをしてくれる。

そして、きっと誰もがこう思っていると思う。
逃げてー、姉御逃げてーw

183 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 17:41:32 ID:PqiwgETm
投下乙です

ワールドめまた偽名かよ、懲りないやつ
ワールドが奏会長の名前を騙ったとき呆れを通り越して冗談抜きで激しく吹きましたwww
そしてワールドと太一による情報交換という名の腹の探り合い…
一体、どっちを…どっちを応援したらいいんだww激しく迷いましたよw

184 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 20:40:27 ID:R01AOvLY
投下乙!
太一良いキャラだなぁww
ワールドと普通に会話してて吹いたw
小物臭漂うトップマーダーが良い感じです
姉御は太一捨ててー!

4人の思考具合が面白かったw

185 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 20:56:40 ID:5N4n9pBR
皆様投下乙です

>Uc氏
これは良い繋ぎ……深優・士郎・双七の衝突が楽しみでならない
単純戦力なら士郎が頭一つ以上抜けてるけど、双七と深優が協力し合えば勝負は分からないし……
逆に、共闘するとも限らないし、熱くて且つ先の読めない美味し過ぎる状況
なごみと美希がどうなるかも気になる

>I9I氏
こちらもナイス繋ぎ
太一と世界の所々が狂った会話や、ひたすら殺す気満々の曜子ちゃん良いなあ
まさかこの組み合わせがこんなに噛み合うとは……w
そして姉御は早く逃げろとw


186 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 21:45:02 ID:CPpVNtIn
投下乙です、今まで溜まっていた感想を

Uc氏(トーニャ空鍋)
ここでシンフォを絡めて来ましたか。なんか筋肉とツンデレフラグ立ってません?
彼女はあんまりルートが進まない状態で召喚されて、まだ幸せだったなあと

放送
マーボーは監禁されて美味しい位置に。そして、ついに媛星が動き出したか。
系統樹を軸に物語が収束していく気がするが果たしてどうなる。

週刊ギャルゲ
なんという組み合わせのAAw まとめも色々と助かりました

gu氏
おおっ、クリス男前になってる。一度は崩壊した対主催グループですが
彼らを中心に新しいものが生まれてますね。で、なんかまたまた誤解フラグが

Uc氏(双七君ピンチ)
こちらは力と力のぶつかり合いが熱い。因果は巡って宿命の対決。
深優の立ち位置がキーになってますね。ミキミキなごみんバトルも気になるぞ

187 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/22(火) 22:23:02 ID:K4521xB5
投下GJ
世界と太一の組み合わせがここまでピッタリはまるとは……
蛆とか人食とかエイリアンだからで受け止める太一最強w
曜子ちゃんは追いかけてばっかりだなあw
命懸けの鬼ごっこ。やっぱり太一がキーマンか
続きが楽しみになる良いつなぎでしたGJ

188 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/23(水) 01:22:15 ID:r37gMeo8
投下乙
暫定トップマーダー世界。今や一緒に予約が入るだけでお通夜モードになるほど
危険な娘…の筈だが、最近は言葉とパヤパヤしたり太一と友達になったりと
ほのぼのした話が続いてるなwwさりげなくゾンビ軍団作る気満々だけどw
次回の姉御vs理性の怪物に期待です 

189 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/26(土) 23:41:10 ID:fYbzE/SN
週刊ギャルゲロワ2nd第18号(7/26)
先週の主な出来事
                      ,、 _, 、, ー、 - 、
                     /         \
        ,_- - ―‐ァ ´ ̄`ヾi /           ヽ
     , ´ ̄`ヽ    `ヽ{   }; / ,、  人   /ヽl _jTヽl
   { /   Y´    /l  ヽ _ノヽlィi lV人_ V^´ _ノヽ_ | l
    ヽ   ノ    / ヽ _   j ヽl l `Y´    `Y´ ! |
      !  ̄   / 、_ー― ̄' l  lヽ |ヽー‐┬┬― ノ ,! |
    l   |-‐ ´ノ     イ三' l  | l l\`ー! l‐ ´ イ|ハ
   j ハ  | -_´ィ,_  ///´ ̄ヽ |  ! !{  7ノ // ̄ヽ j/ !
   } | l  l ´彡´///j、    ) )ハ |_L - ' ∠´ --┤ヽ  |
   ; | ! l  ) )  /- `ー r (ヘ1 l┬i 7´|--==‐‐1  Vヽ!
   ! ! ハ lヽ(_(_/ヽ_ -‐ ヽ_ >l/、ノ_ヽ! 1、二二ニ! /l/
    |  ヽ!   ト!_l--‐ ´ .人_ノヽ。<lr,、| |!   l フ
    !       `! _|┬  ̄|  ヽ `ー' `ー! !!   |
────○───────────────────
   _。O
 '´^ ^ヽ
 i ソノリ从リ
 `(リ゚−゚ノ (………?)
  /i `i´lヽ
 Ull_ハ_!J
   |__l_j


190 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/26(土) 23:41:54 ID:fYbzE/SN

   _
 '´^ ^ヽ                           /" ゙̄ヽ
 i ソノリ从リ                           l|ノヾ、!  !
 `(リ゚−゚ノ <あ、うん。                   |l、-゚*|l ! | <おい置いて行くぞ!
  /i `i´lヽ  (何か変な予感がしたような……?)  (!〉〈 i )!|
 Ull_ハ_!J                           く/|_L>
   |__l_j                             ヽし'

・第三回人気投票結果発表、なんと総合部門は同着一位だ! この時間帯における熱血と無情のそれぞれ代表作といったところですね。

・正面対決は流石に不利と悟ったか、クリス一度桂から離れる事に(違) とはいえ相手は人外に対する圧倒的な戦力を有しているので厳しい事には変わらない(だから違)
・逃げてー姉御逃げてーー!! 予約も入ってしまったし…南無… あとワールドは遂に平和的に会話までしてしまったよw
・お姫様を守るナイトポジションの双七君。 …と見せかけて、どう考えても狩場の獲物ポジションだよなあw

・新しいAAが投下されました。 恭介が普通に主人公に見えるw あとユメイさんテラ死亡フラグwww
・しかし人数減ったな…寂しいと思うのは間違いなのだろうが…

先週(7/17〜7/26)までの投下数:3作+MAD1作
死者:0名
現時点での人外になった者:フカヒレ(深きもの)、羽藤桂(鬼)、柚原このみ(少し綺麗な悪鬼)、西園寺世界(アンリマユ・ザ・ワールド)
現時点(7/26)での予約:2件(◆UcW氏、◆AZ氏)


191 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/26(土) 23:42:54 ID:fYbzE/SN
うん、忘れてたんだ……ごめんなさい。

192 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/26(土) 23:45:03 ID:fYbzE/SN
はわー! 間違えた! 
>>190の五項目目は新しいMADが投下されましたです。

作者さますいません。

193 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 00:57:50 ID:MaoXbnMJ
「…………むぅ」

あれほど輝いていた太陽は消え失せ夜が本格的に訪れた頃。
私がたまらず呟く。
別にいい、別にいいのだ。
ただ共通の目的があるから行動をしてるだけなのだから。
だが……
だが、この微妙な距離感は何だ?
いや先程から一緒に歩いてるのだがどうにも気になる。
なんか苛立たしい。
この近いようで遠い距離は。
別に仲良くなりたいとか……そういうのはないはずだ。
だが肩を並べて歩いてるはずなのに何処か遠い。
何故だかそれが凄く気にかかるのだ。
何故だか知らんが。

私―玖我なつき―と先程行動を共にする事になった少年クリス・ヴェルティンと共に市街地をただ進む。
目標は静留の説得なのだが、アルに言われた事も行わなければならない。
即ち施設の探索。
故に近場の遊園地に向かう事にしたのだが……

「…………なぁ、クリス。遊園地ってもうすぐなのか?」
「……たぶんもう少しだと思うよ。ナツキ」
「そうか」
「うん」
「……」
「……」

また変わらず歩き続ける。
会話が……続かん。
いや別にしたいわけでもないが。

194 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 00:58:16 ID:4FQSfkwp


195 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 00:58:20 ID:dtVJ7vVP


196 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 00:58:57 ID:MaoXbnMJ
さっきからこの調子なのはどうも落ち着かない。

静留のことを話したクリス。
あのおっせかいはあのお人好し教師に似てると思ったが。
いまのクリスはそう思う事は少ない。
どちらかと人とはなすことが苦手な感じがする。
なんなんだ?
これは。

少し前を行くクリスの背が遠く感じる。
静留を救いたいといったクリス。
静留に会ったのはほんの数時間前だというのに。
それでも助けようとする。
あの私の手を握った温かさ。
向けられた言葉の真摯さ。
あれは間違いなく本物だった。

悲しみの連鎖をとめる。

クリスはそれを何度も口癖のように言っている。
まるで脅迫観念に襲われているかのように。
クリスの信念は強い。
いや強い風に見える。
その信念を持って進むクリス。
ともて強く逞しいとも思えるが……脆くも見える。
虚勢とまではいえないが何かか細い糸によって支えられているような。
そんな印象がした。
たぶんその糸になる者は恐らく彼が捜し求めてる人。
私はよく知らないのだが。
だから少し気になったので聞いてみる事にした。

「なあ……その唯湖って何者なんだ?」

197 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 00:59:09 ID:dtVJ7vVP


198 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 00:59:18 ID:4FQSfkwp


199 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 00:59:49 ID:MaoXbnMJ
「……ユイコ? ユイコはね……とてもとても大切な人、護らなきゃいけない……護らなきゃ――絶対。……と他には――」

それからクリスは先程とは違って雄弁に語り始めた。
何処で会ったとか。こんな人だとか。こんな事もあったとか。
とても。
とても楽しそうに。

そうか、クリスにとって来ヶ谷唯湖こそが心の有り処であり進む意義。
唯湖という存在がいるからこそ前向きに進んでいられる。
唯湖という存在がいるからこそ笑っていられる。
今の進み続けているクリスは「唯湖が望む」クリスなんだと。
そう私は思った。

だからこそクリスは強い。
護らないといけないから。
悲しみの連鎖という大元を止めて彼女を護る為に。
その想いがあるからこそ強くそして進む事ができるんだと。

だが

「クリス、もし唯湖をうしなっ……」
「護るよ。その前に、絶対、絶対。今度こそあって護り抜く。悲しみの連鎖を止めて護り抜くんだ」

私がその可能性を指摘する前に否定した。
護るの一点張りだった。
目は真っ直ぐとても強い視線で。
絶対の意志を感じさせられるものだった。

(……脆い……それが出来なかったらクリス、お前はどうするんだ? お前は進む事ができるのか?)

しかし、もし失ったらクリスはどうするのだろう?
進んでいられるのだろうか?

200 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 00:59:49 ID:4FQSfkwp


201 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 00:59:54 ID:dtVJ7vVP


202 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:00:25 ID:4FQSfkwp


203 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:00:53 ID:MaoXbnMJ
今のように強くいられるのだろうか。
私はそれができないと思う。
それぐらい今のクリスは脆かった。
とても真っ直ぐでとても脆い。
そんな印象だった。

わたしはそんなクリスを見てどうにも分からない感情に支配されている。
もし、だ。
クリスの心が折れたら私はどうするんだ?
今は互いに静留を救う為に動いている。
だが途中でクリスがそうなった場合私は見捨てて静留を止めに行くのか?

……できる訳がない。
あの男が心が優しいのは知っている。
それは手を握られた時に知った。
だがもし唯湖を失ったクリスに私が何ができるのだろう?
人を殺めた私に。
あんなに迷い続けた私に。
彼の心を……

「……ツキ?」

知るわけがない。
むしろ何故出会ったばっかのクリスにそんな事を考えるのだろうか。
全く私らしくもない。
なんか苛立ってくる。

「……ツキ? どうしたの? ねえ?」

私は静留を止めればいい。
他の事など考えなくていい。

204 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:01:33 ID:4FQSfkwp


205 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:01:58 ID:MaoXbnMJ
だから私は余計な事など考え……

「ナツキ! しっかりしてよ! ぼうっとして。何考えてるの?」
「……って、わぁ!?」
「……じゅ、銃向けないでよ!?」
「う、うるさい!」

ビ、ビックリした……
なんでいきなり顔が私の前にあるんだ?
何考えてたって……貴様だ。
……ああ! もう!
なんか頭に血が昇っていく。
くそっ!
苛立ちが。
しかも何で私は恥ずかしがってるんだ?
分からない。
ああ、もう!

「貴様がムスッとしてるからだ!」
「してないよ! ナツキの方でしょ!」
「おい、そこのふた……」
「う、うるさい!」
「だから銃を向けないでって!」

やっと会話ができるようになったと思ったら。
ああ、苛立っていく。
顔が真っ赤になっていくのを感じる。
そもそも貴様が黙っているから悪い。
黙っているから余計に貴様の事を考えてしまっただろう。
よく考えれば……

「貴様が全部悪い!」

206 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:02:07 ID:dtVJ7vVP


207 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:02:52 ID:MaoXbnMJ
「いや、それはおかしいよ!」
「……あのだか……」
「おかしくない! クリス、お前が悪いんだ! そういうことにしてくれ!」
「いや理由になってないよ!? いや銃向けたまま脅さないで!?」

くそっ。
第一なんでこんなにクリスに苛立ってるんだ?
……わからん。
分からないからなおさら苛立っていく。

まあ、でも。
なんかこれでいいか。
取り敢えずは難しく考えず。
クリスとはこれで行こう。
取り敢えずは静留をとめる。
これは二人に取ってかわらないから。
だから

「よし、クリス。これでいい! 取り敢えず貴様のせいだ」
「いやだからさ……まぁいいか」
「ああ……それでいい」
「はぁ……」
「溜め息つくな。つきたいのはこっちだ」
「ナツキが喚かなきゃこんな事にはならなかったんだけど……」
「なんだと!?……そもそも貴様が!」
「いや、分かったから銃向けないで!……心臓に悪いよ」

取り敢えずはこのまま進んでいこう。
お互いに。
クリスはクリス。
私は私だ。

208 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:03:12 ID:dtVJ7vVP


209 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:03:28 ID:4FQSfkwp


210 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:03:43 ID:MaoXbnMJ
そうやっていけばいい事。

「ふん……全く手間がかかるやつだ」
「……どっちがだよ……もう」

こうして進もう。
それがいい事だと。私は思ったから。
そう思った矢先

「……あのもういいか? さっきから無視され続けて哀しいんだが……」

何処かで見たローブを着た男が体育座りをしながら泣いていた。
……気付かなかった。
……もとい何をやってるんだこの男。

「何をやってる?……変人か」
「……無視されてこれかよ……」

男はがっくりして空を見上げる。
私もつられて見上げた。

そこには変わらずの満天の星空。
そして変わらず紅く禍々しく光る星があった。






211 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:03:56 ID:dtVJ7vVP


212 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:04:00 ID:4FQSfkwp


213 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:04:34 ID:MaoXbnMJ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「濡れ衣ってことか? それは」
「……ああ、そうだ。深優によるな」
「大丈夫、ナツキは問題ないよ。僕が証明する」
「何でお前はそんな短い間なのにそんな信用できるんだ? クリス」
「んー何となく?」
「……」
「いや、何故銃を向けるのさ!?」
「何、何となくだ」

えーと。
俺お邪魔?

そんな事を思いつつ二人の少年少女を見る。
独りは電車の時にいた玖我なつき。
そして初めてみるクリス・ヴェルティン。

俺―大十字九郎―はあの後目が醒めて生きている事を知った。
死んだかと思った、本当に。
でも理樹を護れた。
それだけで嬉しかったのも事実だが。

とはいえ仲間たちもいないし服もないので仲間を探しに遊園地を出て少し離れた所にこいつらがいた。
なつきは電車の時にあったので警戒はしたもののクリスと笑いながら会話してる様子から無害と判断し接触した。
……だけど、無視されました。

それは由として結果濡れ衣という事が判りそしてアルのことも知った。

214 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:04:40 ID:4FQSfkwp


215 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:05:13 ID:MaoXbnMJ
第6回放送にツインタワーにて落ち合うことを聞いた。
アルを探していた俺にとっては大きな朗報である。

「それで九郎はどうして一人でいるんだ?」
「ああ、それは……」

俺は遊園地での惨状を話し始めた。
皆散り散りになった事。
でも理樹を守りきったことをだ。
他の皆の生死が気になる。
……恐らく、気絶してる間に放送があったはず。こいつらなら知ってると思うけど。
……うん?
……どうしてそんな暗い顔してるんだ?

「その……言いにくいんだが」

なつきが目を逸らしながら言う。
とても気まずそうに。
俺が聞きたくなかった事をいった。

「直枝理樹は放送で呼ばれた……後おまえがいっていた橘平蔵、鉄乙女もだ」

え?
お、おい?
ちょっと……
ちょっと待てよ。

護った。
護りきったはずだろう?
あの金髪の女が追いつけるはずが無い。


216 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:05:15 ID:dtVJ7vVP


217 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:05:36 ID:4FQSfkwp


218 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:05:45 ID:MaoXbnMJ
なのに。

「お……い……嘘だろう?」
「いや……本当だ」

どうして呼ばれてるんだ?

理樹。
お前は希望だって言っただろう?
生きなきゃ駄目だろう?

どうしてお前が……

……死んだんだ?
……だれがやったんだ?
……なあ。

……どうして

「おぉぉおおぉぉおおおおおおぉおおおおお!!!!!!!」

吼えた。
全身から。

どうしようもない哀しみと怒りと悔しさを抱いて。

ああ。

俺は護れなかった。
理樹を。


219 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:06:26 ID:MaoXbnMJ
希望を。

……俺は。

……何やってるんだ?

理樹。
お前はどうして……


「……すまないが九郎……話を聞いていて思ったが源千華留はどうして離れた?」
「……仲間を探しに。お陰で助かってよかった……」

憔悴している俺になつきが尋ねる。
千華留はそれで助かったんだ。
でも今はそれよりも理樹が……
だがそのときなつきは信じられないことを俺に言った。

「その直枝理樹……源千華留が殺した可能性が高いぞ」
「……はっ?……何馬鹿を言ってるんだ?」
「千華留は殺し合いに乗ってる可能性が高い。深優も怪しいといっていた。私はお前の話を聞いてもっと怪しいと思ったぞ」

はっ?
……千華留が理樹を。
あの千華留が……?
何言ってんだ?

「何言ってんだよ……?……んな訳あるはずが」
「じゃあどうして千華留は戦闘が始まる事を見透かしたように遊園地から逃げ出したんだ? その後に戦闘が始まったんだろう?」
「……それは?」

220 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:06:29 ID:dtVJ7vVP


221 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:06:39 ID:4FQSfkwp


222 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:07:00 ID:dtVJ7vVP


223 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:07:09 ID:MaoXbnMJ
「そして鉄乙女を相手にした橘平蔵は一緒に名前が呼ばれた。共に行動して別入り口から逃げたとされるユメイ、蘭堂りの、杉浦碧は生きている 
 直枝理樹はお前が逃がしたと言った。襲撃者が追いつかないぐらいの時間をお前が稼いで。なのに直枝は死んだ……そして千華留は行方知らずで殺し合いに乗ってる可能性が高い」
「まさか……いや違う……」

違うはず……だ。
俺の頭の中で疑心ができ始めてるのが感じる。
そして最も嫌なケースを想像している。
違う。
そう思いたい。
だけどなつきはそのケースを言う。

「つまりだ、源千華留があの金髪の襲撃者と共謀して惨劇を演出した可能性が高い。鉄乙女はたまたまであろう。そして逃げてきた理樹を殺したそう考えられる」

そんな……馬鹿な。
そんなはずが無い。
あの千華留が。
まさか。
まさか。
嘘だ。
嘘に決まってる。

「そんなの間違いだぜ……きっと」
「間違いかもしれない……だが何故源千華留は遊園地に帰ってこない? 気絶したお前を見つけない? 可笑しいだろう? 戻ってこないのは惨劇が起きたことを知ってるからだ。そうだろう?」
「……あ」

俺の中で何か崩壊した気がした。
千華留が……
千華留が……

理樹を殺した……

224 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:07:10 ID:4FQSfkwp


225 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:07:44 ID:dtVJ7vVP


226 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:07:53 ID:MaoXbnMJ
殺したのか。
希望だった理樹を。

あいつは偽りの笑顔でそれを肯定し心の中では否定していたのか。
そうなのか?
あいつは生き残る為なら理樹を殺すのか。

……違う。
あくまで可能性だ。

でも……
でも……頭から離れない。

「千華留が……理樹を殺した」

口に出していってみる。
信じられない事だ。
でもこいつらの言ってる事は正しい。
アルの事もよく知っていた。
アルが信用してるからなつき達が嘘をつくとは思えない。

じゃあ本当に?
本当に……

千華留が理樹を殺したのか。

そうだったら。

俺は……

何の為に命を張ったんだ?

227 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:08:01 ID:4FQSfkwp


228 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:08:25 ID:MaoXbnMJ
何の為に……

ああ

「クソ……今畜生……理樹……りき……うおおおおおおおおおお!!!!!」

理樹は何の為に頑張ってきたんだよ。
むくわれねえよ。
そんなの。

なあ。

理樹。

俺は。

お前の為にどうすればいいんだ?
護れなかった俺はお前に何が出来る?

千華留を正すのか?

わからねぇよ。
わからねぇ……

でもお前の為に。

俺は。
千華留とどんな方法であれ決着をつける。

確実に。
確実にだ。


229 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:08:51 ID:4FQSfkwp


230 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:09:00 ID:dtVJ7vVP


231 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:09:05 ID:MaoXbnMJ
理樹を失って裏切られたかもしれない俺はただその事しか考えられなかった。
……それしか考えたくなかった。


なあ理樹?


笑顔で逝けたか?


その答えは誰も知らず。

ただ夜の闇に溶けてなくなった。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







「それじゃあ、いこうか。ナツキ、クロウ」
「ああ、わかった」
「……ああ」

取り敢えずの細かい情報交換を終え僕達は中央に向かう事にした。

232 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:09:38 ID:4FQSfkwp


233 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:09:40 ID:MaoXbnMJ
遊園地はクロウがいたし行かなくてもいいだろうという判断をナツキが行ったためだ。

「クロウ……」
「ああ、ワリィ、心配しなくても大丈夫だ……理樹の死を無駄には出来ない……千華留は殺し合いに乗ってるかは兎も角……どっちにしろ探し出して問いただす」
「そう……」

クロウは僕たちとついてことに決めた。
リキの死にかなりショックを受けていたみたいだけど。
でも止まっていられないのだ。

僕は悲しみの連鎖を止める。
何があっても。
ユイコのためにも。

進まなきゃ。
進み続けなきゃ。
止まってはいけない。
それが僕にできる事だから。

(ユイコ……君は大丈夫? 今いくから……そして護ってみせる)


空を見上げる。
変わらず雨が降っている。
しとしとと。
まるでヒトの哀しみの様に。
止め処なく。
ずっとずっと。
止む事はあるんだろうか?
解らないけど。
でも僕達は進む。


234 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:09:40 ID:dtVJ7vVP


235 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:10:09 ID:MaoXbnMJ
それが明日は希望に満ち溢れてると信じて。

「なあ……服ないか?」
「あるぞ。大量の」
「本当か!?」
「女性用だがな」
「……またかよ」

……はぁ。
大丈夫なんだろうか?

その溜め息は雨音共に消えた。



【F-7 北西/一日目/夜中】
【クリス・ヴェルティン@シンフォニック=レイン】
【装備】:和服、防弾チョッキ、アルのページ断片(ニトクリスの鏡)@機神咆哮デモンベイン
【所持品】:支給品一式、ピオーヴァ音楽学院の制服(ワイシャツ以外)@シンフォニック=レイン、フォルテール(リセ)、ロイガー&ツァール@機神咆哮デモンベイン、刀子の巫女服@あやかしびと−幻妖異聞録−、情報の書かれた紙
【状態】:Piovaゲージ:50%
【思考・行動】
 基本:哀しみの連鎖を止める
 0:まずは島の中央部へ。
 1:静留を止める、救う。
 1:唯湖を探し出して、守る。
 3:首輪解除の有力候補であるドクター・ウェストを探す。
 4:一人でも多くの人間を仲間に引き入れれる。即座に同行出来ないようならば、第六回放送時にツインタワーに来るように促す。
 5:機会があれば、通り道にある施設を調べる。
 5:第六回放送頃、ツインタワーでアル達と合流する。
【備考】
 ※西洋風の街をピオーヴァに酷似していると思ってます
 ※リセルート、12/12後からの参戦です。

236 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:10:27 ID:dtVJ7vVP


237 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:10:42 ID:MaoXbnMJ
※トルタに暫く会う気はありません。
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、「Mighty Heart、Broken Heart 」の本文参照




【玖我なつき@舞-HiME運命の系統樹】
【装備】:ELER(二丁拳銃。なつきのエレメント、弾数無制限)
【所持品】:支給品一式×2、765プロ所属アイドル候補生用・ステージ衣装セット@THEIDOLM@STER、カードキー(【H-6】クルーザー起動用)
 双眼鏡、首輪(サクヤ)、ベレッタM92@現実(9ミリパラベラム弾15/15+1)、ベレッタM92の予備マガジン(15発入り)×3、七香のMTB@CROSS†CHANNEL〜toallpeople〜、クルーザーにあった食料、情報の書かれた紙
【状態】:軽度の肉体的疲労、強い決意
【思考・行動】
 基本:静留と合流する
 0:まずは島の中央部へ。
 1:静留を止める、救う。
 2:来ヶ谷唯湖を探す。
 3:首輪解除の有力候補であるドクター・ウェストを探す。
 4:一人でも多くの人間を仲間に引き入れれる。即座に同行出来ないようならば、第六回放送時にツインタワーに来るように促す。
 5:機会があれば、通り道にある施設を調べる。
 6:第六回放送頃、ツインタワーでアル達と合流する。
【備考】
 ※『情報の書かれた紙』に記されている内容は、本作の本文参照
 ※媛星に関する情報については、今の所ごく一部の人物(アルやウェストのように、媛星への対策を思い付き得る者)以外に話すつもりはありません。
 ※なつきはクリスの雨の幻覚について知りません



238 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:10:58 ID:4FQSfkwp


239 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:11:24 ID:dtVJ7vVP


240 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:11:47 ID:MaoXbnMJ
【大十字九郎@機神咆吼デモンベイン】
【装備】:キャスターのローブ@Fate/staynight[RealtaNua]手ぬぐい(腰巻き状態)、バルザイの偃月刀@機神咆哮デモンベイン
【所持品】:支給品一式、アリエッタの手紙@シンフォニック=レイン、凛の宝石7個@Fate/staynight[RealtaNua]
 木彫りのヒトデ7/64@CLANNAD、物干し竿@Fate/staynight[RealtaNua]、タバコ、木彫りのヒトデ3/64@CLANNAD
 加藤虎太郎の眼鏡、トランシーバー(故障)
【状態】:、肉体的疲労(大)、背中に重度の打撲、全身に複数の打撲、肩に銃創、脇腹、右足に浅い銃創
【思考・行動】
 1:千華留に問いただす。千華留に疑念
 2:アルと桂、奏を捜索。
 3:人としての威厳を取り戻すため、まともな服の確保。
 4:アル=アジフと合流する。
 5:虎太郎の生徒達を保護する。
 6:ドクターウエストに会ったら、問答無用で殴る。ぶん殴る。
【備考】
 ※千華留、深優と情報を交換しました。
  深優からの情報は、電車を破壊した犯人(衛宮士郎)、神崎の性癖?についてのみです。
 ※理樹の作戦に参加しています。 把握している限りの名前に印をつけました。
 ※千華留が理樹を殺したと疑っています。



241 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:12:46 ID:dtVJ7vVP


242 :kind ◆UcWYhusQhw :2008/07/28(月) 01:13:01 ID:MaoXbnMJ
投下終了しました。
支援有難うございます。
誤字矛盾があったら指摘お願いします。

タイトルは「kind」です


243 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:29:43 ID:dtVJ7vVP
>>242
投下乙です
九郎……理樹を護り切ったと連呼したり、千華留様を疑いまくったり、服的な意味でも道化過ぎるw
クリスとなつきの深い心理描写や、相性抜群の掛け合いも良かったです
そして千華留様、本人の知らない所で包囲網が形成され過ぎてて、もうw

244 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 01:31:08 ID:4FQSfkwp
投下乙です!
九郎wwって笑ってあげるのも可哀相な状況なのだけど、しかし色々と不遇な男だね。
まぁ、不幸な誤解男のことはおいとくとして……なつきが可愛いw
テンポよくサクサク、最期のオチつきで読了感のよいつなぎでした。GJです!

245 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 10:48:54 ID:/PGY42t4
投下乙です。
九郎……。なんだ、うん。なんという道化www
何かいろいろな意味でカワイソスすぎる。
そしてなつき、もしかしてクリスに……
誤解フラグも着々と積まれているようでいつ爆発するかwktk

246 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 18:31:20 ID:qphPBpdE
投下乙です
九朗は本当に報われんなあ。虎先生からの遺言も
本人にはよく分からないうちに意味がなくなっているし
クリスとなつきの微妙な心理的距離も素晴らしかったです

そして、週刊ギャルゲも乙
あのー、何を想像してるんでしょうw
ひさびさのMADも良かったですねえ

247 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/28(月) 19:54:56 ID:QfkSLG6w
投下乙です
>>千華留
もうどうにも引っ込みがつかない疑念。
理樹の遺志継いでる端で危ない感じに。
総受け女王桂か、りのが何とかしてくれないかと祈りつつ。
でも、やっぱこういうのがBRの本分よね。
>>なつきとクリス
静留に遭遇できたらそれはそれでクリスが危ないような気がしてきたw

248 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:03:20 ID:bY4hlqts
僅かな隙間から差し込む月光だけが頼りの暗く暗い鬱蒼とした森の中を、一組の男女が足早に進んでいた。
先に行くのは漆黒の髪をもった女で、その後を追うのは真白な髪をもった男。
女の顔は緊張感に満ち、逆に男の顔は寝起きだからだろうか、それともそれが常なのか緩んでいる。


「……本当に拡声器がどこにいったか知らない?」

背後から何度も繰り返されるクエスチョンに、女――来ヶ谷唯湖もさすがにしつこいなと感じていた。
よっぽどそれが大事だったのだろうということは分かるが、決して今はそんな場合ではないのだ。

「残念だがやはり私はそれを見てはいない。それよりも、だ……」

問題は君が眠らされていたことにあるんじゃないか?
と、逆に唯湖は後についてくる男――黒須太一に問いかけた。
彼女が温泉旅館の中で発見した時、彼は片手に鍋、片手にレンゲをもって床につっぷしていたのだ。
ナルコレプシー(眠り病)というわけでもなければ極めて不自然な状況だろう。
故に彼女はそれを何者かの……恐らくは、旅館で目撃した不気味な怪人の仕業であろうと判断していた。
何故そうされていたのかは不明だが、彼の大事にしていた拡声器が失われたのもその時のことだろう。
そしてもし旅館に到着するのが少しでも遅れていれば、彼は今頃何者かの生餌にされていたかもしれない。

「カーニバルの怪人か、ふむ」

迫り来る危機を知らせても、いまいち太一には緊張感がない。
拡声器の件についても随分と楽観的だとは思っていたが、さすがに今は面白いと評する余裕は唯湖にはなかった。

「ともかく今はあそこから離れるのが先決だ」

言って、唯湖はさらに足を速める。
戦いの心得がない訳ではないが、無用にそれをする必要もない。
それにもし、あの斉藤の仮面を被った怪人やその仲間が、森の中で襲われた赤毛の少年の様な力の持ち主だとしたら。

249 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:03:32 ID:KhmyQqFA



250 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:03:58 ID:bY4hlqts
「…………………………」

戦い、とも呼べない一方的な爆撃。超常の力を持つ静留でさえも逃げることしかなかったあの力。
剣を打ち合わせたり、銃を撃ち合うなどといった常識の範疇からは遥かに遠い存在。
それを知った今となっては、例え拳銃を手にしていても安心や、いざとなったら抗えるなどという考えは浮かばない。
今そうしているように、そしてあの時そうしたように、できることといえば逃げることだけだ。
そしてそれは、これからの未来における可能性をある一点へと著しく狭めている。

「(生き残れるのか? ましてや、哀しみの連鎖を止めることなど……)」

彼女はこの舞台に放り込まれた時に、即座に殺し合いを放棄……いや、ゲームそのものを放棄している。
元より死者に近しい身。緩慢に終焉へと進むだけの存在だった故に、ただ自分が愉快だと思うように過ごそうと考えた。
そしてクリスと出会い、興味を引かれ彼とそう過ごしてきたのだ。
勿論、他の人間と出会ってきたからにはただ愉快なだけとはいかずに諍いや危機もそれなりにはあったが、
それでも彼女は概ね彼女自身のペースで事を運んできたのだ。

「…………………………」

しかし、クリスに惹かれ、そして離れ離れになり手に負えない脅威を目の当たりにした今。
そのペースは僅かに乱れを見せ始め、彼女の中にある可能性を浮かび上がらせる。
そして最初からそこにあったその可能性が彼女を脅かし始める。
それは、つまり――、

――自身が死んでしまう。殺されてしまうかも知れないという当たり前の可能性。裏返せば今ある可能性を断絶されるということ。


意識してかそれとも無意識にか唯湖の足はさらに速まる。
彼女の背後に迫り追い立てる何者か……いや、そうではなく内から湧き出る何かから逃げ出すように。

251 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:04:02 ID:Lpe5lZov



252 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:04:15 ID:KhmyQqFA



253 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:04:32 ID:bY4hlqts
 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †


足を踏み出す度に闇の中で揺れる黒髪。
それを赤い瞳で見つめながら太一は前を行く唯湖を追い、同時に思考していた。


「(カーニバルの怪人……ねぇ……)」

まだ話してはいないが、彼女の見た怪人とそれに人肉を要求していた少女の声。そのどちらにも心当たりがあった。

片方は神宮司奏と名乗ったお粥をつまみ食いしたゾンビー少女。己をエイリアンとは認識していない不幸な少女だ。
そしてもう片方の怪人とは十中八九、自身の片割れであるところの支倉曜子――曜子ちゃんであろう。
いつからかは知らないが、何時の間にかに自分の傍にいたらしい。変装までしているとは手が込んでいる。

まぁ、というわけで太一はあまり危機感を覚えていなかった。
どちらも極めて物騒な人間ではあるものの敵対することはなさそうだし、特に曜子ちゃんの協力を仰げるのはありがたい。
何にしろ彼女の持つ知識とスキルの幅と深さは尋常ではない。
”正義の味方”において”こんなこともあろうかと役”を任せるには彼女以上の適格者はいないだろう。

ふむ――と、太一の思考が脱線を始めてゆく。

となれば、目の前の彼女――来ヶ谷唯湖は”何役”だろうか?
女性ということならばやはり色で例えるなら”ピンク”だろう。
しかし人を引っ張る積極性を見るにリーダー各である”レッド”も最適に思える。紅一点などという言葉もあるし赤も悪くない。
長身黒髪の万能型美人というと曜子ちゃんとビジュアルが被るが、それは今彼女が変装していることを考慮すれば問題はなしか。
そう言えば曜子ちゃんは今、仮面を被っているのだっけか……ならば、なお裏方――弥七ポジションが相応しい。


254 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:04:49 ID:KhmyQqFA



255 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:04:52 ID:Lpe5lZov



256 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:05:05 ID:bY4hlqts
ふむふむ――と、太一の思考は脱線し、無関係の道へと走り出す。

来ヶ谷を”レッド”とし、曜子ちゃんを”第六の隊員(ブラック)”とするならば、他には誰が当てはまるのか。
まずは自分だ。
黒須太一は”ブルー”に決まりだろう。何故ならニヒルだから。……いや、少なくともニヒルな男のつもりだから。
決して鬱に陥りやすいからという訳ではない。否定はしきれないが……。

ふむふむふむ――と、太一の思考は本線より離れてゆく。

残るは、”グリーン”、”イエロー”、”ピンク”の3つだ。付け加えるならそこに”司令官”というのも加わるが今は割愛。
”グリーン”には心当たりがある。衛宮だ。あの若さゆえのリピドー溢れる未熟さは緑色にこそ相応しい。
想っていた女の子を失っているという設定は彼の隙にも強さにもなり、物語の中に波乱を生み出してくれるに違いない。

して、残るは黄色と桃色であるが……”ピンク”には美希がいいだろう。
桃色に据えるにはやや色気不足となるかも知れないが、初々しい可愛さなら随一であることはよく知っている。
何より……”貧乳はステータスだ!”という格言もあることだし、ニーズを考えれば彼女の存在は不可欠だ。

で、黄色であるが……該当する人間が思いつかない。
ラバがいれば間違いなくそうだったのだが、……いや、カレー好き=イエローも陳腐だろうか?
どちらにせよないものねだりをしてもそれは仕方ないだろう。あるもので間に合わすのがサバイバルの醍醐味だ。
……と、ふむ。道中で来ヶ谷が口にしたクリス君とやらはカレーが好物だったりはしないのだろうか?


意識してかそれとも無意識にか太一の足はさらに速まる。
彼の背後に迫り急き立てる何者か……いや、そうではなく内に閉じ込めていた何かから逃げ出すように。

257 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:05:40 ID:bG5vKCS/


258 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:05:42 ID:bY4hlqts
 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †


先を行く二人の後、暗い森の中でも更に暗い場所を一つの影が追ってきていた。
気取られぬよう、しかし見失わぬように一定の距離を保ち、それこそ本物の影のように彼らの後を追従している。
その影は名も無き怪人――支倉曜子であり、また支倉曜子でない者。


怪人は二人の背中を見ながら考える。
太一の隣りにいる女が何者であれ、彼より引き離さなくてはならない。
幸いなことに発見した太一はまだ自己を保っていた……がしかし、やはり撓み始めているように見える。
いかなる刺激とあれど、それが最後の一線を越えさせる可能性を孕む以上速やかに排除しなければならない。

しかし、その難度は高い。
ただ殺害すればいいというものでもない。人死にを見せればそれが太一を壊す引き金となるだろう。
離れた場所で殺害しても死体を見られれば一緒だ。うまく攫えたとしても、それを太一に探させてもいけない。
狙わなくてはならないのは完全なる消失。
一切の痕跡を残さず、女を太一の前から消し去り、彼に見失わさせる必要がある。

怪人の足元で枯れ枝が踏み潰されパキリと小さく乾いた音がした。
十全な状態でならばありえない失態。
幸いなことに先を行く二人に気付かれることはなかったが、それは身体の限界がもう近いことを示している。
焼かれた身体は万全よりか遥かに劣り、故に怪人は失敗を何度も繰り返していた。

ある時は、死んだも同然と手間を省き、殺せるはずの者を殺さずに捨て置いた。
ある時は、不利を悟り、状態を整えなおすと言い訳をしてその場より逃亡した。
ある時は、太一の害にはならぬだろうと軽く扱い何者かを見逃した。
ある時は、罠を仕掛けるとそんな理由を用いて太一を探すことを怠けた。
ある時は、利用できると嘯き殺そうとすらしなかった。
またある時は……、ある時は……と、そして数え切れないほどの失態を繰り返している。

259 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:05:52 ID:KhmyQqFA



260 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:06:13 ID:bY4hlqts
皆殺しを誓ったが、それには全く及ばない散々な結果であった。

しかしそれも仕方が無い。元より死人に等しい状態なのだ。
自らに怪人だと言い聞かせないと立っていることすら困難な状態なのだから……。
無為無策で皆殺しを敢行しても得られる結果はなかったはず……だから結果はともかく判断は誤りではなかった。
そのはず……。怪人は常に太一の為に行動していた、……そのはず。

怪人という取り繕った人格の表層に罅が入り、捨てたはずの支倉曜子が僅かに顔を覗かせ自己弁護を始める。
だが同時に同じ支倉曜子がそれを否定する……失敗を肯定しても、それに妥協してはいけない。

太一を見つけたことにより、怪人もまた撓み始めていた。
支倉曜子として彼の目の前に立ちたい……だが、それが破滅をもたらすことは承知している。
その葛藤が身体を震わせ、怪人という殻に罅を増やしてゆく――……


……――が、しかし今は踏み止まった。怪人は怪人であることを維持する。


そして怪人は改めて現状を見直し太一を救う方策を練り直す。

黒須太一を除いた全参加者の皆殺し――これはもう不可能だ。
いや、実力とコンディションを考えれば最初から不可能だった。
今はそれを冷静に認め、その方針を破棄する。
破滅へと邁進することは甘美な誘いだが、理性を持ってそれを振り切りあくまで太一の為だけを考える。

最低限に必要なのは太一と他者との接触。さらにはこの殺し合いとの接触をも断つことだ。
しかし、太一をこの世界より解き放つにはあまりにも情報は少なく、手段も時間も残されてはいない。
なので――……

……――黒須太一を世界より隔離する。

261 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:06:15 ID:Lpe5lZov



262 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:06:52 ID:KhmyQqFA



263 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:07:01 ID:bY4hlqts
具体的に言い表せば、彼をどこかに監禁する。
誰とも接触しないよう単独で封じられた箱の中へと閉じ込め、誰にも見つからぬようにする。
封じ込めが成功すれば自身はまた怪人としてその場を離れ、残った時間でできるだけのことをする。
それが今取り得る最良の方法。

これで太一が救われるかというと、その可能性は著しく低い。
監禁している場所が禁止エリアに指定されれば……彼はなす術なく死んでしまうだろう。
仮に彼と他の人物が最後の二人として残った場合でも、
禁止エリアを動いて避けられる方が有利なのは間違いないことだ。

だが例えそうだとしても、もう他に方法はない。方法を選ぶ猶予が自身にはもうない。
死者のそれと変わらぬ肉体は再び熱く昂り始め決定的な崩壊を間近に感じさせている。
そして何より、太一を目の当たりにした心が――閉じ込めていた支倉曜子が泣き叫んでいる。

心身ともに猶予はない。おそらくは0時辺りがリミット。
灰被りにかけられた魔法よろしく――怪人はその時こそ砕け散り、全ての可能性が潰える。

ならば、可能性が1%に満たないのだとしてもそれに賭けるしかないのだ。

残された手数はもう数えられるほどにしかない。
それを一歩踏み出す度に消費しながら、しかし冷徹までに自分を抑え怪人はその機を計り、二人を追う。


264 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:07:04 ID:bG5vKCS/


265 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:07:40 ID:bY4hlqts
 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †


黒い、黒い、自身の髪にも似た黒い流れを眼下に唯湖は一人ぽつんと立っている。

もう一人いたはずの太一は「自然が自分を呼んでいる」と一人で森の中へと戻っていった。
Naturecall――翻訳すれば排泄行為。
相変わらずの危機感のなさに呆れたが、彼女にも自然の摂理を捻じ曲げる力などはない。
なので仕方なく見送り今は一人、谷間を流れる川を見下ろし物思いにふけっていた。

昼間とは違って色を失った流れは真暗で、今はとても恐ろしいものに見えている。
この中へと彼女はクリスと共に一度落ち、そして次の時は一人で落ちるクリスを見送ったのだ。

川の流れる方向――東へと、クリスが流されていったであろう方へと唯湖は視線を動かす。

今も彼が生存しているということは、
最初の時と同じように運良く深い場所に落ち、溺れることなくどこかに流れ着いたのであろう。
問題はその後、彼がどうなったのか、どう動いているのかだ。
もしかしたらどこかで寒さに震えているのかも知れないし、逆に見失った自分を探し回っているのかも知れない。

唯湖は東へと向けていた視線を反対側――西の方へと動かす。

その先、川沿いに登っていけばそこに谷を渡るための橋がある。
そしてそれを渡って更に先へと進めば彼と出会った最初の場所へと辿り着くことができる。
一日の4分の3ほどを一緒に過ごしてはきたが二人にとって馴染みのある場所は少ない。
だとしたら彼は、最初に二人が出会ったあのパイプオルガンのある大聖堂に向かっているのではないか。

266 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:07:43 ID:Lpe5lZov



267 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:08:11 ID:bY4hlqts
ふと、耳が優しい旋律を思い出す。

大聖堂の中で聞いた演奏。森の中で聞いた演奏。そして夢の中で聞いた演奏。
まだ離れてからそう経ってもいないのに、それがひどく懐かしい。
今は虚ろな心の中に、それはとてもよくリフレインして心を揺り動かす――……。

リフレイン……反復……繰り返し……同じことを続ける……やりなおし続ける……こと。

しかし最早ここに繰り返しややりなおしは存在しない。
理樹も鈴も零れ落ち、それだけでなく多くの命が零れ落ち続けている。
それはいつ終着を迎えるのか。哀しみの連鎖を断ち切った時なのだろうか?

しかし独りきりでいる限りは答えは返ってこない。ただ記憶だけがリフレインするだけ……。

「……クリス君。君は今一体どこにいる?」

虚空に問うても返答はなく、しかし代わりなのか土を踏む音が耳へと届いた。

268 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:08:12 ID:KhmyQqFA



269 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:08:33 ID:9axcGMSI
 

270 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:09:00 ID:bY4hlqts
 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †


気付き、そして振り返った唯湖の視線の先にいたのは太一ではなく、怪人であった。

「……――な!」

幽鬼の様に朧でありながら、しかし一度気付けばその存在感は強く、縛り付けるような緊張を強いてくる。
貌は秘境の蛮族が呪術に使うような鬼の面で隠し、身体には大きいコートを被っているため正体は全くの不明。
だらりと下げた手に一振りの剣を無造作に持ち、それでいて隙もなく殺気をぶつけてくるその様はまさに怪人であった。

「…………………………」

相対した両者共に言葉はない。
怪人には言葉を用いる必要がなく、そして唯湖からかけられる言葉もまたなかった。

「…………………………」

ジリ……と、足を四半歩後退させたところで無言の唯湖に、僅かな焦りの表情が表れた。
彼女が手にする得物は銃――となるといくらかの間合いを得たいが背には崖。つまりは追い詰められていることになる。
ジリ……と、もう四半歩動けば怪人もまた合わせて同じ分だけ動く。
左右に動いても同じ様に、まるで同期してるがごとく正確に同じ分だけ動きを追い、怪人は追い詰めてくる。

「…………………………」

とはいえ、前に進むことは難しい。
僅かな動作で計れる技量を見ても互角かそれ以上の力量があると察することができる。
となれば差が出てくるのは互いが断つ場と手にする得物。
場に関して言えば先手を取られた故に圧倒的に不利。
得物に関して言えば、銃と剣。武器だけを見れば銃の方が有利だが、場を合わせて考慮するとそれは逆転する。

271 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:09:12 ID:Lpe5lZov



272 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:09:20 ID:KhmyQqFA



273 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:09:31 ID:bY4hlqts
「…………………………」

一足、二足、三足、四足……一息で十分に辿り着ける短い間合い。
この距離で銃撃を外せば次の瞬間には怪人は目の前にいるだろう。そうなれば叩き斬られて終わりである。
拳銃を握る手に汗が滲む。
それは武器であると同時に決着への号砲でもあるのだ。
当てることができれば相手は死に、逆に当てることができなければこちらが死んでしまうという……。

「…………………………」

ジリジリと下がっていた足が遂に崖の淵にまで到達する。
唯湖にとって、このまま崖から川に飛び込むという選択もありえなくはない。
一度はそれで難を逃れているのだ。
夜の水は冷たいだろうが、それでも目の前の怪人が放つ殺気ほどではないだろうから挑戦してみる価値はある。

「…………………………」

しかしそれはできない。
なぜならば黒須太一がいるからだ。一人で逃げ出せば、戻ってきた彼が怪人に襲われ、殺されるだろう。
それだけは……哀しみの連鎖を繋がせないためにも阻止しなくてはならないのだ。

「…………………………」

ならば、どうするのか?
拳銃で牽制し、森へと飛び込んで逃げ出すか。いや、とてもではないが背中を見せられるような相手ではない。
黒須太一へと大声で危機を知らせ彼にも逃げることを促すか。いや、怪人が二人ともを見逃すとも考えられない。
ならば、どうするのか……怪人へと銃弾を撃ち込むのか……?

「…………………………」

274 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:09:35 ID:bG5vKCS/


275 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:10:01 ID:9axcGMSI
  

276 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:10:03 ID:bY4hlqts
ギリ……と、二人の間に走る緊張が引き絞られ破断する瞬間へと近づいてゆく。
その瞬間が訪れれば、次の瞬間にはどちらかが命を失っているだろう。
否が応でも決着する。望む望まないとしても、道は断たれる。

そして、その瞬間へと到達する――……、


「はーい、ストップ! 喧嘩は駄目だよ淑女達」


……――しかし、介入。乱入。黒須太一が現れた。気付けば、怪人の後ろに白髪の彼が立っていた。

277 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:10:16 ID:KhmyQqFA



278 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:10:49 ID:Lpe5lZov



279 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:10:52 ID:bY4hlqts
 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †


「曜子ちゃん。その人を殺しちゃだめだ」

その命令。コマンドを受けて唯湖の目の前に立つ怪人の動きが静止する。
ただ……静止。まるで電源を落とされた機械の様に、殺気も気配も失い、静止……。

「……太一少年。これは、一体どういうことかな?」

説明してくれると助かるのだが……と、唯湖は怪人越しに太一へと問いかける。
セクハラ癖のある可笑しなな少年。カーニバルの怪人。温泉で見た光景。正義の味方。拡声器。
噛みあわない……どこか歪で不可解。そして、それはとても致命的な気がする。

「彼女? ……が、君の言っていたもう一人のメンバーのなのかな?」

その質問に、太一は何かを思い出したかのように、あ……と息を洩らし唯湖を無視して怪人へと話しかけた。
礼儀作法の問題でなく何かがズレている。唯湖の中の疑念は膨らみ不安を含み始める。

「曜子ちゃんがどうしてたっかてのは衛宮から聞いたよ。
 覚えているかな? あの、腕に赤い布をグルグル巻きにしてたヤツのこと」

太一はそれこそ旧来の友人であるように気安く話しかけている。逆に怪人はなんら反応を見せない。
まるで置物に向かって話しかけている様なのに、彼がそれに違和感を覚えていないことが違和感だった。
酷く……気持ち悪い。そして、赤い布の少年……赤毛の少年には唯湖も心当たりがあった。

280 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:11:23 ID:bY4hlqts
「今、エイリアンをやっつけるための正義の味方を募集してるんだけど、あいつも今は正義の味方。
 でもって、そこにいる来ヶ谷もそうなんだけど、……曜子ちゃんも参加しない?」

なるほどいつか聞いたもう一人とは、あの赤毛の少年のことだったのかと唯湖は理解した。
しかし、それを聞いた直後に彼女はその正義の味方とやらに静留諸共襲われているのだ。
そして目の前の怪人とは旧知の仲らしく、彼女も彼からすれば正義の味方へと誘う対象になるらしい。
ただ無差別に味方を求めているのか、それとも”正義の味方”に対して致命的な勘違いがあるのか……?

「曜子ちゃんが加わってくれると嬉しいんだけどなぁ、正直な話目処が立たなくて困ってたし。
 ……あぁもしかして、もう何人か殺してしまっていることを気に病んでる?
 ノープロブレム。改心した悪役はレギュラーより人気でるし――……」

静止したままの怪人に向かい一人言葉をかけ続ける太一。
彼への評価を、唯湖は愉快な少年からおかしな少年……いや、狂っている者と心の中で密かに変更した。
再び背後の崖を意識する。この二人ならば残していっても問題はないだろう。
この中で生命の危機に瀕しているとしたらそれは自分だけなのだろうから……。

と、唯湖はそれに気付いた。

何時の間にか、太一に背を向けたままの怪人が小刻みに震えていた。
あれだけ強烈に放たれていた不穏な気配も消えうせている。
その姿はそのままに、しかし印象は怪人などではなく……そう、まるで――……


……――小さな女の子の様な、泣いている女の子のような。

281 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:11:24 ID:KhmyQqFA



282 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:12:15 ID:bY4hlqts
 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †


曜子ちゃん。曜子ちゃん。曜子ちゃん。曜子ちゃん――……。


繰り返される、支倉曜子という認定。太一からの認定が、怪人の殻を強く叩いていた。
ただでさえ綻びを見せていたそれは見る見る間に彼女を怪人の中から呼び覚ましてゆく。

剣を握る手が振るえ、仮面の中に熱い吐息が篭る。色の違った両目には涙が溜まり、頬に筋を通していた。

黒須太一の可能性を守るために、支倉曜子を捨て怪人となったのだ。
そこには決意があった……なのに、彼の声は甘美すぎる。
一度呼ばれる度に、振り向き、我侭や嫉妬をぶつけ、言うことを聞き、従順に命令をこなしたくなる。
黒須太一の為の支倉曜子となり、彼を誘導し、後押しし、時に惑わせ、重石としてぶら下がりたくなってしまう。

背中からぶつけられる声がまるで石の様に重く、痛い。背が軋み、身体の震えが止まらない。

しかし、それは駄目で、駄目で、駄目なのだ。それだけはもうしないと、あの時に誓ったのだから。
太一にもう一度させてはならない。太一に自ら壊れることを選択させてはならない。
故に自分が限りある命を使ってそれを肩代わりしようと、あの時の、遠い時代についた嘘。それを今度こそ本当にしようと誓ったのだ。
あの時、太一は心を壊した。だから――


――今度は自分が心を壊し、怪人として黒須太一をこの世界から解き放つ。

283 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:12:15 ID:Lpe5lZov



284 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:12:45 ID:9axcGMSI
   

285 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:12:57 ID:bY4hlqts
…………再び、心を殺したことで、クリアな感覚が戻ってくる。
もう何万年も時が経ったのではないかと錯覚するほどに、永き眠りより覚めたかのように感覚は透明。


再び心を捨て怪人に。
しかし身も、心も、死人同然。
残された時間は、限りなく少ない。
太一により捕捉された以上次の番はない。
最早、この最終ターンで取りうる手段は唯の一つ。

左手に再び力を籠め、剣の切先にまで心を浸透させてゆく。

黒須太一が彼の望む彼であるうちに、この世界より断ち切り、落とす。
支倉曜子がこの世界に残留している間に、彼を確実な方法で世界より解き放つ。

怪人により、黒須太一と支倉曜子を諸共に停止させ、この世界よりの因果を一切断つ。


――黒須太一を殺す。


ゆらりと怪人は怪人は太一へと振り返り、彼を直視しないために被っていた仮面を落とした。
それは最後の最後の僅かな未練。彼の顔を……最期の顔を、記憶に、事実に残すというそんな未練。
そして、同時に、無言の遺言。不言の最終通告。本来ならば絶無であったはずの交流。



支倉曜子と黒須太一の視線が交わり――……

                      ―― CROSS † CHANNEL ――

                                   ……――意思は交換され、二人は同期する。

286 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:13:10 ID:KhmyQqFA



287 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:13:37 ID:Lpe5lZov



288 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:13:43 ID:bY4hlqts
目の前に立つ彼女――最早、支倉曜子と呼ぶのが相応しいのかわからない彼女。
全身を包帯に覆われそこに不快な染みを浮かべている不気味な彼女を見て、黒須太一はキレイだと思った。

どこまでも毅然としている。あの孤高の姫君であった時よりもさらに遥かに。
自己という本質を覆うありとあらゆるものを、生命としての生存すらも捨て去った完全な一つの精神がそこにある。


あの弱虫で、泣き虫で、甘えん坊な彼女がこうなるのはどれだけの勇気が必要だったのだろうか。


勇気……それは、”正義の味方ごっこ”などをしていた自分には、臆病な自分には無いものだ。
人と人が殺しあう。そんなこと耐えられるはずもなかった。そんな中で自我を保つ強さは持っていなかった。
故に、擬態した。
殺し合いの中で懸命に抗う”人間”をイメージし、妄想を自己に投影し、環境に適応した自分を作り出した。
美希や霧と出会えば、”先輩らしいですね”と言って貰える様な、そんな”黒須太一”という存在を。
偽装を重ねに重ね、自分自身を守る鎧を重ね着した。
そんな自分はとても無様だったが、妥協した――自分を守るために。


しかし目の前の彼女は、たった一つのエゴを貫くために全てを捨てている。機能美溢れる姿を体現している。


彼女はどこまでも真摯に自分を殺そうとしている。
それが望みだと、それが最善だと射るような瞳が伝えてくれた。唯一名残りのある黒曜石の様な瞳で。
自分自身の望みにより相手を殺してあげようとするなんていうエゴ。極致の自己満足を彼女は欲している。
極地にまで達しているが故にその姿はどこまでも超然として美しく見えた。

互いに残された猶予は僅かしかない。
彼女は儚げに散る直前で、自分は無様に失敗する間近。残ればどちらも醜態を曝すだろう。

289 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:14:14 ID:bY4hlqts
いつかの彼女の言葉を引用する――


――味方はいない。誰も助けない。自分のことを自分で守らないといけない。


そうだ。自分自身を守るのはどこまでいっても自分だ。自分から自分を守るのもまた自分自身。
遥かな過去。守りあうために互いを自分と認定し、交わり、自己を半分ずつ交換しあった。
彼女はその約束を今も忠実に守り、己を守るために自分を殺そうとしている。

ならば、彼女が……あの時の彼女、約束した時の彼女が戻ってきたのならば、こちらもそれを果たそう。
いつしか甘えや依存となっていたそれを再び契約へと純化させた彼女に敬意を払おう。
今、彼女を――いや、己を救うために自分を解放する。


――支倉曜子を殺す。


重石であり未練でもあるデイパックを投げ捨て、唯一本のナイフを手にする。
異物であるその中に遺志を通わせ、己と同化させて一人の黒須太一として彼女と相対する。
鏡が常にそうであるように、互いに同期し、向こう側の自分自身に切先を向け合う。



支倉曜子と黒須太一の刃が交わり――……

                      ―― CROSS † CHANNEL ――

                                   ……――遺志は交換され、二人は接続する。

290 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:14:17 ID:KhmyQqFA



291 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:14:17 ID:9axcGMSI
 

292 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:14:51 ID:Lpe5lZov



293 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:15:16 ID:bY4hlqts
月明かりを反射する白刃を速やかにインストールしあい、接続を完了する。
そして、彼と彼女は自己を守るため、醜くなる前に、自分を世界より取り除き、静かに、断絶、した。



最古の記憶は。
日付さえおぼろげな、遠い靄のなか。
あの時、それぞれに別でも、切り取られた四角の中から同じ星月夜を見上げていた。

少年と少女。
今は、二人並び、瑠璃の様な瞳で、同じ星月夜を見上げている――……




【黒須太一@CROSS†CHANNEL〜toallpeople〜 死亡】
【支倉曜子@CROSS†CHANNEL〜toallpeople〜 死亡】



※黒須太一の遺体の胸に カリバーン@Fate/staynight が突き立っています。
※支倉曜子の遺体の胸に サバイバルナイフ が突き立っています。
※支倉曜子の遺体の傍に、マスク・ザ・斉藤の仮面@リトルバスターズ!と、彼女のデイパックが転がっています。

※支倉曜子のデイパックの中身
 支給品一式、拡声器、工具一式、オペラグラス
 斧、投石器、石材×3、RPG-7V1(弾頭1/1)、OG-7V-対歩兵用弾頭×3、斬妖刀文壱@あやかしびと−幻妖異聞録−
 真っ赤なレオのデイパック(空)、首輪×4(蒼井、向坂、橘、鉄乙女)、木彫りのヒトデ×3@CLANNAD
 バカップル反対腕章@CROSS†CHANNEL、ドラゴン花火×1@リトルバスターズ、怪盗のアイマスク@THEIDOLM@STER

294 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:15:49 ID:bG5vKCS/


295 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:16:13 ID:KhmyQqFA



296 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:16:17 ID:Lpe5lZov



297 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:16:32 ID:bY4hlqts
 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †


取り残された、いくつかの意味で取り残されたままの少女がぽつんと立ち竦んでいた。

地面に並んで横たわり、すでに生きてはいない黒須太一と支倉曜子。
止める間もなく一緒に逝ってしまった二人。
彼と彼女を見下ろす唯湖の手には一枚の紙が握られている。
それは黒須太一より彼女に当てた遺書であった。
遺書は、ありきたりな書き出しから始まっている――……


 来ヶ谷へ

 この手紙を読んでいるころには俺はもう死んでいると思います。
 曜子ちゃんに殺されているか、それとも殺してから自殺しているのか、多分そんな感じで。
 色々考えてみたのだけど、どうやら曜子ちゃんは君を狙っているみたいだし
 最後に説得は試みてみるつもりだけど、そうならざるを得ないと思います。

 驚いていたら、いや驚いているのは間違いないと思うから、ごめんなさい。

 あやまりついでに一つ頼みを聞いてもらえるでしょうか?
 一生に一度のお願い(←笑うところ)なので、引き受けてもらえると嬉しいです。

 俺の鞄の中に原稿が入っています。
 それは俺の考えた放送案で、
 それが実際に放送され、俺の思想が拡散してゆくことが俺の最後の望みです。

 鞄の中には一緒にスパイからの手紙が入っているのだけど、
 そのスパイ(←多分、深優・グリーア。勘だけど)に渡してもらえればいいかも知れません。
 彼女に渡せば、いつかはあの放送が下手な連中に届くかも知れないから。

298 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:16:50 ID:9axcGMSI
 

299 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:17:03 ID:bY4hlqts
 そういえば、彼女はこの島にいる全員がエイリアンだと言っていました。
 それは多分事実です。
 別に異星人だとかと言うのではなくて、人と人は互いに侵略しあうものだから。
 相手の心に侵入して何かを奪ったり植えつけたり、育んだり、傷つけたり、交換しあったり、
 癒されたり、反発したり、欲したり、拒絶したり……それが人間同士なのだと思います。

 俺と曜子ちゃんはそれがすごく下手です。
 だから来ヶ谷にも迷惑をかけていると思う。ごめんなさい。

 俺達は一足先にこれを終わらせます。
 それが正しいことかもわかりません。でも後悔もないはずです。

 無責任なのは重々承知ですが、来ヶ谷は来ヶ谷が満足できる結果を追い求めてください。
 この殺しあうばかりの世界で後どれだけ時間が残っているのかはわからないけど、
 欲するものを追い求め、それを手にしてください。
 迷惑をかけるお詫びにはならないけど、来ヶ谷が何かを得られることを応援しています。

 来ヶ谷には俺達が持ってない立派な心があるから、きっと成功すると信じています。


 そろそろ曜子ちゃんが来ヶ谷を襲っている頃ですね。
 手遅れにならない内に俺も向かいます。殺されないようがんばってください(←今言っても無駄)。

 では、乱文乱筆失礼しました。 さようなら。

                                          ――黒須太一より。


 PS.立派な墓が欲しいとは言いませんが、できれば死体は海に流してもらえると嬉しいです。

300 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:17:13 ID:Lpe5lZov



301 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:18:02 ID:Lpe5lZov



302 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:18:07 ID:bY4hlqts
 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † †


「君は……大馬鹿者なのだな」

月光に照らされた安らかな死に顔に唯湖はそう呟く。
どこまでも不可解な彼ではあったが、唯一理解できたのはこれが彼らなりの哀しみの連鎖を断つ方法だったのだ。
文字通り、刃で以って哀しみの連鎖を断ち切った。
死をもって苦しみより解放されること。一度思い、否定したが、しかし目の前の彼らはどこまでも安らかに思える。

「クリス君。君なら彼らを止めることができたのかな……」

星月夜をあおぎ、唯湖は同じ空の下にいるはずのクリスへと問いかける。
勿論、答えは返ってこない。
わかってはいてもそれはやはり寂しいことで、心にぽっかりと空ろな部分があることを自覚させる。
今すぐにでもこの気持ちを、死に傾いた気持ちを否定して欲しいのに彼はいない。

「どこにいるんだ……君は」

心は麻薬のようだ。
あまりにも甘く刺激的で、そして失えば前以上に欲し、渇き、再び得ることを渇望する。
目の前にあった気を紛らわせるものが消え去った今、再び空ろな心が渇き、身を心を苛む。

「…………クリス君」

今なら理解できる。
何故、皆が哀しみの連鎖を繰り返してまでもそれを欲し、止めることができないのか。
大切なものを奪われたことに対する復讐。
欲するものを得るために他者を蹴落とすこと。
愛するものを守るために己を殉じさせること。
それはどこまでも甘く甘い甘美な誘惑で、一度気付いてしまえば抗うことはひどく難しい。

303 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:18:09 ID:9axcGMSI
 

304 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:18:38 ID:bY4hlqts
「私を放っておかないでくれよ…………」

そして、そうしないことがまた恐ろしい。その誘惑を振り切ることが恐ろしい。
死を間近に感じた時、恐怖したのは自分が死ぬことではない。
恐怖したのは、クリスと二度と会えなくなること。その可能性を断たれてしまうこと。
また、どこかでクリスも同じ様に死んでしまうのかも知れないと、そう思ったら――恐怖に心臓が跳ね上がる。
あの苦しみを再び味わう、そんなことは繰り返したくはない。
心の中から生まれた攻撃性が身体を伝い、拳銃を握る手に力を込めさせる。
かつては怒りがそうし、そして今は恐怖が彼女を駆り立ていた。
あの時はクリスの声が引き金を引くことを躊躇わせた……がしかし、今もそうなのか。

「…………教えてほしいんだ」

黒須太一はそれを――クリス君を得ろと言う。
だがしかし、得た後はどうする? この世界に永遠はない。否が応にも終わりの時は来る。


「本当に……明日は希望に満ち溢れているのかな。なぁ、クリス君」


問う。
しかし、やっぱり答えは返ってこない。

夜の冷たい風だけが彼女を包み、空虚な心の中でただただ問いかけだけがリフレインし続ける――……。




【D-6 川の辺/1日目 夜中】

305 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:18:43 ID:Lpe5lZov



306 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:19:09 ID:bY4hlqts
【来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!】
【装備】:デザートイーグル50AE(6/7)@Phantom-PHANTOMOFINFERNO-
【所持品】:支給品一式×2
 デザートイーグル50AEの予備マガジン×4、S&WM37エアーウェイト(5/5)、S&WM37エアーウェイトの予備弾(×12)
 ウィルス@リトルバスターズ!、第1次放送時の死亡者とスパイに関するメモ、放送案の原稿、黒須太一の遺書
【状態】:疲労(小)、脇腹に浅い傷(処置済み)、全身に打ち身
【思考・行動】
 基本:クリスを欲する。
 0:私はどうすればいいんだ……?
 1:クリス君……どこにいる?
 2:哀しみの連鎖を広げないないよう行動する。(連鎖を”断つ”ことも一つの手段かも知れない)
 3:太一の遺言を叶える? (原稿をスパイに届ける/遺体を海に流す)
 4:理樹と鈴を失った棗恭介には警戒する。
 5:碧や西、なつき達の安否が少し気になる。
 6:大聖堂にあるパイプオルガンを弾きこなしてみたい。
【備考】
 ※精神世界より参戦しています。
 ※クリスはなにか精神錯覚、幻覚をみてると判断。今の所危険性はないと考えています。
 ※千羽烏月、岡崎朋也、椰子なごみの外見的特長をを認識しています。
 ※西園寺世界の声だけを聞き、人肉を求める危険人物だと認識しています。
 ※美希に対し僅かな違和感を持っています。
 ※黒須太一と支倉曜子の自殺を目の当たりにし、ショックを受けています。

307 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:19:28 ID:Lpe5lZov



308 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:19:30 ID:vEgC1ajc


309 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:19:38 ID:KhmyQqFA



310 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/07/31(木) 21:19:40 ID:bY4hlqts
以上、投下終了しました。 支援感謝します。

311 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:20:08 ID:Lpe5lZov



312 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 21:23:10 ID:Lpe5lZov
投下お疲れ様です!
……これは凄い。何というか、最期までらしく在った二人に敬礼を。
ガラス細工のように繊細な、それでいてどこか強いお話でした。

313 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 23:19:40 ID:e1LSgSiY
投下乙……です。
えと、正直震えました。読後のテンションおかしいです。
安易な燃え展でも、露骨な鬱でもない……なんだこの、なんだ!w
陳腐な言い回しですが、曜子ちゃんと太一の描写がとてつもなかったです。
太一の声を耳にし、泣いている女の子のように震えてしまう曜子ちゃん……
理性の塊と化していたはずの怪人に、まさかの感情移入……
センチメンタル……って言葉でも飽き足りないなぁ、なんか。
AZ氏の書く曜子ちゃん、すっごい好きでした……心中は、一つの幸せのカタチとして捉えておきます。
曜子ちゃんは例え身を焼かれようと、手を血で染めようと、一心不乱に太一のために頑張ったんだよ!
そして最後は太一と共に逝けたんだよ! 当人たちが望むカタチで解放されたんだよ!
ううむ、やっぱりテンションおかしいな……w
改めて乙でした!

314 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/07/31(木) 23:35:22 ID:KhmyQqFA
投下乙
予想外にして必然的な結末と言いましょうか、
人に憧れたものと人を捨てたようとしたものが
最期に導き出した解答は本当に切ないです

太一に原稿を託された姉御は果たしてどうなるのやら

315 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/01(金) 03:25:03 ID:lIbsUINW
投下乙・・・
読了感が凄い・・・あの二人がこうなるとは思わなかった。
というか太一、お前ら歪み過ぎw

316 : ◆tu4bghlMIw :2008/08/03(日) 01:48:30 ID:Gu4ILISf
「はっ、はっ、はっ…………!」

逃げる者と追う者がいる。

可憐な唇から細かく息を吐き出し、市街地を駆ける影。
蜂蜜のように煌びやかでフワフワの髪の毛が乱れるのも気にせず、少女は時々後ろを振り返りながら走り続ける。
速度を下げる事など出来る筈がない。
鉄の魔手は彼女の背後にピタリ、と張り付き冷酷な眼差しを送っているのだ。

漆黒の闇。それでも煌々と光る伝統と黄金の月が世界を照らす。視界は十分だった。
少女のうなじにじわり、と汗が滲む。
水色のブレザータイプの制服が少女の身体に張り付き、その未成熟な肢体のラインを浮き上がらせる。
息は荒く、その身体に蓄積された疲労は病魔のように彼女の四肢を蝕む。

倒れてしまおうか。足を止めてしまおうか。
これだけ逃げれば追って来られる訳がない。少しぐらい休んでも大丈夫だろう。

そんな思考が彼女の頭の中を過ぎったかどうかは定かではない。
しかし、デイパックを背負い逃げ惑う少女に余裕の色など一切感じられない。
前を走る少女は一心不乱に。余計な思考など何一つないだろう。
追跡者は思う。「もう少しだ、もう少しで仕留められる」と。

「逃がさない……ッ!」

猟人、椰子なごみの心中は穏やかにして、明快だった。

彼女は前方を逃げる少女の後ろ数十メートル程の距離を保ち確かな足並みで追跡を続ける。
腰ほどまで伸びた躍動感のある黒のロングストレート。艶やかな濡れ羽根色が躍りながら、闇を疾走する。
学校指定の革靴が奏でるコツコツ、という音は溶け出しそうな闇の中へと混ざっていく。


317 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:48:57 ID:uO7YjNKF


318 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:49:04 ID:tVi+9JIm


319 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:49:28 ID:UUuMBrGG
 

320 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:49:29 ID:Gu4ILISf
椰子なごみは推察する。
少なくとも逃げる少女には戦う意志はない、と。
強力な武器を持っているかもしれないが、疲れの溜まった身体では銃器などは満足に扱えないだろう。
これは戦いなどではない。狩り、一方的な狩猟に過ぎない。
逃げるのが獣ではなく、人間に代わっただけの単純な構図。絶対的な力と、そして覚悟の差。


退路を行く者の名は山辺美希。群青学院放送部所属。一年。
ウェーブの掛かった金色の髪のあどけない笑顔が似合う『何の変哲もない』少女。
彼女の名前も情報も、椰子なごみは一切知り得ていない。まっさらな白紙のままだ。
故に彼女が山辺美希を判断する基準は、己の主観と先程の些細なやり取りだけに限定される。


椰子なごみは己を子羊を追い立てる「獅子」に例えていた。
彼女を愛し彼女が愛した相手、対馬レオの見立てとして。


獅子は兎を狩るのにも全力を費やす、という言葉がある。
だからなごみも、少女に手心を加える意志はこれっぽちも存在しなかった。
必要な情報を引き出し、後は確実に殺害する。
自らの意志で決めた事だった。「奇跡」に縋る為に彼女はその手を赤い血で染める事も辞さない。


321 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/03(日) 01:49:46 ID:tVi+9JIm


322 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:50:01 ID:Gu4ILISf

椰子なごみにとって、対馬レオは全てを投げ打つに値する男だった。
彼は彼女にとっての明確なライン。一線を越えた相手だったのだから。
自身と他人を隔てる強固なボーダーラインの内に入り込んだ奇特な人間。大切な、人。

大好きで、
大好きで、
何を賭しても、
命を賭けても、
守りたい相手。尊い相手。

なごみの心の中には強い意志があった。そして愛情があった。
目の前のか弱き「花」をへし折る事に躊躇いなどない。


猟人の、獅子の牙が少女に迫る。



 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † 



323 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:50:07 ID:FBWSV3d+



324 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:50:15 ID:UUuMBrGG
 

325 :The tower  ◆AZWNjKqIBQ :2008/08/03(日) 01:50:39 ID:tVi+9JIm


326 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:50:45 ID:Gu4ILISf
「あ……!」

「追いかけっこ」が始まり数十分。
疲れで足に力が入らないのか。それとも焦ったのだろうか。前を走っていた美希が足を取られ転倒する。
彼女が転んだのは足元に何も無いコンクリートの道路の上。
派手な動作で前のめりに思いっきり倒れ込んだ。

「っ――!」
「はぁっ……ったく、逃げ足の……ッ……早い」

そして、後方から追いかけていたなごみが額の汗を拭いながら不敵な笑みを漏らした。
彼女の右手には六連発式のコルトパイソン。.357口径の年代モノのリボルバーだ。
しかし、専用のマグナム弾の破壊力は驚異的である。
まさに絵に描いたような「銃」のフォルムを示す黒光りする鉄に若干の青み。グリップ部分の木材を思わせる外装。
非常に洗練されたデザインが特徴。まさにコルト社の作り出した「コブラ」に続く二匹目の蛇の異名が相応しい。

「わ、わわっ」

美希は背後七、八メートルの地点になごみが迫っている事を振り返って確認。
銃を構え狩人の冷徹な表情で近付いてくるなごみの顔を見るなり、慌てて起き上がる。

……なんなんでしょうね、コレ。
一人じゃ何も出来ないくせに、どうしてこんな娘が生き残って……?

無様な仕草で、今にも再度倒れてしまいそうな覚束ない足取りで、自分から逃げようとする美希になごみは眉を顰めた。
倒れた際に擦りむいたのだろう。少女のつるりとした卵のような膝小僧の皮膚が裂け、赤く染まっているのが目に入った。
少なくともそれ以外の部分に、一切外傷は見られない。
水色のブレザータイプの夏用制服にも血液の滲みは皆無。
これはつまり彼女が今まで誰からも襲われていない、もしくは襲われても平穏無事に逃げ果せて来た事の証明であった。



327 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:51:01 ID:uO7YjNKF


328 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:51:17 ID:Gu4ILISf
……ああ、そういう事か。

なごみの心は至って冷静だった。
銃を美希へと向け、着実な歩みで一歩一歩ヨタ付きながら逃げる彼女へと接近。
走る必要性すらない。彼女は完全に獲物を前にしたハンターとしての態度を崩さない。
そして、その裏側には美希に対するなごみなりの「怒り」の感情があった。

何もかも、一瞬で理解した。

「どうしてこんな奴が生きているのか?」という命題がある。

その問い掛けになごみは自信を持って答える――コイツは誰かに庇われながら、ここまで来たのだ、と。
公園で彼女はやはり髪を逆立てた男に守られていた。
躊躇もなく、仲間を置き去りにして一人だけ逃げ出す少女の姿がなごみの脳裏に再度、浮かぶ。


「きゃぁああああああっ!」

なごみはダブルアクション式のコルトパイソンの引き金を遠慮なく引いた。
目障りなゴミを這い蹲らせるために足を狙った筈なのだが、なごみの腕前では正確な射撃はやはり難しい。
加えて彼女は視力があまり良くない。コンタクトレンズも眼鏡も所持しておらず、夜目が利く訳でもないのだ。

とはいえ反れた鉛弾は幸いにも美希の右の肩口を掠り、美希は堪らず薄桃色の唇から悲鳴を漏らした。
距離は約六メートル。ターゲットもこちらも動きながらの射撃。上等な結果だ。

「う……っ……あ……」

痛みに美希が膝を付き、丁度すぐ傍にあった電柱に手を付き縋り付く仕草を見せた。
制服が破け、肩口から肌と共に赤い傷口が露出する。


329 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:51:24 ID:tVi+9JIm


330 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:51:37 ID:LKO/wO0X


331 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:51:48 ID:Gu4ILISf
大袈裟な反応だ、なごみは嘆息を漏らし美希を見下ろした。
追いかけっこは……いや「狩り」はここで終わりだ。
これから始まるのはもっと禍々しい行為なのだ。

「う、く……血……が」

美希はぺたん、と地面に完全に座り込んでしまった。撃たれた右肩を庇い、息を荒げる。

……弾は、少し掠っただけなのだけど。
初めて経験したであろう「非日常の痛み」とはいえ軟弱な相手だ、そうなごみは思った。
命を狙う人間が迫っているのに。
それなのに、ちょっと銃弾が皮膚を擦っただけで逃げるのを止めてしまうなんて。


彼女は――『自分の命が大切ではないのだろうか?』


「ホント、ひ弱な人ですね。アンタみたいな人を見ているとこっちまでイライラして来ます」

なごみはついに三メートル程の距離まで接近した美希に銃口を向けた。
コルトパイソンの残弾はシリンダーに残り三発。この間合いだ、余程の事が無ければ問題は無いだろう。
美希は俯いたまま、こちらを見ようともしない。
だがぶるぶると震える彼女の両肩を見れば、特別な言葉は必要なかった。


「こっちの質問に答えて貰います。泣いたって無駄ですよ、同じ女ですからね。泣き落としなんて効きません」
「わ、分かりました……」
「いい子ですね。『賢い人間』は長生き出来ますよ。まず、お名前を聞かせて貰えますかね?」
「あ、山辺……美希。群青学院放送部の……一年生です」



332 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:51:48 ID:UUuMBrGG
 

333 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:52:14 ID:tVi+9JIm


334 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:52:46 ID:FBWSV3d+
 

335 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:52:52 ID:Gu4ILISf
恐々と美希がゆっくりと顔を上げた。金色のウェーブが掛かった髪が揺れる。
ピリピリと張り詰めた空気が二人の少女包み込む。
世界を照らすのは暗黒の宇宙のような闇とチカチカと点灯を繰り返す電灯、そして星と月。
観客は、いない。


「あ、えと、あの……。その、ですね」
「……椰子。椰子なごみです。何ですか、山辺さん?」
「その……あな、たは……椰子さんは……美希を、殺すおつもりなのですか……?」


なごみは目の前の少女の潤んだ瞳を見て、若干の罪悪感に襲われたもののグッとその感情を飲み込んだ。
情報を聞き出し、そして殺すのだ。既に自分は岡崎朋也を殺害している。
そう、もはや人殺しの身である。心も、そして意志も、後戻りを拒絶しているのだから。


「それは場合によりけり、ですね。例えばあなたが怯えて泣き出しでもしたら……分かりますね?」
「! ……は、はいっ。りょ、了解です……」


泣き出してしまえば、殺すしかなくなる――いや、どちらにしろ殺すつもりではあるが。

重要な点は殺すタイミングだ。
いかに衛宮士郎が非常識な力を持った狂人だとしても、彼の相手は二人。
彼が片方を取り逃がし、山辺美希を救援に来る可能性は十分過ぎるほどある。
なごみにとって、対馬レオについての話を聞き出す事は最優先事項だ。
情報収集を出来るだけ早く済ませ、安全な場所に姿を隠すか衛宮士郎と合流しなければならない。

……こんな、誰かに頼って生き残っているような奴は反吐が出る。
それが、なごみの素直な思いだった。



336 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:53:26 ID:FBWSV3d+
 

337 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:53:27 ID:Gu4ILISf
「それじゃあ質問します。対馬レオ、という名前に聞き覚えはありますか?」
「つし……っ……あ……!」

美希の顔に走る一瞬の動揺。唇から溢れ出した僅かな違和感。
対馬レオについてと尋ね回っていたなごみにとって、美希の示した些細な反応は十分過ぎる程の"真実"を孕んでいた。

「つ、対馬レオ……さんですか? あの……その……」

しかし、美希の口からその"次"の言葉は出て来ない。
つまり「対馬レオを知っています」という具合の望ましい解答だ。
少女は言葉を濁し、あたふたと両の掌をひらつかせ、顔面を戸惑いの色で染め上げる。


「"センパイ"の事を知っているんですね」
「あ……え……っ……」
「知っているんですね!?」
「ひっ! は、はい……確かに美希は対馬さんとお会いした事がありますです」
「そう、ですか……」


なごみの唇の両端が知らず知らずのうちに釣り上がる。
赤い瞳は大きく見開かれ、小兎のように震える少女を見下ろす。
そして、なごみは喉の奥から溢れ出しそうな"笑い"を必死で押し潰していく。
海底から浮き上がる気泡を一つ一つ摘み上げ、指先で破壊していくように丁寧に。

これは、喜びなのだろうか。
胸の奥が一杯になって、何かが込み上げて来るような……「楽しい」や「嬉しい」にも似た忘れていた感情は。


338 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:53:37 ID:uO7YjNKF


339 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:53:44 ID:UUuMBrGG
 

340 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:53:49 ID:tVi+9JIm


341 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:54:00 ID:FBWSV3d+
 

342 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:54:05 ID:Gu4ILISf
ああ……すっかり忘れていた。

だって、こんなにも嬉しく思えた事が、この島に来てから一度だってあっただろうか?
いや……一つだってありはしない。
世界は、私の周りにあったのは苦しみと嘲りと苦渋と恥辱に満ちた行程だけだった。
泥だらけになって、這いずり回った記憶。醜悪な人の性。

こんな感情がまだ私の中に残っていたなんて。
頭の奥が痺れて、自分が自分でなくなるような眩暈にも似た感覚。
グルグルと螺旋を描き、神経が、細胞が、歓喜の叫びを上げている。


ああ、それ程までに……それ程までに……、

私、椰子なごみは――この瞬間を心待ちにしていたのだ。


「ふふっ……ふふふ……ふふ、ハハッ……ハハハッ!!」


大きく息を吸い込む。なごみの豊かな胸が風船のようにゆっくりと膨らみ、そして萎んで行く。
それは、荒波のような心を落ち着けようとする彼女なりの試みだった。
動転する精神を、暴風のように吹き荒れる心の嵐を諌めなければならない。

そう、必死に必死に……!

……ついに、掴んだ!
センパイの手掛かりを……嘘偽りではない本物の手掛かり!


343 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:54:33 ID:LKO/wO0X


344 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:54:40 ID:Gu4ILISf
このまま、山辺美希にコルトパイソンのマグナム弾を見舞う事は造作もない事だ。
ダブルアクションの若干重めのトリガーとはいえ、人差し指に少し力を込めるだけで少女は容易く紅に染まる。
全身の筋肉を痙攣させ、骨の軋む音で脳を揺さ振られ、血の海の中で赤い涙を流すだろう。

だが、それではダメだ。彼女を追い立てるために、もう三発も銃を撃ってしまった。
宵闇が終わり、もはや世界は完全に暗闇と静寂の中にある。
この場所に長居をする事は出来ない。事態は早急を要する。
美希を殺害する事は容易い……が、それだけに、失敗は……許されない。

分かり易い拷問のような方法は明らかに悪手である。
山辺美希は矮小な少女だ。心が、弱い。
下手に乱暴な手段に出た場合、逆に何も喋らなくなる可能性がある。情報は少しでも欲しい。


「ああ……山辺さん。すいません、思わず。そんなに、怖がられなくても大丈夫ですよ」
「本当……ですか?」
「はい、もちろんです。話して頂けますね?」


恐々と美希がなごみへと尋ねた。その問い掛けをのぞみは当然、満面の笑みで肯定する。
ソレはにこやかなようで、拒絶を決して許さない絶壁の微笑だ。
こくり、と頷いた美希の表情からもなごみに対する恐怖心が見え隠れする。

腹の中に少女への冷徹な蔑みを込めてなごみは美希の言葉を待った。


345 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:54:41 ID:tVi+9JIm


346 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:55:12 ID:tVi+9JIm


347 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:55:13 ID:Gu4ILISf
よく考えれば、分かる事だった。
【対馬レオ】の名前が呼ばれたのは第一放送終了後。
つまり、彼がこの島で生存出来ていた時間は最長で六時間程度である。

それでは、彼はいったい何人の人間と接触したのだろうか。
最低で一人――つまり、彼を殺害した人間――だけである可能性もあった。
が、見る限りこの山辺美希が彼を手に掛けた確率は極めて低いだろう。
彼女と対馬レオの関係を察するならば……やはり、庇護対象として美希を見ていたのではないだろうか。


「その、美希が一番最初に出会った相手が対馬さんだった訳でして」


……やっぱり。

美希の言葉はなごみが予想した通りのモノだった。
山辺美希は彼女の"センパイ"とおそらく実に友好的な関係で接触した。
勇敢な彼の事だ。見るからにすぐに死んでしまいそうな美希を見捨てる事など出来ない筈である。

こいつを守って、センパイは……!? 
ダメだ、なごみ。取り乱すにはまだ早過ぎる。落ち着け、落ち着かなければ……。


「では、別れたのはいつですか」
「……!」
「答えて下さい、山辺さん。それとも、質問を変えた方がいいですかね?
 "私のセンパイを殺した相手を知っていますか"という風に!」



348 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:55:28 ID:FBWSV3d+
 

349 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:55:42 ID:UUuMBrGG
 

350 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:55:45 ID:tVi+9JIm


351 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:55:50 ID:Gu4ILISf
鬼気迫るなごみの剣幕に圧され、地面に尻餅を付いていた美希が後ずさる。
しかし、彼女の背後にあるのは無機としての感触を露にする灰色の電柱。一歩たりとも後退する余裕など存在しない。
それでも少女は同い年である筈のなごみから逃げるかのように、大きく身を捩った。
這い回る芋虫のように彼女の背中と電柱が擦れ合い、ズッ、ズッ、と僅かな隙間さえ無くなる。
ピッタリと尾てい骨と冷たい石柱が触れ合い、『捲れたミニスカートから』美希の青白い太股が顔を覗かせる。


「つ、対馬さんは……美希を守るために……犠牲になって」


加速、する。
思考が拡散し理性が本能に消し飛ばされる。
激情が顔を出し、冷静に在ろうとする椰子なごみに悪魔染みた囁きを残す。

――殺せ。

なごみは『そんな事を美希に尋ねていなかった』
わざわざ聞かなくても、大体の辺りは付いていたのだ。 
……いや、違う。これは「自分で自分を納得させていたから、まだ耐えられた」とでも言った方が適切だろう。

なごみは決して、レオに対して少女漫画的な――それこそ白馬に跨った王子のような――妄想を重ね合わせていた訳ではない。
加えて、彼女の愛情が決して歪んでいた訳でもないのだ。
ただひたすら、なごみはレオを愛して、愛して、愛し抜いた。
境界線へと踏み込む事を許した数少ない相手――父のように、暖かくて、優しい少年を。

――殺せ。


352 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:55:55 ID:uO7YjNKF


353 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:56:06 ID:FBWSV3d+
 

354 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:56:20 ID:UUuMBrGG
 

355 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:56:35 ID:Gu4ILISf
でも、だからこそ、なごみは心の奥底で望んでいたのかもしれない。
自分がレオのために命を賭けて戦うからこそ、「レオにも自分のために命を賭けて戦って貰いたい」と。

だから、引き攣った表情でこちらをジッと見詰める山辺美希が堪らなく憎かった。
嫉妬、しているのかもしれない。
大好きなセンパイがこんな奴のために命を無駄にしたという事が、なごみには許せなかったのだ。


「……そんな事は、聞いていません。いいですか、次に余計な事を言ったら……この銃であなたを撃ちます。分かりましたね」
「はぅ……ッ……ご、ごめんなさいです」
「もう一つだけ、尋ねます。あなたと、センパイを襲ったのは誰ですか?」



356 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:56:40 ID:tVi+9JIm


357 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:56:41 ID:FBWSV3d+
 

358 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:57:07 ID:Gu4ILISf
なごみは目の前の少女を殺したくて、殺したくて堪らなくなっていた。
この衝動が狂気であるとか、盲執であるとか、そんな事はもはや関係なかった。
一人殺すのも、二人殺すのも同じ事である。
両の掌と指が真っ白になるほど強く握り締めたコルトパイソンのグリップ。銃口は美希の額へ。

だから、これだけ聞いたら――コイツは殺そう。


「美希と対馬さんを襲ったのは……」
「……襲ったのは?」


美希がスッと息を吸い込んだ。
そして、怯えた小動物のような瞳でなごみを見詰めながら『うっすらとした笑み』を浮かべる。
金色の星に灰色の雲が掛かり、月光は空へと隔離される。



「『黒須太一です』」



世界が、静寂に満ち溢れていた夜天の空が、一瞬、全ての鼓動を停止した。


359 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:57:15 ID:tVi+9JIm


360 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:57:56 ID:FBWSV3d+
 

361 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:57:58 ID:tVi+9JIm


362 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:58:11 ID:Gu4ILISf
「なっ――!?」

美希に真っ直ぐ向けた銃口の射軸が揺れる。
しっかりと固定するため、両手で握り締めていたはずのグリップに力を込める事が出来ない。
全身から煙のように力が抜けて行く。踏み締めている地面すら揺らぐような圧倒的なまでの、絶望。
いや、その脱力感はつまり、大津波が来る前の引き潮のようなものだ。
一瞬の間を置いて、気が狂ってしまいそうなまでの衝撃がなごみを襲った。


「あいつが……あいつが……黒須太一が……センパイを……!?」
「……はい。美希はしっかりと見ましたです」
「見間違い、って事は無いんですか!? あいつ最低のゲス野郎ですよ!
 あんな人間がそんなにウロウロしている訳が……」
「いえ、それだけはありません。太一"先輩"のあの白い髪は特徴的です。間違える訳がないのです」


きっぱりと。美希は語調を強め、そう断言した。同時になごみの胸中に湧き上がる疑問がある。
今、彼女は黒須太一の事を何と呼んだ? 太一、"先輩"?
落ち着け……落ち着け……。

「……どうして、アイツが後輩を襲うんですか? そんなの普通、変じゃないですか」

そうだ、正常に考えれば同じ学校の人間を襲う訳がない。
なごみ自身はレオ以外の生徒会メンバーも殺すつもりでいたが、特に理由がなければ元の知り合いに危害を加えるとは考えれられない。
しかし、

「太一先輩はその……"異常"な方ですから」
「それは……」
「だから、椰子さんも知っているはずです。殺したいと思っているはずなのです」


363 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:58:16 ID:uO7YjNKF


364 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:58:33 ID:UUuMBrGG
 

365 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:58:56 ID:tVi+9JIm


366 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:59:11 ID:FBWSV3d+
 

367 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 01:59:27 ID:Gu4ILISf
美希の言葉は残酷なまでに、なごみのその淡い期待を一蹴する。
淡々と気味が悪くなる程、実直な視線の矢でなごみを射抜く。
金色の波打つような髪は夜の闇の中でもその存在を誇示し続ける。そして、捲れたスカートの裾を直そうともせずに、彼女は言葉を重ねるのだ。

「多分、椰子さん……他にも殺したい人が沢山いるんじゃないですか?」
「どうして、そう思うんですか?」
「そんなっ、椰子さんを見れていれば分かりますよ。大好きな人の仇を討ちたくて討ちたくて……堪らないんですよね」
「…………ふふっ、そう……ですね」

会話の主導権はいつの間にか、なごみから美希へと移っていた。
しかし、なごみがその場の雰囲気の変化に気付く事はない。

彼女は自身の中で、今得たばかりの情報を整理する事に必死だった。
今すぐにでも美希を撃ち殺すつもりだったのに、また新しい質問事項も増えてしまったのだ。
つまり、本当の仇である――黒須太一のデータを手に入れる、という。
落ち着け……落ち着け……!!


「美希にもその人たちの名前、教えてくれませんか。非力ながら、その、美希も椰子さんのお手伝いがしたい事ですし」


お手伝い、か。
どうせこの場所で死ぬのに馬鹿らしい台詞だ、となごみは思った。
だから、ほんの戯れとして彼女に自分が恨みを持っている人間の名前を教える事とする。
当然、他の人間に危害を加える事のない安全な連中も含めて、だ。



368 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 01:59:27 ID:tVi+9JIm


369 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:00:01 ID:tVi+9JIm


370 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:00:21 ID:UUuMBrGG
 

371 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:00:33 ID:FBWSV3d+
 

372 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:00:35 ID:tVi+9JIm


373 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:00:51 ID:Gu4ILISf
「クリス・ヴェルティン、来々谷唯湖、千羽烏月、藤乃静留、衛宮士郎…………といった所でしょうか」
「その人達は……皆さん悪い人なのですか?」
「ええ、そうですよ。全員……畜生にも劣る屑共ばかりです」
「そして。太一先輩、ですよね。太一先輩が一番……なんですよね。だって、対馬さんを殺したのは太一先輩なんですから」
「……ッ……!」

なごみは『レオの仇が黒須太一である』という美希からの情報を信じたくなかった。
だから、美希の質問に何の疑いもなく答えてしまう。
だから、「彼女がこの質問に答えたら、撃ち殺すとしよう」という思いを捨て去ってしまった。
彼女は、酷く動揺していた。

椰子なごみは、既に――黒須太一に完全に敗北している。
大好きなセンパイの仇を、なごみは取る事が出来なかった。
黒須太一は哀れな女として、自分を嘲笑っていたのだろう。だからトドメも差さずに自分を逃がしたのだ。
クソッ……! クソッ……どうして私は……!! 

屈辱だった。本当の敵は何食わぬ顔で、間抜けな女を騙し切ったのである。
これでは、私は完全な道化ではないか。
恋人が死んだ事も知らずに、故人へと奉仕を続けていた衛宮士郎を馬鹿になんて、出来ない。


「殺してやる……殺してやる……黒須太一……絶対に、この手で……ッ! そして、センパイを生き返らせるんだ……!」



374 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:01:12 ID:FBWSV3d+
 

375 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:01:17 ID:uO7YjNKF


376 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:01:35 ID:Gu4ILISf
「うーん」
「…………?」
「もう、これくらいでいいかなぁ。いいよね、うん」


ぼそり、と美希が呟いた。
電柱にもたれ掛ったままの少女はゆっくりと、自身のスカートの中に右手を伸ばす。
あまりにも自然で、それでいて無駄のない動作。
銃口を向けている筈のなごみですら、美希の動きにまるで疑問を持たなかった。

だから、なごみは最後まで気付かなかった。
目の前の少女が「獅子」に狩られるだけの子羊などではなく、
元の世界で何度もその手を真っ赤な血で染めた「鬼」であるという事に。


「えいっ」


そして、一ミリの揺らぎもなく美希は取り出した"ソレ"をなごみへと投げ付けた。


山辺美希の群青色は、究極の自己愛だ。
何よりも、誰よりも自分が大切でそして自分が自分でなくなる事が何よりも恐ろしい。
だから、なごみの「か弱い少女」という美希の分析はある意味正解とも言えるのだ。

本来の美希は優しく、大らかで、かなり適当な性格をしている。
だが、何百分の一の確率で起こった最初の「固有化」以後、彼女はただ生き抜く事だけを優先して来た。


そうだ――弱いからこそ、少女は生き残るために人を殺すのだ。



377 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:01:38 ID:tVi+9JIm


378 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:01:58 ID:UUuMBrGG
 

379 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:02:12 ID:tVi+9JIm


380 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:02:17 ID:FBWSV3d+
 

381 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:02:30 ID:Gu4ILISf
「――えっ」


ガッ、という金属と骨とがぶつかり合う鈍い音が闇の中で一瞬立ち上り、すぐさま消え去る。
ソレはいわば銀色の「花」のようだった。
マバタキ程度の遅れと共に鮮血。新たに芽を出した紅の液体が、水面に咲き誇る彼岸花のような色合いを示す。


なごみの世界が暗転する。意識が途絶えそうになる。
身体がゆっくり、ドスン、という大きな音を立てて後ろへ倒れた。
血液がドクドク、と流れ出す。花は折れず、垂直に咲き誇る。

なごみの額に数センチ幅の小型のナイフが突き刺さった。
投げナイフ――スローイングナイフと言った方が適切だろうか。
美希の支給品であるそれは、プリーツスカートの奥。彼女の太股に装着されていたのである。


「う……そ……、せ、センパイ……センパイの……仇が……」
「あ。嘘といえば。椰子さん、ごめんなさいです。
 美希も大変申し訳なく思い、今更ながら反省している次第なのですが……、」


立ち上がり右手で髪の毛を弄りながら、にっこりと美希は微笑んだ。


「えへへ、我々を襲ったのは実は太一先輩ではない訳でしてっ」
「…………ぇ」



382 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:03:11 ID:FBWSV3d+
 

383 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:03:16 ID:tVi+9JIm


384 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:03:34 ID:Gu4ILISf
額に感じる強烈な痛みと、現実味の無さから意識は薄弱。
それでも、にこやかな笑みを浮かべる美希の姿は、彼女の血に濡れた双眸からも鮮明に映る。


「その方のお名前はこちらの情報によりますと「一乃谷愁厳」という白い学生服を着た真面目系の御仁らしいです。
 レオさんはそんな学生服なんて着てませんし、どちらかと言えば熱血系ですよね」
「オマエ……う、嘘……を……」
「うん、まぁそうなります。だって、黙っていた方が良い事もありますよね、実際。
 一乃谷さんではなく、太一先輩をチョイスしたのは美希の勘だったんですけど」


うんうん、と眼を閉じ美希は数回頷いた。
なごみは固いコンクリートの海に抱かれ、満点の星空を見上げる。


「まぁお互い様です。椰子さんも私を殺すつもりだったじゃないですか。
 狸と狐の化かし合いみたいなものです。"今回"は私の勝ちという事で。もしかしたら、次があるかもしれませんしね」




385 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:03:37 ID:UUuMBrGG
 

386 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:03:54 ID:uO7YjNKF


387 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:04:05 ID:FBWSV3d+
  

388 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:04:09 ID:Gu4ILISf
……何を、言っているのだろう。

言葉は、残酷だ。
眼は閉じる事で情報をシャットアウトする事が出来る。
だけど、音を完全に遮断するのは難しくない。
聞きたくない真実だって勝手に私の心の中へと侵入してくる。

山辺美希に騙されたという怒りは湧いて来なかった。
いや、単純に「今更」という意識が強く在ったからだろう。
本当の仇であるらしい一乃谷愁厳の事を考える気にもならない。

なぜなら、もうすぐ、私は……死んでしまうからだ。

自分の最期なのだ。自分が一番良く分かる。
額に突き刺さっているナイフが私の脳神経を傷つけ、絶命へと誘うのだ。
この思考している私はいわば猶予期間。
……神様がくれた最後のプレゼントなのかもしれない。

――私が、センパイの事を考えるための。



389 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:04:13 ID:tVi+9JIm


390 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:04:44 ID:UUuMBrGG
 

391 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:04:44 ID:tVi+9JIm


392 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:04:45 ID:FBWSV3d+
 

393 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:04:45 ID:Gu4ILISf
私――椰子なごみは、この「ゲーム」とやらが始まってからずっと、命を賭けた戦いに身を投じていた。
切り裂かれた腕も、味わった苦汁も、そしてセンパイを失った悲しみも全部受け止めてここまで来た。

私は…………自分で言ってて恥かしくなるけれど、それなりに頑張ったと思う。
だって、御伽噺の中のキャラクターである筈の魔法使いがゴロゴロしている空間だ。
あくまで一般人の私にしては良くやったのではないだろうか。
目の前の女狐も、常人ならばあり得ないナイフ投げを披露してくれた訳だし。


だから、

その、

もしも、センパイが天国からこんな私の姿を見ていたら……。

きっと人を殺した私はセンパイと同じ所には行けないと思うけれど。

……でも。

それが間違った思いだって事は分かってる。
センパイを苦しめるだろう事も全部全部、私は分かっている。

だけどそれでも、

私は………………、

ただ、センパイに「なごみ、頑張ったな」って優しく頭を撫でて貰いたかったんだ。



394 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:05:25 ID:LKO/wO0X


395 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:05:28 ID:FBWSV3d+
 

396 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:05:48 ID:tVi+9JIm


397 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:06:05 ID:FBWSV3d+
 

398 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:06:21 ID:uO7YjNKF


399 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:06:23 ID:UUuMBrGG
 

400 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:06:23 ID:Gu4ILISf
センパイの声が聞きたかった。

センパイの顔が見たかった。

センパイに甘えたかった。

他人と殺し合うようなうざったい世界を抜け出して、センパイと二人だけの時間に溺れていたかった。


センパイさえ居れば他には何も要らなかった。
だから、私は守ろうとしたんだ。
センパイを、センパイと私の……二人だけの世界を。


私は…………!



「さよならです、椰子さん。対馬さんとお幸せに」




わ、たし…………は…………。







「"他の人"を殺したのは初めてなので……モヤモヤします。変な気分です」

401 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:06:36 ID:FBWSV3d+
 

402 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:06:39 ID:tVi+9JIm


403 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:06:55 ID:Gu4ILISf


…………。

「あの、ですね。椰子さん。美希……一つだけ黙っていた事があります。
 でも、これを椰子さんが聞いたらきっと悲しむと思って、言わないで取って置いたんです。
 もう聞いてはいないと思いますが、恋愛に疎いガキの戯言と思って聞き飛ばして頂けたら幸いです」

………………。



「あの……対馬さんと、椰子さんって――どんな関係なんですか?」


山辺美希は気付いていなかった。
私は、椰子なごみはまだ、生きていた。
もちろん、あと数分……数十秒、数秒で散ってしまう命ではあるのだけど。

……………………変な、質問だ。
私の態度を見ていれば分かるだろう。センパイも彼女に言っていた筈だ。そんなの恋人に決まって――


「その、失礼ながらっ。美希には……お二人が恋人同士にはどうしても見えなかったんです」


え…………?



404 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:07:17 ID:tVi+9JIm


405 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:07:21 ID:FBWSV3d+
 

406 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:07:44 ID:uO7YjNKF


407 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:07:51 ID:Gu4ILISf
「何ででしょうね。なんか、対馬さんって椰子さんの事、あんまり心配してませんでした。
 あとと、それじゃあ語弊がありますね。もちろん心配はしていたと思います。
 でも椰子さんの事も"椰子"って苗字で呼んで……名前では……"なごみ"とは呼んでいませんでしたし」
 

椰子……?

そんな筈はない。センパイは私の事をしっかりと名前で呼んでくれていた。
「なごみ」とハッキリした男の人らしい少し低い声で……!


「他の方…………えと、"鉄乙女"って方、分かりますかね? そちらの女性、あと"対馬ファミリー"でしたっけ。
 フカヒレさんにスバルさん……あと、この場にいない蟹さんとか。
 美味しそうな名前の方達のことばかり心配していたような……」


鉄先輩や対馬ファミリーの方が大事なんて……そんな、そんな事ある訳がない。




408 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:08:06 ID:FBWSV3d+
 

409 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:08:19 ID:tVi+9JIm


410 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:08:28 ID:Gu4ILISf
「他の方が話題になる事の方が多く……いえ、美希と対馬さんは二、三時間しか一緒にいなかったのですが……。
 んーこれは、まぁ気のせい、ちょっとした行き違いなのかもしれませんね。
 美希の中では対馬さんは椰子さんを愛していた、という事にしておきますです、ハイ」


だって、私たちは……私たちは……。

嘘だ……嘘に決まっている。

またこの女狐が口から出任せを言っているに決まって……!


……でも、私はもう意識なんてほとんど残っていないのだ。

指の一本、首を捩る事も瞳を開く事も出来ない。
それこそ脈や心拍を計測しなければ、死人と変わらない筈。

そんな――死人に向けて嘘を吐いたりするのか?


嘘……だ。


私は、愛されていなかった?
私は、センパイに愛されていなかったのか?

あれは全部嘘、演技だった……そういう事、なのか?




411 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:08:42 ID:uO7YjNKF


412 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:08:49 ID:tVi+9JIm


413 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:08:54 ID:FBWSV3d+
 

414 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:09:46 ID:Gu4ILISf
違う……、


嘘だ……!


そんな事はあり得ない……センパイは……ちゃんと私を……!


嘘、だ……。


うそ……、


う、うそ……だと、言って……ください…………センパイ……!








センパイ……。


セン……パイ……。



415 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:09:46 ID:tVi+9JIm


416 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:09:47 ID:FBWSV3d+
 

417 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:10:20 ID:Gu4ILISf
それ、でも…………!


それでも、あなたが……わたしのことを……どう思っていたとしても…………!





あな……たのことが……大、好き……でした……。


本当に……、本当に……、



わたしは、あなたのことが…………!



【椰子なごみ@つよきす-MightyHeart- 死亡】


 † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † † 



418 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:10:21 ID:uO7YjNKF


419 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:10:24 ID:FBWSV3d+
 

420 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:10:24 ID:tVi+9JIm


421 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:10:51 ID:UUuMBrGG
 

422 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:10:52 ID:Gu4ILISf
「変な話……人を殺して回るなんて、自分の命が大切じゃないのかなぁ」

何となく口に出てしまった言葉などではなく、美希は心の底からそう思ったのだった。
ちらり、と額からナイフの生えた少女の顔を覗き見る。
カッと目を見開き、眉間から流れ出した少しだけドス黒い血が端正な顔を汚している。
断末魔の表情という奴は見ていてあまり気持ちの良いものではない。


先程までの「臆病な山辺美希」は全て『演技』だった。
美希はイングラムM10という強力なサブマシンガンを所持している。
回転弾倉式のリボルバーであるコルトパイソンに対して相当な優位に立っていた訳だ。
加えて相手は完全な素人。数十回のループと太一に仕込まれたサバイバルテクニックが美希にはあった。
慎重に対処すれば、付け入る隙はいくつも存在したのだ。

しかし、美希はなごみをすぐに殺そうとはしなかった。
深優や双七が救助に来ない事を確かめたかったのもそうだが、もう一つ理由がある。
それは、皮肉にもなごみと同じく「情報を引き出したかった」というモノだ。

ずっと誰かと共に行動していた美希にとって、なごみと一対一になった状況はある種の転機であった。
庇護者を探すにしても、他の参加者の情報を入手している事は大きなアドバンテージになるのだから。


423 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:11:23 ID:Gu4ILISf
久しぶりに……いや、違う。"初めて"違う人を殺した。
怪人や狂人でもなく、群青色でもない、ただの人を……。


霧ちんを――裏切って背後から撃ち殺す。
霧ちんを――美希の身代わりにする。
霧ちんが――曜子先輩に殺されるのを見ている。
霧ちんが――太一先輩に殺されるのを見ている。
みみ先輩が――屋上から落下していくのを眺める。
桐原先輩が――飢え死にするのを確認する。ナイフを心臓に刺しておく。
桜庭先輩は――気付くといなくなってる。
島先輩は――アンテナを壊している。後ろからクロスボウを撃つ。

曜子先輩と太一先輩を殺せた事はまだ、ない。


生き残るために人を殺すのは仕方が無い事だ。いや、当たり前と言った方がいいだろうか。特に感慨はない。
自分には何"人"という数え方は適当でない。何"回"とカウントした方がいいのだろう。
殺していない事は覚えているけれど、殺した回数は覚えていない。
それは、両手の指を使ってもとっくに足りないほどの数だ。記憶しておく必要があるのか、甚だ疑問ではあるが。

「よっ……はっ、と」

スッとスローイングナイフを椰子なごみの額から引き抜く。
ピュッと音がして血が飛び散ったら困るので、細心の注意を込めて引き抜く。
美希の右肩に血が滲んでいる事は構わない。だけど、返り血が制服に付いてしまうのは困る。
着替えは持っていないのだ。さすがにうら若き乙女として、下着姿で空の下を歩く訳にはいかない。


「でも、対馬さん……本当に、椰子さんの事……?」



424 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:11:24 ID:FBWSV3d+
 

425 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:11:37 ID:uO7YjNKF


426 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:11:52 ID:UUuMBrGG
 

427 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:12:00 ID:Gu4ILISf
死体に語り掛けるように、ぼそりと美希は先程なごみに喋った事を繰り返した。
確かに名前ぐらいは聞いていた。
だけど、彼の口から飛び出した名前の割合を考えるとよく分かる。
会話の中でも「鉄乙女」や「フカヒレ」「伊達スバル」と言った名前は頻出だったが、彼女の名前はどちらかといえば付け加える感じだった。
恋人同士とは……考え難い。

「もしかして、椰子さん……対馬さんに片思いをされていたんですかね。
 もしくは、その、アレですか。この愛の深さを見るに。積もり積もった屈折した愛情……ストーカーとかいう類の……?
 ハッ!? まさか……や、ヤンデレとかいうちょっとアレな人……? むむむ……」

はわわ、といった感じで再度物言わぬなごみへと語り掛ける美希。
初めて"七人以外の人"を殺して、今日は少しだけ感傷的だった。
スローイングナイフに付いた血糊を拭き取りながら、首を傾けるも答えは出てこない。

やっぱり、よく分からない。
彼女を頭のおかしなちょっと自分の世界に入っちゃってる系の人間だとカテゴライズするのは実際、簡単。
でも、何かが違う気がする。

一方通行の愛と双方向の愛。
日頃から処女処女と太一にからかわれている美希にだって、その判別ぐらい付く。
彼女は、確かに対馬レオを愛し、そして彼からも十分過ぎるほどの愛情を貰っていた筈なのだ。



428 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:12:33 ID:FBWSV3d+
 

429 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:12:37 ID:Gu4ILISf
【椰子なごみの対馬レオは彼女を十分に愛してくれていた】

【だが、美希の出会った対馬レオは椰子なごみにそれほど関心を払っていた訳ではない】


前者の対馬レオをA、後者の対馬レオをBとして考察開始。
この仮説において、対馬Aと対馬Bはイコールと言えるのだろうか。

いや、言えなければおかしい。そうでなくては対馬レオが沢山居る事になってしまう。
人間はアメーバのように一人で勝手に増えたりはしない。
対馬レオの思考回路にはちょっとアメーバが入っていた、とかの戯言は無しとして。
それにあんな直情タイプの人が一杯居たら暑苦しい。しかも弱いのだ。おお、ベリーバッド。


…………ではなくて。

《=》の記号で両者を結ぶ事をどうしても躊躇ってしまう気持ちが、確かに美希の中にはあるのだ。
勿論、なごみを殺した事への謝罪の気持ちというか、乙女の慕情的な意味なのだが。

「……ま、いっか」

考えても埒が明かないので、思考プロセスを遮断。もっと他に考えるべき事は沢山ある。
例えば、これからの享受について、とか。
一番妥当なラインは深優と双七の元に戻る事だ。だが、コレは彼女達が衛宮士郎に勝利する事が最低条件。
両者の戦力バランスが掴めない以上、微妙な策だ。


430 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:12:39 ID:tVi+9JIm


431 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:13:24 ID:tVi+9JIm


432 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:13:37 ID:Gu4ILISf
だが……どちらにしろ、この場所に長居は無用だろう。
誰かに、この光景を見られていたら困った事になる。
いや、確実にこれは正当防衛なのだが要らぬ誤解を招きかねないし、美希の"擬態"を見破られる可能性もある。
ひとまずは何処かに身を隠し、状況を分析するべきだろう。誰か知り合いがいないか探すのもいいかもしれない。

「むぅ」

美希は何となく、極端に起伏の少ない自身の胸の辺りをペタペタと触ってみた。
なるほど、いつも通り何もない。わははははは(泣)

……という訳でもなくて。

「やっぱり、変だ」

不思議な気持ちだった。

胸の奥がモヤモヤとしてキューッと痛んでバクバクと脈を打っている。
心臓は元気だ。至って正常に血液ポンプとしての役割を全うしている。

でも、そのもっと奥の方で…………何かが軋んでいる気がするのだ。
漠然とした感情だった。良く分からない感覚だった。



433 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:13:44 ID:FBWSV3d+
 

434 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:13:49 ID:UUuMBrGG
 

435 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:14:08 ID:Gu4ILISf
「変だな……なんだろう、どうしてだろう」


疑問は止まない。まるで意味が分からない。
何度も、何度もやった事を繰り返しただけだ。何も特別な事なんてない。
固有した世界で、私は何度人を殺したかなんて、もう覚えていない……。

「あ……」

でも、その時ようやく美希は気付いたのだった。


「なんで、私、泣いてるんだろう?」


自分が、何故か涙を流している事に。

ポタポタと流れる雫は雨のように、頬を伝い流れ落ちていく。
土砂降りだ。どれだけ服の袖で拭っても、液体は止め処なく溢れて来る。
初めて誰かを殺した時にだって、こんな事にはならなかったのに。



436 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:15:00 ID:Gu4ILISf
おかしいよ……どうしてなんだろう……。
ただ、人を……ループの外で人を殺しただけなのに。
知らない人を、襲い掛かってくる人を殺しただけなのに。


でも、一つだけ、確かな事があって。




それは、私、山辺美希は……今日、この瞬間から――



この世界でも人殺しになったという事。



【B-7 市街地/1日目 夜中】


437 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:15:01 ID:tVi+9JIm


438 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:15:12 ID:FBWSV3d+
 

439 :世界の終わり、あるいは始まり:2008/08/03(日) 02:15:54 ID:Gu4ILISf
【山辺美希@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
【装備】:イングラムM10@現実(32/32)、投げナイフ4本
【所持品】:支給品一式×3、木彫りのヒトデ7/64@CLANNAD、ノートパソコン、MTB、
     『全参加者情報』とかかれたディスク@ギャルゲロワ2ndオリジナル、イングラムM10の予備マガジンx3(9mmパラベラム弾)
     コルト・パイソン(6/6)、.357マグナム弾10発、スタンガン
【状態】:涙、右肩に銃の掠り傷、左膝に転んだ傷跡、疲労(小)
【思考・行動】
 基本方針:とにかく生きて帰る。集団に隠れながら、優勝を目指す。
 1:自身の生存を何よりも最優先に行動する。
 2:最悪の場合を考え、守ってくれそうなお人よしをピックアップしておきたい。
 3:バトルロワイアルにおける固有化した存在(リピーター)がいるのでは?という想像。
 4:太一、曜子を危険視。深優を警戒。
 5:詳細名簿のデータを見て、状況に応じた処置をする。
 6:よく分からないけど、胸の奥が痛い
 
【備考】
 ※千華留たちと情報交換しました。深優、双七、なつきと情報を交換しました(一日目夕方時点)
 ※理樹の作戦に乗る気はないが、取りあえず参加している事を装う事にしました。
 ※なごみの知っている対馬レオと、自分が会った対馬レオは同じ……?
 ※なごみと敵対していた人間の名前を入手(クリス・ヴェルティン、来々谷唯湖、千羽烏月、藤乃静留、衛宮士郎)

440 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:15:55 ID:FBWSV3d+
 

441 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:15:56 ID:LKO/wO0X


442 : ◆tu4bghlMIw :2008/08/03(日) 02:16:37 ID:Gu4ILISf
投下終了です。

443 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:17:07 ID:FBWSV3d+
 

444 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:45:23 ID:LKO/wO0X
投下乙です!
ミキミキ……なんという外道!なんという小悪魔!
って言おうとしたけど、彼女も彼女で不安定なところがあるか。美希かわいいよ美希
やる夫を想いながら死んでいくなごみに、まさかの並行世界トリックを仕掛けるとは……死に際の心理描写が映えますねぇ
闇雲に先輩の後姿を追っていた彼女だけど、その最後は実に切ないものだった。南無。

美希は次の放送で太一と曜子の死を知る……ターニングポイントだなぁ
この世界でも人殺しの肩書きを背負う。以降の彼女の心理が気になるフレーズだぜ……

445 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 02:51:26 ID:+qIna5kS
投下乙でした
ミキミキが実に腹黒カワイイ
しかし絶望まみれのなごみはマーダーとはいえ哀れすぎる

446 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 04:00:33 ID:rv7Tx/TC
投下乙!
ミキミキは花は花でも最早人食い花だな。
なごみじゃ手に負えなかったか・・・合掌。
ループの中で勝てなかった2人が死んだ事を知ったら揺れる彼女がどうなるか楽しみだ。GJでした!

447 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 04:33:05 ID:F/hp0jSp
投下乙です
なごみが落ちたか……暴走しまくってたとは云え、悲惨な最期だったなあ
ロワらしい良い無常感
そしてミキミキ、物っ凄く黒いw
微妙に良心が残っているとはいえ、これは今後に期待出来そうなステルスマーダーだ

448 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/03(日) 21:21:35 ID:Zjn4bT4s
投下とつです
ついにクロチャンのラスボス本領発揮ですか
なんという狂気だ…さすが太一の一番弟子だぜ!
いなくなった太一の穴はミキミキが埋めてくれる!
そう期待せざるを得ない作品GJでした

449 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:00:22 ID:alJpIKue
「……戻って、きましたね」
「ああ。俺たちにとっちゃ、いわくつきの場所にな」

 ――夜の帳が落ち、荒廃した市街を満たす薄ら寒さが、深々とした寒気に変わる時刻。
 ダウンタウンとスラムのちょうど境目辺りに根を張る教会は、消失することなく元の場所に建っていた。
 この地に戻ってくるのも、数時間ぶりだろうか。
 別れの地でもあり、出会いの地でもあり、様々なドラマがこの教会を起点として巻き起こった……。
 忌みたる想いは、微かだがある。
 しかしその一方で、決して無益なものでもなかった、と強い意志が囁きかけてもいる。
 三回目の放送を聞いてすぐ、伸ばした足は道草を食うこともなく。
 教会へと帰還した高槻やよいとプッチャンの顔は、俯いてはいなかった。

「うう〜、店長さん、お店開けてくれるかなぁ?」

 右手に不細工なパペット人形を嵌め、キャミソール一枚の寒そうな肌を外気に晒すやよい。
 神聖にして豪奢な十字架を前に、臆することなく一歩を踏み出す。

「さぁな。こればっかりは、もう一度チャイムを鳴らしてみなけりゃわからない、が……」

 右手のパペット人形、プッチャンもまた、やよいと視線を同じくして進む。
 人形の視力というものは、如何ほどのものだろうか。
 参考例はないが、このときプッチャンは、持ち前の鋭い勘からやよいより先にその存在に気づいた。
 ユニークな眼差しを教会の玄関先へと向けて、やよいにも言葉なく促す。
 やよいも気づき、その存在が夜目でも目視できる位置まで来て、足を止めた。

450 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:00:58 ID:Ia7i/5s4
 

451 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:01:05 ID:alJpIKue
「……」

 その存在に気づきながらも、やよいとプッチャンは互いに無言。
 二人揃って無機質な視線を放ち、その視線を一身に浴びる存在も、口を開こうとしない。
 口どころか、目も開いていない。瞑想するように腕を組み、また通せんぼでもするように、玄関口に君臨していた。

 ざっくばらんな印象を放つ男らしい頭髪と、前髪の鬱陶しさを考慮したと思しき赤い鉢巻き。
 赤いティーシャツを包む僧兵のような着物姿は、一見しただけでは素性が知れない。
 そして、随所に窺える屈強な――筋肉。
 一式を備える巨漢の男が、開眼と共に口火を切る。

「今日も熱いぜ、井ノ原真人ォ!!」

 声高々に名乗りを上げ、夜の外気を吹き飛ばさん勢いで熱気を放出した。
 やよいとプッチャンが、はー、と短く息を漏らし、井ノ原真人なる少年の巨体を視界の中心に置く。
 ……しばらくの間、時間が止まった。

「……おい、どうしたよ。俺が筋肉で名乗ってんだから、おまえも筋肉で名乗り返せよ」

 望む反応が返ってこなかったのが不満なのか、真人はしかめっ面を浮かべてやよいに注意を促す。
 目的地で待ち構えていた見知らぬ男、その予想外のファーストアクションに、呆然としていただけのやよいは心中で「え〜……」と零す。
 どう返したものかと呆けていると、

452 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:02:14 ID:US0nkOkl


453 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:02:19 ID:alJpIKue
「……あいにくと筋肉はねぇが、名乗れと言われて黙ってるわけにはいかねぇなぁ。
 俺の名はプッチャン。それ以上でもそれ以下でもねぇ。よーく覚えておきな」

 饒舌な相方が、先んじて名乗りを上げてくれた。
 ニヒルな台詞を舌足らずな声調で告げ、真人はそれに対し目を細めて笑む。
 まるでプッチャンの境遇を……筋肉を持たぬ人形の体を嘲笑うかの如く、陰険に眉根を寄せていた。
 その仕草に若干の嫌悪感を覚えたやよいは、プッチャンの本意を継ぐように開口する。

「イェイ! 高槻やよいです!」

 元気な挙手と共に、右手に嵌ったプッチャンを高々と掲げる。
 長身の真人と目線を同じくしたプッチャンが、露骨なファイティングポーズを取って相手を挑発。
 真人の態度は変わらず……しかし瞳に僅かな火種を灯し、闘争心を宿したかのように眼光を鋭くする。

「わかってんのか? おまえはもう筋肉空間に足を踏み入れちまってるんだよ」
「筋肉空間ね……へっ、笑わせるぜ。筋肉しか能がありませんって図体してよ」

 プッチャンの口元と、真人の口元が、まったく同じタイミングで緩む。
 ぶつかる視線と視線の間に稲妻を幻視し、やよいはごくりと生唾を飲んだ。

「来いよ……筋肉の有無がバトルの明暗をわけるってことを思い知らせてやる!」
「筋肉はなくても強ぇ男は強ぇってことを……このプッチャン様がわからせてやるぜぇ!」

 ――そうして、必然とも言えたであろう男たちの衝突が始まる。
 ゴングは鳴るが、この戦端に介入(ツッコミ)する者は、まだ現れない。


 ◇ ◇ ◇



454 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:03:01 ID:alJpIKue
 


  たまご風味のグッピー
   井ノ原真人

            VS

           それ以上でもそれ以下でもない
                     プッチャン



         バトルスタート!





 【ルール】
  ※使用する武器は安全を考慮し、「野次馬から投げ込まれたものを無造作に引き当てる」とする。
  ※バトル勝者は敗者に恥ずかしい称号をつけることができる。
  ※なお今回は野次馬不在のため、武器の使用に制限は設けない。




455 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:03:39 ID:Z0Pp4M+k
 

456 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:03:41 ID:US0nkOkl


457 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:04:05 ID:alJpIKue
 
 >真人は『木魚』を手に取った!
 >プッチャンは『ルールブレイカー』を手に取った!

「ってちょっと待てコラァ! 明らかな凶器は反則だろうがぁ!」
「なーに、俺には筋肉がねぇからな。ハンデだよハンデ」
「チッ……なら仕方がねぇな」
(仕方がないんだ……)

 >真人の攻撃!
 >真人は木魚を打ち鳴らした!
 >ポクポクポク……しかしプッチャンはものともしない!

「効かねぇなあ。全然効かねーぜ!」
「ですよねー」

 >プッチャンの攻撃!
 >プッチャンはルールブレイカーの刃先をチラつかせた!
 >真人がショックを受ける!
 >真人に54のダメージ!
 >真人に55のダメージ!
 >真人に57のダメージ!

「……刃物ってやっぱり卑怯じゃない? なあ?」
「どうした? 早くも怖気づいたか? 教会の番人さんよぉ」
「なにおぉぉぉ!!」

458 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:04:53 ID:alJpIKue
 >真人の攻撃!
 >真人は木魚で殴りにかかった!
 >ミス! やよいが驚いて飛び退いたことによりプッチャンには当たらない!

「うぅ〜、この人怖いです〜」
「いたいけな少女に暴行を加えるたぁ……堪忍袋の尾が切れたぜ!」
「おっと、見縊ってもらっちゃ困るな。俺の筋肉はこれでも紳士的なんだぜ?」
「悪党がよく使う台詞だぜ……なんにせよ、やよいを傷つける奴は俺が許さん!」

 >プッチャンの攻撃!
 >プッチャンはルールブレイカーを捨て去り、臨戦態勢に入った!

「信念に基づいて行動する! 人はそれを正義と言う!」

 >プッチャンの体が炎を纏い――スーパープッチャンと化す!

「いま俺が行っていることは、暴力ではない! 正義という名の粛清だー!」

 >プッチャンの連続攻撃!
 >殴打! 真人に221のダメージ!
 >殴打! 真人に237のダメージ!
 >殴打! 真人に219のダメージ!
 >殴打! 真人に220のダメージ!
 >殴打! 真人に232のダメージ!
 >殴打! 真人に239のダメージ!


459 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:04:55 ID:S8VOY+Oj
支援

460 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:05:27 ID:alJpIKue
「がっ!? ごほっ!? ぢょぉ!?」

 >殴打! 真人に217のダメージ!
 >殴打! 真人に239のダメージ!
 >殴打! 真人に228のダメージ!
 >殴打! 真人に216のダメージ!
 >殴打! 真人に233のダメージ!
 >殴打! 真人に235のダメージ!

「――バーニング!」

 >プッチャンの攻撃がクリティカルヒット!
 >真人に9999のダメージ!
 >真人は倒れた!

 >プッチャンの勝利!


 ◇ ◇ ◇


 ――男たちの戦いが終局を向かえ、そこには勝者と敗者の構図が出来上がっていた。
 勝ち誇った顔で足元の真人を見下ろすプッチャン、そしてその宿主であるやよい。
 体中をボロボロにして、仰向けに倒れる真人。しかしその表情は、恍惚に笑んでいた。

461 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:05:37 ID:US0nkOkl


462 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:05:40 ID:Z0Pp4M+k
 

463 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:06:09 ID:alJpIKue
「ふっ、いい筋肉だったぜ。どうやら、俺はおまえのことを誤解してたみたいだ」
「へ、へへ……そいつぁ俺のセリフだ。筋肉は持ってねぇが……なかなかだった。あばよ…………いい筋肉でまた会おう…………ガクッ」

 我悔いなしといった風に勝者への賛辞を送り、真人は力尽きた。
 無残に玉砕していった対戦者を、プッチャンは卑下したりはしない。
 拳を合わせてみて痛感した。筋肉を持たぬプッチャンが羨むほどの筋肉、それがこの井ノ原真人なのだと。

「……あのう、大丈夫なんでしょうか?」
「【井ノ原真人@リトルバスターズ! 筋肉に殉死】ってな。こいつも本望だったろうぜ」

 なぜか平常心な、それどころか爽やかな汗すら浮かべそうなプッチャンに反し、やよいは戸惑い気味だった。
 とりあえず、この人どうしようか……と立ち往生していると、真人が塞いでいた教会堂の玄関扉から、見知らぬ影が姿を現す。
 艶やかなロングヘアを備えた学生服の美女と、厚手のコートを着込んだ銀髪の少女、そして少女らに付き従うのは肉襦袢のようなものに包まれた軟体動物。
 二人と一匹がやよい、プッチャンの二人組と視線を合わせ、各々の反応を示す。

「うん? おお〜! なんだ、会長さんじゃねぇか」
「まぁ、プッチャンさん」
「もげー!? な、なななんかへへへんななな!?」
「てけり・り?」

 見知った顔の登場にプッチャンが軽く驚き、異形の筋肉スライムにやよいが腰を抜かしそうになる。
 真人はノックアウトされたまま、再起することはできない。彼が起き上がったところで、事態の収拾に繋がるわけではないが。

「……茶番だわ」

 無邪気な子供と、ユニークな人形と、天然系の会長と、得体の知れない軟体生物と、KO中の筋肉馬鹿が入り乱れる中で、唯一の常識人が悩ましげにそうごちた。


 ◇ ◇ ◇



464 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:06:36 ID:Z0Pp4M+k
 

465 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:06:50 ID:8co5TYZH


466 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:07:39 ID:alJpIKue
「信用できるかどうかなんて、筋肉で語り合えばすぐに片がつく。
 ネムもやよいもたいした腹筋だ……だから俺は信じるぜ! おまえらの筋肉をなぁ!」

 そう暑苦しく断言するのは、今の今までのされていた井ノ原真人だ。
 教会の門前で気を失ってしまった彼を礼拝堂まで――引きずって――運び込み、手団扇で扇ぐなどして再起を待つこと数分。
 介護を務めた面子に懐疑心の要素はなく、談笑や四方山話、これまでの経緯などを語り合っているうちにすっかり打ち解け、さらに数分。
 ようやく目覚めた真人の筋肉による人格判断も、実のところはなんの意味も持たない。
 そもそも、高槻やよいがプッチャンという人形を所持していた時点で、神宮寺奏を中心とする三人が彼女を受け入れないはずもないのだ。
 火災現場で発掘した謎の機械――三つの光点が首輪に反応していると気づいた奏たちだからこそ、やよいの到来も予期できた。

「まぁ。それじゃあ高槻さんはずっと一人で……心細かったでしょうに」
「思い出すのは、まだちょっぴりつらいけど……プッチャンがいましたから」
「私には、まだ少し信じられないのだけれど……腹話術では、ないのよね?」
「俺としては、こっちの奇想天外なスライム……のが受け入れがたいんだが、どうよ」
「てけり・り……てけり・り」
「あのー、もしもしみなさん? 俺の話聞いてます? もしもーし」

 荘厳なステンドグラスが月明かりを透過する夜の下、静謐とした礼拝堂に、四人と一体と一匹の声が集う。

 宮神学園女子制服を着込む、憧れの対象ともいえる美貌の保有者、極上生徒会会長――神宮寺奏。
 失ったトレーナーの代わりに教会裏の宿舎から拝借した修道女の制服を着せてもらった、アイドル――高槻やよい。
 艶やかな銀髪に、蕩けそうなほどおっとりとした独特の空気を纏う、記憶喪失の少女――ネム(仮称)。
 やよいの右手に嵌り、今の今まで彼女の相棒兼保護者として務めてきた、パペット人形――プッチャン。
 粘着性を伴う軟体に、擬似筋肉の鎧を装備した、某RPGの某スライムのような、ショゴス――ダンセイニ。
 そして、筋肉――井ノ原真人。

467 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:07:51 ID:US0nkOkl


468 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:08:42 ID:US0nkOkl


469 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:09:26 ID:8co5TYZH


470 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:09:26 ID:US0nkOkl


471 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:09:32 ID:PT8hDGOU


472 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:09:47 ID:6hzQDAyQ
支援

473 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:10:28 ID:alJpIKue
 やよいやネムとしては数時間ぶりの、各々にとっても特別ないわくが残る、一言に神域とは表せない建物が談合の場だった。
 そのちょうど中心、整列された木製の長椅子に腰掛けながら、ゲーム参加者である四人は今日一日の出来事を、情報という形で清算させていく。

 列車の天井に飛ばされ、いきなり酷い目に遭った――。
 究極の筋肉と至高の筋肉が出会うのは必然だった――。
 おそらくはこのゲームを切欠として、一切の記憶を失ってしまった――。
 暗殺者に襲われそうになった影で、劇的な二つの出会いを果たした――。
 己にできることを模索する内に、ようやく正解へと辿り着けそうな段階まできた――。
 たとえどんな状況下であろうと、日々の筋トレはやめられない……筋肉の成長は――。
 生き残るため、そして記憶を取り戻すため、出会いと離別の果てに奔走する道を選び取った――。
 友達との再会で知ってしまった並行世界、教会を起点とした奇怪にして興味深い現象の数々――。

 話の種としては一等な、纏めるべき情報としては過密な、それぞれの経験が集約する。
 それを纏め上げるのが……若輩にして宮神学園の理事を一手に引き受ける少女、神宮寺奏の務めだった。

「しかしよぉ、神父だから教会にいるのは当然と思ってたが、結局誰もいやがらねぇじゃねぇか」
「真人さんの思惑は、見事に外れてしまったわね」
「てけり・り」
「励ましてくれるのか、ダンセイニ? へっ、ありがとよ。まあいい……俺の筋肉もたまには勘を外すさ」

 まず――気になる場所がある、という真人の言を切欠とした、教会への進路転換。
 序幕の際に開会を宣言した神父、言峰綺礼の手がかりが残されているのではないかという期待を込めた移動だったが、成果は得られなかった。
 教会には言峰はおろか、神父やシスターの姿もなく、寺の地下に配置されていた大仏のような目新しい特異点もない。
 しかし、それはあくまでも現状の探査結果に過ぎなかった。

474 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:11:21 ID:US0nkOkl


475 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:11:21 ID:8co5TYZH


476 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:12:05 ID:alJpIKue
「でもそうなると、やよいさんの言う地下階段の話は本当なのかしら? 今はどこにも見当たらないけれど……」
「だが、嘘でも見間違いでもねぇ。やよいと、このプッチャン様が証人になるんだから絶対だ」
「地下室と古書店と……店主さんを名乗る女性の声、というのも気になりますね」
「うっうー、その古本屋さんで貰った本も、ちゃんとここにあります!」

 教会に辿り着いた奏たちは、そこでなにも発見することができなかった。
 しかし奏たちが訪れる以前、既に教会を調べていたやよいとプッチャンは、確かな特異点を見つけたという。

 教会の奥に隠された、地下へと繋がる階段。
 地下の小部屋で磔にされた、キリストを思わせる金髪の男性遺体。
 階段を上った先にあった、教会堂よりも広い古書店。
 古書店の店主を名乗る、声だけの怪しい存在。
 古書店に設置された、転移装置と思しきエレベーター。
 古書店でやよいが選び取った、謎の書物。

 それに加え、やよいたちが古書店に移動したのを見越したかのような菊地真と伊藤誠の放逐、ひいては伊藤誠の死亡と彼を殺害した西園寺世界の来襲、それによる葛木宗一郎の死去。
 解釈次第では全てその店主の術中とも思えてしまう、一連の不可解すぎる流れ。
 真人が教会を目的地に定め、やよいが教会へ戻ることを選択した。
 そんな偶然の出会いにさえ、疑いの眼差しを向けてしまう。

 元々、奏は人を疑ることが得意ではない。
 この疑いは人心に対する懐疑心ではなく、ミステリーに対する推理の延長のようなものだ。
 教会という施設が持つ役割以前に、古書店の店主が最適解の鍵を握っているのではないか、と思考を廻らせる。

477 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:12:18 ID:US0nkOkl


478 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:12:48 ID:6hzQDAyQ
支援

479 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:13:07 ID:alJpIKue
「その店主さんは、高槻さんたちをわざわざ招いて、お客さんとして接待までしてくれたのですよね?」
「楽しそうだったから――俺が目的を聞いてみたら、含み笑いでそう答えてやがったぜ」
「わたしは、黒幕さんですかって尋ねました。はぐらかされて、答えは教えてもらえなかったですけど……」
「なんだかいけ好かねぇ感じだな。きっと筋肉もへぼいんだろうぜ」

 黒幕――見えざる地下室の存在といい、教会以上の間取りの古書店といい、法則性を無視しているにもほどがある。
 加えて、やよいたちに発していた例の意味深な言動だ。
 奏たちと境遇を同じくするゲーム参加者、などという可能性はゼロに等しく、あからさまに超常の存在なのは間違いない。
 言峰綺礼や神埼黎人、それに先の放送で初出を果たした炎凪。彼ら主催運営人の一味と考えるのが、妥当だった。
 それらを踏まえ、奏はさらに思索の海を潜る。

(私に、できること……ううん。私が、頑張らなければいけないこと)

 極上生徒会という武装を剥がされた極上生徒会会長として、このゲームで極大権限を得るにはどうすればいいのか。
 ――答えは変わらない。

 考える。
 組織の上に立つ者としての考察こそが、奏の持てる唯一の作戦であり、武器だった。
 トーニャを隠密として動かし、唯一の手がかりである藤乃静留との接触を持って切り開こうとした、舞台の背景を読む作業。
 それは新たに得た『謎の古書店店主』というファクターによって、進捗の兆しを見せつつあった。

(トーニャさんの動きを待つばかりではいられないもの。
 高槻さんとプッチャンさん、この二人が持つ情報を足掛かりに、私は真実を掴まなければいけない)

480 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:13:11 ID:US0nkOkl


481 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:14:00 ID:alJpIKue
 天然系のおっとり会長として通っている奏にしては珍しい、真剣な形相を見せる。
 歪みのない双眸が見据えるのは、現在の教会において一番の異質な部分。
 玄関から見て右奥の位置に、ポツリと設置された黒一色の扉。
 菊地真が中を調べ、入室の後姿を最後に消えた――懺悔室の扉だった。

「地下へ繋がる階段が消えちまったとなると、あと怪しいのはあそこだけだよなぁ」
「鍵がかかってるみたいで、中には入れないのよね。あんなプレートもかけられているし」
「なんなら、俺の筋肉でぶち破ってやろうか?」
「やめときなぁ。触らぬ神に祟りなし、だぜ。あんな露骨な注意書きまであるしな」

 懺悔室の入り口である黒の扉には、殴り書きされたようなメッセージつきのプレートが一枚下げられている。
 文面はこうだ。

『Don't knock! お越しのお客様は、入店証をお持ちになって来店し直してください』

 ……『店』という単語から窺うに、十中八九古書店の店主による伝言だと思われる。
 店主の存在を知らない者にとってはまったく意味の通じないものではあるが、あいにくこちらにはやよいという情報源がある。
 その点を踏まえれば、このメッセージは奏たちがやよいと遭遇することを見越して設置した……とも勘ぐることができた。

「入店証を提示すれば、おそらく古書店には入れる……入店証というのがなんなのか、わからないのだけれど……」

 入店証と一言に言っても、それが安易なパスであるとは思いがたい。
 参加者たちの支給品に、そういったアイテムが含まれているのか、またはそれに類するキーアイテムがあるのか。
 単純な道具に限らず、もしかしたら合言葉、入店の資格を示す重大な情報という可能性もありうる。
 もしくは、殺し合いの果てに導き出す実績。誰もが一度は目指すであろう、首輪の解除が条件とも考えられた。
 他に想定できるのは、人物か。例えばゲームの舞台裏に精通した工作員がいたとして、その人物自体が鍵となるケースも。
 道具、合言葉、情報、実績、特定の人物……証となるのは、いずれのどれかか。

482 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:14:04 ID:US0nkOkl


483 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:14:37 ID:8co5TYZH


484 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:14:42 ID:Z0Pp4M+k
 

485 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:15:10 ID:alJpIKue
「入店の可能性を残しているということは……私たちの来店を望んでいる、とも取れるのかしら?」

 話を聞く限り、やよいに接触を図った店主の行動には、不審な点が多々ある。
 楽しそうだったから……と本人は語るが、やっていることはアメと鞭だ。
 団結を築きそうだった四人組を散り散りにし、その一方でやよいを情報源として仕立て上げ、さらに奏たちとの遭遇を見越してメッセージまで残す。
 一連の流れが全て店主の思惑通りだとするならば、彼女こそこの殺し合いの掌握権を握るゲームマスターに他ならないのではないか。

「……『楽しそうだった』、というのはつまり、『楽しみたい』という意志の裏返しなんじゃ……?」

 そしてその思考は、ただの緩慢とした殺し合いを望まない……自らエッセンスを加え、思い描く理想形に誘導しようとしている。
 こうやって奏が考察を広げている事実すら、店主の術中の内ではないのだろうか……?
 楽しくなければ意味がない――極上生徒会にも通じる理念だからこそ、奏はそれを読み取ることができた。

「高槻さんたちに声をかけ、私たちに声はかけなかった。
 これは、高槻さんたちに渡した情報を餌として、私たちの行動すら操ろうとしているんじゃ……?
 鍵の掛かった懺悔室も、正統な手段を手に入れて中に入れ……という意味なのでは?
 そしてひょっとしたら――懺悔室の扉を潜った先に、光明があるんじゃ……?」

 やよいの証言がある以上、古書店と店主の存在は不動のものとなった。
 それらが超常の位置にあり、このゲームの裏を読むにあたって無視できない要素であるということも、知ってしまった。
 店主の思惑を探ってみれば、これは参加者たちに与えられた試練とも読み取れる。
 もちろん希望をチラつかせた疑似餌とも考えられるが、知ってしまった以上、縋るほかない。

486 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:15:14 ID:US0nkOkl


487 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:15:35 ID:8co5TYZH


488 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:15:53 ID:US0nkOkl


489 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:16:01 ID:alJpIKue
「私の考えすぎかしら……ちょっと飛躍しすぎてるとも思うけど……」
「会長さん、おーい、会長さんよぉー」
「けれど、やっぱり……彼らたちの目的を考えると不可解なところが多いし……」
「奏さーん。もしもーし、かーなーでーさーん」
「でも…………は、はい?」

 耳元で伸びる声にハッとし、奏は俯かせていた顔を上向けにした。
 なにやら視線を感じたので首を横に振るってみれば案の定、一同の眼差しが奏へと集中されている。

「あ、あら?」
「なんか、さっきからずっと独り言言ってたぞ」
「え、あ、あらら?」
「それも、今後に関わりそうなことを真剣な表情でね」
「あらららら?」

 どうやら心中で呟いていたはずの考察が意図せず漏れてしまっていたらしく、奏は頬を赤らめる。
 みんなに奏の考えを説明する手間は省けたが、形式としては無自覚の独り言だ。
 天然気質だが傍目にはできる女として評価されている身として、恥じらいは残る。

490 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:16:36 ID:US0nkOkl


491 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:16:38 ID:alJpIKue
「ご、ごめんなさい。なんだか恥ずかしい真似をしてしまったみたいで……」
「いやぁ、極上生徒会会長さんとしての考えをしっかと聞かせてもらったぜ。なぁやよい」
「うう〜、難しい話わかんないです……けど私もやっぱり、あの店長さんは黒幕だと思います!」
「あからさまになにかがある、と示されているわけだから……当たりをつける理由としては十分だと思うわ」
「てけり・り」

 赤面する奏をフォローするように、皆が賛同の意を示す。
 奏の意見をもっともだとは思いつつも、自らの思考でその可能性まで到達した者はいない。
 やよいはまだ中学生、そしてネムは記憶喪失、真人は……筋肉だ。
 賛同は心強いが、その一方で、本当に自分の出した道筋は正解なのかと不安にもなる。

(こんなとき、久遠さんや聖奈がいてくれたら……困ることもないのだけれど)

 奏は、宮神島に残してきた二人の同級生を懐かしむ。
 生徒会副会長を務める銀河久遠、隠密部リーダーの桂聖奈。
 共に、奏のブレーンとして時には提案、時には助言、時には忠告を促してくれた人物だ。
 いかに神宮司家当主、いかに極上生徒会会長といえど、全能ではない。
 組織というものを理解していても、読み違いをすることはままある。
 ここが日常の場だとして、もし考察の中に見落としがあるとすれば、久遠や聖奈がそれを補ってくれただろう。

 だからこそ、奏は欲する。
 自身の務めをサポートし得る、久遠や聖奈のような――『参謀役』の存在を。

「……なぁ、一つ提案なんだけどよ。今日はもう遅いし、寝ねぇか?」

 一同が閉ざされた懺悔室に視線を送る中、真人が唐突に言った。

492 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:17:10 ID:6hzQDAyQ
支援

493 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:17:31 ID:US0nkOkl


494 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:17:42 ID:8co5TYZH


495 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:17:46 ID:alJpIKue
「夜も遅いし、先もまだ長い。なにより暗闇は危ねぇ。他の奴らも大体そう考えるだろうし、身を休めたがるはずだ。
 そんな中で蘭堂や菊地を探し回ってもしょうがねぇしよ……ここいらで筋肉の骨休めといこうぜ」

 真人にしては珍しい、理に適った提案だった。

「まぁ、確かにそうだわな。そろそろ始まって二十四時間だ。みんなろくに寝てもいないだろうしな」
「そういえば、ずっと歩き尽くめでした」
「でも、ここを寝床にするのは危険じゃないかしら?」
「禁止エリアに囲まれた極所ですし、人が訪れることは少ないと思います。寝床なら、裏手の宿舎がありますし」
「てけり・り」
「フッ……満場一致のようだな。ま、俺は最初かっらみんなの筋肉が休みたがってるって気づいてたがな」

 意見が集約した瞬間、強張っていた体を解放する面々。
 奏も、ほぅ、と息をつき、肩に入れていた力を抜く。

「となると……今夜はパジャマパーティーだな! こいつぁ楽しみだ!」
「もう、プッチャンってばー!」
「ん? ああ、安心しろよ! やよいにそういうのは期待してないから! な、ネム!?」
「え? あ、あの……なんだか、いやらしい視線を感じるわ……」
「あははは〜、えーいっ」

 やよいは息巻くプッチャンの体をむんずと掴み、笑いながら床に放り捨てた。
 誰かの腕に嵌っていないと、プッチャンはただの人形だ。
 一度宿主を失えば、あとはなにもできず、誰かに拾われるまで放置の運命を辿る。

496 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:18:04 ID:Z0Pp4M+k
 

497 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:18:24 ID:alJpIKue
「てけり・り」

 やよいが捨てたプッチャンに興味を抱いたのか、ダンセイニが軟体の体を懸命に伸ばす。
 その、手とも腕とも形容しがたい粘着性物質は、するりするりとプッチャンの中に入り込み、

「てけり・り♪」
「てけり・り……じゃねぇ! うわあああ、なんだこれぇー、めっちゃぬちゃぬちゃするー!?」

 結果、ダンセイニがプッチャンを嵌めた――ということになるのだろうか?
 ダンセイニの声帯を手に入れたプッチャンが、くぐもった声で絶叫を上げる。
 まるで機械音声を合成して作ったようなちぐはぐな声調だったが、それ以上にプッチャンの背中の辺りから垂れる粘着性物質が視覚的ショックを与え、本人にも深刻なダメージを与えた。

「やよいー! ネムー! 助けてくれぇー!」
「……わ、私! プッチャンのこと忘れません!」
「……ごめんなさい。私たちは、無力だわ」
「ひでぇ!? 会長さん、この際真人でもいい! なんとかしてくれー!」
「ふんっ! ふんっ! ふんっ! フゥー、考え事をした後のスクワットは格別だな」
「宿舎に冷蔵庫は置いてあるかしら? みんなで食べられるものがあればいいのだけれど」
「か、神も仏もいないのかー!? ここ教会だろう!? 誰か俺をこいつから解放してくれぇぇ!!」
「てけり・り♪」

 プッチャンを気に入ったらしいダンセイニが彼を手放すまで、しばしの時間を要した。
 おかげで本来手を嵌める部分がやたらねちゃねちゃしてしまったが、それでもやよいは文句を言わずに、プッチャンを嵌め直した。
 この辺りに、やよいとプッチャンの信頼関係が窺える。

498 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:18:28 ID:US0nkOkl


499 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:18:30 ID:8co5TYZH


500 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey? ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:19:19 ID:alJpIKue
(プッチャンと一緒にいる高槻さんを見ていると……なんだか、りのを思い出してしまうわね)

 歳も近く、性格も似ている。プッチャンとの連携も、まるで熟年の相棒同士のようだった。
 彼女、そして彼もまた、この苦難に塗れた一日を乗り切ったのだ。この信頼性は、その功績だろう。
 微笑みが生まれる一方で、未だ噂聞かずのりのの身が心配にもなる。

 奏もプッチャンも、りのの脆弱さは誰よりも理解している。だが彼女とて、既に十八時間の時を乗り切っているのだ。
 りのもりので、りのなりに頑張っているに違いない……願いを込めた想いが、夜天に馳せて消えた。

 そして、夜が更ける……。


 ◇ ◇ ◇



501 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:19:22 ID:Z0Pp4M+k
 

502 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:19:29 ID:8co5TYZH


503 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:19:40 ID:US0nkOkl


504 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:20:16 ID:US0nkOkl


505 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:20:19 ID:alJpIKue
 教会の裏手にひっそりと建つ、二階建ての宿舎。
 神父やシスターが住まいとするその建物は、瀟洒な外観に彩られ、備えられた設備も決して悪くはない。
 四人分の寝床と食料、一張羅を失ってしまった女の子のための代えの衣服、諸々整っている。
 なにより心強いのは、北と東のエリアが禁止区域として定められており、襲撃の可能性も低いという点だ。
 既に一人、いや一体、死人を目撃しているネムにとっては……第三者の暴力が、この上なく怖い。

(私が目覚めた場所。まさか、ここで一日を終えることになるなんてね。……ネムとしては、半日ほどだけれど)

 記憶を失った名無しの少女――仮名『音夢(ネム)』は、教会で生まれ、教会から出発した。
 当初は、殺し合いの事実すら忘却していた。恐怖心に駆られるまま周旋を続け、徐々に状況を理解していった。
 今を思えば、一人きりのときによく襲われなかったものだと感心してしまう。
 井ノ原真人と神宮寺奏という拠り所を見つけ、高槻やよいとプッチャンも加わり、その安心感はより強固なものとなった。

 子供はなによりも、安心感を欲する。
 母の抱擁、父の称賛、友人の存在、周囲の笑顔、平常の自分。
 なにもかも置き去りにしてしまった赤子同然の少女もまた、安心を望んだ。

(だからこそ、私は真人さんたちを拠り所としている。一緒に食事をして、一緒に床について、一緒に笑い合って……)

 この安心は、混じり気のない純然とした心の安らぎだ。
 仮初にしようとしていた拠り所が、生涯の安住の地にも思える。
 それほどの安心がネムを包む……あるいは、蝕んでいたのかもしれない。
 だが今は、そうとは考えたくない。
 彼ら、彼女らと行動を共にする、一人のネムとして。
 恥のない行動をしたい、というのが本心だった。

506 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:21:04 ID:alJpIKue
「……綺麗な髪」

 ふとして零れた声に――ネムはハッとする。

「へ?」
「……あ、ごめんなさい。ネムさんの髪、とっても綺麗だったからつい」

 気がつくと、ネムは教会裏宿舎の一室で、就寝仕度をしていた。
 満腹の体にパジャマを着て、鏡台の前に座り、シャンプーの香りがする長髪を、同じくパジャマ姿の奏にドライヤーで乾かしてもらっていた。
 とても殺し合いの一ページとは思えない、日常の光景を生きる自分が、鏡に映し出されている。

 こういった境遇を甘んじて受け入れているのも、安心感によるもか。
 それとも、×××××××××××××は天性の楽天家だったのだろうか。

(私の本当の名前は……もっと長かった気がする。パパとママがつけてくれた、大切な名前……)

 奏に髪を梳かされる心地よさは、過去を捨て去りたいくらいの甘美だった。
 なのにやはり、ネムの心中には靄がかったかつての自分が蟠る。
 天秤にかけたとして……傾くのはどちらなのだろうか。
 今のネムか、過去の×××か。
 ひょっとしたら、思い出すのもつらい過去かもしれない。
 ならば、いっそこのままネムとして――。

(これは、好奇心? それとも……)

 自分を知りたい、という当たり前の欲求に、疑問を覚える。
 安心の裏返しなのだろうか、とネムは微かに不安になった。

507 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:21:06 ID:US0nkOkl


508 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:21:37 ID:US0nkOkl


509 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:21:48 ID:alJpIKue
「……ところで奏さん、一つ訊きたいことがるのだけれど」
「なにかしら?」

 髪も乾かし終わり、割り当てられた二人部屋で――ちなみに真人とやよいとプッチャンとダンセイニは同室。やよいは中学生、プッチャンは目がいやらしい、真人は筋肉愛、などといった理由から――床につこうとするネムと奏。
 あいにくベッドは一人分しか置かれていなかったが、女性が二人寝るには十分なサイズである。
 とはいえすぐにぐっすり、という気分でもなく、ネムは己の好奇心を言葉に綴った。

「記憶喪失の私が言うのもなんだけれど……やよいさんの言う店主とやらを頼りにするのは、少し楽観的すぎないかしら?
 それに……『これ』に関しては、いったいどうするつもりなの?」

 そう言って、ネムは自分の首に嵌められた銀色の枷を小突く。
 首輪。参加者たちに殺し合いをさせられているのだと実感させる、魔法の拘束具。
 決して取り除くことの出来ない形ある不安を、ネムは嫌悪していた。

「たしかに、方針としては心許ないところもあります。けれど、何事も挑戦してみないと始まらないですから。
 それと……ふふっ、首輪に関しては、実は当てがあるんですよ?」

 軽く微笑み、奏は自信ありげに言った。

「ひょっとして、真人さんの話にあったドクター・ウェストという人かしら?」

 ネムは薄らと、出会った頃の真人の話を思い出す。
 ドクター・ウェスト――自称天才科学者にして、屈強な肉体の持ち主。
 ゲーム開始当初に真人と出会い、様々な考察を垂れ流した。
 その頭脳は、奏が知り合った大十字九郎からも称賛されている。
 現在も生存し、当てにするには最適の人材と言える彼だったが……その行方は知れない。

510 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:22:31 ID:6hzQDAyQ
支援

511 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:22:36 ID:US0nkOkl


512 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:22:55 ID:8co5TYZH


513 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:23:13 ID:US0nkOkl


514 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:24:17 ID:6hzQDAyQ
支援

515 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:24:51 ID:4iTpeVf3
支援

516 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:24:58 ID:alJpIKue
「九郎さんのお墨付きもありますし、彼なら……というのはありますね」
「けれど奏さんも、ウェストさんとはお会いしたことがないのでしょう?」
「ええ。でも大丈夫です。……とても心強い味方が、動いてくれていますから」
「……?」

 ネムや真人は知りえない、会長だけの隠密の姿を思い出しながら――奏が微笑む。
 対して、ネムは怪訝な顔を浮かべる。
 が、奏の微笑を眺めていると、どうにも安心が伝染してしまうような気がするのはなぜだろうか。

(ドクター・ウェストといえば、そう……彼が言っていたという推論も……)

 やたら馬鹿な割に、記憶力だけは鮮明な真人の言を、再び思い出す。
 当人が蟲毒に例えた、殺し合いの全否定にも繋がる仮説……保身を優先する者にとっては致命的な論。

 ――優勝したとしても、生は拾えない。

 主催者側にとって、優勝者は生け贄、この殺し合いはゲームというよりも儀式、それがドクター・ウェストの推論だ。
 優勝者に生を保証する発言がなかったというのも、開会式を覚えていないネムには確認のしようがない。
 ただ、生き残るためには他者を欺けばいいと――本能で直感し、今の今まで渡り歩いてきた。
 記憶を失った故の軽挙か、元々頭が回らない子だったのか、そのあたりは判然としない。

 だが、思うところはある。妥協にも似た、甘えを含む案だが。
 他者を欺くことが生に繋がらないとするならば……この際、とことん信用してみよう。
 そんなことを、漠然と胸に思う。

517 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:25:00 ID:8co5TYZH


518 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:25:32 ID:alJpIKue
(記憶を取り戻すため、私を取り戻すため、この人たちと共に……それが、近道?)

 謳うように問いかけるネムだったが、答えてくれる天の声はなく、疑問が心の底へと鎮座する。
 最適解を導き出すには、知識も、常識も、思慮も、記憶も、やはりなにもかもが足りない。
 このまま流され……そうやって生きていくことに、不思議と不安はない。

 不安だ、しかし安心だ。
 安心だ、しかし不安だ。
 矛盾を孕む曖昧な心が、ゆらりゆらりと揺れていた。

 だけど、

 この揺れが――なぜか心地いい。

(私の居場所は、ひょっとしてここ――なのかしら?)

 再び問いかけるが、やはり答えは出てこない。
 疑問を抱き続けるモヤモヤは身を蝕まず、安穏を呼ぶ。

「……私からも、一つ訊いていいかしら?」

 僅かな間ボーっとしていたネムに、奏が喋りかける。

「――聞かせて。ネムさんは、なにがしたい?」

519 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:25:56 ID:US0nkOkl


520 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:25:58 ID:4iTpeVf3
支援

521 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:26:28 ID:8co5TYZH


522 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:26:40 ID:alJpIKue
 こっくり、と首を傾げながら尋ねてくる奏。
 ふとした質問には、なにかしらの意味が内包されているようにも思える。

 それが、かつて金城奈々穂が奏に問いかけた言葉だと知らずとも――。

 ネムは真摯な眼差しに意識を奪われ、僅かに頬を上気させる。
 しばし奏と見つめ合い、恥ずかしそうな仕草で、訥々と語り出す。

「私は……やっぱり、知りたい。本当の私を……」

 記憶を取り戻したい、という欲求は潰えてはいない。
 このままネムとして生き続けるのだとしても、知りたいという願望は根強く残る。

「本当の私を知って、そして故郷に帰ってみたい……奏さんたちと、同じように」

 自身の胸中を曝け出すように、ネムは無防備な想いを綴った。

「記憶の片隅にある、パパとママに会いたい。うん。うん……私は――」

 確認するように頷き、ネムは未来を見据える。
 思惑を他人に吐露する。
 信頼と安心の証たる行為を、自然と。

「――私に、会いたい」

 ネムの本意を知り、奏はそれを受け止め、またふっと微笑む。
 聖母のような穏やかさを纏って、笑みだけでネムを抱擁する。
 それがくすぐったくもあり、嬉しくもある。

523 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:26:50 ID:4iTpeVf3
支援

524 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:27:24 ID:US0nkOkl


525 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:27:55 ID:alJpIKue
「今は休みましょう。私たちには、明日があるのだから」
「……ええ、そうね。お休みなさい、奏さん」
「お休みなさい、ネムさん」

 屈託なく笑い合い、二人揃ってベッドに横たわる。
 電気を落とした部屋は暗闇に塗れ、よりいっそう静寂を纏う。
 その中で、ネムは思い続ける。

(不思議……やっぱり不思議。この、ほわっとする感じはなんなのかしら……?)

 出会いがしらは、こうではなかった。
 トーニャに素性を疑われ、彼女を含む三人が皆、信用ならない敵とも思えた。
 寺を出ても、考えるのは自分の利ばかり……いったい、なにがそんなに怖かったのだろうか。
 記憶を失ったという事実が、必要以上に己を怯えさせているのかもしれない。しかし、

(今は……大丈夫。うん……とっても、落ち着く……)

 惑いの中で、パパとママを思い出したときのような、
 両親の慈愛に近しい、僅かな恋情を察知した男の子にも似た、

(あら? ひょっとして、これって……)

 この感覚は、ひょっとしたら『恋』に似ているのかもしれない。
 記憶を失った身でありながら、女の子としての絶対の感覚だけは、忘れていなかった。

526 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:28:27 ID:6hzQDAyQ
支援

527 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:28:44 ID:4iTpeVf3
支援

528 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:28:46 ID:8co5TYZH


529 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:29:09 ID:alJpIKue
(この安心感は、愛しいという証拠なの? だとしたら、いったい誰を……?)

 枕に上気したままの顔を埋めながら、思案に耽る。
 出会ったばかりのやよいやプッチャン……ではない。
 早々に喧嘩別れしてしまったトーニャ……であるはずもない。
 粘着性を伴った軟体生物……を愛するほどの器量はない。
 となれば、必然的に選択肢は真人か奏の二人に絞られるが、

(……馬鹿馬鹿しい。真人さんはともかく、奏さんは同性じゃない。女の人を愛するなんて……)

 心の呟きで否定する。が、どうにも頭の中が悶々とするのはどういうことだろうか。
 奏の微笑みと、真人の筋肉が、脳内で綯い交ぜになって溶け合う。
 混沌とした夢の先には、確かな安心がネムの到来を待っている。
 浸る、浸る、包まれていく……。
 そうやって、少女は眠りに落ちていった…………。


 ◇ ◇ ◇



530 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:29:30 ID:ireckI3G


531 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:29:35 ID:8co5TYZH


532 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:29:57 ID:4iTpeVf3
支援

533 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:30:05 ID:US0nkOkl


534 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:30:07 ID:alJpIKue
 星屑のカーテンが、天然の照明となって暗がりの地表を照らした。
 見上げる分には眩しくもなく、灯りとするには明度も十分。
 手元の機械……首輪レーダーをチェックする作業も、滞りなく順調だ。

(思わず腕立て伏せでもしたくなる夜だぜ……おっといけねぇ。今は我慢だ、我慢……)

 奏やネムが眠る宿舎の屋根に上り、一人星空を眺める井ノ原真人の姿があった。
 平らな屋根の上は胡坐をかくのにも不自由なく、見晴台とするにも一等だ。
 加えて、手元には来訪者を知らせる便利な探知機がある。
 女子たちが就寝する傍ら、自ら見張り役を買って出た真人は、孤独な夜を過ごしていた。

「てけり・り?」
「寒くはないかって? ありがとよ。けど大丈夫だ。筋肉の保温はバッチリだぜ」

 孤独……とはいえ、ゲーム開始当初から連れ添った相棒は健在だ。
 忠誠心の強いダンセイニは一時も筋肉チョッキを脱ぐことなく、真人の話し相手として見張りにも付き合っている。

(結局、教会に来ても収獲はなしか……ま、怪しいとこは見つけたがな。とりあえず一歩、ってとこか)

 教会に行こう、と言い出したのは真人本人だ。
 言峰が神父だったから、などとは言ったが、なにもそれだけが根拠ではない。
 鍵を握るのは、記憶。ある一部分が鮮明で、それ以外はぼやけた……曖昧で不完全な記憶だ。

(今回は後悔したくねぇ。今回は、あの少女を…………アレ? あの少女って誰だっけ?)

 儚げで、でもどこか明るかった――真人が『前回』の殺し合いで、救えなかった少女。
 非は真人自身にある。直接手を下したというわけではないが、少女の死因は真人が彼女を信じなかった点にあるのだ。
 信じていれば、きっと結果は変わった。疑心暗鬼が、悲劇を生んでしまったと記憶している。

535 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:31:07 ID:6hzQDAyQ
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536 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:31:11 ID:ireckI3G


537 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:31:24 ID:8co5TYZH


538 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:31:46 ID:4iTpeVf3
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539 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:31:52 ID:alJpIKue
 逆に言えば、それ以外のことは……あまり覚えていない。
 覚えているのは、少女との断片的なやり取り。
 彼女の笑顔、彼女の言葉、彼女の想い――そんな曖昧なものばかり。
 教会を目的地としたのも、そんな断片的な記憶を辿った結果だった。

(これだけはしっかり覚えてる。俺は教会の中で、死なせちまった少女を抱きしめて……泣いた。
 滅茶苦茶になるくらい泣いて、泣きまくって、そんで逆上して……結果、俺も殺されちまったんだったな。
 どんな奴に殺されて、どんな風に殺されたのかまでは覚えてねぇが……前回は確かにあった。これだけは絶対だ)

 この記憶の正体がなんなのか、真人は知りたかった。
 ひょっとしたら前回などというものはなく、何者かに捏造された偽りの記憶なのかもしれない。
 ひょっとしたら記憶の本筋は前回などに留まらず、実際はもっと大きかったものが、作為的に添削されていったのかもしれない。
 古書店に潜むという、黒幕と思しき謎の存在……その力によれば、真人の記憶の操作なども容易なのだろうか。

(あの少女が誰だったかなんて、俺の頭じゃ思い出しきれねぇ。けど、大事なのはそこじゃない。
 信じることだ。俺は今回、とにかく信じ通す。このみも信じる。ネムだって信じる。疑っちゃいけねぇ。
 ……トーニャの言うこともわかるがよ、これだけは譲れねぇ。今回は、今回は……)

 考えるのは得意ではない。真人は、考えるよりもまず筋肉を動かす行動派だ。
 だからこそ、直感と流れに身を任せ、ネムを信用したままこの地を訪れた。
 信じ続ける、という揺るがない志を保って、今回の殺し合いを動こうと決めたのだ。

(ってか、俺ってこんなに記憶力よかったか? あの焼け跡で見つけたコレだって……)

 傍らに置いていたデイパックから、布によって梱包された長物を取り出す。
 それを紐解けば、鞘に収められた鍔なしの日本刀が姿を現した。
 思うところがあるように、真人は刀を睨む。と、

540 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:32:00 ID:US0nkOkl


541 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:32:32 ID:8co5TYZH


542 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:32:47 ID:alJpIKue
「あ、いたー。真人さ〜ん」

 背後から少女の元気な声が届き、真人は真剣味を潜めて振り返った。

「おう。なんだ、やよいとプッチャンじゃねぇか。寝たんじゃなかったのか?」

 立てかけておいた梯子から、ひょっこり顔を出すやよいの姿があった。
 この宿舎で調達したシスターの衣装を纏ったまま、屋根の上まで上ってくる。

「それが、あんまり眠くなくて。真人さんのお手伝いをしようかなって」
「アイドルの体力をなめんなよ。そんじょそこらのガキと一緒にしてもらっちゃ困るぜ」
「わかるさ。歳の割に大した筋肉を持ってやがる……そういや、朝方にもえらい筋肉を持った奴を見たな」

 二人の名も知らぬ男女、その片割れであるボーイッシュなほうの筋肉を思い出し、真人は微笑する。
 まさかそれがやよいの捜している真だとは思いもせず、離別してしまった良質筋肉をしみじみと懐かしんだ。

「まぁそれはそれとしてだ……ところでこいつを見てくれ。どう思う?」
「どう思うって……刀だろ。真人の支給品か?」
「うっうー、なんか危なそうな刀ですっ」

 眺めていた一本の日本刀を、やよいとプッチャンにも見せてみる真人。
 返ってきた反応は予想通りであり、だからこそ余計に、それを覚えている自分に違和感を覚えた。

「やよい、ちょっとこいつを持ってみてくれねぇか?」

 真人は足元に日本刀を置き、やよいに試しに持ってみるよう促した。

543 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:33:25 ID:ireckI3G


544 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:33:34 ID:4iTpeVf3
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545 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:33:45 ID:6hzQDAyQ
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546 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:33:46 ID:8co5TYZH


547 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:33:58 ID:alJpIKue
「んー? いいですよ……ってうわっ!? お、重いぃ〜……」

 すぐに駆け寄り、やよいがその柄に左手をかけてみるが、ピクリともしない。
 片手だけでは無理と判断し、右手に嵌めたプッチャンの協力も仰ぐが、やはり持ち上がりもしなかった。

「なんだこりゃあ。いくらなんでも重すぎだろう。こんなんじゃ使い道ねぇぜ」
「やっぱな。俺の筋肉を持ってしても、持ち上げるくらいしかできなかった。振るなんてもってのほかさ」
「う〜ん、いったいなにでできてるのかなぁ?」

 見た目には、極一般的な白鞘の日本刀。
 ただしその重さは桁違いであり、振るうことはもちろん、鞘から抜くこともままならない。

 娼館跡に取り残されたデイパックから発掘した、誰かの忘れ物。
 参加者にランダムに配られた支給品であることには間違いない。
 当初はネムがデイパックからそれを引き抜き、あまりの重さに即手放してしまった、

 その化物刀の銘を、『弥勒』という。

 曰く、『星詠みの舞』と呼ばれる儀式に用いられる刀であり、『黒曜の君』にしか扱えない特別な刀。
 単純に重量があるというわけではなく、なにかまじないめいた要素で、使用者を選別しているようだ。

 ……そして、真人はこの刀に見覚えがあった。
 あの場に立ち会わなかったプッチャンは知らず、立ち会ったとしても、多くの者がそれどころではなかっただろう事変。
 思い出すのは、殺し合いの開幕がなされた式場だ。
 その場において、真人はこの弥勒がしっかと振るわれた光景を記憶している。

548 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:34:02 ID:US0nkOkl


549 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:34:40 ID:8co5TYZH


550 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:34:50 ID:US0nkOkl


551 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:34:59 ID:alJpIKue
 ゲームの運営管理者、神崎黎人。

 彼がノゾミとミカゲという大蛇を斬り殺す際に使っていた刀、それが正しく、この弥勒なのだ。
 もちろん、白鞘の日本刀など一目には判別がつきにくい。酷似しているだけの別品という可能性も、十分にありうる。
 ただ、やけに鮮明な真人の記憶は、これが神埼黎人の振るっていた刀と同一であると、脅迫するように告げていた。

(ってことは、あの神崎って奴が黒耀の君か? ってか、コクヨの黄身ってなによ……?)

 こんな些細すぎる部分を記憶している自分に、得体の知れぬ違和感を覚える。
 前回の記憶も含め、やはり神の手によって脳を弄られでもしたのではないか、と考えるほどに。

(そもそもだ……前回の殺し合いに、あんな奴らいたか? ってか前回の殺し合いを始めた奴らって誰だっけ……)

 答えの出ない自己問答を繰り返しつつ、真人は記憶喪失のネムと境遇を同じくする。
 偽りではない、絶対的真実だとは思っている。信じる、という強い教訓がその証拠だ。

「……真人、なんだか似合わないくらい難しい顔してるな」
「どうしちゃったんでしょうねぇ?」
「てけり・り?」
「……ん? ああ、なに、ちょっと脳内筋トレをしてただけさ」
「いや、意味わかんねぇよ」

 心の葛藤は、決して表には出さない。
 表面上は、あくまでも筋肉大好き井ノ原真人として。
 他者と接する際にも、おどけることは忘れない。

552 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:35:25 ID:8co5TYZH


553 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:36:05 ID:alJpIKue
「あ、そうだ。これ、使ってください」

 思い出したように言い、やよいは真人にビニール袋を差し出す。
 見た目にも重みのある袋を受け取り、真人が中身を確認してみると、

「うん? こ、こりゃあ……乾電池じゃねぇかー! しかもどっさり袋詰め!」

 そこには、大量の単三電池が入っていた。
 アルカリやマンガンの区別もなく、メーカーもまたバラバラだったが、たっぷり数十本はある。

「そのレーダー、電池式だったろ? 肝心な時に使えなくなったら困るからな」
「うっうー! 宿舎中を回って、いーっぱい集めてきたんですっ!」
「時計とかラジオとかからなぁ!」
「てけり・り!?」
「おおおおお……なんてこった! こいつぁ乾電池祭りができそうだぜ!」

 誰が発端となってか、おかしなテンションに集った四者が同調する。
 道化の半面に、真面目な半面も被る真人としては、どちらが素の表情なのだろうか。
 それすら、考えて答えの出るものではないのかもしれない。

 レーダー用の予備の乾電池を確保し、真人は見張り番を続行する。
 ダンセイニに並び、やよいとプッチャンもそれに付き添う。
 時折煌く星空を眺めながら、静かな時が過ぎていった。

554 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:37:01 ID:alJpIKue
「……そういや、やよいは理樹に会ったんだったよな」
「え……っと、あ、ハイ」

 唐突に吐き出された故人の名に、やよいは躊躇いつつも返答した。
 その名を口にする真人自身も、決していい気持ちでいたわけではない。
 しかしながら、気持ちの整理のためにも聞いておくべきだろう、という考えが働いた。

「理樹のやつはどうだった? こういう局面でも、立派に自立できてたか?」
「それはもう、すごかったです! 私なんて、プッチャンと葛木先生がいなかったらダメダメだったのに……」

 あれはまだ、なにもかもが平穏無事に進捗していた頃の話。
 若くして自らが発案する計画を実行に移そうとする女の子のような男の子は、やよいの観点から見てもリーダーと呼ぶに相応しい人材だった。
 彼をガードしていた髑髏面の暗殺者も、見た目に違わぬ実力者であると当時の葛木宗一郎は語っていた。
 あの二人ならきっと上手くいくだろう、と思って別れたのも束の間、

「そうか……本人は筋肉に恵まれなかったようだが、そのガリガリさんってのには感謝しなくちゃな」
「アサシンさんですよぉ」

 綻びは、真アサシンの死という形で生じ、ついには先ほど訪れた直枝理樹の訃報により、崩壊した。
 やよい自身、理樹のミッションに助力するどころではなかったが、彼らの思いはどこに消えたのか。
 リトルバスターズ……その執念を受け継ぐ者が、木彫りのヒトデを受け継いだ者が、まだどこかに残っているのかもしれない。

(謙吾も、鈴も、理樹も死んじまった。残ってるのは俺と恭介、それに来ヶ谷か)

 真人は、潰えていった友たちの想いを夜空に廻らせる。
 理樹はこのゲームの不条理に反逆の牙を突きたて、志半ばで絶えてしまった。
 謙吾や鈴は、なにを思って死んでいったのだろうか。彼らを知る人物から、話を聞いてみたいとも思う。

555 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:37:17 ID:6hzQDAyQ
支援

556 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:37:22 ID:8co5TYZH


557 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:37:34 ID:Z0Pp4M+k
 

558 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:38:49 ID:ireckI3G


559 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:38:54 ID:alJpIKue
(恭介……鈴も理樹も死んじまって、今おまえはどうしてる? 腑抜けてんじゃねーぞ……)

 残された者、棗恭介にとって、理樹と鈴はなによりも大切な存在だったはずだ。
 彼らの死による悲しみも、おそらくは真人の比ではない。
 真人自身、前回の記憶が残っているからこそ、辛うじて前を見据えていられるのだ。
 なにもかもなくしてしまった恭介が、真人と同じようにまた前を向けるかは、計りきれない。

(前、か。そうだな……前を向かなくちゃならねぇ。うだうだ悩まず、筋肉の赴くがままに突き進めばいいのさ。それしかできねえしな)

 真人は自嘲気味に笑い、横のやよいが首を傾げる。
 死んでしまった仲間たちを省みて、しかし立ち止まってはいけない。
 この意志は前回の記憶がある故の『慣れ』ではなく、心の芯たる力だと信じよう。

「よっしゃああああああ! 今宵は血沸き肉踊る筋肉祭りの開催だぜぇぇぇ!」
「おわぁあ!? び、びびびビックリした〜っ」
「急に大声出すなよ! 驚くじゃねぇか!」
「てけり・り!」
「なんだとぉ!? すいませんでしたーっ!」

 突拍子もない発言を諌められ、筋肉祭りの開催は未遂に終わる。
 やや勢いを削がれた真人がまた視線を空に投げ、しょぼくれた。

「いっそ懺悔室の前で筋肉旋風でも巻き起こすか。楽しそうだと思って中の奴も出てくるかもしれないぜ」
「あ、なら私は歌って踊ります! ごまえ〜♪」
「なら俺はいよいよ、ダイナミックの封印を解くか……」
「てけり・り」
「な、なんだって……!? おいダンセイニ、いくらなんでもそりゃヤバすぎるだろ……!」
「え、うぇ? い、今ダンセイニさんなんて言ったんですか!?」
「てけり・り」
「うおおおおお! 試合前から負けた気分だあああ!!」
「っていうか、なんでおまえはこいつの言葉がわかるんだよ」

560 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:38:54 ID:4iTpeVf3
支援

561 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:39:35 ID:US0nkOkl


562 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:40:22 ID:4iTpeVf3
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563 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:40:26 ID:8co5TYZH


564 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:41:30 ID:alJpIKue
 いくら喚声が木霊しようとも、レーダーの反応は四つから変わらない。
 安全な夜が続き、明日の朝への希望と昇華されていく。

「いやぁ、でも真人の案は案外有効かもしれないぜ」
「なにを隠そう、私とプッチャンもそれを考えてたんです」
「え? 筋肉のことか?」
「ちげーよ。懺悔室の扉についてさ」

 いつものおどけた真人に戻りつつ、やよいとプッチャンの語りに真面目に耳を貸す。

「私、あの店長さんはそんなに悪い人じゃないと思うんです」
「悪いかどうかはともかくとして、言峰や神崎って奴らとは、根本的に考えが違うと思うんだよな」
「黒幕さんって言ったけど、なにも悪いことがしたくてこのゲームを始めたんじゃないと思うんです」
「言峰や神崎と同じ舞台裏にいたとしても、必ずしも仲間ってわけじゃないかもしれねーし」

 すずろに語るやよいとプッチャンの顔は、希望に満ちていた。
 その言動がどこまで真に迫っているかなど、誰にもわかりはしない。
 少なくとも……この時点では。

「でだ! 俺とやよいでナイスな解決策を思いついたのさ!」
「ほほう。で、どんな?」

 興味深い、と真人とダンセイニが耳を傾ける。
 途端、プッチャンは口を閉ざし、やよいはしばしの間を置いて、もったいぶるように発言した。

「うっうー! あの店長さんを、『黒幕』からこっちの『味方』に引き込んじゃうんですよ!」

 ――ピクリ、と真人の全筋肉が蠢いた。

565 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:42:09 ID:US0nkOkl


566 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:42:51 ID:4iTpeVf3
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567 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:42:53 ID:alJpIKue
「あの店長、とにかく楽しさ優先って感じだったからな。なら、俺たちの力でとことん楽しませてやろうって寸法さ」
「そ、そうか……つまり、筋肉で魅了すりゃいいわけだな! よっしゃー! この俺に任せろ!」
「いやぁ、真人の筋肉じゃ無理だろ」
「んだとぉ……真人の筋肉なんぞ世界最大の余興、ボディビル大会の中継映像の前座にもなりませんよ……とでも言いたげだなぁ!?」
「す、すごい言いがかりです!?」
「てけり・り!?」

 筋肉が脈動を開始する。
 全身の血が沸き、心も躍る。
 こんな子供や人形でも、明日を見据えている。
 大切な人との別れを抱えて、それでもなお前を。
 嬉しくなり、楽しくなったのも、また事実だ。
 真人の心は笑い、残された者としての希望を見い出す。

(信じる……か。なんでぇ、俺が重く考えすぎてただけじゃねぇか。
 トーニャ、おまえも帰って来いよ。今ならまとめて面倒見てやるぜ?
 ネムやこのみだって心配ねぇ。疑ってばかりじゃ、なにも始まらねぇさ。
 恭介、来ヶ谷、おまえらもだ。ちゃんと前向けてんなら、筋肉に群がってきな。
 そうしてみんなで筋肉旋風だ。古本屋で引き篭もってる誰かさんを、こっちに引き摺りこもうぜ!)

 誰にも悟られることのない筋肉の裏側で、真人が咆哮を上げた。


 ◇ ◇ ◇



568 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:42:54 ID:8co5TYZH


569 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:43:55 ID:alJpIKue
「あ、そうだ。私も宿題があったんでした」

 屋根の上で見張りを続ける中、やよいが思い出したようにデイパックを漁り始めた。
 なんだなんだと真人とダンセイニが視線を投げ、やよいが取り出したそれを凝視する。
 子供の頃に見たような、イラストつきの冊子。やよいはそれを、微笑ましげに抱いていた。

「なんだ、それ?」
「えっと……えっへへー、これはですね〜」

 やよいが筆記用具を用意する傍ら、真人が疑問を言葉に乗せる。
 プッチャンは口を挟まず、ただニヤニヤしていた。
 やよいも頬を赤らませながら、もったいぶるように答えを示す。

「素敵な先生が残してくれた、宿題です」



570 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:43:58 ID:4iTpeVf3
支援

571 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:44:34 ID:6hzQDAyQ
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572 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:44:52 ID:alJpIKue
【B-1 教会裏手の宿舎の屋根の上/1日目 真夜中】

【高槻やよい@THEIDOLM@STER】
【装備】:プッチャン(右手)、シスターの制服
【所持品】:支給品一式(食料なし)、弾丸全種セット(100発入り、37mmスタンダード弾のみ95発)、
      かんじドリル、ナコト写本@機神咆哮デモンベイン、木彫りのヒトデ10/64、
      エクスカリバーMk2マルチショット・ライオットガン(4/5)@現実
【状態】:元気
【思考・行動】
 1:真人と一緒に見張り番。
 2:『入店証』の正体を探り、懺悔室の扉を開く。
 3:真を捜して合流する。
 4:古書店の店主をどうにかして味方に引きずり込む。
 5:暇ができたら漢字ドリルをやる。
【備考】
 ※博物館に展示されていた情報をうろ覚えながら覚えています。
 ※死者蘇生と平行世界について知りました。
 ※教会の地下を発見。とある古書店に訪れました。
 ※古書店の店主は黒幕、だけどそんなに悪い人じゃないと睨んでいます。


【プッチャン@極上生徒会】
【装備】:ルールブレイカー@Fate/staynight[RealtaNua]
【状態】:元気
【思考・行動】
 1:やよいと一緒に行動。
 2:りのを捜して合流する。
 3:『入店証』の正体を探り、懺悔室の扉を開く。
 4:古書店の店主をどうにかして味方に引きずり込む。

573 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:45:35 ID:US0nkOkl


574 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:45:38 ID:alJpIKue
【井ノ原真人@リトルバスターズ!】
【装備】:僧衣、木魚、マッチョスーツ型防弾チョッキ@現実【INダンセイニ@機神咆哮デモンベイン】
【所持品】:支給品一式。スラッグ弾30、レトルト食品×5、予備の水
      SPAS12ゲージ(6/6)@あやかしびと−幻妖異聞録−、大山祈の愛読書@つよきす -Mighty Heart-、
      首輪探知レーダー(残り約X時間)、単三電池袋詰め(数十本)、
      餡かけ炒飯(レトルトパック)×3、制服(破れかけ) 、銅像、弥勒@舞-HiME 運命の系統樹
【状態】:胸に刺し傷、左脇腹に蹴りによる打撲、胸に締め上げた痕
【思考・行動】
 基本方針:リトルバスターズメンバーの捜索、及びロワからの脱出。『信じる』。
 1:朝まで見張り番。放送により逐一対応。
 2:『入店証』の正体を探り、懺悔室の扉を開く。
 3:恭介、来ヶ谷を捜して合流する。
 4:主催への反抗のために仲間を集める。
 5:クリス、ドライを警戒。
 6:柚原このみが救いを求めたなら、必ず助ける。
 7:今は無理でも、いつかトーニャと分かり合いたい。
 8:なんかやけに記憶力がいい気がするが気のせいか?
【備考】
 ※防弾チョッキはマッチョスーツ型です。首から腕まで、上半身は余すところなくカバーします。
 ※真と誠の特徴を覚えていません。見れば、筋肉でわかるかもしれません。
 ※杏・ドクターウェスト、奏、やよい・プッチャンと情報交換をしました。
 ※大十字九郎は好敵手になりえる筋肉の持ち主だと勝手に思い込んでいます。
 ※『前回』の記憶については、微々たる部分しか覚えていません。
 ・儚げでどこか明るかった少女(詳細不明、本人の記憶も曖昧)を、疑心暗鬼で死なせてしまった。
  直後、自分も何者かに殺されてしまった。そのときの現場は教会。
 ・前回の主催者は、言峰や神崎ではなかった。
 ※見張り番をするため、レーダーを始めとした奏の荷物一式を預かっています。

575 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:46:54 ID:alJpIKue
【ダンセイニの説明】
アル・アジフのペット兼ベッド。柔軟に変形できる、ショゴスという種族。
言葉は「てけり・り」しか口にしないが毎回声が違う。
持ち主から、極端に離れることはないようです。
杏の死とトーニャの離散で、ショックを受けているようです。
プッチャンのことが気に入ったようです。


【B-1 教会裏手の宿舎/1日目 真夜中】

【神宮司奏@極上生徒会】
【装備】:パジャマ
【所持品】:なし
【状態】:健康、爪にひび割れ
【思考・行動】
 基本方針:極上生徒会会長として、ゲームに対抗する。
 1:『入店証』の正体を探り、懺悔室を調査する。
 2:蘭堂りのを探す。
 3:古書店の店主が鍵を握ると信じ、調査を進める。
 4:藤乃静留を探し、神埼黎人の素性を調べる。
 5:首輪に関してはドクター・ウェスト、トーニャを頼りにする。
 6:いずれ大十字九郎と合流を果たし、恩を返す。
 7:いつかまた、トーニャと再会する。
 8:『参謀役』が欲しい。
【備考】
 ※加藤虎太郎とエレン(外見のみ)を殺し合いに乗ったと判断。
 ※浅間サクヤ・大十字九郎、トーニャ・真人、やよい・プッチャンと情報を交換しました。
 ※ウィンフィールドの身体的特徴を把握しました。
 ※主催陣営は何かしらの「組織」。裏に誰か(古書店の店主?)がいるのではと考えています。
 ※禁止エリアには何か隠されているかもと考えてます。

576 :ζ*'ヮ')ζ<Okey-dokey! ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:47:48 ID:alJpIKue
【ファルシータ・フォーセット@シンフォニック=レイン】
【装備】:パジャマ
【所持品】:支給品一式、リュックサック、救急箱、その他色々な日用品、デッキブラシ
      ピオーヴァ音楽学院の制服(スカートが裂けている)@シンフォニック=レイン、
      ダーク@Fate/staynight[RealtaNua]、イリヤの服とコート@Fate/staynight[RealtaNua]
【状態】:熟睡中、重度の記憶喪失(僅かだが記憶が戻り始めている)、強い安心感、
     頭に包帯、体力疲労(小)、精神的疲労(小)、後頭部出血(処置済み)
【思考・行動】
 基本:記憶を取り戻し、故郷に帰る。優勝しても生が拾えないなら――とことん信用してみよう。
 0:これは――恋?
 1:奏たちと行動。拠り所とする。
 2:『入店証』の正体を探り、懺悔室を調査する。
 3:男性との接触は避けたいが、必要とあれば我慢する。
 4:パパやママ、恋人を探し出す。
【備考】
※ファルの登場時期は、ファルエンド後からです。
※仮初の名前はネムです。
※頭を強く打った衝撃で目が覚める前の記憶を失ってますが、徐々に思い出しつつあります。
※記憶を失う前は男性に乱暴されてたと思ってます。
※奏たちと一緒にいることに、強い安心感を覚えています。


【弥勒@舞-HiME 運命の系統樹】
神崎黎人が物語終盤で使用していた刀。儀式用のクサナギとは違い、武器としても高い完成度を誇る。
『星詠みの舞』において、選ばれた舞姫をその刃で貫き封印する――媛星の力を得る――ための刀でもある。
『黒耀の君』である神崎黎人にしか扱えず、他の者では振るうこともできない。
単に重量があるというだけではないので、実質『黒耀の君』以外が武器として用いることは不可能。
作中では美袋命のエレメントかと思われていたが、彼女の本当のエレメントは柄の部分のみ(カムツカ)であり、弥勒自身はエレメントでもなんでもない。
唯一の例外として、命のエレメントであるカムツカに収まった状態であれば、『黒耀の君』でない彼女も弥勒を振るうことができる。

577 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:48:02 ID:US0nkOkl


578 : ◆LxH6hCs9JU :2008/08/06(水) 00:48:24 ID:alJpIKue
投下終了です。支援ありがとうございました。

579 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 00:58:34 ID:Z0Pp4M+k
投下乙です
最初のリトバスバトルやファルの細やかな心理描写、会長の考察等、見所が本当に多い
舞HIME関連の重要アイテムを出したのや、筋肉の前回ゲームに対する記憶を最小限に留めたのも、今後良い感じに影響してきそう
そしてロワでは割と珍しい睡眠タイムも、リアルっぽくて良かった
良繋ぎGJでした

580 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 01:06:23 ID:8co5TYZH
投下乙です!

真人VSプッチャンにワロタwてかそんなものにルルブレ使うなよww
ファルもようやく手にした安らぎ。でも記憶が戻ってしまったら…
奏とパヤパヤフラグを地味に立ててるような……w

真人の記憶がどこまで改竄されているのか、そもそも「前回」というものは存在しないのか?
そして究極の作戦、ニャル様勧誘作戦。いやいや無理でしょww
でも…楽しいこと大好きニャル様ならもしかして…

最後に葛木Pの遺した宿題にほんのりと涙が…GJでした!


581 : ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 01:53:53 ID:8co5TYZH
源千華留、千羽烏月、柚原このみを投下します。

582 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 01:55:00 ID:8co5TYZH
 電車の座席に佇む一人の少女。
 彼女の表情は険しく神妙な面持ちで流れる風景を見つめていた。
 電車は彼女――源千華留に渦巻く様々な感情をよそに、時刻通りにレールの上を走る。

 がたんごとん。
 がたんごとん。

 電車の窓から射し込む西の紅い陽光。
 太陽は地平線の向こうに沈もうとしている。
 間もなく日没が訪れる。再び島が闇に覆われるまで一時間といったところだろうか。
 やがて千華留を乗せた電車は終点のF-2地点の駅に到着した。
 粗暴な男の車内アナウンスに見送られ彼女は駅のプラットホームに降り立つと彼女は大きく深呼吸をした。

 明るくさんさんと照らしだす日光が支配する昼の世界。
 全てが闇に覆われ青白く輝く月光が支配する夜の世界。
 その二つの世界が交差する今の時刻――黄昏時。
 まだ完全に闇が訪れず人々が活動できる時間であるが、
 ところどころに息を潜ませる闇が人を不安にかき立てる逢魔ヶ時。

 古来より異界と交わる時間である夕方の島に再び大きな声が響き渡る。
 どこかに設置されたスピーカーより響き渡るひび割れた音声。
 黙示録の天使が第三のラッパを吹き鳴らした。


『やあ、参加者の皆さん、気分はどうだい?』


 三番目の天使は少年だった。
 言峰とも神崎とも異にする新たな人物の声。
 神崎よりもまだ若い少年の声。
 彼は飄々とした口調で死者の名を告げていった。

583 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 01:55:56 ID:8co5TYZH
 
「…………っ」
 つい数時間前まで行動を共にした仲間の名を告げられる。
 他の仲間も散り散りになってしまった。
 だけどまだ彼らは生きている、希望は潰えていない、あきらめるのはまだ早い。
 彼の意志を継ぐために。
 大切な仲間達を失いながらもこの殺し合いから懸命に抗い、
 志半ばで斃れた直枝理樹との約束を果たすために。

「リトルバスターズ……」
 千華留は彼の最期の言葉を今一度口に出す。
 理樹が結成したリトルバスターズは今や半壊状態になってしまった。
 だけどそのメンバーに刻み込まれた決意は壊れない。
 意志を継ぐ者がいる限り決して終わらない。
 バトンは託された。
 再びリトルバスターズの結成を、円卓に集う英雄を求めて千華留は起つ。


「新生リトルバスターズ、ミッション・スタートよ!!」


 ◆ ◆ ◆



584 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 01:57:24 ID:8co5TYZH
「とは言ったものの……これからどうしようかしら」
 駅のホームで千華留はぽつりと呟く。
 高らかに新生リトルバスターズの結成を宣言したのはいいが、方針はほとんど白紙同然である。
 白いマントを翻し、決めポーズまでとったのが少し気恥ずかしい。
 気のせいか吹く風がすごく冷たかった。
 とりあえずは離れ離れになった仲間を見つけるのと、新たな仲間を見つけることが優先されるべきだが……
(とりあえずこの辺り一帯の探索……かな)
 放送によると22時からG-4地点が禁止エリアに指定される。
 そこはちょうど駅がある線路上。
 つまりは電車による移動が不可になってしまうのだ。
 電車に乗るのなら最低でも一時間前、21時には駅に戻っておいたほうが良い。
 今の時間は18時過ぎ、三時間近くはこの辺りの探索に時間を費やせる計算になる。

 千華留は装備している拳銃の残弾数を確認する。
 残り14発。一人で行動するには少し心もとない弾数だ。
 近接用武器には傘を模ったカンフュールがあるが、
 千華留本来の身体能力が平均的な女子高生と変わらないので、大立ち回りを演じられそうにない。
 見た目は傘そのものなので万が一の場合奇襲に使えそうではある。
 出来る限り闇に紛れ、殺し合いに乗った者への交戦は避けるのが上策だ。

 千華留は駅を離れ街を歩く。
 石畳に覆われた中世ヨーロッパ風の街並み。
 テーマパークにすればそれなりに客入りが見込まれそうなほど見事な街並みである。
 メインストリート的な道は両サイドに街頭が立てられており、ぼんやりと明かりが灯っている。
 完全に夜になってしまうとこの通りはそれなりの明るさになるだろう。

585 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 01:58:47 ID:8co5TYZH
 
 人っ子一人いない静寂の街、空はほどなくして深い藍色に覆われ闇が訪れた。
 字を読めるぐらいに明るい通りとは対照的に街灯の光が届かない路地裏には漆黒の闇が広がっている。
 最初の夜はりのと行動していたためさほど気にならなかった闇。
 だが今は千華留一人。人の本能が無意識に闇への不安、恐れを煽り立てる。
 闇の中から手がにゅうっと飛び出し自分を引きずり込むかもしれない。
 そんな余計な想像ばかりが千華留の脳裏に浮かんでは消えていく。
 自然と拳銃のグリップを握りしめる手の握力が強まってしまう。

 ごくりと生唾を飲み込む音。
 高まる心臓の鼓動。
 なぜ闇は人の恐怖をこれほどにまでかき立てるのだろう。
 千華留は道を端ぎりぎりを歩いている。
 建物の壁を背にするようにゆっくりと薄暗がりの中を歩む。
 脇の小道に差し掛かる交差点にやって来たとき――――

「少し――話を聞いてくれないか?」

 背後の闇に覆われた小道から突然女の声が発せられた。


 ◆ ◆ ◆



586 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 01:59:34 ID:Z0Pp4M+k
 


587 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:00:05 ID:Z0Pp4M+k
 

588 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:00:14 ID:8co5TYZH
 亡霊の名を持つ暗殺者と仮初の停戦協定を結ぶこととなった烏月とこのみ。
 あれから彼女達はさしたる障害もなく、森を抜け出し街にやってきた。
「きれいな街だね……」
「ああ……」
 夕日の赤い光に染め上げられた西洋風の街並みがとても美しい。
 二人はその光景にしばしの間足を止め、その景色に見とれていた。

 烏月はツヴァイとの会話を思い出す。
 桂はまだ生きている。同行者と共にこの島で行われている殺し合いを止めるべく動いているのだと。
 ツヴァイの証言がどこまで本当かは分からない、もしかしたら完全に騙されているのかもしれない。
 だが今は彼の言葉を信じて行動するより他はない。
「烏月さん……ツヴァイさんの言ったことが気になるの?」
「やっと桂さんの手がかりが見つかったんだ。だけど……彼が嘘を吐いているかもしれないと思ったら、ね」
「大丈夫だよ烏月さん、あの人はたぶん嘘を吐くような人じゃない。このみの勝手な思い込みだけど……」
 このみは微笑を浮かべ烏月に話しかける。
 このみは彼の――ツヴァイの悲しみに満ちた瞳を見ると、どうしても彼が嘘を吐いていると思えなかった。

「わたしの大好きな人たちはみんな死んじゃったけど……烏月さんには桂さんがいる。だから頑張ろう!」
「ああ……その通りだ」
「あの……ひとつだけ約束してほしいな」
 このみは少し悲しげな色を湛えた紅い瞳を烏月に向け言った。
「もし……烏月さんの大切な人がいなくなってしまっても、このみのようにはならないって」
「このみさん……」
「このみはもう鬼になってしまったけど……烏月さんは人間だよ。
 それに鬼退治が仕事の鬼切りが鬼になっちゃったらカッコ悪すぎるもん……」

589 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:00:45 ID:Z0Pp4M+k
 

590 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:01:16 ID:Z0Pp4M+k
 

591 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:01:36 ID:8co5TYZH
 
 泣き笑いのような表情のこのみ。
 烏月には彼女の心情が痛いほど理解できた。
 大切な人を次々と失ったこのみ。
 彼女の悲しみ、絶望、憎悪は彼女を鬼へと変えてしまった。
 だからこそこのみは烏月に自らと同じ過ちを犯してほしくなかったのだ。
「…………」
 烏月は素直に頷けなかった。
 もし桂を失ってしまって時、自分は自分でいられるのだろうか?
 絶望と憎悪に囚われず人でいられることができるのだろうか?
 烏月は――――


『やあ、参加者の皆さん、気分はどうだい?』


 彼女の言葉を遮るように三回目の放送が島全体に響き渡った。


 ◆ ◆ ◆


「誠……君……」
 呼ばれた名前にこのみはがっくりとうな垂れる。
 なぜあの時誠と一緒に行かなかったのだろう。いや行けなかった。
 絶望と憎悪で悪鬼と化した自分は誠と一緒に行く資格なんてなかった。
 鬼となってしまったことで誠に拒絶されるのが怖かった。
 だからこのみは誠に自らのリボンを託して彼の下から去った。
 結局それがこのみの見た誠の最後の姿となってしまったのだ。
「このみさん……」

592 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:01:55 ID:Z0Pp4M+k
 

593 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:02:36 ID:Z0Pp4M+k
 

594 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:02:38 ID:8co5TYZH
「誠君はこのみに優しくしてくれた。誰一人このみの味方がいないこの島で見つけたたった一人の友達
 でも自分が鬼になっちゃって、人でなくなって誠君に嫌われるのが怖くて逃げだして。
 このみにほんのちょっぴり勇気があれば誠君は死なずに済んだかもしれないのに……」
「……………」
 烏月は何も言えなかった。何を言ったところでこのみの心の傷を癒すことができないのだから。
 だから烏月は無言でこのみの震える小さな身体を抱きしめた。
「烏月さん……?」
「君は決して一人じゃない、私がいる」
 たった一言だけ発した烏月の言葉。
 幾千の言葉よりもたった一つの真言。それが彼女にかけられる言葉の全て。
「うっ……えぐっ……」
 涙が溢れすすり泣くこのみ。烏月は優しく微笑みながら語りかけた。

「ほら、君は今泣いている。人の死を悼み泣くことができる。紛れもなくこのみさん……あなたは人間だよ」
「うぐっ……うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ……」
 烏月の温もりを肌で感じ、ただひたすら泣き続けるこのみ。
 烏月は彼女を優しく抱きしめ続けていた。


 ◆ ◆ ◆


「どうだい、少しは楽になったかな?」
「うん……わたし、もう少し頑張ってみるよ」
「私も出来うる限り君の手助けをするよ」
 
 烏月とこのみは再び歩を進める。
 気が付けば太陽はすでに没しており夜の帳がすでに降りていた。
「また長い夜の始まりだね……」
「だけど明けない夜はない。私達は前に進むのみさ」
「うん!」

595 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:03:18 ID:Z0Pp4M+k
 

596 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:03:48 ID:Z0Pp4M+k
 

597 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:03:51 ID:8co5TYZH
 
 
 烏月は地図を広げ何かを書き記していた。
 このみはそれが気になり彼女を覗き込む。
「烏月さん、何をしているの?」
「いや、新しい禁止エリアを書き込んでいるんだが……少しまずいね」
「何がなの?」
「22時でG-4地点が禁止エリアに入る。ちょうどこのエリアには駅があるんだ」
「ということは電車が使えなくなるんだね……」
「そうだね、私達はツヴァイの情報を元に歓楽街に行くつもりだけど、電車を使うのが最も早い。
 彼との協定が第四回放送までを考えると迅速に行動しないといけないからね。
 できる限り最寄のF-2の駅に移動したほうがいい」
「なら急ごう!」
「ああ」
 そうして烏月とこのみは駅を目指して再び歩き出した。


「烏月さん……ちょっと待って!」
 駅へ向かう二人、だがこのみが突然足を止める。
「どうしたんだい?」
「誰か……いる。足音がする……」
 烏月には何の音も聞こえない。が、このみは鬼の超感覚は確かに二人以外の足音を捉えていた。
「人数は……一人だよ。方向は――あっち」
 このみの指差す方向、そこは開けた大通りだった。
 二人が立つ脇道よりも街灯が多く立ち並んでいるため他の場所に比べると一際明るい。
 そこを何者かが歩いているのだというのだ。

 烏月とこのみは建物の影から顔を覗かせ辺りの様子を探る。
 すると駅の方角から人影がこちらに向かっているのがはっきりと見えた。
 年の頃は十代後半の少女。
 制服の上に白いマントを羽織り、白い帽子を被った何とも奇妙な出で立ちの少女だった。
 そして手に握られた拳銃―――

598 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:04:28 ID:Z0Pp4M+k
 

599 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:05:04 ID:Z0Pp4M+k
 

600 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:05:17 ID:8co5TYZH
二人の緊張が高まる。
(銃を持ってるね……)
(だけど見た感じでは素人の動きだ。ツヴァイのように銃器に扱いなれた者の動きではないようだね)
(どうする?)
(まずは声を掛けるしか無さそうだね……私が声を掛ける。
 このみさんは相手が不穏な行動を取ったらすぐに飛び出せるように待機していてくれ)
(了解であります!)

 烏月は少女が通り過ぎるのを見計らい、彼女の背後から声を掛けた。


 ◆ ◆ ◆


「――――――――――!!!」
 突如発せられた背後の声に千華留は声にならない声を上げる。
 とっさに銃を構え後ろを振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。
 闇に溶け込むような漆黒の学生服を纏った少女。その手には鞘に納まった刀を携えていた。
(まずいわね……)
 見るからに手練れの者と分かる雰囲気。
 一方こちらは銃を持っているとはいえ戦闘に関しては全くの素人同然だ。
 一触即発の空気が辺りを包む。

「驚かせてすまない、少し聞きたいことがあるんだ。まずはその手の銃を下ろしてして欲しい」
 ややハスキーな声が見た目をさらに凛々しく印象付ける黒の少女。
 千華留はその雰囲気に気圧されないように口を開く。
「あなたが何者か分からない以上、おいそれと銃を下ろすわけにはいかないわ。この銃は私の命綱よ、
 銃を下ろした途端、その刀でバッサリやられてしまうかもしれないもの」
「確かにそうだね……ならこれでいいかい?」
 少女は手から刀を離す。手から滑り落ちた刀が石畳に落ちて転がった。
「あら、そんな簡単に武器を手放していいのかしら? 銃を持ってる相手に対してあまりにも無防備よ」
「そんなことは無いさ――なぜなら」

601 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:05:46 ID:ireckI3G
 

602 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:06:05 ID:US0nkOkl


603 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:06:07 ID:Z0Pp4M+k
 

604 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:06:40 ID:8co5TYZH
 
「このみも一緒にいるであります!」
「!!」

 急に背後から声がした。
 千華留はおもわぬ伏兵に思考を乱されるも、すぐに落ち着きを取り戻し背後を振り返る。
 そこには意外な人物が立っていた。
「あなたは――柚原……柚原このみちゃん!?」
 見間違えるはずがない、この島に連れて来られた時に出会った少女。
 一瞬のうちに幼馴染の首を吹き飛ばされる光景を目に焼き付けてしまった少女。
 柚原このみがそこにいた。

「やれやれ……簡単に武器を手放すなんてと思ったら、こういうことね。まんまと孔明の罠に引っ掛かってしまったわ」
「ああ、だから素直に銃を下ろして欲しい」
「ええ、そうするわ。二人相手なんて私じゃどうすることもできないしね。捕虜は丁重に扱ってね♪」
 そう言って千華留は銃を地面に落として両手を上に伸ばし無抵抗の意を示す。
 見たところ彼女達は自分に危害を加えるつもりは無いらしい。
 ならば素直に彼女達の要求に応じるのが得策というものだ。
 千華留は彼女達に従うことにした。


 ◆ ◆ ◆


「新生リトルバスターズ結成の為に行動する源千華留。だが、それは美少女二人の巧妙な罠だった」


 千華留達はその場を離れ近くの建物で話し合いを行うことにした。
 建物内は暗いが完全に真っ暗ではなく、窓から差し込む街灯の光が室内を仄かに照らしていた。
 立ち並ぶマネキン人形、それらに着せられたブランド物の洋服。
 どうやらここは洋服店のようだ。

605 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:06:59 ID:US0nkOkl


606 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:07:38 ID:8co5TYZH
 
「何を言ってるんだあなたは……」
「この後『こんな奴らに……くやしい……!』となるわけよ」
「言ってることが良くわからないんだが……」
「もうっノリが悪いわねえ〜。まあいいわ、あなた達は私に話があるんでしょ? 私の名前は源千華留よ」
 軽い冗談はこれまでにして千華留は自分の名前を名乗る。
 千華留に続いて二人の少女が名を名乗った。
「千羽烏月だ」
「柚原このみです」

 このみは言うまでもなく烏月の名に千華留は聞き覚えがあった。
 確か棗恭介と情報を交換した時に彼の口から出た名前。
 彼は一時的に彼女と行動を共にしていたようであった。
 そして彼女は浅間サクヤ、ユメイと同じく羽藤桂を探す者の一人だった。

「そう……あなたが烏月さんだったのね。あなたの事は棗恭介から聞いてるわ」
「ああ……彼と出会ったのか」
「にしてもこれで三人目。桂ちゃんたらほんとモテモテね♪」
「なっ……!? あなたは桂さんを知っているのかい!?」
 意外な人物が桂の名前を知っていたことに驚きを隠せない烏月。
「いえ、私も直接会ったことはないの。サクヤさんとユメイさんから頼まれてね……」
「君は二人ととも出会っていたのか……。ふふふ、人の縁とはどこで交わるかわからないものだね」

 千華留と烏月はお互いのいきさつを掻い摘んで説明し情報交換を行った。
 千華留は恭介との出会い、ユメイや理樹との出会い、そして理樹の死と離れ離れになってしまったことを。
 烏月は恭介と協力しティトゥスと戦ったこと、ドクター・ウェストやこのみとの出会い、
 そしてツヴァイと名乗る暗殺者との一時的な協定……それらを簡潔に説明した。
 もっとも――烏月自身当初は桂を守るために参加者を皆殺しにしようと動いていたことと、
 このみが悪鬼であるというのは伏せてなのだが――

 千華留と烏月の情報を照らし合わせた結果、まず味方と思われるのが。

607 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:07:53 ID:ireckI3G
 

608 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:08:54 ID:8co5TYZH

 大十字九郎
 アル・アジフ
 ドクター・ウェスト
 蘭堂りの
 神宮寺奏
 山辺美希
 杉浦碧
 井ノ原真人
 来ヶ谷唯湖

 現在の所味方かどうかは保留。

 棗恭介
 トルティニタ=フィーネ
 クリス・ヴェルティン
 玖我なつき
 藤乃静留

 危険人物。

 深優・グリーア
 蛆虫の少女(名前不明)
 ファルシータ=フォーセット
 ツヴァイ(第四回放送まで停戦協定)
 鮫氷新一(戦闘能力はほぼ皆無)


「こんなところかしら……恭介さんの思惑が分からないのが悩みのタネなのよねぇ
 そしてトルタさんの知り合いのファルシータ=フォーセット……烏月さんの情報ではかなりの危険人物らしいけど……」
「あの人は……ファルさんは……このみを……」

609 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:08:55 ID:Z0Pp4M+k
 

610 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:08:55 ID:US0nkOkl


611 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:09:25 ID:US0nkOkl


612 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:10:19 ID:8co5TYZH
 
 このみがぽつりとファルの名を呟いた。
 千華留は改めてこのみの容姿を確認する。
 赤く可愛らしい制服は血と泥でかなり汚れている。だがその割には目立った外傷は見当たらない。
 それに――最初の時に比べるとどこか雰囲気が違う。
 見た目は確かに何ら変わりは無いのだが……どこか禍々しい気配を千華留は肌で感じていた。

「……さない……許さない……して……殺し――――!? ぐっ……ぅあああ!」
「このみちゃん!?」
 突然このみが苦しみだした。自らの体を両腕で抱え何かを押さえ込むような仕草で苦しむこのみの姿。
 千華留はこのみを介抱しようと駆け寄るが……
「ダメ! 来ないで千華留さん! このみに近寄らないで! くぅぅ……やだ……やだよ……嫌われたくない……
 やっと……やっと……このみの事を覚えてくれた人に出会ったのに……静まって……お願い……!」

 近寄ろうとする千華留を静止する烏月。
 このみはよろよろとおぼつかない足取りで二人から遠ざかるように店内のカウンターに手をついた。
 すると、みるみるうちにヒビが入り、まるで積み木を崩すようにカウンターは真っ二つに砕け散ったのだった。
「はあ……はあ……ぁぐ、ぅぁ」
 顔を手で覆うこのみ。
 千華留は烏月を振り切りこのみの肩を抱きとめる。
「このみちゃん! しっかり!」
「こ……ないで……! 千華留……さん!」

 ふと千華留の視界にこのみの顔が入る。
 片手で覆われた顔の指の隙間から彼女の目が除き千華留と視線が合う。

 爛々と鮮血のように赤く輝く瞳。
 爬虫類のように縦に割れた瞳孔。
 視線を合わせただけで殺されそうになるおぞましい殺気。
 だが千華留はそれに臆せずこのみの体を抱きしめる。

613 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:11:48 ID:6hzQDAyQ
支援

614 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:12:10 ID:ireckI3G
 

615 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:12:14 ID:8co5TYZH
「―――――っ!!」
 焼けるような痛みが千華留の首筋に走る。
 このみはその歯を千華留に突き立てていた。
「千華留さん!」
 烏月が叫ぶ。
 千華留は首筋の痛みに堪えながらもその腕を離さずこのみを抱きしめていた。
 破れた皮膚から滲み出る血液をこのみは啜る。
 千華留は血液と共に自らの生命力も失われていくような錯覚に陥っていた。
 だがそれでもなお千華留はこのみを抱きしめたままだった。


 ◆ ◆ ◆


 しばらくしてこのみは落ち着きを取り戻す。
 だが千華留を傷つけてしまったことにショックを受け泣きじゃくるこのみ。
「千華留さん……傷は……」
「少し痛むけど大丈夫。もうっ烏月さんたら大げさね」
 千華留は首筋を押さえながら微笑んでいた。
「烏月さん……このみちゃんに何があったの……?」
「それは――――」
 口ごもる烏月。このみの身に起きた出来事を話して良い物なのだろうか?
 だがこのみは千華留の首に歯を突き立てその血を啜ってしまっている。
 これ以上隠すことは出来そうに無かった。

「このみさんは――――」
「待って烏月さん……わたしから説明するよ……」
 泣きはらし、目の周りを真っ赤にしたこのみが顔を上げ言った。
「でも……」
「誠君の時のように後悔したくないの。だから――お願い」
「わかった。専門的な事は私から補足説明しよう」
「ありがとう……烏月さん」

616 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:12:19 ID:US0nkOkl


617 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:12:58 ID:Z0Pp4M+k


618 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:13:29 ID:ireckI3G
 

619 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:13:35 ID:8co5TYZH
 
 このみは涙を拭いて立ち上がる。
 その表情は緊張の色が見えるも決意を秘めた力強い眼差しだった。

「千華留さん……今のわたしは人じゃなく鬼になっちゃったの」
「鬼……虎の毛皮のパンツに金棒のあれかしら?」
 このみは無言で頷く。
 そして烏月が言葉を続けた。

「千華留さん、人が鬼に成るという話を聞いたことがあるかい?」
「まあ物語……民話、説話などで聞いたことがあるわ。
 有名なところでは保元の乱で後白河天皇に破れ流罪となった崇徳上皇がそれにあたるかしら。
 生きたまま天狗となって『日本国の大魔縁となり、皇を取って民となし、民を皇となさん』と
 凄まじい呪詛を残して死んだと本で読んだことがあるわ」
「まあそういうことになる。この世界に対する憎悪・絶望が積もり積もった結果、
 悪鬼羅刹とその身を転化させる。後に残るは破壊衝動と人を喰らう食欲のみ」

 絶望、憤怒、憎悪。
 幼馴染を一瞬に奪われ、信じた者に裏切られ、理不尽な暴力で傷つけられる。
 それが千華留が知ったこのみに起きた出来事だった。
「でもこのみちゃんはまだそこまで行ってないように見えるわ」
「そう、このみさんのケースはまさに奇跡と言ってもいい。かろうじて彼女は人の心を保っている。
 だけど……さっき見たように湧き上がる破壊衝動と殺人衝動と必死に戦っているんだ」

 にわかには信じがたい話である。
 だがカウンターを真っ二つにした怪力と蛇に睨まれた蛙のようになる眼力を経験した千華留にとって、
 それらは十分に納得できるものだった。

「私が……一番懸念していることはこのみさんが桂さんと出会った時だ」
「わたしと桂さんが……」
「まだこのみさんには説明していなかったんだが……私が探している桂さんは極めて強力な贄の血を宿している」
「それって……わたしが拾った瓶にその名前が――」

620 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:13:46 ID:Z0Pp4M+k


621 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:13:48 ID:US0nkOkl


622 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:14:35 ID:8co5TYZH
「贄の血……確かユメイさんがそんな事を言っていたわね……」
 人にあらざるものを強化する特殊な血――贄の血。
 普通の人間数千人分の血を摂取した分量に相当する化物にとって最高のご馳走。
 たった数滴がこびり付いた瓶の中身にこのみはむしゃぶりついていた。
「桂さんを前にした時、このみさんが自我を保っていられるかどうか私には検討がつかない。もしこのみさんが――」
 言葉に詰まり、伏目がちにこのみを見る烏月。
「わかってる……その時はこのみを殺して。それが約束だから……」
「そんな……このみちゃん……烏月さん何とかならないの!? このみちゃんを人間に戻すことは出来ないの!?」

「あるよ……このみを人に戻す方法、鬼になった人間を元に戻す技を烏月さんは使えるの」
「私は千羽党と言う古来より鬼を切る事を生業とする一族の出身なんだ。
 そして千羽党には鬼と化した人間の鬼のみを切る奥義が伝えられている。
「だったらどうしてそれを使わないの!?」
 千華留の言葉は当然のものだった。
 しかしこのみは首を振って千華留の問いに答える。
「だめなの千華留さん……今、人に戻るとタマお姉ちゃんとの約束を果たせなくなっちゃう」
 あの暗い場所で千華留も見ていた光景。
 自分の命と引き換えにこのみの命を救った向坂環。
 彼女の最期の言葉は千華留の耳にもはっきりと聞こえていた。

「この力が間違った力なのはわかってる……だけど……!
 それでもこのみが生きるために手に入れた力なの! 今この力を手放したら最初のように
 タマお姉ちゃんもタカくんもユウくんも死んで泣くことしか出来なかったわたしに戻っちゃう!」
「…………!!!」

 千華留は何も言い返せなかった。
 彼女の悲壮な決意が痛いほど心に伝わってくる。
 こんな悲劇があっていいのだろうか?
 一体彼女は何をしたと言うのだろうか?
 なぜ彼女はこんな仕打ちを受けねばならないのか?

623 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:14:48 ID:ireckI3G
 

624 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:15:32 ID:US0nkOkl


625 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:15:52 ID:8co5TYZH
  
「このみちゃん……」
 千華留はこのみの小さな身体を静かに抱きしめた。
 彼女の長い黒髪がふわりとこのみの鼻をくすぐる。
「千……華留さん……?」
「悔しいわ……こんなにこのみちゃんが辛い目に遭って来たというのに、私は何一つできやしない……
 あなたの苦しみを肩代わりすることも出来ない。自分の無力さがすごく悔しい……」

 震える千華留の声。
 このみをこんな目に会わせた理不尽な世界への怒り。
 そして何よりもこのみに対して無力な自分に対する怒り。
「ねえ、このみちゃん約束して」
「約束……?」
「どんなことがあっても人でいて、あなたは私達が鬼にさせない。だから、最後まで人であり続けて」
「うん……どこまでできるかわからないけど……わたしがんばる……!」
「そう……いい子ね」

 千華留はこのみから身体を離すと「ちょっと待っててね」と言って、何かを捜し求め店内を歩き始めた。
「ここは服屋だから多分あると思うけど……」
「千華留さん?」
「おっ……あったあった。じゃ〜ん♪」
「あっ……これは……」
 ふわりとこのみの首に柔らかい布が巻かれる。
 燃えるように赤い深紅のマフラーだった。
「ふっふっふ……ヒーローの証――その名も『赤いマフラー』! そして私との約束の証」
「ヒーロー……」
「望まずして強大な力を手に入れてしまい戦いに巻き込まれた者、
 その身を異形と化してしまっても愛する人守るべき人のため戦いに身を投じた者、
 それは哀しみを力と変えたヒーローの証よ」
「でも……このみはヒーローなんかになれないよ……わたしの好きな人守るべき人はもう――――」
「なら私達を守るヒーローになりなさい。その呪われた力をみんなを守る力に変えなさい」

626 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:16:07 ID:6hzQDAyQ
支援

627 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:16:28 ID:Z0Pp4M+k


628 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:16:54 ID:US0nkOkl


629 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:17:27 ID:8co5TYZH
「呪われた力をみんなを守る力に……だけどわたしは……鬼の衝動を抜いても……
 このみを酷い目に遭わせた人に憎しみ、怒り、そして殺してやりたいと思ってる……
 そんなこのみにヒーローの資格なんてないよ……」
「憎しみも怒りも人であることの一部よ。それらが存在しない人間なんて人間じゃない。
 人間誰しも抑圧された感情、自分でも気がつかない無意識の奥底に、
 とても他人に見せることなんてできない醜い心を持っているわ。
 目を背けずきちんと向き合いなさい。それらも自分の一部であることに変わりはないのだから」

 千華留は優しくも力強くこのみに語り掛ける。
 絶望の淵に瀕したこのみが掴んだ希望のひとかけら。

「このみは……」
「一つだけお願いがあるの。私や烏月さんにすがり、依存することだけはしないで。
 それで得られる安らぎなんて所詮仮初の物よ。私達が死ねば儚く消える存在。
 再びあなたは絶望に囚われる。あなたに必要なものはそんなものじゃない。
 どんな困難にも挫けない不屈の心と、一歩を踏み出す勇気こそあなたに必要な物よ」
「不屈の心と勇気……」
「私達の死を乗り越えられる不屈の心を手にした時、その時こそあなたが真のヒーローよ!」

 力強く頷くこのみ、二人のやりとりを見ていた烏月は思う。
 千華留の全てを受け入れる包容力と、時には突き放す厳しさ。
 これこそ人が有史以来人の心に刻み込まれてきた『母』の姿なのだと――

(一歩を踏み出す勇気、か……)
 烏月の心に落とす影。
 千華留はおろかこのみにも話していない真実の一端。
 かつて自分は桂のために悪鬼と化そうとしていた事を。
 最初に出会い、そして殺そうとした少年の名――向坂雄二。
 結局彼は殺せなかった。だが彼は自分が去った後で死んでしまった。
 あの時、邪魔に入った女に殺されたのだろうか?
 それとも他の誰かによってなのだろうか? もはや知る術は無い。
 どちらにせよ自分は彼の死に関わった。彼を見捨てた事には変わらない。

630 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:18:53 ID:US0nkOkl


631 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:19:03 ID:8co5TYZH
 もしあの時、彼と共に行動していたならこのみは鬼と成らずに済んだかもしれないのに……

(私は―――――)


 ◆ ◆ ◆


「千華留さん……あなたは本当に強い人だね……」
「あら? 私は烏月さんやこのみちゃんのような力を持っていないただの女子高生よ」
「そういう意味じゃないよ。あなたの持ってる強さは心の強さ。私には到底真似できない
 もし桂さんが死んでしまったら私は……」
「私もね、大切な人がいたの。でも彼女はこの島で死んでしまった。哀しみと絶望で自暴自棄になるのはすごく簡単。
 でも私は生憎素直な正確じゃないの。そして私と同じく大切な人や仲間を失いながらも、
 決して自分を見失わなかった彼の意志を継ぐためにも」
「彼?」
「理樹……直枝理樹。女の子みたいに可愛らしい顔をしてるけど……その信念はまさしく『漢』だったわ」
 直枝理樹……その名は烏月も聞き覚えがある。
 棗恭介の探し人の一人だったはず。
 そして三回目の放送で名前を呼ばれた人間――

「リトルバスターズ」
「リトルバスターズ?」
「そ、リトルバスターズ。理樹さんの願いの結晶、この島で困っている人を助ける正義の味方の集まり。
 彼はそれの創設者。だけど理樹さんは志半ばで斃れた……私の目の前で。
 そして他の仲間達も離れ離れになってしまったわ……」
「そうだったのか……」
「だから私は彼の最期を看取った者として、自分の意思で彼の願ったリトルバスターズを再結成する。
 かつての仲間と合流して、新しい仲間を見つけて新たなリトルバスターズを……」

「千華留さん……一つ聞いてもいいかい? 多分すごく嫌な質問だと思う」
「何かしら?」

632 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:19:10 ID:ireckI3G
 

633 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:19:40 ID:US0nkOkl


634 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:20:50 ID:Z0Pp4M+k


635 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:21:00 ID:8co5TYZH
「話し合いで解決できない……自分を殺そうと、仲間を殺そうと迫る者を殺す覚悟はあるかい?」
「……………」
 烏月はそれ以上何も言わず千華留の返事を待つ。
 ややあって千華留は口を開いた。

「ほんと、嫌な質問ね。世の中綺麗事ではうまくいかない。こちらの説得も通じない人間だっている。
 それで私の大切な人仲間が死んだ。自分を守るため、仲間を守るため……私はその手を汚す覚悟はあるわ。
 血に染まった自らの手から決して目を逸らさずに生きていく。でもね……」
「でも?」

「そういう状況こそ、あの陰険神父が愉快で愉快で堪らない展開だと思うと癪なのよね〜
 仲間を集め、島を脱出しようとする私がその手を血で汚す。
 『お前の信念とはその程度の物とは何たる愉悦』ふははははーって大笑いするでしょうね」
「確かに……あの男の言葉は危険だ。聞いた者の心の闇を暴き、傷口に塩を塗りこむ。
 聞きたくなくても聞き逃せないその言葉はまさに呪いと言えるかもしれない」
「あれは喋り方からして真性のサドよ。
 参加者の苦痛、呪い、慟哭の声を聞くのが三度の飯より好きなド変態よ。
 そう……このみちゃんが人と鬼の狭間で揺れ苦しんでる様なんて格好の好物でしょうね」
「……………」
「ああいうタイプは論破しようとしても無駄よ、一方的に勝利宣言されて言い負かせられないのがオチ
 あの神父みたいに詭弁を弄する相手にはこれが一番効果的よ」

 千華留は右手を握り締めて拳を作り烏月の前にかざす。

「右ストレートでぶっとばす、真っすぐいってぶっとばす。これよ!」
 相手が何を言おうとも問答無用で張り倒す」
「ははは……確かに単純明快な答えだね」
「だから――烏月さん、このみちゃん。あなた達の力を私に貸して欲しい。変態神父をぶん殴るための力を」

 千華留の真摯な眼差しが烏月とこのみの二人を捉える。
 どこまでも真っ直ぐで曇り一つ無い意志の強さの表れがそこにあった。

636 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:22:44 ID:8co5TYZH

「ふふふ……断る理由がどこにある? 私はあなたに力を貸そう」
「えへへ、変態さんはおしおきするでありますよ〜!」
「ありがとう……二人とも……」


 ――強敵があらわれたんだ! きみの力がひつようなんだ!

 少年の意志は受け継がれる。
 不屈の心と勇気がある限り永遠に。


【F−2 中世西洋風の街・洋服店/一日目 夜】


【源千華留@StrawberryPanic!】
【装備】:能美クドリャフカの帽子とマント@リトルバスターズ!、スプリングフィールドXD(9mm14/16)
【所持品】:カンフュール@あやかしびと−幻妖異聞録−、理樹の制服トランシーバー、支給品一式×2、ハサンの髑髏面、女物の下着数枚、木彫りのヒトデ6/64@CLANNAD聖ミアトル女学院制服@StrawberryPanic!
【状態】:首筋に浅い噛み傷、強い決意
【思考・行動】
 基本:理樹の意志を継ぎ、新生リトルバスターズを結成する。
 0:リーダーとして進む。
 1:新たな仲間の確保。とりあえずクリス、唯湖を探してみる。
 2:元の仲間との合流。
 3:脱出の為の具体的な作戦を練りこむ。
 4:恭介とトルタに若干の違和感。
 5:神宮司奏に妙な共感。
 6:深優を許さない。なつきについては保留。
 7:りの無事を祈る。

637 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:24:09 ID:8co5TYZH
【備考】
 ※理樹たち、深優と情報を交換しました。
  深優からの情報は、電車を破壊した犯人(衛宮士郎)、神崎の性癖?についてのみです。
 ※千羽烏月と情報交換しました。それによりファル・蛆虫の少女(世界)・フカヒレ・ツヴァイを危険人物と認識しました。
 ※G-4の民家に千華留とりのがF-2の駅に向かう、というメモが残されています。
 ※次の目的地は後の書き手氏に任せます。


【千羽烏月@アカイイト】
【装備】:地獄蝶々@つよきす-MightyHeart-
【所持品】:支給品一式×2、我埋葬にあたわず@機神咆哮デモンベイン、Love&Spanner@CLANNAD、
 アルのページ断片(シャンタク)@機神咆哮デモンベイン
【状態】:中程度の体力消費、身体の節々に打撲跡、背中に重度の打撲、脇腹に軽傷、右足に浅い切り傷(応急処置済み)
【思考・行動】
 基本方針:羽藤桂に会う。守り通す。
 0:歓楽街の周辺を捜索して、桂を探す
 1:新生リトルバスターズの一員として千華留と行動を共にする。
 2:このみの鬼を斬ってやりたい。
 3:このみが完全に鬼になれば殺す。
 4:キャル(ドライ)を見付けたら保護、第四回放送までに刑務所へと連れて行く
 5:恭介、トルタに対する態度は保留。
 6:なつきを探す。
 7:ウェストからの伝言を大十字九郎に伝える。
【備考】
 ※自分の身体能力が弱まっている事に気付いています。
 ※烏月の登場時期は、烏月ルートのTrueend以降です。
 ※クリス・ヴェルティン、棗鈴、直枝理樹の細かい特徴を認識しています。
 ※恭介・トルタが殺し合いに乗っている事を知りません。
 ※ドクター・ウェストと情報を交換しました。
 ※千華留との情報交換により深優を危険人物と認識しました。
 ※蛆虫の少女(世界)、ツヴァイを警戒しています。

638 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:24:19 ID:ireckI3G


639 :HEROES ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:24:45 ID:8co5TYZH


【柚原このみ@ToHeart2】
【装備】:赤いマフラー、包丁、イタクァ(3/6)@機神咆哮デモンベイン、防弾チョッキ@現実
【所持品】:支給品一式、銃弾(イタクァ用)×12、銃の取り扱い説明書、草壁優季のくずかごノート@ToHeart2、鎮痛剤(白い粉が瓶に入っている)
【状態】:悪鬼侵食率20%、リボン喪失、小程度の体力消費、右のおさげ部分が不ぞろいに切り裂かれている、左肩に銃創(腕は動かせるが、痛みを伴う
【思考・行動】
基本行動方針:貴明と環の仇を討つ。
 0:柚原このみのまま、絶対に生き残り、主催者に復讐を遂げる。
 1:ファルと世界に"復讐"をする。
 2:新生リトルバスターズの一員として千華留と行動を共にする。
 3:烏月と共に行動し、羽藤桂を捜索。その後に人間に戻してもらう。
 4:ドライに会いたい
【備考】
※制服は土埃と血で汚れています。
※世界が使う“清浦刹那”という名前を偽名だと知りました。
※第一回放送内容は、向坂雄二の名前が呼ばれたこと以外ほとんど覚えていません。
※悪鬼に侵食されつつあります。侵食されればされるほど、身体能力と五感が高くなっていきます。
※制限有りの再生能力があります。大怪我であるほど治療に時間を必要とします。
 また、大怪我の治療をしたり、精神を揺さぶられると悪鬼侵食率が低下する時があります。
※フカヒレのここまでの経緯と知り合いや出会った人物について把握済み。
※精神状態はかなり安定しています。
※くずかごノートには様々な情報が書かれています。現在判明している文は、
  『みんなの知ってる博物館。そこには昔の道具さん達がいっぱい住んでいて、夜に人がいなくなると使って欲しいなあと呟いているのです』
  『今にも政略結婚が行われようとしたその時、秘密の抜け穴を通って王子様は大聖堂からお姫様を連れ出すことに成功したのでした

640 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 02:25:36 ID:6hzQDAyQ
支援

641 : ◆DiyZPZG5M6 :2008/08/06(水) 02:26:03 ID:8co5TYZH
投下終了です。
支援ありがとうございました。

642 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 03:24:22 ID:Z0Pp4M+k
投下乙です
烏月とこのみコンビ良いなあ
続きが読みたくて堪らないコンビだ
千華留様も良い味を出しててグッド……被誤解王で、後々酷い事になりそうだけどw
悪鬼と人間の狭間で揺れるこのみの苦悩も良かったです

643 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/06(水) 08:36:16 ID:M+i2PBG4
投下乙です

tu氏
なごみん死亡。彼女がはよくここまで良く生き延びられたと感慨
これまでの緊張の糸がふっと切れたような末路が哀れを誘いますね
そして、ついに動き出したミキミキ。この子は改心フラグで含めて黒くて素敵だ

Lx氏
おっ、ファル様にナナメウエにフラグがたったw
ギャグあり、考察アリ、心理描写ありとてんこ盛りなのは流石
やっと、このグループも対主催として形作られてきましたね

Di氏
こっちも対主催グループ結成。このみは本当に頑張ってますね
女の子同士の切なくも明るい会話がなかなか良し
ただ、彼女らは被誤解グループなのが気になる……

644 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:01:16 ID:noG7+WYt
藤乃静留、一乃谷刀子、鮫氷新一、トウカ致します(・3・)
お暇な方がいらっしゃれば支援宜しくお願いします

645 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:02:00 ID:CFKhMS3s



646 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:02:18 ID:VatAKCel
 

647 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:02:22 ID:noG7+WYt
 辺り一面に広がる緑。
 深々と生い茂った木々の中を、全速力で駆け抜けてゆく人間が二人。
 否、その片割れは既に、人間と形容して良い状態かどうか怪しい。
 強固な殻に覆われた肩、紅いハサミへと変貌した両腕。
 恐怖に顔を歪ませる少年は、ザリガニ人間とでも表現すべき容姿だった。

「――――ハアっ、ひ、く、あ―――――」

 鮫氷新一は呼吸を荒ぶらせながら、全力で逃走を続けていた。
 走り始めてから、既に相当な時間が経過している。
 人外と化した今の身体を以ってしても、体力は確実に限界を迎えつつあった。
 しかしどれだけ肺が痛もうとも、足が軋もうとも、決して立ち止まる訳には行かない。
 ちらりと背後を眺め見る。


「…………」

 後ろから迫る一乃谷刀子は、先程から一つの言葉すらも発してはいない。
 溢れんばかりの怒りを瞳に湛えたまま、黙々とこちらに追い縋ってくる。
 全てを押し潰すようなその殺気は、周囲の気温が数度下がったかと勘違いさせられる程のもの。
 それだけで、捕まれば確実に助からないと理解出来た。
 だからこそ新一は懸命に走り続けていたのだが、限界は刻一刻と迫っている。

「く……は……っ、は、はぁ……」

 身体の節々が痛んで、徐々に新一の駆ける速度が落ちてくる。
 一時間近くにも及ぶ逃走劇は、新一の体力を根こそぎ奪い去っていた。
 流れた放送にすら耳を傾けず、只ひたすらに走り続けたが、その努力も無意味。
 いかに人外と化そうとも、普段碌に運動もしていなかった新一では、牛鬼の末裔たる刀子から逃げ切れる筈も無い。
 やがて刀子は新一を追い抜いて、その進路へと立ち塞がった。


648 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:03:04 ID:VatAKCel
 

649 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:03:33 ID:vnM9IETl
 

650 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:03:40 ID:noG7+WYt
「鬼ごっこは、終わりですね」
「ひっ…………待ってくれ! 違うんだ、殺すつもりなんて無かったんだ!
 レオを殺したって聞いて、ちょっと懲らしめてやろうと思っただけなんだよ!」

 新一は表情を恐怖と狼狽に染めながら、必死に言い訳を試みようとする。
 頬に殻の浮き出た人外が、必死に言葉を並べ立てる様は、とても醜く浅ましい。
 しかしそんな彼の言葉が聞こえていないかのように、刀子は絶対零度の怒りのみを瞳に宿していた。

「その気になれば、私は何時でも貴方に追い付く事が出来ました。
 今までそうしなかったのは、一体何故だと思いますか?」
「う…………えっ……? そんなの、知らねえよ……」

 突然の問い掛けに、新一は訳も分からず首を左右へと振る。
 瞬間、刀子の瞳に宿った殺気がより鋭さを増した。

「貴方に少しでも多くの苦しみを与える為です。
 長時間に渡る逃亡劇は怖かったでしょう? 辛かったでしょう?
 だけど、まだまだ足りません。兄様の味わった苦痛は、こんなものではないのですから」

 云い終えるや否や、刀子は手元の日本刀――古青江を縦に一閃した。
 舞い散る鮮血が、霧の如く宙へと広がる。
 ぼとり、と新一の左耳だったモノが地面へと落ちた。

「ひ、ぎあああぁぁあ!? 耳が、俺の耳がああぁぁぁああ!!!」

 頭の中に直接電流を流し込まれたかのような激痛に、新一が動物じみた叫びを上げる。
 その一撃だけで新一の心を折るには十分だったが、尚も刀子の怒りは収まらない。
 復讐鬼と化した少女は、何の躊躇も無く、それこそ目の前のゴミを払い除けるような調子で新一の腹部を蹴り上げた。

651 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:03:55 ID:Kq5EwZdV


652 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:04:04 ID:VatAKCel
 

653 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:04:11 ID:CFKhMS3s



654 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:05:28 ID:Kq5EwZdV


655 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:05:40 ID:noG7+WYt

「兄様は道を改めて下さったのに――」
「ぐがっ、ぅ、ぉぇぇええ…………」

 黄色い胃液を吐き出しながら、苦しげに地面の上を転げ回る新一。
 しかし悠長に苦しんでいる暇すらも、今の彼には与えられない。
 悶絶している新一の視界に、自分を踏み潰そうとする靴底が映った。
 新一も懸命に回避を試みたものの、寝転がった姿勢では到底躱し切れない。

「兄様は必死に罪を償おうとしていたのに――」
「あごっ……!!」

 鈍い打撃音と共に、新一の鼻骨が無残にも砕け散る。
 止め処も無く鼻血が溢れ出して、グロテスクな人外の顔を赤く染め上げた。
 更に、大きく振り上げられる刀子の脚。

「貴方が全てを台無しにしてしまった!」
「や、止め――――うごあぁぁっ!!」

 必死の懇願も空しく、新一は思い切り胸部を蹴り上げられた。
 そのまま受け身を取る事すらままならず、背中から後方の木に衝突する。
 森の中に轟音が鳴り響いて、『緑色』の体液が飛散した。
 異形と化しつつある少年は、力無く地面へと尻餅を付いた。 

「その身体、その体液……どうやら貴方は只の人間では無いようですね。
 どちらかと云えば、私のような人妖に近い存在でしょうか?
 ですが、貴方が何者であろうとも関係ありません。兄様を殺した罪――万死に値します」

 刀子の握り締めた日本刀が、月光を反射して禍々しく光り輝く。
 冷たい風が森の中を吹き抜けて、周囲の木々がざわざわと葉擦れの音を奏で上げる。
 そこに一切の容赦は無く。
 刀子は天高く日本刀を振り上げて――

656 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:06:07 ID:VatAKCel
 

657 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:07:31 ID:noG7+WYt


「……なんだ、よぉ」


 そんな呟きを、耳にした。
 刀子の動きがピタリと停止する。
 これまで怯えているだけだった新一が、憎悪の視線で刀子を睨み付けていた。

「…………お前達だって、俺からレオを奪った癖に……」

 紡がれたその言葉には、確かな怒りが籠められている。
 追い詰められた鼠は、猫が相手であろうとも只搾取されるだけでは無い。
 被害者でもあり加害者でもある少年は、積もりに積もった鬱憤を吐き出してゆく。 

「お前達が先にレオを殺したから悪いんじゃねえか! それなのに、俺だけを悪者扱いかよ!?
 良いよなあ、偽善者は? そうやって被害者面してれば、自分のやってる事を正当化出来るもんな!?」

 新一は我慢ならなかった。
 確かに自分は悪業を積み重ねてきたし、人を殺しもした。
 しかしそれも全ては、放送で対馬レオの名前が呼ばれたからこそ。
 にも関わらず自分だけが糾弾されるのは、決して許せる事では無い。

「――――っ」

 刀子は咄嗟に反論を行う事が出来なかった。
 兄――愁厳が、目の前の男から大切な存在を奪ったのは紛れもない事実。
 愁厳が殺されてしまったのは、あくまでも罪の報いを受けたに過ぎないのだ。

「なあ、返せよ……レオを返せよ! 俺だってこんな殺し合いはしたくないんだよ!
 俺を元の生活に帰らしてくれよぉ…………!」
「くっ…………」

658 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:07:45 ID:CFKhMS3s



659 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:08:12 ID:Kq5EwZdV


660 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:08:12 ID:VatAKCel
 

661 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:08:38 ID:CPJPsYhQ
 

662 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:09:02 ID:noG7+WYt
 刀子は日本刀を振り下ろせない。
 この男と自分は何も変わらない、と思った。
 怒りに任せて兄の仇を殺そうとしている自分と、復讐を実行に移しただけの男。
 その両者の間には、一体どれだけの違いがあると云うのだろうか。
 それに、兄が死に際に遺した言葉。

――――『刀子。彼を、恨むなよ』

 兄自身も因果応報だと云っており、刀子が復讐する事など望んではいなかった。
 憎しみの連鎖を紡いでいく事など、決して望んではいなかった筈なのだ。
 そんな想いを踏み躙ってまで復讐するのは、兄に対する裏切り行為では無いのか。

「……命拾い、しましたね」
「え――――?」

 刀子は様々な感情の籠もった声を洩らしながら、古青江を鞘へと仕舞い込んだ。
 殺せない。
 此処でこの男を殺してしまえば、自分は最低最悪の妹になってしまう。
 この身がどれだけ憎悪に苛まれようとも、兄を裏切るような真似だけは絶対にする訳にいかない。
 刀子は己が激情を押さえ込んだまま、その場を離れようとして――――瞬間、即頭部に強烈な衝撃を受けた。

「……あぐ、がっ……!?」

 意識を刈り取られかねない程の、強烈極まりない一撃。
 刀子の身体は人形か何かのように弾き飛ばされて、地面に強く叩き付けられた。
 尚も身体の勢いは止まらず、生い茂る草の上を激しく横転する。
 刀子が苦痛に表情を歪めながらも何とか身体を起こすと、一人の少女の姿が目に入った。


663 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:09:30 ID:Kq5EwZdV


664 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:10:04 ID:Kq5EwZdV


665 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:10:26 ID:VatAKCel
 

666 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:10:48 ID:noG7+WYt
「あらあら……。随分と派手に吹き飛びはりましたなあ。どんな時でも周囲への警戒を怠ったらあかんえ?」

 凛とした少女の声が森の闇を切り裂いて、刀子の鼓膜を震わせる。
 栗色の長髪、均整の取れた身体付き。
 確かな殺気を瞳に湛えたその少女は、名を藤乃静留という。

「遠くから様子を伺わせて貰ってましたけど……あんた、無抵抗の相手にやりたい放題でしたなあ……。
 助かる。ホンマ助かるわあ……だって――」

 静留は手にした鞭――殉逢(じゅんあい)を大きき後ろへと振りかぶる。
 刀子がよろよろとした動作で立ち上がった直後、殉逢は蛇のような動きで刀子へと襲い掛かった。

「あんたみたいな外道が相手なら、うちは容赦無く鬼に成れる」
「ぐっ…………!?」

 高速で一閃される鞭。
 刀子は刹那の反応で刀を構え、迫る一撃を弾き返したものの、先程受けたダメージは決して小さくない。
 その場に踏み止まったままでは衝撃を抑え切れずに、頼り無い足取りで二三歩後退した。
 ズキズキと痛む即頭部。
 刀子自身の意志とは無関係に膝が震え、視界は波のように揺れている。
 どうやら軽い脳震盪の状態に陥ってしまっているようだった。

「ふふ、えろう辛そうどすなあ。不意打ちとは我ながら卑怯な手やけど、文句は受け付けません。
 外道相手に手段を選ぶ必要なんて無いんやから」

 静かに燃える怒りの視線が、傷付いた刀子へと突き刺さる。
 その様子、その口振りから判断するに、静留は刀子が殺し合いに乗っていると勘違いしているようだった。
 刀子は困惑の表情を浮かべながらも、自らに掛けられた疑いを晴らそうとする。

「ちょ、ちょっと待って下さい……っ。貴女は勘違いを――」
「助けてくれ! こいつは殺し合いに乗っているんだ!」


667 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:10:55 ID:Kq5EwZdV


668 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:11:14 ID:VatAKCel
 

669 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:12:05 ID:Kq5EwZdV


670 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:12:36 ID:noG7+WYt
 狙いすましたかのようなタイミングで、新一が刀子の言葉を遮った。
 それは刀子にとって、正しく寝耳に水の話。

「なっ……違います! 私は殺し合いをしようだなんて思っていません!」
「またそうやって人を騙そうとするのか? あれだけ一方的に人をボコった癖によ!」
「それは、貴方が兄様を殺したから……!」
「嘘だ! 証拠も無い癖に適当云ってんじゃねえ!
 さあ、そこのアンタ。どっちが嘘を吐いてるかなんて、見りゃ分かるだろ? 早く俺を助けてくれ!」

 新一は恥も外聞も関係無く、次々と出任せを並べ立てる。
 それは苦し紛れの言動に過ぎなかったが、ある程度の説得力はあるものだったかも知れない。
 容赦の無い暴行を加えていた刀子と、ただ嬲られるだけの新一では、どちらが信用されるかなど明らかだ。
 だがいかに道理が通っていようとも、既に新一の外見は怪物と化しつつある。
 加えて新一の嘘は、『相手が殺し合いに乗っていない』という前提の下でしか意味が無い。
 静留に歩み寄ろうとした新一だったが、その足元に殉逢が強く叩き付けられた。

「ひっ! な、何を……?」
「勘違いされたら困ります。うちはあんたを助けるつもりなんてあらへん。
 相手が誰であろうとも――殺すつもりなんやから。大体そんなナリで、信用して貰えると思ってはるの?」
「あ……、え、ぅ…………」

 向けられた殺意に顔面蒼白となりながら、新一は地面に尻餅を付いた。
 静留からすれば、刀子が殺し合いを肯定しているかどうかなど、さしたる問題では無い。
 新一が只の被害者であったとしても、静留のすべき事は何一つ変わらない。

「貴女は殺し合いに乗ったと云う事ですか」
「……そうどすな。私は殺し合いに乗っている」

 刀子の問い掛けに対して、静留は少し間を置いた後に頷いて見せた。
 他の参加者達を皆殺しにする――それが静留の行動方針だった。


671 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:14:34 ID:Kq5EwZdV


672 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:14:47 ID:noG7+WYt
「あんた達に一つだけ聞きたい事があります。なつきって子について、何か知りまへんか?」
「…………」

 刀子は刀を握り締めたまま、新一は顔を恐怖に染めたまま、それぞれ沈黙を守っている。
 それは、なつきについて何も知らないと云っているのと同意義だった。
 これで話は終わりだと云わんばかりに、静留は殉逢を大きく後ろへと振り被る。
 素早く一振りされた鞭は獰猛な蛇と化して、不規則な軌道で刀子に襲い掛かる。

「あづっ…………!」

 刀子は迫る一撃を何とか受け止めたものの、脳震盪に陥った今の状態では耐え切れない。
 叩き付けられた衝撃に、上体が後ろへと流される。
 刀子が態勢を整えるよりも早く、静留の第二撃が横凪ぎに放たれた。

「このっ――――」

 受け止めるのは厳しいと判断して、刀子は横に跳躍する事で逃れようとする。
 だが傷付いた身体では躱し切れず、左肩を強く打ち据えられた。
 強烈な衝撃と痛みに、刀子の動きが一瞬停止する。
 そしてその隙を見逃さずに、再度鞭が振るわれる。
 刀子が地面を蹴った直後、猛り狂う蛇が彼女の腹部を思い切り強打した。

「あがっ…………く」

 宙へと跳ね上げられる身体。
 だが刀子は、自ら後方に飛ぶ事で衝撃の大部分を逃している。
 牛鬼の少女は地面に降り立つや否や、静留に向かって疾走を開始した。
 静留が縦横無尽に振るう殉逢は、長さにして五メートルを超す鞭。
 自分から間合いを詰めていかねば、射程外から一方的に攻撃されてしまうだけなのだ。
 そうはさせじと放たれる殉逢の一撃が、刀子の前進を阻まんとする。
 標的となった刀子は、両手で強く日本刀を握り締めた。

673 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:15:12 ID:CFKhMS3s



674 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:15:42 ID:CFKhMS3s



675 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:16:35 ID:VatAKCel
 

676 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:16:56 ID:noG7+WYt
「ハッ!」

 踏み込みと共に、全力で殉逢を弾き返そうとする刀子。
 傷付いた身体による一撃とは云え、牛鬼の膂力と十分な予備動作が合わされば、力負けはしない筈だった。
 しかしそこで静留が手首を返し、刀子の目が驚きに見開かれる。
 生じた捻りは鞭の先端にまで伝達されて、その軌道を大きく変化させていた。

 刀子は超人的な反応速度で剣戟を中断して、一も二も無く地面へと転がり込んだ。
 殉逢は刀子の頬を浅く掠めて、そのまま背後の木に深々とした罅を刻み込む。
 更に、再度引き戻された殉逢が、倒れ伏す刀子へと牙を剥く。
 刀子は跳ねるようにして飛び起きて、何とか殉逢の射程外から逃れていた。
 距離を置いた状態で睨み合う二人。

「……ふ……はあ…………はあ……っ」

 刀子は肩で息を整えながら、口の中に沸き上がる血を飲み込んだ。
 状況は芳しくない。
 最初に被った一撃で脳を揺らされ、その後の戦いで腹部にもダメージを受けてしまった。
 自分とて牛鬼の血を引く人妖であり、一乃谷流の使い手でもある。
 このまま敗北を喫するつもりは毛頭無いが、果たして何処まで凌げるか。
 不規則な軌道を描く鞭は、獲物を確実に弱めていく毒蛇のようなものだ。
 即死性は無いが、何度も受ければ戦闘不能に追い込まれてしまうだろう。
 目の前の女が強敵である事は、疑いようが無い。
 しかしなればこそ、勝負を決する前に聞いておかなければならない事が一つあった。

「何故、貴女はこのような事をなさるのですか?
 それだけの力があれば……違う道を選べたのではないですか?」


677 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:17:02 ID:Kq5EwZdV


678 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:17:53 ID:VatAKCel
 

679 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:18:29 ID:CFKhMS3s



680 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:18:33 ID:noG7+WYt

 十分な実力を有していながら、どうしてその力を正しい方向に使わないのか。
 それが、刀子にとって最大の疑問だった。
 静留が悪人だとは思えない。
 襲撃を仕掛けてきた時の静留は、確かに怒っていた。
 刀子が新一を痛め付ける様子を見て、憤慨していたのだ。
 そんな静留が、自分の命惜しさに殺人遊戯を肯定するとは、到底思えなかった。
 場に流れる静寂。
 静留は桃色の唇を動かして、静かに言葉を紡ぎ上げる。

「……守りたい子がいるんどす」

 それは躊躇いがちな、しかし確かな決意が籠められた声だった。
 蛇の少女は真っ直ぐな瞳で刀子を見据えながら、己が想いを解き放ってゆく。

「なつきは強がりで、人の言う事を聞かなくて、でも本当はとても優しくて。
 過酷な運命にも負けないで、歯を食い縛りながら懸命に生きていて。
 こんな所で死んで良い子やないんどす。うちはなつきを――誰よりも愛しいあの子を、死なせたくない」

 静留は心の底から、玖我なつきという少女に惹かれていた。
 その想いは同性であると云う壁すら乗り越えて、愛の領域にまで達している。
 静留は一人の人間として、確かになつきを愛しているのだ。
 だから――

「うちはなつきを守りたい。たとえこの手が血に汚れても、どれだけ罪の意識に苛まれても、なつきに生きていて欲しい。
 せやからあんた達も、他の参加者達も全員殺します。全てはなつきを守る為に」

 静留が語るその決意は、今に始まった事ではない。
 元の世界に於いても、静留はなつきの為だけに行動してきた。
 変わったのは、無差別に人を襲うかどうかという一点だけ。
 何としてでもなつきを守るという答えは、とうの昔に決まり切っていた。

681 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:19:08 ID:Kq5EwZdV


682 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:20:19 ID:Kq5EwZdV


683 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:20:46 ID:VatAKCel
 

684 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:20:46 ID:noG7+WYt
「……そうですか」

 刀子は揺らぎの無い瞳で、真っ向から静留の決意を受け止める。
 静留の強固な意志を聞いた事で、自分自身の意志もまた固まった。
 ならば後は己が意志を貫き通すだけだが、その前に一つだけやっておかなければならない事がある。
 斜め後ろに視線を移すと、恐怖に表情を歪めたまま座り込んでいる新一の姿があった。

「確か、鮫氷新一さんと云いましたか。兄様を殺した事は、絶対に許せません。
 だけど、兄様は貴方の事を恨むなと云っていました」

 そこまで云うと、刀子は鞄の内一つを新一へと投げ渡した。
 新一はザリガニのハサミと化した腕で鞄を受け取って、訳も分からず困惑の声を洩らす。

「え……あっ……これは?」
「兄様を裏切る訳には行かないから――私は貴方を逃がします。その鞄には包丁や最低限の支給品が入っています。
 それだけあれば当座は凌げるでしょう。勝手に何処へなりとも消えて下さい」

 決して憎しみが消えた訳では無い。
 だが何時までもそれに固執し続けて、兄を裏切ってしまうという結末だけは避けなければならない。
 だからこそ少女は溢れんばかりの激情を抑え込んで、兄が遺した言葉に従ったのだ。
 新一は暫しの間呆然としていたが、やがて勢い良く立ち上がると、そのまま振り向きもせずに走り去って行った。


「……そっか、あんたは殺し合いに乗っていなかったんやな。
 せやけどそんな身体で残って、一体何をしはるつもりなんどすか?」

685 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:22:01 ID:VatAKCel
 

686 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:22:23 ID:noG7+WYt
 静留は逃げる新一を一瞥すらせずに、ただ正面へのみ鋭い視線を送っている。
 蛇の少女が眺め見る先では、傷付いた刀子の姿。
 刀子の服は泥に塗れて、右即頭部からは血が滲み出ている。
 静留も決して五体満足とは云えないが、頭部と腹部を強打されたばかりの刀子は更にダメージが大きい筈。
 脳を揺らされた影響はこの短時間では消えないし、内臓への一撃は、真綿で締め付けるように今も刀子を苦しめているだろう。
 だと云うのに刀子は、一向に引く様子を見せなかった。
 人妖の少女は悠然と屹立したまま、己が胸の内を言葉へと変える。

「私の兄も嘗て貴女と同じ道を歩んでいました。私を生還させる為に、自らの心を殺してまで、罪無き人々をその手に掛けていました。
 だけど、それは間違っている。絶対に……絶対に、間違っている」
 
 刀子の兄、一乃谷愁厳もまた、静留と同じ類の動機で人殺しを行っていた。 
 妹である刀子を幸せにする為だけに、自ら修羅の道を歩んでいたのだ。
 それはとても強く、とても哀しい選択。
 その選択によって引き起こされた悲劇を、守られる側となった者の気持ちを、刀子は嫌という程味わっている。
 そんな刀子だからこそ、今の静留を認める訳にはいかない。
 
「だから――止めます。貴女がそんな理由で戦っていると云うのなら、私は絶対に引く訳にはいかない」

 兄の時のような悲劇を繰り返させぬ為、少女は鉄の意志を以って静留の眼前に立つ。
 そして強固な決意を持っているのは、静留もまた同じ。

「……あんたは強い人なんやね。でもな、うちだって引く訳にはいかへん。
 どんだけ誰かを傷付ける事になっても、その苦しみは、想い人を失う苦しみよりもなんぼかマシやから」

 語る静留の声にもまた、強固な決意が籠められている。
 なつきを守ると、誰よりも愛しいあの少女を守り抜くと決めた。
 ならば敵がどれだけ強い意志で向かってこようとも、己の道を変えるなど有り得ない。

687 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:22:27 ID:Kq5EwZdV


688 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:22:59 ID:Kq5EwZdV


689 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:23:19 ID:CFKhMS3s



690 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:23:56 ID:noG7+WYt
「ここから先は、云わんでもええわな。お互いにやるべき事は、もう一つだけやさかいに」

 静留が殉逢を構えて、それに応ずるようにして刀子も日本刀を構えた。
 揺ぎ無い意志と意志、視線と視線が交錯する。

「私の名は、一乃谷刀子と云います。貴女は?」
「……うちは、藤乃静留や」

 闇に包まれつつある森の中。
 各々の得物を手に、二人の少女が正面から相対する。 


「「いざ――――尋常に、勝負」」


 ひゅうと、冷たい風が二人の間を吹き抜けた。 



    ◇     ◇     ◇     ◇



「――ふっ……はっ……はっ……。流石に此処まで来れば……大丈夫だろ」

 新一は戦場から数百メートル程離れた場所まで逃れて、ようやく一息吐いていた。
 恐怖から解放された途端に痛みが蘇って、木の根元へと腰を降ろす。
 何とか逃亡には成功したものの、新一が被った被害はかなり大きかった。
 鼻骨は砕かれ、左耳は消失。
 強打された腹部と胸部は、今もズキズキとした痛みを訴えている。


691 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:24:11 ID:Kq5EwZdV


692 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:24:34 ID:VatAKCel
 

693 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:24:53 ID:CFKhMS3s



694 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:24:57 ID:Kq5EwZdV


695 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:25:28 ID:noG7+WYt
「畜生……痛え、痛えよ……。あのクソ女、散々好き勝手やりやがって……!」

 逃がして貰った、という感謝の気持ちなど無い。
 有るのは、それ以前に受けた暴行に対する憤りのみ。
 自分は只、親友の仇を自らの手で討ったに過ぎぬ。
 それは誉められて然るべき行為なのに、何故あのような扱いを受けなければならなかったのか。
 妙な方言の女も許せない。
 助けに来たと思わせておいて、実際には殺人鬼だったとは理不尽な話。
 一度希望を抱いた後に突き落とされたショックは、並大抵のものでは無かった。
 この恨みは、何時か必ず晴らさなければならないだろう。

 しかし直接仕返しする事は困難だ。
 あの二人の実力は、一般的な高校生の範疇を遥かに凌駕している。
 正面から挑み掛かっても、返り討ちにされてしまうのがオチだろう。
 ならば、どうするべきか。

「そうか……へへへ。あいつらの悪評も、バラ撒いてやれば良いんだ」

 力で敵わないのならば、頭で挑めば良いだけの話。
 烏月やこのみだけでなく、あの二人の悪評をも広げてしまえば良い。
 後は勝手に他の人間が、自分の代わりに復讐を果たしてくれるだろう。
 そう結論付けた新一は、次に自身に起きている異変について考察する。

「この手……ハサミ、だよな。それに身体の節々も、貝殻みたいに固くなってやがる」

 新一はザリガニのような自身の腕、殻に覆われつつある脇腹を、じっくりと観察してゆく。
 何故、だろうか。
 身体は最早異形と化しているのに、その事に対してさしたる驚きは無かった。
 初めて気付いた時は違和感しか無かったが、改めて眺めてみると、寧ろこの姿が自然なように思えてくる。
 もしかすると、精神の方までもが変貌しつつあるのかも知れなかった。
 自身の状態を確認した新一は、次に刀子から渡された鞄の中身を調べようとする。
 あんな女の道具に頼るのは癪だが、生き延びる為にはあらゆるモノを利用しなければならないのだ。

696 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:25:54 ID:CFKhMS3s



697 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:26:01 ID:VatAKCel
 

698 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:26:29 ID:CFKhMS3s



699 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:26:54 ID:noG7+WYt
「このっ、開け辛いな」

 ハサミ型の手で四苦八苦しながら、それでも何とか鞄を開く事に成功する。
 早速中を覗き込むと、刀子の言葉通り、中には包丁が入っていた。
 それは銃に比べれば劣るものの、最低限の殺傷能力は備えた道具。
 当面の護身道具にはなるだろうと、思ったのだが。

「何だよ、これ! この手じゃ掴めないじゃねえか!」

 ハサミ型の手では包丁を満足に扱えない。
 手に取るくらいならば可能だが、五本の指無しでは握り締める事など不可能。
 振り回そうとでもしようものなら、包丁は手の中をすり抜けて、あらぬ方向へと飛んでいってしまうだろう。
 とても、実戦には耐え切れない。
 期待外れであると云わざるを得なかった。

「くそっ、ふざけんな!役に立たねえもんなんて寄越すんじゃねえよ!」

 怒りに身を任せて、力の限り木を殴り付ける。
 その行動は普通ならば自傷行為にしかならなかったが、今の新一は既に人外と化している。
 固い殻で覆われた手には、傷一つ付く事が無かった。

「くそっ、くそっ! 烏月もこのみも、あの女も、人をコケにしやがって!」

 何度も何度も、森の中に轟音が鳴り響く。
 新一は物云わぬ木に向けて、醜い八つ当たりを続けてゆく。
 そして、更に何度か木を殴り付けた時。
 新一の目の前で、予想だにしなかった事態が引き起こされた。

700 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:27:03 ID:vnM9IETl
 

701 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:27:42 ID:Kq5EwZdV


702 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:28:04 ID:VatAKCel
 

703 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:28:35 ID:noG7+WYt
「え…………?」

 ぐらり、と揺れる木の幹。
 高さにして八メートルはあろう木が、新一が殴り付けた部分を中心に折れていた。
 支えの無くなった木は、落ち葉を激しく宙に巻き上げながら地面へと崩れ落ちた。
 後に残ったのは、無残にも地に倒れ伏せる木のみ。
 それは、生身の人間が行えるような破壊では無かった。 
 新一が成りつつある『深きもの』とは、頑強な船底に素手で穴を穿てる程の怪力を誇る。
 マスターテリオンや逆十字には到底及ばないが、人間の限界程度は凌駕していた。

「は…………はは……」

 新一は震えている。
 その場から一歩も動かないまま、震えている。
 自分自身の手によって齎された破壊を目撃し、心の内側から一つの感情が沸き上がって来る。 
 その感情とは――
 
「ははは……ハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!
 そうか、そうだったんだ! 包丁なんてチャチなもん必要ねえ!
 俺はもう、十分に強くなってたんだ!」

 人外と呼ぶに相応しい力を手にして、新一は歓喜に震えていた。
 最早恐怖に怯え、暴力に迫害され、醜く逃げ回る必要など皆無。
 烏月にもあの女にも、素手で木を叩き折るなど出来はしない。
 このみならば可能かも知れないが、体格で上回る自分の方が強い筈。
 後は正義の名の下に己が力を駆使して、理不尽な悪党共を蹂躙すれば良い。
 もう自分は何者にも怯えず、堂々と生を謳歌する事が出来るのだ。

704 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:29:10 ID:Kq5EwZdV


705 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:29:34 ID:vnM9IETl
  

706 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:29:36 ID:VatAKCel
 

707 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:29:55 ID:Kq5EwZdV


708 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:30:11 ID:noG7+WYt
「イヒヒ……ヒャハハッ…………ヒャ―ハッハッハッハッハッハ!
 殺す、殺す! 俺を馬鹿にした連中、全員ぶっ殺してやる!」

 新一の身体は何時の間にか更なる変貌を遂げ、もう人間らしい部分は殆ど残っていない。
 足はかろうじて原形を留めているものの、上半身は完全に甲殻類のソレと化していた。
 身体の表面は強固な殻に覆い尽くされて、顔からは長い触角が何本か生えている。
 最早、彼の知人が現れた所で、この人外が鮫氷新一であると気付くのは難しいだろう。
 人外の少年は哄笑を上げながら、一人森の中を歩いてゆく。
 その内に、おぞましい殺意を抱えながら。



    ◇     ◇     ◇     ◇



 立て続けに鳴り響く駆け足の音。
 月明かりの降り注ぐ森を舞台として、蛇の少女と人妖の少女が激しく凌ぎを削り合う。

「せやぁぁあっ!」

 裂帛の気合いが乗せられた叫びを上げて、刀子は只ひたすらに前方へと疾駆する。
 その気迫たるや、正しく鬼神の如し。
 距離さえ詰め切ってしまえば、例え相手が熟練した人妖であろうとも斬り伏せる事が出来るだろう。

 しかし不規則な軌道を描く殉逢が、刀子の前進を許さない。
 静留の振るう殉逢は、予測不可能な動きで獲物へと襲い掛かる。

709 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:30:25 ID:VatAKCel
 

710 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:30:55 ID:Kq5EwZdV


711 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:31:36 ID:Kq5EwZdV


712 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:31:51 ID:noG7+WYt
「はっ……!」

 刀子は全力で左へと飛び退いて、鞭の進路から大きく身を躱した。
 紙一重で避ける、と云った芸当は許されない。
 鞭の軌道は不規則に変化し、完全に読み切る事は叶わない。
 十分な余裕を持って躱さなければ、唐突な変化の前に蹂躙されるだけなのだ。
 しかし必要以上に大きく避けるという事は、それだけ次の動作が遅れるという事。
 刀子が再び前進を始めるよりも早く、蛇の少女が次なる行動を開始する。

「隙だらけやで、刀子はん」

 告げる声は無慈悲に。
 静留は殉逢による連撃を矢継ぎ早に、それこそ嵐のような勢いで繰り出してゆく。 
 一息で放たれた攻撃は、実に四発。
 四頭の毒蛇は群れを成して、一斉に獲物へと襲い掛かる――!

「くぅぅ――――」

 静留は全身全霊の力で迫る一撃を打ち払う。
 続く二撃、三撃は、空中へと跳躍する事で無事にやり過ごした。
 だが残る最後の蛇が、宙に浮いたまま身動きの取れぬ刀子へと襲い掛かる。
 刀子も咄嗟に刀を盾代わりにして受け止めたが、足場の無い空中では衝撃を押さえられない。
 そのまま大きく跳ね飛ばされて、十メートル以上も後方の地面へと着地した。

「あぐ…………は、く…………」

 刀子は油断無く古青江を構えながらも、即頭部から伝わる鈍痛に表情を歪める。
 戦況は明らかに刀子が不利。
 素の実力ならば大きく刀子が上回っていただろうが、脳震盪の影響は未だ残っている。
 加えて刀子は、鞭を使う敵と戦うのは此度が初めてだった。
 積み重なった悪条件が、刀子と静留の天秤を逆転させている。
 しかも悪い事に、両者の差は更に広がりつつある。

713 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:32:47 ID:VatAKCel
 

714 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:32:57 ID:Kq5EwZdV


715 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:33:50 ID:noG7+WYt
 猛攻を掻い潜りながら前進しなければならない刀子に対して、静留は無駄に動き回る必要など無い。
 自分から射程に踏み込んでくる愚かな獲物を、ただ殉逢で迎え撃つだけで良い。
 即ち戦えば戦う程、刀子の体力のみが一方的に削られてゆくのだ。
 緊迫感が漂う戦場の中、蛇の少女は息一つ乱さぬまま刀子へと語り掛ける。

「刀子はん、そんな身体でよう粘りますなあ。辛くはないんどすか?」
「……辛いですよ。ですが、私は負ける訳にはいきません。
 だから何度でも立ち上がって、何時か必ず貴女に打ち勝ってみせます」

 刀子の瞳に、諦めの色は微塵たりとも浮かび上がっていない。
 在るのは敵を打倒し、これ以上の惨劇を食い止めると云う意志のみ。
 牛鬼の少女は何処までも真っ直ぐな瞳で、未だ見えぬ勝機を手繰り寄せようとする。

「……本当に、強い人やね。せやけど、うちかてこれ以上時間を掛けるつもりはあらへん。
 次で決めさせて貰いますさかいに」

 完全に優勢であったとしても、蛇の少女は決して手を抜いたりしない。
 静留は早々に決着を着けるべく、鞄から回転式拳銃――コルト・ローマンを取り出した。
 それは残弾が一発しか無い所為で、今までは温存せざるを得なかった武器。
 しかし刀子の粘りを前にしては、最早使用を躊躇ってはいられない。
 なつきを守る為には、これ以上此処で時間を浪費する訳には行かないのだ。


「さあ、行かせて貰います。あんたの気持ちと、うちの気持ち――どっちが強いか決めましょうか」

 告げられる宣告。
 右手に殉逢を、左手にコルト・ローマンを握り締めて、静留は己が想いを爆発させる。

716 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:34:02 ID:VatAKCel
 

717 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:34:16 ID:CFKhMS3s



718 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:34:19 ID:Kq5EwZdV


719 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:35:21 ID:noG7+WYt
「他人がどうなったってええ……うちがどうなったってええ!
 なつきさえ守れれば、うちはそれだけで十分なんや!」

 その叫びと共に、静留は大きく前へと足を踏み出した。
 以前に負傷した左足をも駆使して、蛇の少女は全力で己が鞭を打ち放つ。
 その速度、その破壊力は、今までの比では無い。
 静留は正しく己が全力を以って、眼前の敵を叩き潰そうとする。
 しかし、この土壇場に於いて力を増したのは刀子も同じ。

「人を殺すのが誰かの為になる? 自分を犠牲にする事が大切な人の為になる?
 そんなの、只の思い違いです!」

 飛び散る火花。
 不規則な軌道を描く鞭と云えども、何度も繰り返せば次第に慣れられる。
 刀子は限界の限界まで殉逢を引き付けて、自身の身体に食い込む寸前で弾き返した。
 されど静留の全力を注ぎ込んだ攻撃が、単発で終わる筈が無い。
 
「思い違い? あんたにそんな事が分かりはるんですか?
 うちとなつきの事が、あんたに分かるとでも云うつもりですか!?」

 一発、二発、三発、四発、五発。
 邪魔な雑草や小木を薙ぎ倒しながら、次々に殉逢が振るわれる。
 それは近付くだけで生命を削り取られる、死の嵐に他ならない。
 だがそんな猛攻を前にして尚、刀子は一歩も退く気配を見せなかった。

720 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:35:32 ID:VatAKCel
 

721 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:35:39 ID:CFKhMS3s



722 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:35:45 ID:Kq5EwZdV


723 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:36:29 ID:CFKhMS3s



724 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:36:30 ID:vnM9IETl
   

725 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:36:48 ID:noG7+WYt
「分かります。だって……」

 少女は日本刀を握り締めたまま、自ら毒蛇の群れへと突撃してゆく。
 退けない。
 天地が避けようとも、この身を引き裂かれようとも、此処で退く事など有り得ない。
 敵が嘗ての兄と同じ動機で戦っている以上、絶対に退ける訳が無い。
 何故ならば――

「私は兄様にそんな事を望んでいなかった!」
「……………ッ!」

 瞬間、刀子は古青江の鞘を左手で握り締めた。
 刀と鞘、二刀流による戦いこそが、刀子が本来最も得意とするスタイル。
 しかし普段用いている斬妖刀文壱の鞘と違い、古青江の鞘では長時間の戦闘に耐え切れない。
 故に、敵の攻撃に目が慣れて来た、この土壇場まで使う訳には行かなかった。
 切り札を解き放った刀子は、次々に殉逢を打ち払ってゆく。

「私は兄様に人殺しなんてして欲しくなかった!」

 左から迫る一撃は鞘で受け流して、右から襲い来る一撃は刀で弾き返す。
 両手に乗せるは、今まで溜め込んできた想い。
 刀子は、兄が修羅になる事など望んでいなかった。
 自分の為に、人を殺して欲しくなど無かった。
 なればこそ刀子は、己が全力を以って眼前の敵を否定する。

726 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:36:54 ID:Kq5EwZdV


727 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:37:02 ID:VatAKCel
 

728 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:37:29 ID:Kq5EwZdV


729 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:37:53 ID:vnM9IETl
 

730 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:37:53 ID:noG7+WYt
「だから、私は貴女を認めない! 兄様と同じ選択をした貴女を、認められる訳がない!」

 更にもう一度殉逢を打ち返して、刀子は遂に刀が届く間合いへと侵入した。
 しかし静留とて決意を固めた戦士であり、このまま敗北を許容したりはしない。

「でも……せやけど! うちはこんな所で負ける訳には行かへんのや!」

 手を伸ばせば届く程の至近距離で、コルト・ローマンの銃口が刀子へと向けられる。
 静留は強固なる意志を以って、銃のトリガーを全力で引き絞った。
 正しく必殺の一撃だったが、人妖の少女はその必殺すらも凌駕する。

「な――――っ!?」

 大きく目を見開いた静留の眼前では、驚くべき光景が繰り広げられていた。
 刀子は至近距離で放たれた銃弾を、古青江の鞘で受け止めていた。
 それは並外れた反射神経と、そして――迫る死すらも直視出来る程の勇気があってこそ為せる技。

「認めない……他の誰かを犠牲にするのも、自己犠牲も絶対に認めない! だって―――」
「くぅぅ…………っ!」

 静留が慌ててその場から飛び退こうとするが、刀子は更に早い速度で追い縋った。
 人妖の少女は力強く前に踏み込みながら、全身全霊の一撃を解き放つ。
 少女の根底にある想いはただ一つ。
  

「私はただ、お兄ちゃんに生きて居て欲しかっただけなんだから…………!!!」


 兄と共に生きたかった。
 それこそが、一乃谷刀子の望みに他ならない。
 果たせなかった願いを乗せて、少女は己が得物を一閃する――――!


731 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:38:25 ID:Kq5EwZdV


732 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:38:25 ID:vnM9IETl
  

733 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:38:49 ID:VatAKCel
 

734 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:39:05 ID:noG7+WYt


「……くああああぁぁぁあっ!!」

 足を負傷している静留では、二刀流による剣戟を到底躱し切れない。
 振り下ろされた白刃は空転したもの、横薙ぎに振るわれた鞘が静留の脇腹を捉えていた。
 渾身の一撃は、静留の肋骨に罅を刻み込むだけでは飽き足らず、その身体をも大きく弾き飛ばす。
 生じた絶対の好機を見逃さず、刀子が静留の後を追ってゆく。

 最早勝敗は決定的。
 刀が届く距離になった瞬間、今度こそ刀子は静留を無力化するだろう。
 恐らくは、その命を断ち切る事無く。
 拘束して自由を奪った後に、ゆっくりと説得を試みる筈だった。



 しかし――――そんな結末を、静留は決して受け入れない。



「云われんでも分かっとります…………あの子がこんな事を望んでいないなんて」


 その呟きと共に、静留は地面を強く踏み締めて、強引に態勢を立て直した。
 目の前には、驚愕の表情を浮かべる刀子の姿。
 脇腹の激痛も、朦朧とした意識も、手足の痺れも無視して、静留は殉逢を握り締める。

735 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:39:33 ID:VatAKCel
 

736 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:39:47 ID:Kq5EwZdV


737 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:40:11 ID:vnM9IETl
   

738 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:40:20 ID:Kq5EwZdV


739 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:40:20 ID:noG7+WYt
「それでもうちは! うちだって! 大切な人に生きて居て欲しいんや…………!!!」

 なつきを守ると、決めた。
 どんな事をしてでも、絶対になつきを守り通すと誓ったのだ。
 ならば静留とて退けない、退ける訳が無い。

「だから、うちは…………!!」

 狙いは只一人、前方より迫る刀子のみ。
 静留は決死の覚悟で殉逢を振り上げて―――――





「え――――?」




 瞬間、真上から飛来する巨大な物体を目撃した。
 それが長さ五メートル程の木だと気付いた時には、既に全てが手遅れだった。
 余りにも絶望的な破壊の音が、森の中に鳴り響く。
 振り注ぐ破壊の塊は、確実に静留を蹂躙してゆく。

(なつ、き…………)

 最後に愛しい少女へと想いを巡らせながら。
 静留の意識は、深い闇の底へと飲まれていった。

740 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:40:47 ID:VatAKCel
 

741 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:40:52 ID:Kq5EwZdV


742 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:41:42 ID:Kq5EwZdV


743 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:41:53 ID:noG7+WYt





「いひひひひっ、ひゃーははははははっ!!」

 森の静寂を掻き乱す雑音。
 それは人外の愚者が洩らす、歓喜の哄笑だった。

「な、貴方は――――」

 突如現れた人外を前にして、刀子が呆然と驚きの声を零す。
 ザリガニの如く赤い殻に覆われた胴体部、長い触角が生えた異形の顔。
 生身で木を放り投げられる程の、怪物じみた怪力。
 普通ならば最早誰なのか判別不可能な所だが、刀子は何とか気付く事が出来た。
 少し前に逃がした半人外の少年に似ている、と。

「ひひひひっ……まずは一人。俺にふざけた真似しやがった馬鹿を、ぶっ殺してやったぜ……!」
「貴方は……鮫氷新一さんなのですか?」

 聞き覚えのある声にほぼ確信を抱きながらも、刀子が確認するように問い掛ける。
 すると、人外が真っ赤なハサミを刀子の方へと向けた。

「ああ……そうさ。俺は鮫氷新一さ。
 何も悪い事をしちゃいねえのにお前達に虐げられてきた、復讐者だ」

 新たなる力を手に入れた新一は、大人しく逃げ回るような真似などしなかった。
 今まで抱いていた死への恐怖は、そのまま自分を虐げてきた者達に対する怒りへと変換される。
 実際には半分以上が自業自得なのだが、新一は最早その事実から永久に目を逸らし続けるだろう。

744 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:42:21 ID:VatAKCel
 

745 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:42:26 ID:EteNHRkV



746 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:42:37 ID:vnM9IETl
 

747 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:43:19 ID:noG7+WYt

「さあ、次はお前の番だぜ? さっき受けた痛み、百倍にして返してやるからな……!」

 赤のハサミが二度、三度と振るわれて、近くの木の幹が切断された。
 新一は人外の怪力を駆使して、両腕で木を持ち上げる。
 異形の少年が睨み付ける先では、既に静留との戦いで傷付き疲弊している刀子の姿。

 実際、刀子は余力を殆ど残していない状態だった。
 脳震盪の影響はようやく抜けてきたものの、体力はもう限界に近い。
 腹部は未だ鈍痛に襲われているし、頼みの鞘も先程静留を殴打した際に砕け散っている。
 対する新一は、人外の自己修復能力によって怪我を治療。
 先程砕かれた鼻骨すらも、徐々に治りつつあった。
 刀子は苦しげに肩を上下させながら、ゆっくりと声を絞り出す。

「鮫氷新一さん……貴方は殺し合いに乗るつもりですか?」
「ああ、当たり前だぜ。俺はようやく力を手に入れたんだからな。
 俺をコケにしてきた連中にも、助けなかった奴らにも、相応の報いを与えてやるのさ!」
「貴方は……殺し合いをしたくないと云っていたじゃないですか。
 あれは…………嘘なのですか?」
「そんな事云ったか? 覚えてねえなあ……くけけ」

 怯えながら許しを求めていた頃とは、全く反対の態度を取る新一。
 最早彼には人間らしい慈愛の心など、ほんの一欠片すらも残ってはいない。
 異形の少年は何の躊躇も容赦も無く、傷付いた獲物へと襲い掛かるだろう。

748 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:43:36 ID:Kq5EwZdV


749 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:44:06 ID:VatAKCel
 

750 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:45:01 ID:Kq5EwZdV


751 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:45:05 ID:EteNHRkV



752 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:45:09 ID:noG7+WYt


 たが――あろう事か。
 その獲物たる少女は。
 こんな状況であるにも関わらず、唇を笑みの形へと吊り上げた。

「そう――良かった」
「……………………は?」

 新一には、まるで理解出来なかった。
 ただの獲物に過ぎぬ筈なのに。
 何故、少女がそんな台詞を吐いたのか。
 何故、少女が哂っているのか。
 何もかもが、全く理解出来なかった。

「ええ……貴方が救いようのない外道で良かった。これで私は、もう我慢しなくても良いんですね。
 兄様の仇を討っても……良いんですね」

 殺意に満ち溢れた烈火の視線で、牛鬼の少女が異形を射抜く。
 まるで、自分が負ける事など想像もしていないと云わんばかりに。
 その声は、ようやく兄の仇を討てるという歓びに震えていた。
 そんな刀子の態度は、桁違いの力を手に入れたつもりである新一にとって、決して見過ごせぬもの。

「ふざけんな、この俺がお前なんかにやられて堪るかよ! 死にやがれえぇぇ!」

 激昂と共に、新一が木を全力で投擲する。
 破壊の塊が放物線を描いて、刀子へと襲い掛かる。
 それは当たり所が悪ければ、命すらも奪われかねない一撃。
 しかし正面から刀子を捉えるには、余りにも甘過ぎる攻撃だった。
 刀子は横に跳躍して、木の軌道から軽々と身を躱していた。

753 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:46:09 ID:VatAKCel
 

754 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:46:37 ID:Kq5EwZdV


755 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:46:37 ID:noG7+WYt

「……遅い、ですね。こんな攻撃で人を殺せるとでも?」

 新一の攻撃は、何の意味も為さずに終わった。
 不規則な鞭の軌道にすら対応した刀子が、子供じみた投擲如きに屈する筈が無い。
 余程不意でも突かない限り、何度やっても同じ結果に終わるだろう。

「ま、マグレだ! 今度こそ!」

 再び投げ放たれる木。
 しかしそんなモノ、何の効果も齎さない。 
 刀子は最早避けようともせず、その場に屹立したまま古青江を一振り。
 あっさりと、本当に呆気無く迫る木を両断した。

「無駄です、その程度で私は倒せません」

 そう――所詮は『その程度』だった。
 鮫氷新一は、あくまでも人外に成ったばかりの存在。
 何とか小木を放り投げる程度の力はあるし、身体も硬い殻で覆われているが、それだけだ。
 刀子の知人、加藤虎太郎のように、素手で車の突撃を打ち破れはしない。
 刀子の兄、一乃谷愁厳のように、四階から飛び降りて無傷でいられる程の身体能力は無い。
 苛烈な鍛錬の日々を生きてきた刀子と、偶然人外に身を堕としただけの愚者。
 どちらが優れているかなど、考えるまでも無い……!

「う、嘘だ……こんな筈はないんだ……っ」

 新一はザリガニのような首を左右に振って、眼前の現実を否定する。
 有り得ない、と。
 自分は強くなった筈なのに、その力が通用しないなど有り得ないと、必死に信じ込もうとする。

756 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:46:51 ID:VatAKCel
 

757 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:47:47 ID:EteNHRkV



758 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:48:27 ID:noG7+WYt

「そ、そうだよ。俺がこんな女に勝てない筈は無いんだ。
 大体あの鞭の女は、ちゃんと俺の攻撃で死んだじゃ――――」
「死んだ? それは誰の事どすか?」
「……ッ!?」

 背後から聞こえて来た声に新一が振り向くと、そこには先程倒れた筈の静留の姿。
 新一が悲鳴を上げるよりも早く、静留は殉逢を横薙ぎに一振りした。
 派手な音を打ち鳴らしながら、甲殻類の身体が弾き飛ばされる。

「あごぉぉぉオオ!?」
「やれやれどす……。うちとした事が、あんな下らない攻撃に掠ってしまうなんて。
 ちょっとばかし、痛かったで?」

 新一が奇襲を敢行した際、静留は直撃を受けた訳では無かった。
 咄嗟の判断で木を潜り抜けようとしたが、完全には避け切れず、後頭部を軽く掠められてしまったのだ。
 お陰で気絶してしまったが、それもほんの僅かの間。
 既に意識は回復して、刀子から受けたダメージ以外は殆ど残っていない。
 新一の行った奇襲攻撃は、最高のタイミングであったにも関わらず、その程度の戦果しか挙げられなかった。

「静留さん。一つ提案があるのですが、宜しいですか?」
「……奇遇やなあ。うちも今、あんたに提案しようと思ってた所どす」

 刀子と静留は何処か親しげに話しながら、ただ一ヶ所を睨み付ける。
 その先でよろよろと立ち上がるのは、化けの皮を剥がされた道化。

「静留さんは未だ引き返せるかも知れませんが、この外道はもう救いようがありません。
 命ある限り、罪無き人々を害し続けるでしょう。そして兄様なら、そんな外道を決して見過ごさない筈」
「ひっ…………!?」

 牛鬼の少女が刀を構える。
 その瞳に宿るのは、燃え盛るような怒りと意志。

759 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:48:27 ID:Kq5EwZdV


760 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:48:29 ID:EteNHRkV



761 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:48:44 ID:VatAKCel
 

762 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:49:03 ID:EteNHRkV



763 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:49:48 ID:noG7+WYt
「なつきは強い子や。過酷な環境で戦い続けてきたあの子なら、そう簡単に負けたりしない。
 せやけど本当はとても優しい子やから……命乞いされたら、あんたみたいな怪物でも殺せへんやろうなあ。
 あんたを生かしておいたら、なつきの害になるかも知れへん。第一あんたの生き方、えらい気に食わへんわ」
「ひゃうっ…………!!」

 静留が殉逢を両手で握り締める。
 その口元に浮かぶのは、絶対零度の殺意が籠もった冷笑。
 二人の少女は全く同時に、愚かな外道へと死刑宣告を突き付ける。

「だから私は―――まず貴方から討たせて貰います」
「だからうちは――まずあんたから殺す事にします」

 弾け飛ぶ大地。
 正しく弾丸の如き勢いで、少女達が獲物に襲い掛かる。

「あああ……ひああああぁぁぁあっ!!」

 新一は動物じみた悲鳴を上げながら、形振り構わず全速力で逃げ出した。
 一度は収まった筈の恐怖が、心の中で加速度的に膨れ上がってゆく。
 折角手に入れた力は、殆ど通用すらしなかった。
 殺される。
 捕まってしまえば、今度こそ確実に殺されてしまう。
 最早土下座しても、泣いて謝っても、許して貰えはしないだろう。

764 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:50:24 ID:Kq5EwZdV


765 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:50:36 ID:VatAKCel
 

766 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:51:03 ID:vnM9IETl
  

767 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:51:19 ID:EteNHRkV



768 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:51:27 ID:noG7+WYt
「ち、畜生…………何でだよ……! どうしてまた、俺が逃げなきゃいけないんだよ!」

 徐々に殻に覆われつつある両足を酷使して、ただひたすらに走り続ける。
 人間だった頃よりも遥かに早い速度で走っていると云うのに、刀子達を振り切れる気配は一向に無い。
 恐怖と理不尽な想いばかりが、止め処も無く溢れ出してくる。
 自分は強くなった筈なのに。
 悪党共を討ち滅ぼせるだけの、正義の力を手に入れた筈なのに。
 何故、こんな事になってしまったのだろうか。
 脳裏に呼び起されるは、嘗て千羽烏月が云っていた言葉。

『あなたは戦えるようには見えない』

 あの言葉を受けた時の屈辱は、今でも決して忘れられない。
 出会った直後であるにも関わらず、烏月は新一の事を無力な人間だと判断したのだ。
 そう云えば、柚原このみもこんな事を云っていた。

『現時刻をもってフカヒレさんには戦力外通告を言い渡すでありますよ〜』

 それは、自分より二回りも三回りも小柄な少女に浴びせられた暴言。
 だと云うのに、結局自分はこのみに対して一矢も報いれなかった。
 やはり自分は、無力なのか。
 このみや烏月が云っていた通り、ただ搾取されるだけの弱者に過ぎぬのか。

「違う! 俺はまだ本気を出していないだけなんだ! やれば出来る筈なんだ!」

 そうだ、自分は強くなった筈なのだ。
 人間の限界を凌駕して、木すらも素手で砕ける程になったのだ。
 本気で戦えば、全力でやれば、今度こそ――――そんな想いすらも、嘗てのこのみは否定する。

769 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:51:49 ID:vnM9IETl


770 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:52:05 ID:Kq5EwZdV


771 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:53:09 ID:EteNHRkV



772 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:53:15 ID:Kq5EwZdV


773 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:53:18 ID:noG7+WYt
『やればできる? どうせやらないくせに、やろうともしないで言い訳して逃げてるくせに』
「…………ッ!」
 
 その言葉は当時も、そして今も、新一にとって致命的過ぎるモノ。
 やれば出来ると云うのならば、今すぐ踵を返して戦えば良い。
 そうしないと云う事は、自分で自分の無力を認めているという事に他ならない。
 やはり自分はどうしようも無く無力で、下らない存在なのか。

「違う! 違う違う! 俺は――――」

 沸き上がった考えを否定すべく、新一は必死に声を張り上げようとする。
 しかし追跡者達は、そんな新一の葛藤など関係無しに攻撃を仕掛けてくる。

「―――ガァァッ!?」

 背中に跳ねる強烈な衝撃。
 静留の振るった殉逢が、新一の背中を寸分違わず直撃していた。
 まるで交通事故に遭ったかのように、人外の身体は大きく弾き飛ばされて、前方の茂みを突き破った。
 その先に広がるのは、湖。
 高さ三メートル程の崖の下に広がる、大きな湖だった。
 重力という名の強大な枷は、愚かな逃亡者を奈落の底へと吸い込んでゆく。
 新一は抗いようも無く、湖の中へと飲み込まれた。
 そして追跡者である少女達も、直ぐに湖の前まで辿り着く。

「逃がしませんっ!」
「服が濡れるのは嫌やけど……仕方無いどすな」

 三メートル程度の高さならば、飛び降りた所でどうという事は無い。
 二人の少女が勢い良く宙へと跳躍する。
 刀子と静留は欠片程の迷いも持たず、湖に向かって飛び込んでいた。

774 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:53:51 ID:VatAKCel
 

775 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:54:23 ID:Kq5EwZdV


776 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:55:04 ID:noG7+WYt
「…………っ」

 水飛沫を激しく撒き散らしながら、刀子の身体が水の中へと沈む。
 夜だと云う事もあり、湖の水は肌を刺すような冷たさだった。
 刀子は側頭部の傷口に水が染みるのを感じながらも、水中で冷静に周囲を眺め見る。 
 湖の中は薄暗く、視界は良好であるとは云い難い。
 近くに飛び降りたらしき静留の事は直ぐに発見出来たが、新一の姿は何処にも見受けられない。
 ならば急いでもう少し広い範囲を探索して回りたい所だが、いかんせん水中で行動し続けるのには限界がある。
 まずは酸素を補充すべく、刀子は水上へと顔を出した。

「ぷは…………っ。静留さん、見付かりましたか?」
「まだやなあ。えろう逃げ足の早い事どすって」

 息継ぎをしていた静留に尋ねてみると、どうやら彼女もまだ新一を見付けられていない様子。
 一刻も早く探し出さねば、このまま逃げ切られてしまうかも知れない。
 刀子は大きく息を吸い込んで、再び水の中へと潜り込む。
 と、そこで周囲を見渡すよりも早く、背後から何かが近付いてくる気配を感じ取った。
 そうして、後ろを振り向いた瞬間。
 牛鬼の少女は、高速で迫り来る異形の姿を目撃した。
 
(な――――)

 背中から大きく伸びた胴体程の太さの尻尾と、その先端に付いた尾ヒレ。
 赤い甲羅に覆い尽くされた体躯。
 特徴的なハサミ型の両手は、以前の倍以上に肥大化している。 
 それは。
 完全なる人外に変貌した、鮫氷新一の姿だった。
 否、最早人外という表現すらも適切では無いだろう。
 人でありながら人間の範疇を外れたからこそ、『人』外。

 今の新一は、最早人間とは何の関係も無い、只の化け物。
 ならば人外と云うよりも寧ろ、怪物と呼ぶべき存在だった。

777 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:55:05 ID:EteNHRkV



778 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:55:12 ID:VatAKCel
 

779 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:55:26 ID:vnM9IETl
 

780 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:56:35 ID:noG7+WYt
(――――来る!)

 驚愕に震えているような暇は無い。
 刀子は怪物の突撃を迎え撃つべく、直ぐに刀を水中で振り上げた。
 牛鬼の怪力を駆使した剣戟が、縦一文字に繰り出される。
 それは地上ならば岩をも砕きかねない一撃だったが、水中ならば話は別。
 指一本動かすだけでも水の抵抗を受ける環境下では、普段の半分にも満たぬ威力と速度しか出せない。

(…………ッ!?)

 ガキン、という音。
 刀子の放った剣戟は、怪物のハサミによって呆気無く弾き返されていた。
 怪物はそのまま前進を続け、無防備な刀子の胸部にハサミを突き立てようとする。
 しかし、その光景を静留が黙したまま見ている筈が無い。
 静留は殉逢で怪物の脇腹を殴打して、突撃の軌道を強引に変更させた。
 突然の衝撃に空転するハサミ。
 怪物は刀子の横を通り抜けて、暫く進んだ所で水面上に異形の首を上げた。

「キヒヒヒッ……これ以上逃げ回って堪るかよ。思い知らせてやる! 
 俺はやれば出来るって事、見せてやるんだ!」

 再び怪物の身体が水中に沈み込んで、次の突撃が開始される。
 刀子と静留は肩を並べて、新一の突撃を迎え撃とうとする。
 先手は圧倒的なリーチを誇る静留。
 長さにして五メートルを越える殉逢が横薙ぎに払われたが、やはり地上の時のような鋭さが無い。

781 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:56:53 ID:Kq5EwZdV


782 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:56:58 ID:VatAKCel
 

783 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:57:05 ID:vnM9IETl
  

784 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:58:19 ID:of6hj3Ct


785 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:58:19 ID:noG7+WYt
(くっ……やっぱり、あかんか)

 静留が苦々しげに奥歯を噛み締める。
 怪物は避けるまでも無いと云わんばかりに、強固な外殻で鞭を跳ね返した。
 続いて刀子が古青江を一閃したが、またもハサミに阻まれる白刃。
 赤の巨弾は波状攻撃にも怯む事無く、刀子達へと急接近する。
 刀子も静留も咄嗟に身体を捻って、ハサミによる一撃だけは躱したが、その直後に襲い来る体当たりまでは避け切れない。

「ガッ…………」
「ご、ふ――――」

 叩き付けられた強烈な衝撃に、二人の少女達は口から空気を吐き出した。
 気力だけで強引に態勢を立て直したものの、決してダメージは軽くない。
 空気を求めて懸命に水上へと向かう刀子達の表情は、苦痛に酷く歪んでいた。
 身体を縛る水の抵抗が、刀子達に普段のような鋭い動きを許さない。
 一方で、轢き逃げ気味に刀子達から離れていく新一の表情は余裕そのもの。

 新一は、水中戦を得意中の得意とする『深きもの』と化している。
 その戦闘能力は、地上で戦っている時よりも大幅に増加していると云って良い。
 以前なら戦いが始まりすらしなかった双方の実力差は、この戦場に於いてのみ逆転していた。

「あかん……あの化け物相手に水中は不利や。一旦退いた方がええどす」
「……そう、でしょうね。ですが、この地形では――――」

 月明かりを反射している水面の上。
 静留が一時撤退を提案したものの、刀子は厳しい表情で傍の崖を指差した。
 崖は三メートル程度の高さで、角度的には断崖絶壁に近い。
 飛び降りる分には問題無い高さだが、昇るとなるとそうは行かないだろう。
 崖以外の場所から逃げようにも、対岸までは優に数百メートルある。
 怪物の猛攻に晒されながら辿り着けるような距離では無かった。


786 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:58:52 ID:of6hj3Ct


787 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:58:59 ID:Kq5EwZdV


788 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:59:11 ID:EteNHRkV



789 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 22:59:25 ID:VJGYAb3f


790 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 22:59:46 ID:noG7+WYt
「ヒャハッハッ、どんどん行くぜ!」
「くっ…………!?」

 聞こえて来た声に刀子が後ろへ振り向くと、そこには三度目の突撃を仕掛けてくる怪物の姿。
 刀による迎撃も回避も困難な、赤い弾丸が急速に近付いてくる。
 図らずして、刀子の心に焦りが沸き上がる。
 だが刀子は唇を強く噛み締めて、乱れる心を強引に落ち着かせた。
 脳裏に去来するのは、嘗ての如月双七の姿。

(双七さんは……どんなに追い詰められても、冷静さを失わなかった)

 愁厳と戦った際、双七は窮地に追い込まれても諦めなかった。
 最後まで冷静に戦い続けて、勝利を引き寄せたのだ。
 そうだ――焦った所でどうにもならない。
 生半可な迎撃や回避が無意味なのは、既に先刻承知の事。
 この窮地を凌ぐには、己が全身全霊を以って挑む以外に方法は無い。

(双七さんは……最後まで諦めなかった!)

 刀子は両手に可能な限りの力を籠めて、正面に刀を構えた。 
 続けて湖の中に潜り込んで、全力で水を蹴り飛ばす。
 発生した推進力に身を任せて、少女は自ら怪物に突っ込んでゆく。

(兄様、双七さん! 私に力を――――!)

 出し惜しみなどしない。
 牛鬼の怪力に前進する勢いも上乗せして、刀子は渾身の一撃を打ち放つ――!

791 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:00:02 ID:Kq5EwZdV


792 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:00:43 ID:VJGYAb3f


793 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:00:59 ID:vnM9IETl
  

794 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:00:59 ID:Kq5EwZdV


795 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:01:13 ID:of6hj3Ct


796 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:01:18 ID:noG7+WYt
 だが、両者が衝突する直前。
 怪物は未だ攻撃が届かない距離であるにも関わらず、おもむろにハサミを振り上げた。
 その行動によって巻き起こされた水の渦は、刀子の態勢を崩すのに十分なもの。

(しま………ッ)

 刀子が懸命に態勢を戻そうとするが、そんな努力も空しく。
 続け様に繰り出されたハサミが、刀子の脇腹を捉えていた。

「あがっ……、かはっ…………ッ!」

 刀子の脇腹を中心として、水が赤に侵食されてゆく。
 穿たれた傷は、かろうじて内臓にまでは到っていないが、決して軽くはない。
 怪物は自らの戦果に異形の口元を吊り上げながら、再び助走距離を稼ぐべく離れてゆく。
 静留がその背中に向けて殉逢を打ち込んだが、効いたような様子は欠片も見受けられなかった。

「へへへ……フヒハハハハハ! どうだ! やっぱり俺は強いじゃんか!」

 広大な湖に、異形の醜い声が響き渡る。
 水面上へと浮かび上がった怪物の顔は、最早どうしようも無い程の狂気に歪んでいた。
 怪物は勢い良く真っ直ぐに泳いで、刀子達から離れてゆく。
 刀子達との距離が徐々に開いていって、現在五十メートル程。
 今までなら既に反転している距離だが、怪物は必殺を期すべく、まだ助走距離を稼ごうとする。

797 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:01:43 ID:VJGYAb3f


798 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:02:02 ID:of6hj3Ct


799 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:02:07 ID:Kq5EwZdV


800 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:02:25 ID:VatAKCel
 

801 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:02:35 ID:noG7+WYt
「さあ、次で終わらせるぜ……ッ。レオ、スバル! 皆見てろよ?
 これが俺の……鮫氷新一の力だ!」

 距離八十メートル。
 怪物はまだ進行方向を転換しようとはしない。
 自分の圧倒的優位であるとは云え、敵は二人。
 虐げられ続けて来た少年は、だからこそ慎重に、勝利への道筋をより強固なものにしようとする。

「俺を馬鹿にしやがった奴らも、助けなかった奴らも、皆ぶっ殺してやるんだ!
 ヒャハハハハハハッ!」

 距離が百メートル程離れた所で、遂に怪物が身体の向きを反転させた。
 赤い外殻に覆われた巨体が、傷付いた獲物達に向かって加速する。
 激しく水流を巻き起こしながら突き進むその姿は、真紅の魚雷と呼ぶに相応しい。
 今までに倍する速度と破壊力を以って、怪物は獲物達へと襲い掛かる――――!
 

 唸りを上げる巨弾。
 刀子は水中でただ呆然としたまま、迫り来る圧倒的な死を眺めていた。

(ここまで……なの?)

 心に沸き上がるのは諦観。
 諦めたら駄目だ、というのは分かっている。
 双七はどんな苦境でも諦めなかったのだから、自分だって諦めたくなど無い。
 だが、傷付けられた脇腹から今も流れ出ている鮮血。
 何度剣戟を打ち込んでも通用しなかったと云う事実が、刀子に楽観を許さない。
 刀子の理性は冷静に状況を分析して、最早何をしても勝ち目は無いと告げていた。

802 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:02:50 ID:of6hj3Ct


803 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:03:21 ID:vnM9IETl
    

804 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:03:31 ID:VatAKCel
 

805 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:03:33 ID:VJGYAb3f


806 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:03:42 ID:of6hj3Ct


807 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:03:56 ID:noG7+WYt
(兄様、双七さん、私は――――)

 このまま自分は終わるのだろうか。
 大切な兄をみすみす死なせてしまい、愛しい双七にも会えないまま。
 兄を殺した憎き外道によって、自分もまた殺されてしまうのだろうか。

 それは余りにも哀しく、余りにも悔し過ぎる結末。
 何としてでも避けたい結末だが、どうしても現状の打開策が浮かばない。
 怪物との距離が縮まるにつれて、刀子は心が絶望に侵食されてゆくのを感じていた。
 


「――刀子はん、諦めるのは未だ早いどすえ?」


 
 そんな彼女の絶望を、上から聞こえて来た声が打ち払う。
 ぐいと、力強く左腕を引っ張られる。
 水の上にまで引き上げられた刀子が目撃したのは、藤乃静留の姿だった。
 
「静留さんっ!?」

 静留は左手で刀子を、右手で殉逢を握り締めていた。
 殉逢の先端は、崖の上に見える木へと巻き付けられている。
 鞭をロープ代わりにして、静留は湖から脱出しようとしているのだ。
 それはこの場に於いて間違い無く最善手だったが、状況は未だ予断を許さない。
 過酷な戦いを続けてきた代償は、確実に静留の身体を蝕んでいる。

808 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:04:09 ID:Kq5EwZdV


809 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:04:16 ID:of6hj3Ct


810 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:04:55 ID:VJGYAb3f


811 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:04:57 ID:vnM9IETl
 

812 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:05:04 ID:noG7+WYt
「あがっ…………つぅ…………」
 
 静留が苦痛に表情を歪める。
 ポタリ、ポタリと左手から零れ落ちる血。
 嘗てツヴァイによって傷付けられた左手首の傷口が、ここにきて再び開いていた。  
 
 静留は懸命に歯を食い縛って、刀子の腕を手放さぬまま、崖をよじ登ろうとする。
 しかし登り切るまでには、数分の時間を必要とするだろう。
 そしてそれだけの時間、それだけの隙を、敵が黙って見過ごす筈も無い。


「ククク……ヒャハッハッ! 馬鹿が、隙だらけだぜ!」

 碌に身動き出来ぬ今の静留は、怪物からすれば格好の的。
 十分な助走距離を経た怪物は、既に自動車と大差無い程までに加速している。
 激しく舞い散る水飛沫。
 肥大化した尾ヒレを大きく一振りして、赤の体躯が空中へと飛び跳ねた。

 怪物と静留達の距離は、未だ十五メートル以上も離れている。
 だが、届く。
 これだけ加速をした後の跳躍ならば、確実に怪物は静留へ牙を突き立てる事が出来る。
 両手が塞がっている静留に、迎え撃つ術は無い。
 静留は上空から迫る怪物を見据えたまま、


「――おおきに。見事に引っ掛かってくれましたなあ」
 

 そんな事を、云ってのけた。


813 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:05:15 ID:Kq5EwZdV


814 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:05:37 ID:VatAKCel
 

815 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:05:41 ID:vnM9IETl
  

816 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:05:45 ID:of6hj3Ct


817 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:06:20 ID:VJGYAb3f


818 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:06:27 ID:noG7+WYt


「え…………?」

 怪物の顔が狼狽に歪む。
 そもそも、静留には刀子を救う必要など無かった。
 自分一人でなら、もっと早く崖の上に逃れる事が出来ただろう。
 だと云うのに何故、危険を冒してまで刀子を引き上げたのか。

「刀子はん、出番やで」
「ええ、分かっています」

 短く答えて、刀子が空いている右手で日本刀を握り締めた。
 静留と違って、刀子は自由に武器を振るう事が出来る。
 水の抵抗が無いこの状況なら、牛鬼の力を十分に振るう事が出来る。
 縛りから解放された剣戟は、水中の時とは比べ物にならぬ威力を発揮するだろう。
  
 そう。
 全ては――愚かな外道を、水中という戦場から引き摺り出す為。


「あ…………」

 遅ればせながら、ようやく怪物も自分の失敗に気付いたのか。
 懸命に両腕両足をバタ付かせて、湖へ逃れようとする。 
 しかしどれだけ足掻こうとも、宙を舞う身体の勢いはもう止まらない。
 愚かな外道は為す術も無く、自ら死へと接近してゆく。

819 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:06:36 ID:VatAKCel
 

820 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:06:45 ID:of6hj3Ct


821 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:08:15 ID:noG7+WYt
「兄様、お許し下さい。哀しみの連鎖を断ち切る為、刀子は鬼になります」
「ひっ……、待って――――」

 外道の懇願。
 それを目前にして、少女は天高く刀を振り上げた。
 放たれるのは、一乃谷流に伝わる強力無比な一撃。


 
「一乃谷流――――“鋼獅子”(はがねじし)」


 獲物を噛み裂く獅子の牙のように、古青江の白刃が振り下ろされる。
 怪物もハサミを盾にしようとしたが、そのような抵抗など無意味。
 唸りを上げる刃は、外殻に覆われたハサミを易々と切断。
 尚も剣戟の勢いは止まらずに、そのまま怪物の本体をも両断した。

 緑色の体液と共に、外殻の中身が撒き散らされる。
 グロテスクな臓器が、次々と湖に落下する。
 己の保身にのみ生き続けた鮫氷新一は、愚かな怪物として最期の時を迎えた。



    ◇     ◇     ◇     ◇


822 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:08:17 ID:vnM9IETl
  

823 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:08:20 ID:Kq5EwZdV


824 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:08:48 ID:VatAKCel
 

825 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:08:51 ID:VJGYAb3f


826 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:08:58 ID:vnM9IETl
   

827 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:09:03 ID:of6hj3Ct
 

828 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:09:43 ID:noG7+WYt



 天より降り注ぐ月明かり。
 大きな湖の畔、切り立った崖の上で二人の少女達が対峙している。
 怪物を打倒し、その荷物も回収した後、静留と刀子は再び一触即発の状態へと戻っていた。

「さて……さっきあんたを助けたのは、あくまでもあの化け物を倒す為。
 あんたと仲間になった訳やあらへん。それは分こうてはるな?」

 静留は冷たい声でそう言い放つと、おもむろに殉逢を構えて見せた。
 負傷している左脇腹や左太股、左手首からは今も激痛が伝わってきているが、その程度では怯まない。
 そして傷付いた身体を奮い立たせているのは、刀子とて同じ。

「ええ……存じています。そして貴女が罪無き人々まで害そうとし続ける限り、私は退く訳にはいきません」

 地面に零れ落ちる紅い雫。
 刀子は未だ脇腹から血が流れ落ちているにも関わらず、一歩も退くような様子を見せない。
 静寂に包まれた湖の傍で、ただ場に漂う緊張感だけが高まってゆく。
 交錯する殺意の視線。
 やがて、刀子が静かに古青江の切っ先を下ろした。

「出来れば私は貴女と戦いたくありません。……本当にもう、どうにもならないのですか?」
「…………」

 鮫氷新一のような外道と静留は決定的に違う。
 それは刀子が抱いている絶対の確信。
 静留は未だ、きっと引き返せる筈。
 だからこそ刀子は希望を捨てずに、静留の説得を試みようとする。

829 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:10:08 ID:of6hj3Ct
 

830 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:11:32 ID:noG7+WYt

「私の兄は、私を守る為に人を殺し続けて、その報いを享受して殺されました。
 貴女ももう本当は分かっているのでしょう?
 大切な人を守る為に、他の誰かから大切な人を奪うような真似をしても、悲しみが連鎖していくだけだって」

 刀子の兄、一乃谷愁厳は自らの罪に対する報いを受け入れて、死んだ。
 愁厳殺害の犯人たる新一も、完全な自業自得とは云え刀子の手によって討たれた。
 まるで強固な鎖で繋がれているかのように、悲しみは連鎖していくのだ。

「そのなつきさんという方の事を大切に思っているのなら……尚更、これ以上殺し合いを続けてはいけません。
 貴女がそれだけ大切に思えるなつきさんが、そんな事を望むと思いますか?」
「……望まへん、やろうな」

 なつきは、静留が人殺しをする事など望まない。
 その点については、静留も認めざるを得なかった。
 そんななつきだからこそ静留は惹かれ、好きになったのだから。
 しかし自分が間違っていると自覚しつつも、静留は道を曲げたりしない。

「それでも、殺し合いを止める訳にはいかへん。
 なつきが生き延びる可能性を少しでも上げる為なら、うちは手段を選ぶつもりなんてありません」
「……そうですか。では戦うしか、無いようですね」

 突き付けられた拒絶に、再び刀子が古青江を正面へと向ける。
 だがそんな彼女とは反対に、静留は殉逢を構えようとはしなかった。
 刀子が訝しげな表情を浮かべる中、一つの提案が投げ掛けられる。

831 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:11:37 ID:vnM9IETl
   

832 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:11:38 ID:VatAKCel
 

833 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:12:04 ID:of6hj3Ct
 

834 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:12:52 ID:EteNHRkV



835 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:13:22 ID:noG7+WYt
「うちは道を曲げへん。せやけどあんたと此処で戦うのは、得策とは思えんどす。
 此処は、引き分けで手を打ちませんか?」
「つまり、私に大人しく退けと?」

 刀子がそう問い掛けると、静留はコクリと縦に頷いた。

「ええ。これ以上戦うには、うちらは消耗し過ぎているさかい。だから決着は次回に持ち越し。
 ……お互い、こんな所で燃え尽きる訳にはいかへんやろ?」

 静留の提案は理に適っている。
 刀子も静留も先程までの激戦により、既に限界が近い状態。
 今無理に決着を付けようとすれ、共倒れになってしまう可能性が極めて高かった。
 しかし刀子からすれば、このまま引き下がるなど有り得ない話。
 二度と、愁厳の時のような悲劇を繰り返させる訳には行かないのだ。

「ではせめて、なつきさんに会うまでは罪無き人々を傷付けないと約束して下さい。
 そうして頂けないのでしたら、たとえ私は此処で朽ち果てようとも貴女と戦います」

 なつきとの再会まで無闇に人を襲わぬと明言させる。
 それが、刀子に許された最大限の譲歩だった。
 勿論、刀子はなつきと面識など無い。
 しかし嘗ての自分と同じ立場に置かれているなつきなら、きっと必死に静留を止めようとしてくれる筈だった。

836 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:13:39 ID:VatAKCel
 

837 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:14:14 ID:EteNHRkV



838 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:14:23 ID:noG7+WYt

「……その程度の条件やったら、呑めない事も無いどす。せやけど、なつきを傷付けかねない危険な人間には容赦せえへんよ?」
「構いません。私としても、そのような方々を見逃すつもりはありませんから」

 交渉は成立。
 此処で無理に刀子と雌雄を決するよりは、条件を呑んだ方がリスクが低いと判断したのか。
 静留は刀子の提案を跳ね退けたりしなかった。

「では――私はこれにて失礼します。願わくば、貴女が正しい道に戻られますよう……」

 刀子は踵を返して、静かに戦場から歩き去ろうとする。
 一度約束した以上、もう静留と戦おうと云う意志は無い。
 静留が約束を破る可能性も無くは無いが、その点について刀子は余り心配していなかった。
 敵として死闘を繰り広げはしたのの、静留が戦っているのは只大切な人を生還させたいが故。
 刀子の兄と同じく、静留は自分を犠牲にしてまで大切な人を守ろうとしているのだ。
 そんな彼女が、約束を無下に踏み躙るとは思えなかった。


 一乃谷刀子は敵同士という間柄にも関わらず、藤乃静留と云う人間を信頼しつつある。
 だから――次に何が起こるのか、まるで予測出来なかった。

839 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:14:26 ID:of6hj3Ct
 

840 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:16:10 ID:VatAKCel
 

841 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:16:11 ID:VJGYAb3f


842 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:16:33 ID:vnM9IETl
 

843 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:17:00 ID:noG7+WYt




「――云った筈やで。手段を選ぶつもりは無い、と」
「…………ッ!?」





 再び膨れ上がる殺気。
 刀子が振り返った瞬間にはもう、殉逢が横薙ぎに一閃されていた。
 完全に虚を突かれた刀子は、声を上げる暇すら無く弾き飛ばされる。
 更に、地面へ倒れ込んだ刀子に向けて容赦無く打ち込まれる連撃。

「あ、ぐ、ご、かは……!」

 一撃が叩き落とされる度に大地が揺れ、刀子の口から血塊が吐き出される。
 合計にして、約十五発。
 猛り狂う蛇の群れは、肋骨の数本を叩き折り、背骨に罅を刻み込み、内臓を酷く損傷させた。
 静留が攻撃を終えた時にはもう、刀子は自力で立ち上がるのすら困難な状態となっていた。

「……ほんま、堪忍なあ。せやけど、うちが刀子はんを確実に倒すにはこの方法しか無かったんや」

 何処か哀しげな、しかし冷たい言葉が告げられる。
 静留は刀子との約束を守るつもりなど無かった。
 交渉が始まった時からずっと、刀子が致命的な隙を晒すのを待っていたのだ。

844 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:17:25 ID:VatAKCel
 

845 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:17:31 ID:of6hj3Ct
 

846 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:17:49 ID:VJGYAb3f


847 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:18:17 ID:of6hj3Ct
 

848 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:18:53 ID:noG7+WYt
「どう、して…………?」

 力無く地面に倒れたまま、刀子が掠れた声を絞り出す。
 彼女が疑問を抱くのも、至極当然の事だろう。
 少なくとも刀子がこれまで接して来た印象では、静留は新一のような外道では無い。
 そんな静留が何故、このような卑怯極まりない暴挙に出たのか。
 その理由が、刀子には全く分からなかった。

 刀子が見上げる先で、悠然と蛇の少女が屹立している。
 一陣の風が吹き抜けて、栗色の長髪を揺らす。
 静留は殉逢を強く握り締めて、己が心中を静かに語り始めた。

「うちはずっと悩んどりました……。
 なつきの為に人を殺さないといけないのに、どうしてうちにはそれが出来へんかったのか」
 
 静留は殺人遊戯を肯定したにも関わらず、自身の意思で人を殺めた経験が未だ無かった。
 殺せる好機が無かった訳では無い。
 気絶した来ヶ谷唯湖を保護した時。
 あるいは、黒須太一との再会を果たした時。
 その気になりさえすれば、相手の命を奪う事は十分に可能だった筈。
 だと云うのに静留は、自分から獲物を見逃してきたのだ。

「悩んで悩んで……気付いたんどす。自分の覚悟が弱かったって事に。うちは甘かった。
 偶然人を殺してしまったから殺し合いに乗ったというだけで、自分の意思で殺人を犯すような覚悟が無かった」

 そう――そもそも静留が殺し合いに乗った切っ掛けは、藤林杏を誤殺してしまった事。
 人を殺してしまった以上後戻りは出来ぬと判断して、自分から修羅に身を堕とそうとした。
 それは状況に流されただけの、弱い考えに基づいた行動。
 その程度の動機、その程度の覚悟では、人の命を奪える筈が無かった。
 だが静留が迷走している間にも、事態は刻一刻と悪化して、参加者達の首を真綿でじわじわと締め付ける。

849 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:19:30 ID:vnM9IETl
 

850 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:19:43 ID:of6hj3Ct
 

851 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:19:53 ID:VatAKCel
 

852 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:20:23 ID:Kq5EwZdV


853 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:20:36 ID:VJGYAb3f
 

854 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:20:46 ID:noG7+WYt
「せやけど、生き残りももう半分。これ以上甘い事をやっていたら、きっとなつきを守れない」

 少し前に行われた放送によって、また新たな死者達の名前が告げられた。
 死んだ者達の中には、あれだけ強い精神を見せた直枝理樹も含まれている。 
 最早、なつきが何時死んでしまっても可笑しく無い状況。
 この期に及んで甘い考えを捨て切れぬようでは、きっと手遅れとなってしまうだろう。

「……だから。なつきが死んでから後悔しても遅いから――うちは悪魔になります」

 もう、躊躇などしていられない。
 手段など選んでいられない。
 何を犠牲にしてでも、どんなに汚い事をしてでも、殺す。
 他の誰かから大切な人を奪う事になると分かっていても、殺す。
 たとえこの身が朽ち果てようとも、殺して殺して、殺し続ける。
 それが藤乃静留の抱いた、新たなる覚悟だった。
   
「――さようなら、刀子はん。うちは、あんたを殺します」
「静留、さん……」

 静留は古青江を拾い上げて、その刀身を天高くへと掲げた。
 眼下に倒れているのは、満身創痍となった一人の少女。
 自分が酷い裏切り行為によって打ち倒した、一乃谷刀子だ。
 普通ならば、恨まれて当然の状況。
 にも関わらず、こちらを眺め見る刀子の目は、怒りと云うよりも寧ろ哀しみに満ちていた。

「貴女が、進もうとしている先には……ごふっ……きっと苦しみしか、ありません。
 それでも貴女は…………修羅の道を、選ぶのですか?」


855 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:21:14 ID:vnM9IETl
  

856 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:21:23 ID:EteNHRkV



857 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:21:27 ID:of6hj3Ct
 

858 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:21:29 ID:VatAKCel
 

859 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:21:40 ID:Kq5EwZdV


860 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:21:47 ID:VJGYAb3f
 

861 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:21:47 ID:noG7+WYt

 刀子が洩らした言葉は、純粋に静留の事を想ってのものだった。
 停止する古青江の白刃。
 胸を締め付けられるような感覚が、静留へと襲い掛かる。

(うちは……殺すんか?)

 静留はまだ、自分自身の意志で人を殺していない。
 今なら引き返せる可能性も、僅かながら残っているかも知れない。
 だが此処で刀子を殺せば、最早永久に後戻り出来なくなるだろう。
 自分には、本当にそれだけの覚悟があるのか。

(本当に……この人を殺してしまっても良いんか?)

 この少女は敵対関係にある静留を、真剣に救おうとしてくれた。
 なのに自分は、そんな刀子の気持ちを最悪の形で裏切ってしまった。
 このまま刀子を殺してしまって、本当にそれで良いのか。

「それでもうちは――――」
 
 分かっている。
 自分が致命的なまでに間違っていると云う事は、良く分かっている。
 こんな方法で生かされたとしても、なつきは決して喜ばない。
 なつきの為になんて、なりはしない。
 だけど。
 たとえそれが、自己満足に過ぎないのだとしても――

862 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:22:04 ID:of6hj3Ct
 

863 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:22:15 ID:VatAKCel
 

864 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:22:33 ID:VJGYAb3f
 

865 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:23:00 ID:noG7+WYt



「なつきに生きていて欲しい」
 



 振り下ろされる白刃。
 静留の繰り出した一撃は、寸分違わず刀子の首を切り落としていた。
 赤い鮮血が舞い散って、地面を赤く濡らしてゆく。

 言い訳は、決して許されない。
 最早、二度と後戻りなど出来はしない。
 自分の意志で、自分の手で、静留は確実に少女の命を奪い去った。 
 

 それでも、守りたいものがあった。
 誰よりも好きな人が居た。
 ただ一人を守り抜く為だけに、藤乃静留は紛う事無き修羅と化した。



「…………」

 修羅は荷物だけ回収して、少女の死体を一瞥すらせずに歩き去ってゆく。
 懺悔はしなかった。
 そんな事をする資格は、修羅にはもう残されていない。

 湖に面した森の中。
 ひゅうひゅうと風が吹いて、その度に無数の木々が葉擦れの音を紡ぎ上げる。
 月の光が、首だけになった少女の顔を照らし上げていた。

866 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:23:24 ID:VJGYAb3f
 

867 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:23:27 ID:VatAKCel
 

868 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:23:32 ID:vnM9IETl
   

869 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:23:44 ID:noG7+WYt

【鮫氷新一@つよきす -Mighty Heart- 死亡】
【一乃谷刀子@あやかしびと −幻妖異聞録− 死亡】



【D-4 森/一日目 夜】

【藤乃静留@舞-HiME運命の系統樹】
【装備:殉逢(じゅんあい)、コルト・ローマン(0/6)】
【所持品:支給品一式×3、虎竹刀@Fate/staynight[RealtaNua]、木彫りのヒトデ1/64@CLANNAD、 首輪(一乃谷刀子に嵌められていた物)、
 玖我なつきの下着コレクション@舞-HiME運命の系統樹、 ビームライフル(残量0%)@リトルバスターズ!、シアン化カリウム入りカプセル
 古青江@現実、ナイスブルマ@つよきす-MightyHeart-、ラジコンカー@リトルバスターズ!、不明支給品×1(渚砂)、愁厳の服、シーツ、包丁2本
【状態】肉体的疲労大、左の太股から出血(布で押さえています、出血はほぼ停止)、後頭部に打撲
 左手首に銃創(応急処置済み、傷口が開いている)、全身に打ち身、左脇腹の骨に罅
【思考・行動】
 基本:逸早く、なつき以外の参加者達を殲滅する。
 1:どんな手段を用いてでも、なつき以外の参加者達を皆殺しにする。
 2:太股の傷を治療する為の道具を探す。
 3:なつきに関する情報を集める。
 4:衛宮士郎を警戒。
【備考】
 ※詳しい登場時系列は後続の書き手さんにお任せします。
 ※士郎より聖杯についての情報を得ました。
 ※媛星が会場内から見える事には未だ気付いていません

870 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:23:52 ID:of6hj3Ct
 

871 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:24:07 ID:VJGYAb3f
 

872 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:25:22 ID:vnM9IETl
 

873 : ◆guAWf4RW62 :2008/08/07(木) 23:26:25 ID:noG7+WYt
トウカ完了致しました(・3・)
長時間に渡す数多くの支援、本当にありがとうございました
物凄く助かってます
タイトルは『踊り狂う道化達/それでも生きていて欲しいから』で、

長さ的に三分割になると思うので、
中編は>>690
>    ◇     ◇     ◇     ◇

後編は>>828の最初からでお願いします

矛盾・誤字等指摘ありましたら宜しくです

874 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:28:38 ID:J/aLSdeP
投下GJ!
フカヒレ、良い気味だ、と笑っていただけにまさかの結末。
今までが今まで見逃し続けた静留だからこそ、これには引っかかってしまいました。
ついに脱サラマンダーと化し、修羅の道を歩き出した静留の今後に期待。

それでもフカヒレ、やっぱり良い気味だと笑わせてもらうw

875 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:29:34 ID:vnM9IETl
投下GJ!
フ カ ヒ レ www
水中戦に強いなどという人間にあるまじき化け物っぷりに笑ったw
……そして合掌。
で、化け物退治的に終わるかと思いきや、刀子さんがあああああああ!?
空気流と違って大活躍だな、とか思ってたらまさかこう来るとはマジで予想外。
GJでした……けど、刀子さん……なんか欝だ。

876 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:34:04 ID:of6hj3Ct
投下乙!
フカヒレざまあwww奴に相応しい末路だったな……
渚を殺した時から元には戻れないとは思っていたが……合掌。

脱サラ成功した静留おめ!
騙撃、裏切りはロワの華だぜ!

877 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:40:18 ID:VJGYAb3f
投下GJ!
フカヒレは本当に自業自得
まぁ最後に見せ場があって良かったじゃないかw
あのまま簡単になぶり殺しにあうかと思っていたから予想外?の奮闘になんか興奮したよw

そして刀子さぁ〜んorz
静留との共闘という熱い展開で盛り上がった直後に不意打ち鬱とは…
静留よ、これで後戻りができなくなったぞ
ホントは杏を誤殺していないのに…悲劇ですねぇ

そしてこれでつよきす勢は全滅か…

878 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/07(木) 23:43:20 ID:VatAKCel
投下乙です。
フカヒレ自業自得だな、今までの行いがアレだった分憐れみすらない。
そして刀子さん!?まさかの静留本気モードwこれはwww
二転三転するバトル描写は相変わらず上手い。

879 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/08(金) 01:25:49 ID:QdN+NUk1
すげえ投下ラッシュ?だ
と、いうわけでたまっていた感想を

>Lx氏
投下乙です!
ついに真人とプッチャンが出会うべくして出会ったか…
やはりギャグキャラとギャグキャラは惹かれあう運命
それにしてもこの二人のせいで周りの人間まで面白キャラに見えてくるから不思議だw

>>Diy氏
こちらも投下乙です!
ついにってわけでもないけど、このみ&烏月と千華留が出会うべくして出会ったか…
やはり誤解フラグ持ちと誤解フラグ持ちは惹かれあう運命・・・?
そんなフラグはものともせず新生リトルバスターズの再結成頑張ってもらいたいです

>>gu氏
投下乙です!
まず、つよきす未プレイな自分は地の文にナチュラルに新一って出てきて
お前誰だよwwって思ったことをお許しください
それにしても新一…立派な咬ませ犬になって…成長したなあw
最初で最後の真剣バトルにきっと新一君も満足したでしょう。私も大満足でした
そして静留会長、またゲームに乗るかどうか分からない中途半端な状態で去るのかよ…と思ったら
最後の最後でいい具合に期待を裏切ってくれて最高でした!



880 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:04:43 ID:eoXUx44d

――無性に喉が渇くのは僕に生まれ始めた、生きたいという叫びたいほどの真実――
                                      ――「Vermillion 」石川智晶より




私――来ヶ谷唯湖――が深い深いエメラルドの目を持つ少年と出逢ったのは荘厳な大聖堂に居た時だった。
音に導かれてと彼はそういった。
最初見たときは陰鬱そうな少年だなと感じた。
でも、まあそれでも知的好奇心が満たされればそれでいいかと。
だって私は死人も同然だったのだから。
私たちを襲ったバスの事故。
助からない私達が理樹君達を救う為に願った世界でそして役目を終われば私はそこで終わる。
それだけのはずだった。
でも何の因果か知らないか殺し合いをしろと言われた。
はい、そうですかとできるわけも無い。
どうせ死ぬ運命なのは変わらない。
ならば面白い事をするだけでいいかとそれだけでよかったんだ。
実際あの少年ともそうだったはず。
雨が見えるという面白い幻想を持って素敵な音を奏でるだけ。
そして何れ別れが来る。
どちらかの死かは解らなかったが。

本当それだけのはずだったんだ、彼とは。

それなのに、彼はどんどんと私に入ってくる。
ほんの些細なふざけ合い。
それが心地よくて。
彼が疑われた時には何故だか不機嫌になって。
そして彼がリセルシアを失った時何故か放って置けなかったんだ。
励まして彼を繋ぎとめようとして必死だった。

881 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:05:05 ID:XpjfGj6J


882 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:05:10 ID:0YTIRmHg



883 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:06:02 ID:XpjfGj6J


884 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:06:40 ID:eoXUx44d
そして彼の思いを汲んで歌を歌って。
何故か、何故か不思議な思いで溢れて。
そして彼は言った。

明日は希望に満ち溢れてるのかな?と。

柄にも無く私はいった。
想い続けていれば願いは叶うと。
それが彼の為になると思って。

でも。
でもな……

本当にそうなのか?

明日は希望に満ち溢れているのか?

思い続けていれば叶うのか?

解らない……

解らないよ……

教えて……

教えてよ……

いや

そうだと肯定してくれ


885 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:07:02 ID:rpMvhMFd



886 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:07:39 ID:H8aKCKch


887 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:07:46 ID:f7NFdN5M
いつものあどけない顔で

あの時私がした様に

肯定してくれよ

もう私じゃ解らないんだ
お願いだよ……
どうすればいいのか。
どうやって生きればいいのか。

解らないんだ

だから

言ってくれよ

なぁ

――――クリス君。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






888 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:07:59 ID:rpMvhMFd



889 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:08:10 ID:H8aKCKch


890 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:09:05 ID:H8aKCKch


891 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:09:12 ID:f7NFdN5M

大きな月と耀く無数の星。
黒曜石のような黒さの空。

その下に私はいた。
何がなんだが分からない。
頭の中がぐちゃぐちゃになっていくのが感じる。

答えを求めようと闇雲に探すもよく分からない。
ただ伸ばした手のひらが虚空をさまようだけ。

解っている。
解っているつもりだ。
彼らどんな決断しその行為を行ったかは。

でも。
でもな。
それでも苦しいんだ。
私はどうすればいい?

なぁ……どうしてこんな時君は居ないんだ?

大丈夫?と聞いてくれよ。
不安で震える手をぎゅっと握っていてくれよ。

怖いんだよ。
傍に……傍にいてくれよ。

クリス君。

なぁどう思う?


892 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:09:41 ID:H8aKCKch


893 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:09:51 ID:rpMvhMFd



894 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:10:01 ID:f7NFdN5M
私は彼らを見る。

星空と違い輝きを失い空と瑠璃色をした瞳。
生気を失った4つの瞳が私を射抜く。
でも何処かやすらかな顔をしていてとても穏やかだった。
一人の胸には墓標のように突き刺さる黄金の剣。
もう一人には同じように突き刺さる鋭利なナイフ。
そうそれは黒須太一と支倉曜子の遺体。

私の目の前であっけなくほんの一瞬のうちに逝った。
一瞬の交錯、そして崩れ落ちる二人。
私はただ見ているだけで。
二人の死を見てるだけだったんだ。

結局。

私は哀しみの連鎖を止めることなどできやしなかった。
私は無力なのかなぁ、クリス君。
君ならもっと上手くできたのだろうか?
上手い方法で彼らを。

でもな。

でも。

可笑しいかもしれないが彼らが間違ってると想わないんだよ。

彼らは『断ち切った』んだ。
悲しみの連鎖を止めるのではなく断ち切った。
大切な人護る為に誰かの大切な人を殺す前に自ら断ち切ったんだ。
自らの大切な人と共に。
互いが汚れきってしまう前に。

895 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:10:21 ID:H8aKCKch


896 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:10:56 ID:H8aKCKch


897 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:11:19 ID:rpMvhMFd



898 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:11:28 ID:f7NFdN5M
互いがまだ綺麗なままの自分で認識してもらえるように。
そのままの自分で世界から開放したんだ。
死と言う永遠の別れで。
いや……違う。
別れでもあり永遠に共にいる方法で。

いつまでも大切な人といたいから。

なぁ。

それもいいと想ってしまうんだ。
おかしいのかな? 私も。

なぁ。

答えてくれよ。
お願いだから。

クリス君。

そもそも、だ。

哀しみの連鎖を止めるというのは君が望むから私も行っていたからなんだよ。

お願いだ。

お願いだから肯定してくれ。

止める事は正しい事だと。
そうじゃないと私も止めなくてもいいのではないかと想ってしまう。

大切な人をずっと護りたいが為に誰かの大切な人を傷つける。

899 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:11:54 ID:H8aKCKch


900 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:12:34 ID:H8aKCKch


901 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:12:52 ID:f7NFdN5M
大切な人とずっと一緒にいたいが為に誰かの大切な人を奪う。
大切な人を愛するが為に誰かの大切な人を殺す。

いいんじゃないかと。

今ならわかるんだ。
静留君や杏君の気持ちが。

だって。

だってなぁ。

大切な人と居たいんだ。
大切な人を守りたいんだ。
大切な人と笑って居たいんだ。

あの穏やかな時間のように。
音に身を任せて。
髪を梳かれたあの時のように。

そうなんだ。

大切な人というのは己の全てなんだと。

そう想ったんだよ。

私が。

大切に想う君を。

護る為なら。
共にいる為なら。

902 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:13:28 ID:rpMvhMFd



903 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:13:43 ID:H8aKCKch


904 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:13:46 ID:f7NFdN5M

そうなんだ。

私にもできたんだ。

そう思わせる人が。

大切だといいきれる人が。

私のすべてだと思う人が。

出来たんだよ。

誰だと思う?

なぁ?

君だよ。


――――クリス君。



いつだったのだろうな。

君が興味深い人から大切な人に変わったのは―――






905 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:13:59 ID:rpMvhMFd



906 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:14:26 ID:H8aKCKch


907 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:14:54 ID:f7NFdN5M
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






最初は多分謙吾君の死を知ったときだと思う。
何ともいえない気持ちになっていた時にクリス君の事を考えレクイエムを聴いた時だ。
何かないと想っていた心が揺れた。
あのときはよく解らなかったが。
そして静留君と出会いクリス君にいらついて。

その後に私は大切な人を思う強さに疑問をもったんだ。
クリス君は言った。
私にもそういう人ができれば違うって。

うむ、そうだったな。
こんなにも強いと思わなかったよ。
まさかその大切な人が君になるとは思っても見なかったが。

そして温泉に言って私は始めて彼に言ったのだっけ?
私の心がないって。
話すつもりなどなかった。
でもそれでよかったと想ったから。
クリス君だったからかもしれないが。
あの時君は黙っていたけが。
きっときっと違うといいたかったのかな?
分からないが、そうだと思いたい。
その後に碧君にクリス君しか自分の名前を呼ばれたくないんじゃないの?といわれて。
初めて自分の気持ちに表層的に思い始めたんだ。
そして鈴君の死を知ってそして何ともいえない喪失感に陥った時。

908 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:15:10 ID:H8aKCKch


909 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:15:26 ID:rpMvhMFd



910 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:15:47 ID:f7NFdN5M
君に髪を梳いてもらって時やすらいだんだ。
とても君が近くに感じて。
そして不思議な思いにみちたんだ。

その気持ちが今なら言える。
はっきりと。


―――来ヶ谷ユイコはあの時ぐらいからクリス君に恋をしていたと。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





そうか。

そうだったんだな。

私は彼が「好き」だったのか。

……なんだ。
そうだったんだ。

静留君が言ってたのは、これだったのかな?
クリス君を失ってそのとき想ったものはこれだったのかな?


911 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:16:41 ID:rpMvhMFd



912 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:16:43 ID:H8aKCKch


913 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:17:30 ID:f7NFdN5M

そうか。

はははは。

ああ。

私は。

――恋してる。

そうなんだ。
好きなんだ。

ああ。

なんだの湧き上がるものは。
ふわふわと。
ドキドキと。
そして笑みが浮かぶ。

なんだ?

これは?

止まらない。

――ああ、そうか。

これが。

これが。

914 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:17:59 ID:H8aKCKch


915 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:18:27 ID:f7NFdN5M


喜びか!


私は知った。
喜びを。
クリス君に恋する事で。
不完全な心にまた一つピースがはまる。

ふふ。
そうか。
この感情が喜びが。

嬉しい。

嬉しいよ。

なぁクリス君。
君に恋してる事を知った事で喜びを知った。
やはり私の心を補完するのには君が必要なんだ。

だからいて欲しい。

ずっと。
ずっと傍に。

好きだから。
大切な人だから。

ずっと。
ずっ……

916 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:18:33 ID:rpMvhMFd



917 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:19:32 ID:H8aKCKch


918 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:19:50 ID:f7NFdN5M
ずっ……


―――有り得るのか?



え?

そんな声が頭に響く。
頭に響いた声はあの真っ白の髪と瑠璃色の瞳を持つ少年に似ていた。

ずっと傍にいる事が有り得ないと?
……そんな筈はない。

だって願いは叶い続ければ叶う。
そういったじゃないか。
私は。

だから。
だから。


―――永遠なんてない。それを来ヶ谷は今さっき見ただろう?


……あ。

私は見ていた。
今、目の前にある二つの骸。
互いが大切だと思い切ったすえの心中。
きっと彼らは知っていたんだ。

919 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:20:12 ID:rpMvhMFd



920 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:20:24 ID:H8aKCKch


921 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:20:28 ID:CHQ48cj1


922 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:20:54 ID:H8aKCKch


923 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:21:13 ID:f7NFdN5M
永遠なんて無いって。
でもそれでも一緒に居たくて。
そのままの彼らで居たくて。

だから彼らは共に逝った。

……でも。
それでも私は信じたい。
クリス君と共なら大丈夫って。
きっと傍にいれば……


―――傍にいないだろ? 生きて逢えるのか?


う……
だ、だが逢える!
逢ってみせる!
そしてずっと一緒に生きる!
それが私が欲するものなんだ!
それが私が求める結果なんだ!


―――最終的に迎えるのが死でも?


大丈夫。
クリス君が哀しみの連鎖を止める。
そして生きて共に帰る。

私は君たちのような道は選びたくない!
選びたくないんだよ……

924 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:21:33 ID:rpMvhMFd



925 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:21:40 ID:H8aKCKch


926 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:22:12 ID:CHQ48cj1


927 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:22:15 ID:f7NFdN5M
大丈夫。
クリス君が哀しみの連鎖を止める。
そして生きて共に帰る。

私は君たちのような道は選びたくない!
選びたくないんだよ……
……それが最も綺麗な方法に思えて仕方ないから。

互いの死を持って永遠に傍に居る事。
この終わり無い殺し合いの中で共に居る最もいい方法に見えて仕方ないから。
でもそれでも! それを選びたくないんだ!

明日に希望が満ち溢れているなら。
私はどんな少ない可能性でも信じたい。
クリス君と共に変えることがどんなに難しい事でも。
私はそれを信じるんだ。
信じる……しか無いんだよ。

―――でも来ヶ谷、それどうやっても無理。お前肝心な事を忘れてる。

え?


―――お前、死んでるんだろ? どうやって一緒に帰るんだ? お前が帰える場所など無かったの……忘れていたのか?


あ……
ああ……!

そうだ。
そうだったんだ。
私は「死人」だったんだ。

928 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:22:28 ID:H8aKCKch


929 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:23:20 ID:f7NFdN5M

クリス君とは違い死には抗えなかったんだ。
そう。
例え脱出したとしても私に待ち構えるのは死。
クリス君と共に過ごす事など有り得ない事だったんだ。
私に訪れる明日など無かったんだ。

ああ。

忘れていた。

余りにも心地よくて。
ずっとずっとそれが欲しくて。
傍にずっと居て欲しくて。

ああ

―――お前、何で生きてるの? 死なないのか? 元々待ち構えてるものなんだろう? これ以上の悲しみが来る前に。


そう、なんだ。

ガラガラと。
支えていたものが崩れおちていく気がする。
もとより有り得なかったんだ。

クリス君と共に生き延びる事は。

100パーセント存在しないんだ。

ああ。


930 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:23:21 ID:H8aKCKch


931 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:23:53 ID:H8aKCKch


932 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:24:02 ID:f7NFdN5M
欲しいな。

つかめないと解ったからこそ。
もっともっと欲しい。

でも無理なんだ。

私とクリス君が共に生きる事は。

永遠に無い。

ああ。

あ……


「……あ……ぁぁあああああああああぁあああああああぁああああああああああああぁぁあぁああああああああああああああ
 あぁああああああああああああぁああああああああああああああぁぁあぁあああああああああああああ!!!!!!!!」






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







933 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:24:48 ID:H8aKCKch


934 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:24:53 ID:f7NFdN5M
そしてあの後クリス君と思わない方向で別離をしたんだ。
クリス君は私を庇って。
彼は言った。
ユイコは絶対人形じゃないと、心のある人間と。
そして私の前から消えていった。
そして私は彼の死を侮辱したあの女に切れて始めて怒りを認知した。
殺そうと想ったがクリス君の言葉を思い出して出来なかった。
それで私は始めて大切な人になった事がわかった、クリス君が。

泣いた。

喪失の痛みに。
ただ彷徨った。
自分の心が解らなくて。
そして静留君を助けて。
その後失った夢を見たんだ。
私の心はクリス君がいないと補完出来ないと知って。
苦しんで、苦しんで。
想った。

君と共に死ねばこんなに苦しむ事はなかったじゃないかと。

それを否定され言い合った。
あの時はクリス君への思いは恋心とわからなかったけど。
手に入らないものだと思い泣いた。

そして心を欲し続けた。


935 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:25:05 ID:rpMvhMFd



936 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:25:19 ID:H8aKCKch


937 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:25:50 ID:f7NFdN5M
リセ君を埋葬してそれでもクリス君を求める心はとまらなくて。
そして放送にて彼の生を知った。
そしてまたであうために哀しみの連鎖をとめることを誓ったんだ。

でも私は無力だった。

あの二人は哀しみの連鎖を断ち切った、自らの力で。

私は見てるだけ。
でも幸せそうだった。
ほんの一瞬の出来事。
でもそれはとても美しかった。

それがこの島であった一日の出来事。


なぁ私は。

クリス君とあって変わったんだな。

明日など私には無いはずなのにそれを望んでしまったのだな。

ああ。

クリス君。

君は私をかえた。

唯一私を「唯湖」という名で呼び続けていた。
最初は恥ずかしかった。
だが少しずつ心地よく感じ初めて。


938 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:26:06 ID:H8aKCKch


939 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:26:09 ID:rpMvhMFd



940 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:26:39 ID:H8aKCKch


941 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:26:50 ID:f7NFdN5M
……ああ、そうか。

今の私はきっとあの始まりの時と違うのだ。

「ユイコ」なのだ。

恋心を持ったのも。
心があるのも。
人形も無いのも。

「ユイコ」

なのだ。

クリス君が望んだ「ユイコ」なのだ。
でも……

今はそれがとても嬉しくまた辛いよ。
出来損ないの心が痛む。
生きたいと想う心が。
明日などないのに。
それでも望んでしまう。

ああ。

クリス君。

わたしはどうしたらいいのだ?

答えはもうあれしかないかな?

もう一つしか。

942 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:27:24 ID:rpMvhMFd



943 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:27:38 ID:f7NFdN5M
そう一つしか。

彼らと同じように。

永遠に幸せになる方法。

そう――――





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






星が耀いていた。
きらきらと。

私は泣いていた。
涙が止まらないのだ。

結局明日など無かったのだ。
例え明日が希望に満ち溢れているものでも。
私にはそれが訪れる事がない。

私は「今」だけを見ていたはずだったのだ。
なのにいつの間にかその先を望んでいた。
クリス君と出逢って。

944 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:28:26 ID:H8aKCKch


945 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:28:41 ID:f7NFdN5M

ああ、生きたいな。

私は生きたいと願ってはいけないのに。
クリス君と生きる事を願っているんだ。

でもそれは叶わない。

どんなに願っても。
願い続けても叶うはずないのだ。

つまりだ。
私に残されてるのは一つしかないのかな?

胸に抱いている太一少年を見る。
やすらかに。
ただやすらかに。
眠っている。

私は彼の遺言を果たそうとした。
遺体を海を還そうと。
遥かなる永遠へと。
曜子君はもう流した。
私の力では一緒に流す事はできなかったのは残念だったが。

「……さよなら」

私はその一言と共に彼の遺体を川に流した。
やがて海に辿り着くだろう。
そしてずっとずっと一緒にいるんだろう。

彼女と永遠に。

946 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:29:33 ID:H8aKCKch


947 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:30:30 ID:H8aKCKch


948 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:31:01 ID:f7NFdN5M
なぁ太一少年。
君の取った手段は幸せなものなのかい?

……聞くまでも無いか。
とても幸せそうだった。
二人きりの心中。
死という永遠。
きっとそれはやすらかなんだ。



……なら。


私とクリス君がずっと傍に居る為に選ぶ手段じゃないだろうか?
この残された最後の道が。
そう。

二人でこの世界から離れるという事。

私はその実例を目の前で見た。
幸せで。
とても幸せそうで。

なら。

それをとるのが最も正しい事じゃないかな?

私に明日が無いなら。
それでもクリス君といたいなら。



949 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:31:54 ID:f7NFdN5M
私がクリス君を殺して彼が私を殺す。


それが傍にいられる最後の手。
それを行うのがきっと……

ああ。

きっと幸せなんだ。











950 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:32:07 ID:H8aKCKch


951 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:32:59 ID:H8aKCKch


952 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:33:49 ID:f7NFdN5M
「………………できる訳無いだろう!!!!!!!!……できる訳が……無い………………」


そんな事できる訳がなかった。

例えそれが幸せなことでも。
それがどんなにやすらかなものでも。
クリス君と傍にいられることでも。

私にその手段が選ぶ事ができなかった。

きっと心が壊れていたら出来たのかもしれない。

でも、今の私は違う。
クリス君と出逢って心がある事を知り喜びと怒りを知った。
クリス君に恋する事ができた。

そんな私に。

「クリス君を殺す事なんかできる訳がない!……彼に生きていて欲しいに決まってるだろう! どんな時でも!」

クリス君の死を願う事なんかできるわけがない!
掛け替えのないものを沢山くれたクリス君に私の為に死を選ばせる事なんかしてほしくないのだよ。

クリス君に生きて欲しい。

彼は私と違って「生きてる」んだ。
彼には明日があるんだ。
ずっとずっと生きて欲しい。
そうして欲しいんだ。


953 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:33:51 ID:H8aKCKch


954 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:34:33 ID:f7NFdN5M

だから私には太一少年のような手段は取りたくない。
例え幸せでも。
私はそんな手は取りたくないんだ。


「あぁ……私も生きたいな……クリス君と共に……生きたい」

もし望めるのなら私はずっと生きたい。
ただ生きたい。
クリスと共に。

ただ

「生きたい!」


でもそれは無理なんだ。
私はできない。
悔しいな。
悔しい。

なあ?
私はどうすればいいんだ?
私は死ぬことは免れない。
だからクリス君とずっと一緒にいることはできない。

じゃあ私は何を選べばいいのだろうか。

私が幸せにクリス君と居られる方法は?
私に何れ訪れる死に怯えずにやすらかに死ねる方法は?


955 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:35:03 ID:H8aKCKch


956 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:35:42 ID:f7NFdN5M



……あぁ。

見つかった。

でもそれは何てクリス君に辛い事を押し付けるのだろう。
彼の生を望んでいるのに最も苦しい事を押し付けるのだろう。

でも私にとって幸せなのかもしれない。
彼の記憶にずっと残る。
その行為は絶対に消せない。
そして最期にクリス君を見ていられる。

クリス君にとって最も哀しいものだろう。
でも私にとって最も幸せなものだろう。

ずっと生き続けるクリス君に忘れさせない。
そして死ぬ定めにある私にある意味幸せな逝き方。

そう。



957 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:36:02 ID:H8aKCKch


958 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:37:12 ID:f7NFdN5M

『来ヶ谷唯湖がクリス・ヴェルティンに殺してもらう』


なんという私のエゴだろう。
私がクリス君に生きてもらいが為に選ばなかった選択肢。
それと違うのは結局私がクリス君を殺さない事。
クリス君が生きるということだけ。

この事実がどんなにクリス君を傷つける事になっても、苦しめる事になっても。
私は幸せなのだろう。

目前に迫る死に対して。
クリス君の胸で逝けるというこの島で最も幸せな逝き方。


ああ生きたいな。
本当はこんな道よりもクリス君と共に居たいのだが。
生きたいのだが。
私には未来が無いのだから。
ああ。
でも想う、一心に。

「生きたい!」

生きたいと。

でも無理なんだ。
だから私はその選択肢を選ぶ。
恐らく最も幸せな逝き方を。



959 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:38:15 ID:f7NFdN5M
だが。

「きっとクリス君は望まないだろうな……絶対」

クリス君はきっと私の選択を望まないだろう。
そういう子だ。
じゃあどうする?

私は……
クリス君に殺される為にどうすればいい?



ああ

「……簡単だな……凄く……」

とてもシンプル。
でもそれはとても辛い事だ。
できるのか?
いや、しよう。

そうそれは私が罪を重ねればいい事。
クリス君に嫌われればいい事。
私がクリス君に殺されるような事をすればいい事。

そしてこの島で最もそれに値する行為。

「哀しみの連鎖を断ち切る……いや進めるか……どっちも一緒かな?……御免よ……クリス君……」

哀しみの連鎖を断ち切るというべきか進めると言うべきか解らないけど私はそれを行う。

960 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:38:39 ID:rpMvhMFd



961 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:39:21 ID:rpMvhMFd



962 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:39:42 ID:H8aKCKch


963 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:40:33 ID:H8aKCKch


964 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:40:56 ID:rpMvhMFd



965 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:41:16 ID:f7NFdN5M
クリス君が止めようとしてるのにだ。
私は自らを哀しみの連鎖に組み込もうとするのだ。

つまり

「人を……殺す」

誰かの大切な人を殺すと言う事。

ああ、大きな罪だ。
私はそれを否定し続けていたと言うのに。

だけど。
こうでもあるんだ。
誰かの大切な人を傷つけると言う事はクリス君を守る事。
誰かの大切な人を奪うと言う事はクリス君を生かす事。
誰かの大切な人を殺すと言う事はクリス君を愛す事。

そう私にとって大切なクリス君の為。

……あぁ一度クリス君を失ったから強く想う。

なんという逆らえない魅力だなと。
私が罪を重なる事にクリス君が生きる。

そういう事だ。

とてもとても魅力な……


だが、私にできるのか?

966 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:41:46 ID:rpMvhMFd



967 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:41:57 ID:H8aKCKch


968 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:43:05 ID:f7NFdN5M
誰かの大切な人を殺す事が。

ないと思った心が痛む。
頭の中にある思い出が否定する。
あの笑顔が哀しく歪む。

ああ。

なんて辛い事。

できるのか?

私は?



そうだ。
戻ればいい。

だって今の私はクリス君が望んだ「ユイコ」なのだから。
心もあるのも。
優しい記憶も。
恋をしてるのも。
「ユイコ」なのだ。

ならそれを閉じ込めればいい。
心などなかったのだ。
優しい記憶など無いのだ。

そう今だけを生きた「来ヶ谷唯湖」に戻ればいい。



969 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:43:09 ID:H8aKCKch


970 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:43:16 ID:rpMvhMFd



971 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:43:36 ID:f7NFdN5M
とても苦しく。
とても哀しい事。
できるのか?


いやしなくてはいけない。
私は明日を生きれない。
私が幸せに逝けるにはクリス君の傍で逝くこと。

例えクリス君に嫌われようと。
例え他の人に恨まれようと。

クリス君を護れるならそれでいい。


それなら喜んで戻ろう。

全ては最期の為に。
全てはクリス君の為に。


「さよならだ……『ユイコ』」


私は「ユイコ」である事を止めた。





972 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:43:51 ID:H8aKCKch


973 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:44:25 ID:f7NFdN5M
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






私は曜子君の荷物を回収し歩き始めた。
ただ前に。

何も感じるはずはないのだ。
心は忘れたと思いたいから。
クリス君を護れればいいのだから。
そしてクリス君の元で散ろう。

明日などないのだから。
私に生きる道など無いのだから。

なら残りの生はクリス君の為に使おう。
最期に散る時の為に使おう。

考えたくも無いがクリス君が逝った場合だ。
私はそのまま後を追おう。
クリス君が居ないなら私も居なくなろう。
それだけだ。


なぁ。

クリス君。
こんな私をどう思う?
君はどう思うのかな?

974 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:44:48 ID:rpMvhMFd



975 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:44:55 ID:H8aKCKch


976 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:45:21 ID:f7NFdN5M

できる事なら君に会いたくないな。
本当の最後の時だけ会いたい。

だってそうだろう?
「ユイコ」でない私を君に見せる事などできるだろうか?
見せたくないのだから。

本当なら今すぐにでもあいたい!

でも無理なんだ。
私は明日を生きられない。
君とは違うから。

だから私はいくよ。

君に許されなくても。
君に嫌われても。

私は君を護る。

そして最後は君の元で逝きたい。

それが「死者」である私の望むべきことだから。

だから。

私は殺す。


なぁクリス君……


977 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:45:38 ID:H8aKCKch


978 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:45:54 ID:f7NFdN5M

いまさらこんなこというのも何だが

「ユイコ」でない私が言うのも何だが



――――君が好きだ。愛してる。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





彼女は進む
それはきっと

愛故の戦い。


でも彼女は気付かない。

最も彼女が渇望しているのは「生きたい」というモノに――――――




979 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:46:19 ID:rpMvhMFd



980 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:46:27 ID:H8aKCKch


981 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:46:49 ID:f7NFdN5M
【D-6 川の辺/1日目 真夜中(放送直前)】
【来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!】
【装備】:デザートイーグル50AE(6/7)@Phantom-PHANTOMOFINFERNO- カリバーン@Fate/staynight サバイバルナイフ
【所持品】:支給品一式×3
 デザートイーグル50AEの予備マガジン×4、S&WM37エアーウェイト(5/5)、S&WM37エアーウェイトの予備弾(×12)
 ウィルス@リトルバスターズ!、第1次放送時の死亡者とスパイに関するメモ、放送案の原稿、黒須太一の遺書
 拡声器、工具一式、オペラグラス マスク・ザ・斉藤の仮面@リトルバスターズ!
 斧、投石器、石材×3、RPG-7V1(弾頭1/1)、OG-7V-対歩兵用弾頭×3、斬妖刀文壱@あやかしびと−幻妖異聞録−
 真っ赤なレオのデイパック(空)、首輪×4(蒼井、向坂、橘、鉄乙女)、木彫りのヒトデ×3@CLANNAD
 バカップル反対腕章@CROSS†CHANNEL、ドラゴン花火×1@リトルバスターズ、怪盗のアイマスク@THEIDOLM@STER
【状態】:疲労(小)、脇腹に浅い傷(処置済み)、全身に打ち身
【思考・行動】
 基本:クリスを護る為、罪を重ねる為に殺し合いに乗る。そして最期にクリス殺してもらう。
 0:……クリス君。
 1:クリスを守るために他の参加者を殺す。
 2:人を殺し哀しみの連鎖を進めるもしくは断ち切る。
 3:太一の遺言を叶える? (原稿をスパイに届ける)
 4:理樹と鈴を失った棗恭介には警戒する。
 5:クリスが死んだ場合自殺する。
 6:(………………………………生きたい)
【備考】
 ※精神世界より参戦しています。
 ※クリスはなにか精神錯覚、幻覚をみてると判断。今の所危険性はないと考えています。
 ※千羽烏月、岡崎朋也、椰子なごみの外見的特長をを認識しています。
 ※西園寺世界の声だけを聞き、人肉を求める危険人物だと認識しています。
 ※美希に対し僅かな違和感を持っています。
 ※黒須太一と支倉曜子の遺体を川に流しました。
 ※行き先は後継の書き手に任せます。





982 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:46:52 ID:rpMvhMFd



983 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 00:47:36 ID:rpMvhMFd



984 :love ◆UcWYhusQhw :2008/08/09(土) 00:47:51 ID:f7NFdN5M
来ヶ谷唯湖投下終了しました。
支援有難うございます。
誤字矛盾があったら指摘お願いします。

タイトルは「love」です


985 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 02:19:49 ID:krwuk6A2
投下乙です
嗚呼、CC勢の狂気性が伝染して、姉御がヤンデレ風味に……
まさか心中するのかと思ったら、やっぱりクリスは殺せないって事で安心かと思ったら、結局極論に走ったw
先の読めない展開、濃厚な心理描写、GJでした
クリスとの再会の時が楽しみだなあ
しかし今の姉御って、なつきと仲良さそうにしているクリスを見たら、どんな反応をするんだろうw

986 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 18:19:04 ID:CHQ48cj1
投下乙です。
唯湖…何という思考に…。
C?Cの狂気にあてられてはこうなるしかないのか。
やはりというか心理描写が凄いですね。
GJでした。

987 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/09(土) 22:31:28 ID:qv/cxtco
投下乙。
まさかの姉御ヤンデレ化。
曜子ちゃんと同じ道を辿ってしまうか……これもまたクロスオーバーの面白さですよね。
クリスくん、他のキャラを攻略している場合じゃないぞ。メインヒロインがヤンデレに……あれ?w

988 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/10(日) 19:42:55 ID:jM8ZjA9w
投下乙
過去を回想し、恋を自覚したなあと思ったら
太一の亡霊が一気に狂気へと叩き落すw
マーダー転向でクリスとの出会いも楽しみになってきました

989 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 12:01:30 ID:AOUdOJ2x
次スレ
ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド15
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1218209374/l50

埋まったら、こちらへ移行してください

990 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:32:03 ID:ev9BT8hV
『いつでも微笑みを/トルティニタ・フィーネ』



「最期に言うと未練がましく思われるかもしれないけど……俺、トルタの事が好きだった。
 どうして、とか言われても、気が付いたら、としか言えないけど、兎に角好きだ。
 ……ああ、それだけは、どうしても言っておきたかったんだ」

そう言って、彼は少しだけ笑った。
私に向ける震えの無い銃口も、表面的には何の変化も無い表情も、何時もとまるで変わらない口調も、全てが何時もの彼のものだった。
人一人居ない、見慣れぬ町。
知らない町でも、太陽は同じように西に沈んでいく。
……雨の気配は無い。
別れには、相応しい場所なのかもしれない。

「…………ごめん、やっぱ忘れてくれ。
 こんな事言っても、マイナスにしかならないよな」

最初から約束されていた破滅は、何時かと同じように、唐突に訪れた。
思えば、出会った時もこうして、お互い向き合っていたんだっけ。
あれから、どれだけの時間がたったんだろう?
計算すればすぐわかるけど、何だか知りたくなかった。
とてもとても、長い時間を一緒に過ごしていたような気がする。
思い起こせば一瞬、だけどそひと時ひと時がどれも大事なもの。
でも、それも、もう、終わり。

「……もう、どうしようも無いのかな、……恭介?」


991 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:32:49 ID:AOUdOJ2x



992 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:32:51 ID:ev9BT8hV
感情を出さないように、意識して、少し大きな声で話す。
聞かなくても、もう私にだって判ってる、どうしようも無いくらいに。
何時だって、現実は思うようにはいかない。 私は、ただそれを嘆き続ける事しか出来なかった。

「………………」
「うん、ごめん、……わかってるよ、恭介の所為なんかじゃない」

僅かに恭介の表情が曇る。
恭介だって、これで良い、なんて本当は思ってない。
でも、それでもどうしようもない事。
だから、私は言った。
その事で、また恭介が苦しむ事は判っていたけど、それでも言った。

「恭介、……これまで、ありがとう」

貴方がいたから、私はここまで生きてこれた。
貴方がいたから、私は多分前に歩けた。
貴方がいたから、今、この言葉が言える。


ありがとう、恭介。
そして、……さようなら。


993 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:33:47 ID:FlG3nIjc
 

994 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:33:55 ID:ev9BT8hV

耳障りな轟音。
永遠の離別を告げる鐘の音が響き、二人の物語はここで終焉を迎える。
少しずつ、それでいて規則正しい足音。
その音は一つ。
もう二度と、互いの音が交わる事は無い。
足音も、
呼吸の音も、
互いの心臓の音も、

全ては、ひと時の思い出へと変わりゆく。



でも、思う、どうして、こうなっちゃったのかな?





995 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:34:13 ID:AOUdOJ2x



996 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:34:53 ID:ev9BT8hV
言峰綺礼と、命をBETにした賭けで得たコインは14000枚。
目的のUSBメモリという機械を手に入れて、なお余裕がある枚数だった。
手に入れた機械は、ガラスに似た平べったい、小さな筒の形で、とても不思議なもの。
早速その使おう、て言ったら、恭介にパソコンという機械が無いと使えない、と言われた。
そして、「これは、トルタが得たものだ」って渡されたけど、恭介に返した。
私が持っていても仕方の無いものだし、私一人の力でも無いのだから。

残りは4000枚、なのでその内の1000枚で恭介に防弾チョッキというものを渡した。
銃の弾が防げるのだから、これほど良い物も無い。
戦いになれば、恭介は必ず私よりも危険な場所に立とうとする。
だから、僅かにでも危険を減らしたかった。
恭介は大分渋っていたけど、それでも最期は『ランキング暫定チャンピオン』の命令という事にした。
……この称号、実は大分便利かもしれない。

そういえば、恭介に付けた称号は、思い返すと恥ずかしい。
彼が私の国の言語を知らない事が、唯一の救いかもしれない。
恭介に意味を聞かれたけど、何とかごまかせたし。

あの時は、何もかもが上手く行っていた筈だった。
そう、その時までは。


初めて聞く声。
良く判らないけど多分重要な事柄を告げる声。
けれど、私たちにはそんな事はどうでも良かった。

『直枝理樹』

恭介の、最期の探し人。
私にとってのクリスと同じように、存在の全てであったもの。
それが、……消えた、……消えて、しまった。

997 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:35:15 ID:AOUdOJ2x



998 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:35:26 ID:FlG3nIjc
 

999 : ◆S71MbhUMlM :2008/08/11(月) 23:35:40 ID:ev9BT8hV


……憎い。
理樹を殺した誰かが憎い。
鈴を殺したファントムが憎い。
理樹の死を知りながらあえてあんな取引を持ちかけた言峰綺礼が憎い。
そして何より何も出来なかった自分自身が憎い。

憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

憎くて憎くて、憎しむ事しか考えられない。
憎むことしか、出来ない。

そうするしか、俺は俺を保てなくなってしまいそうで。

ああ、憎い。
取引をしておいてむざむざ理樹をしなせたファントムが憎い。
こっちは既に羽藤桂を見つけているのに理樹を見つけていない千羽烏月が憎い。
理樹の事を守らなかった真人と来ヶ谷が憎い。理樹を放って死んだ謙吾が憎い。
蘭堂りのが憎い、源千華留が憎い、如月双七が憎い、羽藤桂が憎い、アル・アジフが憎い。
ティトゥスが憎い、清浦刹那が憎い、名も知らぬ女が憎い、スターブライトが憎い、
そして、何よりも、

「……恭介」

気遣いの色を見せる翠緑の瞳。
流れるような茶の髪。
俺の、大事なパートナーである彼女、
トルティニタ・フィーネが憎くて仕方が無い。


1000 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/08/11(月) 23:35:50 ID:/z0dCrRP
 

1001 :1001:Over 1000 Thread
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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