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ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド12

1 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/15(日) 22:49:53 ID:KMQHYMN0
このスレはギャルゲ・ロワイアル2ndの本スレッドです
ギャルゲ・ロワイアル2ndを一言で表すのならば、ギャルゲーの人気キャラを用いてバトルロワイヤルをするというリレー小説企画です
基本的に作品の投下・感想共に、このスレで行って下さい

前スレ
ギャルゲ・ロワイアル2nd 本スレッド11
http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1212580977/l50

ギャルゲ・ロワイアルしたらばBBS(1st・2nd兼用)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/8775/

ギャルゲ・ロワイアル2nd 議論・毒吐き専用スレpart2(上記したらば内)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1203171454
※議論はこちらでどうぞ

ギャルゲ・ロワイアル2nd避難所スレ(同上)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1205659483
※本スレが荒れている場合の感想・雑談はこちらでどうぞ。作品の投下だけは本スレで行って下さい

ギャルゲ・ロワイアル2nd予約専用スレ(同上)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1205656662/l50

ギャルゲ・ロワイアル2ndまとめwiki
ttp://www7.atwiki.jp/galgerowa2

ギャルゲ・ロワイアル2nd毒吐きスレ(パロロワ毒吐き別館BBS)
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1203695602
※毒吐きスレ内での意見は、基本的に無視・スルーが鉄則。毒吐きでの話を他所へ持ち出さないように!

テンプレは>>2以降に


2 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/15(日) 22:51:31 ID:KMQHYMN0
・参加者一覧
2/3【THE IDOLM@STER】
   ○高槻やよい/○菊地真/●如月千早
3/5【アカイイト】
   ○羽籐桂/○千羽烏月/●浅間サクヤ/●若杉葛/○ユメイ
4/5【あやかしびと −幻妖異聞録−】
   ○如月双七/○一乃谷刀子・一乃谷愁厳/○アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ/○九鬼耀鋼 /●加藤虎太郎
3/5【機神咆哮デモンベイン】
   ○大十字九郎/○アル・アジフ/●ウィンフィールド/○ドクター・ウェスト/●ティトゥス
0/4【CLANNAD】
   ●岡崎朋也/●古河渚/●藤林杏/●古河秋生
3/4【CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
   ○黒須太一/○支倉曜子/○山辺美希/●佐倉霧
2/2【極上生徒会】
   ○蘭堂りの/○神宮司奏
3/4【シンフォニック=レイン】
   ○クリス・ヴェルティン/○トルティニタ・フィーネ/○ファルシータ・フォーセット/●リセルシア・チェザリーニ


3 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/15(日) 22:52:13 ID:KMQHYMN0
1/4【School Days L×H】
   ●伊藤誠/●桂言葉/○西園寺世界/●清浦刹那
1/2【Strawberry Panic!】
   ●蒼井渚砂/○源千華留
4/6【つよきす -Mighty Heart-】
   ●対馬レオ/○鉄乙女/○椰子なごみ/○鮫氷新一/●伊達スバル/○橘平蔵
1/3【To Heart2】
   ○柚原このみ/●小牧愛佳/●向坂雄二 
2/3【Phantom -PHANTOM OF INFERNO-】
   ●アイン/○ドライ/○吾妻玲二 
2/4【Fate/stay night[Realta Nua]】
   ○衛宮士郎/●間桐桜/○葛木宗一郎/●真アサシン 
4/4【舞-HiME 運命の系統樹】
   ○玖我なつき/○深優・グリーア/○杉浦碧/○藤乃静留
4/6【リトルバスターズ!】
   ○直枝理樹/●棗鈴/○来ヶ谷唯湖/○棗恭介/●宮沢謙吾/○井ノ原真人

【残り39/64名】


4 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/15(日) 22:52:37 ID:KMQHYMN0
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → 舞台である島の地図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。


5 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/15(日) 22:53:06 ID:KMQHYMN0
【禁止エリアについて】
放送から2時間後、4時間後に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。

【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。

【舞台】
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/ed/c29ff62d77e5c1acf3d5bc1024fe13f6.png

【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24


6 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/15(日) 22:53:40 ID:KMQHYMN0
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述する。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。


7 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/15(日) 22:54:02 ID:KMQHYMN0
【首輪】
参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
放送時に発表される『禁止エリア』に入ってしまうと、爆発する。
無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できない。

【デイパック】
魔法のデイパックであるため、支給品がもの凄く大きかったりしても質量を無視して無限に入れることができる。
そこらの石や町で集めた雑貨、形見なども同様に入れることができる。
ただし水・土など不定形のもの、建物や大木など常識はずれのもの、参加者は入らない。

【支給品】
参加作品か、もしくは現実のアイテムの中から選ばれた1〜3つのアイテム。
基本的に通常以上の力を持つものは能力制限がかかり、あまりに強力なアイテムは制限が難しいため出すべきではない。
また、自分の意思を持ち自立行動ができるものはただの参加者の水増しにしかならないので支給品にするのは禁止。


8 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/15(日) 22:54:23 ID:KMQHYMN0
【能力制限】
ユメイの幽体問題→オハシラサマ状態で参戦、不思議パワーで受肉+霊体化禁止
ユメイの回復能力→効果減
舞-HiME勢のエレメントとチャイルド→チャイルド×エレメント○
NYP→非殺傷兵器で物理的破壊力も弱い
     ただし、超人、一般人問わず一定のダメージを食らう
     NYPパワーを持ってるキャラはその場のノリで決める
リセとクリスの魔力→楽器の魔力消費を微小にする、感情に左右されるのはあくまで威力だけ
ティトゥスの武器召喚→禁止あるいは魔力消費増
士郎の投影→魔力消費増
アルの武器召喚→ニトクリスの鏡とアトラック・ナチャ以外の武器は無し。
            または使用不可。バルザイの偃月刀、イタクァ&クトゥグア、ロイガー&ツァールは支給品扱い
            またはアル自身、ページを欠落させて参戦
            または本人とは別に魔導書アル・アジフを支給品に。本の所持者によってアルの状態が変わる
武器召喚全般→高威力なら制限&初期支給品マイナス1&初期支給品に武器なし
ハサンの妄想心音→使用は不可、または消費大、連発不可。または射程を短くする
ハサンの気配遮断→効果減
虎太郎先生の石化能力→相手を石にできるのは掴んでいる間だけ

その他、ロワの進行に著しく悪影響を及ぼす能力は制限されている可能性があります


9 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/15(日) 22:55:15 ID:KMQHYMN0
【予約について】
書き手は事前に書きたいキャラを予約し、その予約期間中そのキャラを使った話を投下する義務がある。
予約無しの投下は不可。
予約期間は3日間(72時間)で、その期間を過ぎても投下がなかった場合、その予約は無効となり予約キャラはフリーの状態になる。
但し3作以上採用された書き手は、2日間の延長を申請出来る。
また、5作以上採用された書き手は、予約時に予め5日間と申請することが出来る。
この場合、申請すれば更に1日の延長が可能となる。(予め5日間と申請した場合のみ。3日+2日+1日というのは不可)
期限を過ぎた後に同じ書き手が同じキャラを予約することはできない。(期限が六日、九日と延びてしまう為)
予約の際は個人識別、騙り防止のためにトリップをつけて、 したらばで宣言すること。
投下の際には予約スレで投下宣言すること。


10 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:35:00 ID:QDr1IWea
 神宮寺奏は一人、無音の畳部屋で正座をしていた。
 姿勢正しく、瞑想するように目を閉じ、述懐する。

 ――『奏さん、貴方はどうします? 貴方自身で決めてください』

 トーニャの残していった言葉が、脳裏で靄のように蟠っている。
 課せられた質問は、シンプルにして難題。究極の二択が、奏に選択を強いる。
 記憶を失った少女、ファルシータ・フォーセットを信じるか、信じざるか。
 あらかじめ解を与えられた問題は、時として、必要以上に解答への時間を要する場合がある。

(……困ったことになったわね)

 静穏と一体化した奏の身は、一切の音を漏らさない。
 寺という領域が満たす、和の空気に溶け込むように、奏はただ静かに考えた。

 ファルシータ・フォーセットは、記憶喪失だ。しかし、彼女の記憶喪失には疑惑がある。
 井ノ原真人は、ファルを信用している。疑心を抱いた上での判断かどうかは、奏にはわからない。
 トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナは、ファルを信用しない。孤立してでも、切り捨てる覚悟でいる。

 奏がどちらを選択したとしても、真人とトーニャの分断は免れない。
 両方の意を汲むことは適わず、ファルへの疑心を晴らすことはできず、人間関係を修復するには圧倒的に時間が足りなかった。
 八方塞の精神的窮地に立たされた少女は、困りはするものの慌てるまでには至らない。
 生まれ故のお淑やかさと度胸、天然という枠組みにカテゴライズされる性格は、冷静な思慮を運ぶ。

 浅間サクヤが死に、改めて殺し合いという現実を知った今。
 神宮寺奏は、再び岐路に立たされる。

11 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:35:43 ID:QDr1IWea
(りのは……無事なのかしら?)

 忌避しがたい現実を受け入れ、まず心配になったのは、自分の身ではない。
 下級生にして、妹のような存在。蘭堂りのの安否についてだった。

 蘭堂りの。奏が会長を務める、『極上生徒会』執行部書記の座に就く少女。
 性格は天真爛漫で少しドジ。常にパペット人形のプッチャンと行動を共にしている一風変わった女の子だ。
 運動神経は一般中学生の平均程度であり、また大きなトラブルやアクシデントに対する免疫も皆無。
 殺し合いなどという非現実的な窮地に直面しては、たちどころに殺されてしまうだろう。

 だが、どう転ぶかわからないのが現実というものだ。
 スペックで言えば即退場でもおかしくないりのの身柄は、現状、死亡という最悪の状態にだけは陥っていない。
 誰かに保護されているのか、辺境の地で隠れ通しているのか、会場内をひたすら逃げ回っているのか。
 考えれば考えるほど、奏の胸は不安で押し潰されそうになった。

 奏がここまでりのを気にかけているのには、もちろん理由がある。
 宮神学園理事長としての義務感、極上生徒会会長としての責任感、そういったものよりもずっと重い、約束。
 りのの母、蘭堂ちえりとの――りのを守るという――約束が。

(私に、できること――)

 りのを守る、という絶対的使命を踏まえ、奏が次に考えたことは、自分に与えられた可能性だった。
 銃器を構えて戦争など、奏のカラーではない。
 殺し合いという行為において言えば、彼女は殺される側の役しか担えずに終わるだろう。
 故に奏は生徒会長として、組織の上に立つ者として、ゲームの背景を読む側に就こうとした。

12 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:36:07 ID:B+Y2S+tW


13 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:36:38 ID:QDr1IWea
 しかし、それすらも中途半端だ。企画運営者たちの懐を探るには、圧倒的に情報が不足している。
 唯一と言える手がかり、藤乃静留の所在は未だ掴めず、コミュニティを築こうにも、早速仲違いが生まれる始末。
 奏は、ほぅ、と溜め息をつき、目を開く。

 一人間としての限界は、やはり凡人の域を出ない。それが神宮寺奏の宿命。
 となれば、当然考えざるを得ないのは……彼女自身が忌み嫌う異能、『神宮寺の力』について。

 神宮寺の力と呼ばれる能力は、神宮寺の一族が生まれ持って得た、枷のようなものである。
 強力な力を持った者は、神宮司家当主としての数奇な運命を背負わされることになり、自由を束縛される。
 りのの母、蘭堂ちえりも、かつては神宮寺一の使い手と言われた能力者だった。

 彼女は神宮司家の宿命から逃れ、蘭堂の人間として娘と平和に暮らしていたが、約一年前に病気で死去している。
 無機物に特定の人間の意識と記憶を吹き込む力……りのが所持しているプッチャンも、ちえりが生前に力を行使して作り出した、忘れ形見だった。
 りのが一人きりにならないようにと、神宮寺の宿命とは無縁の世を生きて欲しいと、願いを込めて。

 奏が持つ神宮寺の力は、ちえりほど優れたものではない。
 彼女の力は、言葉を必要とせずに、相手の心に己の意を達意する力……言ってしまえば、一方的なテレパスだ。
 この力は、強制力を伴う。能力者の言霊を受けた者は、その言霊の示すとおりに行動せざるを得なくなる……という、洗脳にも似た力だった。
 ただし、そこに絶対遵守という概念はなく、力の保有者によって強制力の強弱がある。
 奏の言霊が持つ強制力は、現在の神宮寺一とされているが……奏本人は、そうは思っていない。

14 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:36:57 ID:B+Y2S+tW


15 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:37:32 ID:QDr1IWea
 頭に浮かぶのは、やはりりのの存在。
 まだはっきりと力に目覚めてはいないものの、りのはちえりの実の娘にして、彼女が意図して神宮寺から遠ざけた逸材だ。
 りのが覚醒し、神宮寺の力を自由自在に操れるようになれば――例え制限下といえど――殺し合いの一斉停止など、おそらくは容易。
 未成熟ながら、奏以上の能力者として、りのはこのゲームの切り札にも成り得る存在だった。

(でも)

 奏本人の心は、奏に娘を託したちえりの本意は、りのの覚醒を望まない。
 いかに今が緊急時とはいえ、一度力に目覚めてしまえば最後、神宮寺の宿命からは逃れることができなくなる。
 りのを神宮司家の者としてではなく、あくまでも蘭堂りのとして、平和な日常へ送り返す。
 それが、神宮寺奏と蘭堂ちえりの総意だった。

「……本当に、困ったことになったわね。どうしたらいいのかしら」

 心中にではなく、声に出して吐露する。
 りのの想う気持ち、己の殺し合いに対する姿勢、再認識しても、やはりぶれはない。
 今さら自分の立ち位置や神宮寺の力について考えてみたところで、名案が開けるわけでもなく。
 ファルをどうするか、真人をどうするか、トーニャにどう答えるか、という難題への解決には至らなかった。

 ――『極上生徒会総員に告げる! いま会長は困っている! それがどういうことかわかるな!』
 ――『極上生徒会規約第一条第七項。生徒会長の職務を妨げる者は、いかなる手段を持っても対応する』
 ――『故に、対応する!』

 ここが宮神学園であったならば、奏が困った顔を浮かべるだけで、二人の副会長が一斉招集をかけただろう。
 教職者よりも優れた地位に立つ、極大権限保有最上級生徒会――通称、極上生徒会。
 その生徒会長たる肩書きは、このゲームにおいて言えばなんの役にも立たない。
 宮神学園理事長、ひいては神宮司家当主としての極大権限は、暴力の世界では適用されない。
 天然気質の会長を支える優秀な面々も、今はいない。奏は完全に、武装を剥がされた状態にあった。

16 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:38:34 ID:B+Y2S+tW


17 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:38:53 ID:QDr1IWea
 改めて認識する。
 極上生徒会会長ならばともかく、ただの少女たる神宮寺奏にできることは、少ない。

(けれど)

 非力を痛感して、しかしだからこそなんとかしたい、という欲求は、強くなる一方だった。
 もう、神宮寺の宿命に振り回されるだけのお飾りではいたくないから。

 ――『聞かせて。奏はなにがしたい?』

 初めてできた親友は、奏に道を示してくれた。
 なにかを背負ったままでも、なにかを成すことはできる。
 大切なのは意志なんだと、友達に教えてもらった。
 だからこそ今、奏はかつて目指した理想郷を思い出す。

(――宮神学園)

 奏は道を見つけるまで、学校に行ったことがなかった。
 友達と知る喜び、友達と分かち合う楽しさ、全て学び足りなかった。
 そんな想いから創立したのが、彼女が理事長を務める宮神学園である。

(極上生徒会)

 私立宮神学園極大権限保有最上級生徒会。名づけて極上生徒会。
 学園の平和を守るため、自ら立ち上げた生徒会には、多くの同志が集まってくれた。
 奏の意に共感を覚える友達、奏を慕う後輩、神宮寺の宿命を知る者も数名。

18 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:39:29 ID:B+Y2S+tW


19 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:40:04 ID:QDr1IWea
(シンディさん、みなもちゃん、管理人さん)

 車両部に属し、奏をボスと慕ってくれた、やや引きこもりがちなハーフのシンディ・真鍋。
 重い病気を抱えながら、常に生徒会のムードを高めてくれた自称特別名誉顧問の桂みなも。
 極上寮の管理人として、小学生ながらみんなの衣食住を一手に担ってくれた久川まあち。

(角元さん、飛田さん、和泉さん)

 遊撃部の右翼として、学園のトラブルを率先して処理してくれた角元れいん。
 遊撃部の左翼として、学園のトラブルを率先して処理してくれた飛田小百合。
 幼い弟妹たちを養いながら、忠誠的に学園のためを思って行動してくれた和泉香。

(聖奈、桜梅さん、琴葉)

 神宮司家の事情を知る者として、常に奏の心情を気にかけてくれた桂聖奈。
 忍者の末裔として、その能力を奏のために献身的に捧げてくれた隠密部の桜梅歩。
 神宮司家のお庭番として、奏ですら把握しきれない裏の仕事をこなしてきてくれた矩継琴葉。

(まゆらさん、久遠さん、奈々穂)

 毎度の如く予算難に苦しむ生徒会の財政を、たった一人で帳尻合わせしてくれた市川まゆら。
 おっとりした奏をフォローするように、常に冷静な視線で事態を見つめてくれていた銀河久遠。
 奏にきっかけを与えてくれた、掛け替えのない親友であり、幼なじみでもある金城奈々穂。

(りの、プッチャン)

 心の底から愛してやまない、蘭堂りの。
 ちえりが残したパペット人形の、プッチャン。

20 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:40:50 ID:QDr1IWea
(私のしたいこと。私がやらなければならないこと)

 回顧しても、やはり変わらない。
 奏は、りのと一緒に帰りたかった。
 みんなが帰りを待つ、宮神学園へ。
 大切な仲間たちがいる、極上生徒会へ。

 そのためにはやはり、ただの非力な少女ではいられない。
 極大権限保有者として、極上生徒会会長神宮寺奏として。
 この殺し合い――いや、ゲームに、臨む。

「……よし」

 奏は力強く頷き、座禅を解く。
 立ち上がり、畳部屋から退室しようとしたところで、タイミングよく障子が開かれた。

「……答えは出ましたか?」

 銀髪の小柄な体が、障子の先から奏を見据えている。
 彼女もまた、寺の周囲を散策する間に決心を固めたのだろう。

21 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:40:49 ID:B+Y2S+tW


22 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:41:22 ID:ycNckUe6
 

23 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:42:10 ID:B+Y2S+tW


24 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:42:53 ID:KDf5XLYL
 

25 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:43:25 ID:QDr1IWea
「私の意志は変わりません。全てはあなたしだいです。奏さん、どうか返答を」

 答えは既に、胸の中に。
 支えられるだけが能ではない、優秀な生徒会長として。
 奏は一歩踏み出し、神妙な顔を浮かべるトーニャに開口する。

「私は、ファルさんを切り捨てません」

 ストレートな主張に、聞き手であるトーニャの顔が強張る。

「そこで」

 トーニャが完全なる落胆に陥るよりも先に、奏は言葉を続けた。

「トーニャさん……あなたには、隠密≠ノなっていただきたいのです」


 ◇ ◇ ◇



26 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:44:05 ID:KDf5XLYL
 

27 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:44:27 ID:QDr1IWea
「――で、それがおめぇの出した結論だってのかよ」

 仄かなラザニアの残り香と、食事の跡が広がる卓を間に、三者と一者が向かい合っていた。
 三者のほうは、左から順に、ファル、真人、奏が並んで座っている。
 三者の視線を仰ぐのが、陰険な敵愾心を必要以上に放つ、トーニャだった。

「ええ。なんならそのファッキン脳筋にもわかるよう、二、三度復唱してやりましょうか?
 あなたや奏さんがどう言おうが、私は彼女を信用することができません。
 行動を共にするなんてもってのほか、どんな理由を述べられようと、考えは変わりません。
 こんな怪しいヤツと一緒になんかいられるか、私は部屋に戻らせてもらう。といった心境です」

 厳格な声を崩さないトーニャ。迸る眼光は、チンピラのようにファルを見据えている。
 ファルが困惑の表情でいることも構わず牽制を続ける、その様に真人はいい顔をせず、舌打ちを打った。

「だから、一人で出てくってか? 刑事ドラマだったら真っ先に殺されるぞ、おまえ」
「ご心配なく。私はリアルを生きてますから。この中で最も生存率が高いのも、私でしょうし」

 真人の皮肉めいた忠告を、さらっと受け流すトーニャ。
 戦闘力的な面で言えば、人妖である彼女は、屈強な筋肉を有する真人よりもずっと強い。
 敵と相対したとしても対処は容易である上に、守るものもないから、行動範囲はぐんと広くなる。

「ただし、井ノ原さんはともかくとして、奏さんの安否は気がかりです。
 なのでファルさん。あなたに一つ、条件を課します。
 それがのめないというのであれば、私は今この場で、あなたを本当の意味で切り捨てます」

28 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:45:21 ID:B+Y2S+tW
 

29 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:45:46 ID:KDf5XLYL
 

30 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:45:47 ID:B+Y2S+tW
 

31 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:46:06 ID:QDr1IWea
 敵愾心が、質量を伴った殺気へと変わる。
 突き刺さる空気を肌で感じ取ったファルは、ビクッと震え、僅かに真人のほうへ縋った。
 向けられる殺気を跳ね除けるように、真人が言葉によって掣肘を加える。

「ファルが持ってる首輪をよこせ、ってんだろ? むやみやたらに脅かすんじゃねぇよ」

 食べ残しのこびりついた皿が転々とする卓の上、真人は無造作に一個の輪を掴み取り、トーニャに放る。
 それこそが、疑惑の種にして脱出への重要な足掛かり。ファルが所持していた、首輪のサンプルだった。

「いいよな、ファル?」
「え、ええ。それで信用してもらえるんなら……」
「ハッ、勘違いも甚だしい。こんなもので信頼が買えるとでも?
 しつこく言わせてもらいますが、あなたは得体が知れない。
 仮に記憶喪失が真実だったとしても、元々ろくな人間ではなかったのでしょう」

 トーニャのあからさまな挑発に、怒気を唱える者はいない。
 真人は顔を顰めるだけに留め、ファルはひたすらに困惑、奏は辛辣な表情で推移を見守る。

「……言いたいことは、それだけかよ?」

 茶目っ気を殺した、真人の重々しい声が響く。
 トーニャは厳格な態度を変えず、しかし真っ向からの言い争いは望まず、失笑を零した。

32 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:46:57 ID:QDr1IWea
「失礼。お喋りが過ぎましたね。私ともあろうものが、無駄に時間を浪費してしまったようです」

 やれやれ、と小声を漏らしながら立ち上がり、執着のない仕草で障子に向かう。
 もうこんなわからず屋たちと話すことはなにもない、とでも言いたげな背中が、三者の注目を浴びる。

「一つだけ、聞かせろ」

 トーニャが障子に手をかける寸前、真人が制止の声をかけた。
 互いに視線は合わせず、言葉だけでの、最後の掛け合いを興じる。

「おまえ、もしまたこのみに会ったら――やっぱり助けねぇのか?」
「助けません。無視です」

 ファル、そして又聞きしたレベルの奏には、おおよそどんな意味があるのかわからない問答。
 トーニャの無慈悲な即答に、真人は少しだけ目を伏せた。

「では、ごきげんようみなさん。縁があればまた会いましょう。
 そのときは、互いに敵ではないことを祈っていますよ――」

 振り向かぬまま、別れの言葉にしては忌々しい言を残し、トーニャは出て行った。
 あっさりと、一切の後悔などなく。


 ◇ ◇ ◇



33 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:47:24 ID:KDf5XLYL
 

34 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:47:51 ID:B+Y2S+tW
 

35 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:48:19 ID:QDr1IWea
 トーニャが出て行ってから数分後。
 寺の門前では、身支度を済ませた奏たちの姿があった。

「よっしゃあ! そんじゃま、気を取り直して出発といくかぁ!」
「てけり・り……」
「あん? ボス狸がいなくなって寂しいだぁ? フッ……なに言ってんだダンセイニ。おめぇには立派な筋肉がついてんじゃねぇか」

 藤林杏の死、トーニャとの離別と、人並みの感情を持つダンセイニにとっては、辛い出来事の連続だったことだろう。
 どことなくしょげた雰囲気を纏う軟体スライムに、真人は腰を振って励ましの言葉をかける。

「でも、本当によかったのかしら。なんだか私が追い出してしまったようで……」
「そう自分を追いつめないで、ファルさん。トーニャさんも、決してあなたのことが嫌いなわけではないから」
「……そうは、思えなかったけれど」

 疑惑の種であり、一連の騒動の中心にあったファル本人は、表面上は責任を感じているように見える。
 はたしてそれが真意か偽りか、見極めることは誰にもできない。
 少なくとも奏自身の意志は、ファルという人間を受け入れている。

(トーニャさんの言うことはもっともだけれど……それでもやっぱり、私には彼女を疑うことができない)

 そもそも神宮寺奏という人間は、他者を疑ったり騙したりといった風潮が好きではない。
 立場上、腹の探り合いなど不可避ではあるものの、好んで疑心を向けることなど絶対になかった。
 誰もが誰もを信頼し、互いに手を取り合うことができたなら、どんなに幸福な世が訪れるか。
 奏は真剣に理想を見据え、そして目指す。ファルとトーニャも、いつかきっと打ち解ける、と。

36 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:48:31 ID:0yEzV7SH


37 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:49:21 ID:QDr1IWea
(だから……絶対にまた会いましょう、トーニャさん。みんなで、故郷に帰るために)

 広大な青空を仰ぎつつ、奏は自身が目指す理想に想いを募らせた。
 宮神学園で味わえた、あの極上な日々をもう一度――。
 りのはもちろん、トーニャや真人、そしてファルにも。

「ところで……真人さん、でいいかしら? ここからどこに向かうのかしら?」
「ああ、それだけどよ。実はちょっとばかし気になる場所があってな……三人とも付き合ってくれねぇか?」

 いつになく真剣な表情をした真人が、ダンセイニ、ファル、奏へと、視線を巡らせる。
 含みがあるような顔つきは、彼の素の表情か否か。付き合いの浅い二人と一体には判然としない。

「構いませんけど……気になる場所、というのは?」

 奏の質問の後、しばしの間を置き、真人は告げた。

「教会だ」



38 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:49:39 ID:B+Y2S+tW
 

39 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:49:46 ID:0yEzV7SH


40 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:50:17 ID:B+Y2S+tW
 

41 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:50:41 ID:QDr1IWea
【C-5 寺の入り口付近/一日目/午前】

【神宮司奏@極上生徒会】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式。スラッグ弾30、ダーク@Fate/stay night[Realta Nua]、レトルト食品×6、予備の水
      SPAS12ゲージ(6/6)@あやかしびと −幻妖異聞録−、不明支給品×1(確認済み)
【状態】:健康。爪にひび割れ
【思考・行動】
基本方針:極上生徒会会長として、ゲームに対抗する。
0:教会に行く?
1:蘭堂りのを探す。
2:できれば、九郎たちと合流したい。
3:藤野静留を探す。
4:大十字九郎に恩を返す。
5:いつかまた、トーニャと再会する。
【備考】
 ※加藤虎太郎とエレン(外見のみ)を殺し合いに乗ったと判断。
 ※浅間サクヤ・大十字九郎と情報を交換しました。
 ※ウィンフィールドの身体的特徴を把握しました。
 ※主催陣営は何かしらの「組織」。裏に誰かがいるのではと考えています。
 ※禁止エリアには何か隠されてるかもと考えてます。
 ※トーニャ・真人と情報交換しました。


42 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:50:50 ID:KDf5XLYL
 

43 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:50:51 ID:B+Y2S+tW
 

44 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:51:33 ID:B+Y2S+tW
 

45 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:52:11 ID:QDr1IWea
【井ノ原真人@リトルバスターズ!】
【装備】:僧衣、木魚、マッチョスーツ型防弾チョッキ@現実【INダンセイニ@機神咆哮デモンベイン】
【所持品】:餡かけ炒飯(レトルトパック)×3、制服(破れかけ)
【状態】:、胸に刺し傷、左脇腹に蹴りによる打撲、胸に締め上げた痕、全身にぬめり
【思考・行動】
 基本方針:リトルバスターズメンバーの捜索、及びロワからの脱出
 1:教会に向かう。
 2:理樹たちリトルバスターズのメンバーや来ヶ谷を探す。
 3:主催への反抗のために仲間を集める。
 4:ティトゥス、クリス、ドライを警戒。
 5:柚原このみが救いを求めたなら、必ず助ける。
 6:今は無理でも、いつかトーニャと分かり合いたい。
【備考】
 ※防弾チョッキはマッチョスーツ型です。首から腕まで、上半身は余すところなくカバーします。
 ※現在、マッチョスーツ型防弾チョッキを、中にいるダンセイニごと抱えています。
 ※真と誠の特徴を覚えていません。見れば、筋肉でわかるかもしれません。
 ※真人のディパックの中はダンセイニが入っていたため湿っています。
 ※杏、ドクターウェストと情報交換をしました。
 ※奏と情報交換をしました。
 ※大十字九郎は好敵手になりえる筋肉の持ち主だと勝手に思い込んでいます。


【ダンセイニの説明】
アル・アジフのペット兼ベッド。柔軟に変形できる、ショゴスという種族。
言葉は「てけり・り」しか口にしないが毎回声が違う。
持ち主から、極端に離れることはないようです。
杏の死とトーニャの離散で、ショックを受けているようです。

46 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:52:21 ID:B+Y2S+tW
 

47 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:53:00 ID:B+Y2S+tW
 

48 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:53:21 ID:B+Y2S+tW
 

49 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:54:36 ID:B+Y2S+tW
 

50 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:55:30 ID:B+Y2S+tW


51 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:55:31 ID:QDr1IWea
【ファルシータ・フォーセット@シンフォニック=レイン】
【装備】:包丁(少々刃毀れしています、返り血は拭き取ってあります)、デッキブラシ、イリヤの服とコート@Fate/stay night[Realta Nua]
【所持品】:リュックサック、救急箱、その他色々な日用品、
      ピオーヴァ音楽学院の制服(スカートが裂けている)@シンフォニック=レイン
【状態:重度の記憶喪失(僅かだが記憶が戻り始めている)、頭に包帯、体力疲労(中)、精神的疲労(中)、後頭部出血(処置済み)、空腹】
【思考・行動】
 基本:他者を利用してでも絶対に生き延びる。自分の記憶を取り戻したい。パパとママと恋人を探したい。
 0:他者を利用してでも、自身の生存を最優先する。
 0:教会に行く?
 1:真人と奏と行動。
 2:首輪を外せる人間を探す。
 3:男性との接触は避けたいが、必要とあれば我慢する。
 4:パパやママ、恋人を探し出す。
【備考】
※ファルの登場時期は、ファルエンド後からです。
※頭を強く打った衝撃で目が覚める前の記憶を失ってますが、徐々に思い出しつつあります。
※教会に倒れていたこととスカートが裂けてたことから、記憶を失う前は男性に乱暴されてたと思ってます。
※真人たちからの情報により、自身がバトルロワイアルに参加者であることを自覚しました。


 ◇ ◇ ◇



52 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:56:32 ID:QDr1IWea
(さて)

 孤高に聳える大樹の枝の上、トーニャは猿でもなければ登れないような高所から、山々を見渡した。
 生い茂る大自然は太陽光に晒され、木々は燦々と輝きを満たしている。
 見た目には、戦火の兆しも見当たらない。付近には、もう人はいないのだろうか。

(まあ、いつまでもこんな山奥に滞在している理由もないですし……『彼』がいるとすれば、やはりふもとの街でしょうか)

 ファルから手に入れた何者かの首輪を懐に、トーニャは脳内にあの騒がしい男を顕現させた。
 自称大天才ドクター・ウェスト……死亡報告のあった藤林杏と行動を共にしていたはずの、キ○ガイ科学者である。

(現状、ゲームを打開するにあたって最も論理的な視点を構えているのは、彼を置いて他にないでしょう。
 彼の技術力がどれほどのものかは知りませんが、この首輪のサンプルを渡すだけの価値はある、はず。
 藤林さんが死んだ一方で彼は生きている……と、そこは考えたらキリがないから置いておくとして。
 せっかくフリーになったのですから、効率的に動かなくては。奏さんとの約束を果たすためにも、ね)

 大樹の上から跳躍し、キキーモラを発動。
 背中から生えたロープのような物体が枝に絡み、まるでターザンのように森の中空を伝っていく。

(まったく、単なる天然ボケ担当かと思いきや、とんだ食わせ者です。
 生徒会長なんてのは、やっぱりアレくらいぶっ飛んでないと務まらないんですかねぇ)

 脳裏で神宮寺奏と一乃谷愁厳の姿を比較しつつ、トーニャは少し前のやり取りを思い出す。

(まさか、あんなことを言い出すとはね)


 ◇ ◇ ◇



53 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:56:39 ID:B+Y2S+tW


54 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:57:09 ID:QDr1IWea
 数十分前。
 奏からの返答を聞くため、彼女の下を訪れたトーニャは、予想外の事態に直面した。

「トーニャさん……あなたには、隠密≠ノなっていただきたいのです」

 これまでのトーニャの奏に対する評、良くも悪くも受動的。
 生徒会長という肩書きもお飾り程度の意味しか持たず、仲間に支えられてこその人間だと認識していた。
 故に、返事もイエスかノーの二択だろうと思い込んでいたところで、認識を改めざるを得ない回答が返ってきた。

「隠密……ですか。単語の意味する役割はなんとなく想像できますが……いったいどういったものですか?」
「極上生徒会隠密部……簡単に説明すれば、表立って動く生徒会を、影からサポートする役目です」

 奏が語る『隠密』という役職は、日本の戦国時代に存在したという忍者の役割に近い。
 時には諜報員として、時には暗殺者として、時には囮として、時には影武者として、影より主の支援に回る。
 決して表には出ず、徹底的に潜み、事を成す。損な役回りにも思えた。

「これは私の見解ですが……トーニャさんは、単独でいたほうが行動しやすいと思います。
 大所帯の一人として動くよりは、そこから一歩離れた地点にいたほうが、本領が発揮できる。
 隠密は、常に冷静な状況判断と臨機応変な対応が求められる役職です。トーニャさんのような……」

 奏の論を静聴する傍らで、トーニャはふむふむと感心する。実際、奏の観察眼は大したものだった。
 トーニャの本業はスパイであり、キキーモラを主軸にした戦闘も、単独での一撃離脱を得意とする。
 諜報活動、闇討ち、撤退、いずれも得意分野。対して、他者との連携や誰かを守りながらの戦いは不得手。
 暗躍するにしても、戦うにしても、逃げ回るにしても、一人のほうが都合がいいのは確かだ。
 ファルを信用するかどうかはともかくとして、奏はしっかりと、トーニャの本質を見極めていた。

55 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:57:24 ID:B+Y2S+tW


56 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 01:57:47 ID:QDr1IWea
「だから、私にあなたの部下になれと。影ながら身辺警護でもさせるつもりですか?
 それとも小間使い? ご自身にそんな権限があるとでも?
 ご存知かとは思いますが、ここはあなたが首座に就く極上生徒会ではないのですよ」

 奏の真意を探るため、刺々しい言葉を選んで反応を窺う。
 トーニャの挑発的な態度に、しかし奏は嫌な顔一つせず、堂々と答えた。

「わかっています。だからこそ、私は命令ではなくあなたに『お願い』しているんです。
 ここにいるみんなのためにも――トーニャさんには、最善の動き方をしてほしいと」

 奏の語る『みんな』には、この寺に身を置く四人のみならず、会場にいる全参加者を指すような意味合いが含まれていた。
 彼女の後輩たる蘭堂りの、真人が探し求めるリトルバスターズメンバー、トーニャの属する神沢学園生徒会の面々、そしてまだ見ぬ志を同じくする者たちも。

(なんて、あまったるい……)

 トーニャは心中で頭を抱えた。
 奏もやはり、真人と同じ側にいる人間だ。
 日常を引き摺った楽観的思考のせいで、最悪の状況を想定できない。
 切り捨てるべき人間とそうでない人間の分別がつけられないから、善悪も見分けられない。

 それなのに、トーニャに隠密活動をしろ、などとは――

「初めてですよ……この私をここまでコケにしたお馬鹿さんは……」


57 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:59:03 ID:B+Y2S+tW


58 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 01:59:31 ID:0yEzV7SH


59 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 02:00:03 ID:QDr1IWea
 ――やはりあまい。が、上等。おもしろいではないか、と。

 トーニャは内面のみに抑えることができず、表にも、失笑を漏らす。
 くっくっ、と小刻みに発声するトーニャに困惑する奏の表情がまた、おろおろしていておもしろかった。

「あ、あの、トーニャさん? やはり、気分を害してしまったでしょうか……」
「……ふふ。いえいえ、ぜ〜んぜん……そんなことはありませんよ? どうかお気になさらず」
「そうは言われましても……ごめんなさい。やっぱり差し出がましいお願いでしたね」
「そうですね。ですが了承。オーライオーケイです。請け負いましょう、その隠密としての仕事」

 落としどころとしては、むしろ及第点だろう。
 と、トーニャはホッと息を継ぐ。

(正直、このまま仲違いで離別、なんてデメリットしかありませんからね。
 私を独自に動かすという名目があれば、井ノ原さんとの関係も荒立てずに済みますか。
 はははー……って、どうして私がそんなどうでもいい点に気を配らなければならないんですか。
 あほらしい。不愉快です。それじゃまるで、私が井ノ原さんのこと心配してるみたいじゃないですか)

 笑っていたかと思ったら、急に肩を落とし、盛大に溜め息をつく。
 主張もなしに感情を変化させていくトーニャに、奏はまた困った表情を浮かべた。

「ええ、そうです。ここまで来て後に引けますか。リアリストなトーニャさんはあくまでも、
 あの蜂蜜漬けグッピーがあますぎるから距離を置く……ということで一つ。
 そのほうが、井ノ原さんのためにもなるでしょうし、ファルさんが信用できないことには変わりありませんから」
「え、え、え? えぇと、それじゃあ……真人さんにはなんて説明すれば?」
「正面からあんたとはやっとれんわ、とでも言ってやりましょう。大丈夫。あの筋肉は気にするタマじゃありませんよ」
「トーニャさん……なんだか、笑みが、黒い、です」
「フ、フ、フ……」

60 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 02:00:57 ID:B+Y2S+tW


61 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 02:01:22 ID:QDr1IWea


 ◇ ◇ ◇


 そしてトーニャは、真人との縁切りを果たし、奏の隠密として動く。

「人材は適材適所に。奏さん。あなたには、生徒会長として、組織の上に立つ者として、見るべきものが見えているようです」

 奏自身への忠誠心など欠片もないトーニャだったが、それでも彼女の持つ統率力は評価できる。
 実直にして生真面目、不器用だがやるときはやる。
 一乃谷愁厳という完璧のようで完璧からは少しずれた手本があるだけに、奏の手腕に期待せざるを得なかった。

「うちの生徒会長様は今頃どこでなにをやっているのか。如月くんや加藤先生も。
 第二回放送は乗り切ったみたいですが、二人で賭博場に引きこもりつつ、
 ヤーサンに身包み剥がされてるなんことは……笑い話にもなりませんね。プッ」

 僅かに笑みを零し、トーニャは樹林を行く。
 当面の活動は、隠密としてあくまでも影ながら、脱出への糸口を模索する。
 兼ねてから思考の隅に置いていた、寺の大仏含む施設の謎。
 奏の考察の鍵となる神崎を知る人物、藤乃静留との接触。
 そして首輪というキーアイテムを入手した上での、ドクター・ウェストというキーパーソンとの再接触。

(次に会うときはきっと、成果を持って帰りますよ。それまでは、筋肉のお守りをよろしく)

 気楽さと開放感を手に入れたトーニャは、意気揚々と山を渡っていく。
 ロシアンスパイ――アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナの誇りに懸けて。

 請け負った仕事は、必ず形ある成功として持ち帰る。
 それまでは、どうか無事にいて欲しいと――トーニャ・アントーノヴナ・ニキーチナとしての願いを込めながら。

62 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 02:01:53 ID:B+Y2S+tW


63 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 02:02:32 ID:B+Y2S+tW


64 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 02:02:40 ID:0yEzV7SH


65 :素晴らしく冴えたやり方 ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 02:03:04 ID:QDr1IWea
【C-5 西部山中/一日目/午前】

【アントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナ@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備】:ゲイボルク(異臭付き)@Fate/stay night[Realta Nua]
【所持品】:支給品一式、不明支給品0〜2、スペツナズナイフの刃
      智天使薬(濃)@あやかしびと−幻妖異聞録−、レトルト食品×6、予備の水、首輪(岡崎朋也)
【状態】:健康。
【思考・行動】
基本方針:打倒主催。『隠密』として行動。
 1:ドクター・ウェストを探し出し、首輪を提供する。山のふもとの街(中世西洋風の街)へ。
 2:しばらくは単独行動を徹底。物資や情報の調達、各施設の調査などに努める。
 3:藤乃静留を探し出し、主催者(神崎黎人)の情報を絞り取る。
 4:神沢学園の知り合いを探す。強い人優先。
 5:主催者への反抗のための仲間を集める。
 6:地図に記された各施設を廻り、仮説を検証する。
 7:ティトゥス、クリス、ドライ、このみを警戒。アイン、ツヴァイも念のため警戒。
 8:時機を見て、奏と合流する。ファルはやっぱり信用できない。
【備考】
 ※制限によりトーニャの能力『キキーモラ』は10m程度までしか伸ばせません。先端の金属錘は鉛製です。
 ※真人を襲った相手についてはまったく知りません。
 ※八咫烏のような大妖怪が神父達の裏に居ると睨んでいます。ドクターウェストと情報交換をしたことで確信を深めました。
 ※杏、ドクターウエストと情報交換をしました。
 ※奏と情報交換をしました。
【トーニャの仮説】
※地図に明記された各施設は、なにかしらの意味を持っている。
※禁止エリアには何か隠されているかもしれない。

66 : ◆LxH6hCs9JU :2008/06/16(月) 02:03:47 ID:QDr1IWea
投下終了です。支援ありがとうございました。

67 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 02:08:03 ID:B+Y2S+tW
投下乙&GJです!
奏が表舞台にたちましたか。これからどう動く?
そして真人が教会といった真意?どうなるかが楽しみです。
トーニャはピンで行動……しかし静留はゲームに乗ってるぞw
各キャラの今後が楽しみな話でした!
とうかGJ!

68 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 02:18:55 ID:ycNckUe6
投下お疲れ様です
筋肉チームもようやく本格始動といった所ですね
今まで空気化していた奏が、今回で一気に存在感を持てて良かった
そしてフリーザ様自重wwwwww

69 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 02:20:26 ID:xcHrLVZ/
投下乙です

トーニャが単独行動か…
ファルと一緒に行動する、ファルを見捨てて一人で行動する
どっちも微妙に死亡フラグじゃん\(^o^)/とか思ってしまったw
トーニャに明日はあるのか!?

70 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 07:13:51 ID:fePYF90V
投下乙
やっとカリスマ発揮してきた奏会長
彼女ならファル様も懐柔できる……かも
死亡フラグありまくりのトーニャは果たしてどうなる?

あと、りのの運動神経は平均よりずっと下だったと思いますよ

71 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 15:02:18 ID:CO+hqQvd
投下乙。
おお、奏会長が格好良い。
真人もようやくシリアス入ってきたし、やっと対主催らしい活動が始まったな。
まあ、清涼剤チームの分裂は個人的に残念だったりするんだけどwww

72 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 19:01:59 ID:MuvdCKoZ
投下乙
西博士(死亡フラグ付き)+マッスル☆トーニャ(死亡フラグ付き)=?
死亡フラグがネタにしか見えんww

むしろボケ担当を筋肉からキ○ガイに変えた狸より
突っ込み不在の筋肉トリオの方がやばそうだw

73 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:07:39 ID:GyFrYAkW
千羽烏月・柚原このみ・ツヴァイ、トウカします(・3・)
お暇な方がいらっしゃれば支援お願いします

74 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:08:36 ID:GyFrYAkW
静まり返った森の中。
まだ真昼間だというのに薄暗いその地を、ひたひたと歩いてゆく亡霊が一人。
未だ高校生程度の年頃であろう銀髪の少年は、凍て付くような鋭さの瞳を湛えている。
彼こそが、嘗て秘密結社インフェルノに於いて最強と謳われた暗殺者、ツヴァイである。

(棗、恭介)

先程電話で話した相手の事を思い出す。
棗恭介――もしかしたら井ノ原真人という名前かも知れないが、そんな事はどうでも良い。
ツヴァイにとって重要なのは、あの男がこちらに対して凄まじい憎悪を抱いている、という一点のみ。

あの男が相当な切れ者であるという事は、先の電話の際に十分過ぎるくらい分かっている。
正面勝負なら負ける気はしないが、敵は必ず絡め手を用いて攻めて来るだろう。
ツヴァイの悪名を広めて、集団による包囲網を形成しようとするかも知れない。
こちらの隙を見計らって、何処かから奇襲を仕掛けてくるかも知れない。
そして万が一自分が敗れてしまえば、復讐の一環としてキャルも殺されるだろう。
そこまで考えると、ツヴァイは血が滲み出る程に拳を握り締めた。

(……ふざけるな)

敵が何を仕掛けて来ようとも、キャラは絶対に死なせない。
もう二度と、誰にもキャルを傷付けさせる訳には行かない。


嘗て暗殺者としての生活を続けていたツヴァイは、殺戮を繰り返す内に摩耗していった。
一つ一つの出来事に喜びや哀しみを覚える事が減って行き、人殺しにも慣れていった。
このままでは、単なる殺人兵器に成ってしまうだろうという時。
そんな時に、彼女は現れた。

75 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:10:26 ID:GyFrYAkW

キャル・ディヴェンス――凍り付いていたツヴァイの心に、再び温もりを与えてくれた少女。
瞼を閉じれば、今でも彼女の笑顔が鮮明に思い出せる。

最初は情報を得るという目的の為だけに、ツヴァイはキャルへと接近した。
情報を聞き出すだけ聞き出したら、それで終わる筈だった。
それがどういう訳か、同じ家で暮らす事になり、次第に二人は惹かれ合って行った。

一緒に家で食事をした時の事。
一緒に街へ買い物しに行った時の事。
一緒に――狙撃という任務を完遂した時の事。

決して平和な出来事ばかりでは無かったが、そのどれもがツヴァイにとっては大切な思い出だ。
笑う事も、泣く事も、全ては彼女が思い出させてくれた。
ずっと一緒に居たいと思った。
組織を裏切る事になろうとも、自分の命が危険に晒されようとも、それでも一緒に居たかった。

しかしとある事件が原因で、ツヴァイが組織に裏切り者扱いをされた時。
組織が仕掛けた爆弾によって、キャルは命を落としてしまった。
それで、終わり。
その瞬間に、ツヴァイが生きる意味は永久に失われてしまった筈だった。


だが、失ってしまったモノを取り戻せるかも知れない機会が訪れた。
気付いた時にはもう巻き込まれていた、此度の殺人遊戯。
今ツヴァイが持っている名簿上には、ドライ(キャル・ディヴェンス)という名前が記載されている。

何故彼女がこのような書き方をされているのか、そもそも自分の知っているキャルと同一人物なのか。
真実がどうなっているのかは分からないが、考える必要など無いだろう。
この島の何処かに、キャルが居るかも知れない。
キャルを救える可能性が、一パーセントでもあるかも知れない。
それだけで、ツヴァイが――吾妻玲二が銃を手に取るには十分過ぎる。

76 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:10:26 ID:W39mfkUo
投下乙です
今回の見所はやはり会長とトーニャのやりとりですね
一気に行動範囲の広がった単独行動トーニャの行く末が楽しみです

個人的にはトーニャ死亡フラグよりは
放送で筋肉会長だけ呼ばれてファルだけ呼ばれない憤怒フラグだと思っておく

77 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:11:49 ID:GyFrYAkW
「待ってろよキャル……今度こそ、絶対にお前を守る。俺達は、二人でずっと一緒に暮らすんだ」

その言葉に籠められた想いは、本人以外には決して測り切れない程重いモノ。
ツヴァイは鞄を幾つか肩に掛けて、その中からコルトM16A2を取り出した。
亡霊は絶対の決意を胸に、独り森の中を突き進んでゆく。



    ◇     ◇     ◇     ◇



流れるような黒の長髪を湛えた女性と、丸く大きな瞳が特徴的な少女。
道に迷ってしまった千羽烏月と柚原このみは、未だ森の中を歩き回っていた。
しかし、前のようにアテも無く彷徨っている訳では無い。
烏月はコンパスを片手に握り締めて、迷い無く一方向に向けて進んでゆく。

「ねえ、烏月さん。何処に行こうとしてるの?」
「南だよ。私は元々その方角から来たんだ。
 だったら南に戻れば、いずれ知っている道を見付けられる筈だからね」

見知った道さえ見付けられれば、後は簡単に森を抜けられる。
一度来た道へと戻るのは時間の浪費に他ならないが、このままずっと森の中を迷っているよりはマシだろう。
故に烏月は南へ戻る事を選択し、このみも特に反対せぬまま後に続いてゆく。

「このみさん。森から抜けたら、次はどうするべきだと思うかな?」
「うーんと……烏月さんは桂さんって人を探してるんだよね? それに私も人を探してる。
 だったら駅に行くのが良いんじゃないかな。ちょっと危ないかも知れないけど、電車を使った方が早く動き回れるもん」

島の南部の街中には、幾つか駅が点在している。
電車を使えば様々な場所に素早く向かえるし、人探しには最適である筈だった。


78 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:12:06 ID:W39mfkUo
 

79 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:12:32 ID:X1krxf7T


80 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:13:46 ID:GyFrYAkW

「そうだね。それに、駅の周りには人が集まりやすい筈だ。
 だったら尚更、先ずは駅に行ってみるのが良いか」

烏月はそう答えて、再び森の中を進んでゆこうとする。
しかしそこで突如、決して無視出来ない黒い気配が背後から伝わってきた。
半ば本能的に後ろへ振り返ると、そこには口元を不気味に歪めたこのみの姿。

「……このみさん?」
「ふふふ……待っててね、ファルさん。このみを苛めたお返し、ちゃんとしてあげるからね。
 あの蛆虫の人にも、今度は絶対に負けてなんかあげないんだから。
 腕の骨を折ってあげたら、ファルさんはどんな顔をするかな? 指を全部食い千切ってあげれば、蛆虫の人はどんな悲鳴を上げるかな?」
「……………」

少女の可憐な口から紡がれる声には、絶対の憎悪と殺意が籠められていた。
今烏月の目の前に居る少女は、復讐心に支配された『鬼』なのだ。
未だ人としての部分の方が大きいとは云え、鬼の影響は徐々に増しつつある。
早く鬼の部分を断ち切ってあげなければ、二度と戻れなくなってしまうだろう。
本当に、このまま悠長にしていて良いのか――烏月は再び悩み始めたが、それは長く続かなかった。

此処は殺戮の孤島であり、敵は仲間の内に巣食う鬼だけでは無い。
周囲への警戒を怠った隙に、飢えた狼が襲い掛かって来ても可笑しくは無いのだ。


「……烏月さん!」
「っ――――!?」

突如としてこのみが烏月を突き飛ばし、次の瞬間には銃声が鳴り響いていた。
ピシャリと鮮血が舞い散って、地面に倒れた烏月の顔へと降り掛かる。
烏月が顔を上げると、このみの左肩が赤く染まっていた。

81 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:14:34 ID:X1krxf7T


82 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:14:50 ID:W39mfkUo
 

83 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:15:13 ID:GyFrYAkW

「あ、つううぅっ…………」
「このみさん!」

烏月は素早く起き上がって、一目散にこのみの下へと駆け寄った。
怪我の状態を確認しようかとも考えたが、直ぐにそんな場合では無いと思い直す。
状況を考えるに、自分達が何者かの狙撃を受けたのは確実。
そして自分達は未だ生きている以上、次の一撃が間も無く襲い掛かって来るだろう。

「ふっ…………!」

烏月はこのみを抱き抱えて跳躍し、その一秒後には近くの木に銃弾が突き刺さっていた。
視線を銃声がした方へ向けると、五十メートル程離れた木の傍に、一人の男が屹立していた。
襲撃者――ツヴァイは武器をライフルから拳銃に持ち替えて、三度目の銃撃を行おうとしている。
このままでは、遠距離から良いように狙撃されてしまうだけだろう。
烏月は近くの木陰にこのみを降ろして、ツヴァイを迎撃すべく走り始めた。

「っ――――」

ツヴァイが引き金を引こうとした瞬間、刹那のタイミングで横にステップを踏んで、迫る凶弾を空転させる。
更にもう一度放たれた銃弾も、同じようにして回避した。

84 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:16:58 ID:GyFrYAkW

ティトゥスのように銃弾を切り払う、といった芸当は不可能だが、当たらなければ問題は無い。
銃と云う武器は、狙いを定めてトリガーを引く、という二動作を必要としている。
ならば――その二動作よりも早く、銃の射線から身を躱せば良いだけの事。
銃口の向きを見逃さない圧倒的な動体視力、相手が撃つ前に回避動作を終える尋常でないスピード。
鬼切り役である烏月は、その二つを持ち合わせている。


ツヴァイが再び銃弾を放ったが、烏月は既に銃の射線から逃れている。
目標を見失った銃弾は、近くの木へと突き刺さるだけだった。
確かな確信を以って突き進む烏月の目に、怯えの色は全く無い。
だが烏月にとって不幸だったのは、敵が只の素人では無いという事。

またもや鳴り響く銃声。
今までと同じように銃弾を回避した烏月だったが、その直後には驚きの声を上げる事となる。

「な…………ッ!?」

烏月が横に飛び退いた瞬間には、既にツヴァイの銃口がこちらの胸部を捉えていた。
ツヴァイの射撃方法は、一射毎に狙いを定めてトリガーを引く、などという生易しいものではない。
一度に数ヶ所へと狙いを定め、その全てを一息の内に撃ち抜く。
その早打ちを可能にする技量こそが、ツヴァイが最強の暗殺者たる由縁。
地獄から舞い戻った亡霊は、僅か一秒で横一文字に死線を描く――!

85 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:18:25 ID:W39mfkUo
 

86 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:18:55 ID:GyFrYAkW


「くうぅっ!」

烏月は一も二も無く地面へと転がり込んで、何とか迫る死を回避した。
だがその無茶な回避方法は、闘争に於いて致命的なまでの隙を招く。
ツヴァイは追撃の手を緩めずに、絶好の的たる烏月に狙いを定めようとしていた。
だがそこでツヴァイの五感が、背後から何かが迫って来るのを感じ取った。
ツヴァイは否応無く銃撃を中断して、身体を後ろへと翻らせる。


「さっき撃たれた時、物凄く痛かったんだよ? だから――――おしおき」


ツヴァイの瞳に映し出されたのは、右拳を振り上げているこのみの姿。
小柄な少女の繰り出す拳は、普通ならば避けるまでも無いものだろう。
しかしツヴァイの身体は、本能に従って全力でその場を飛び退いていた。
次の瞬間このみの拳が振り抜かれて、進路上にあった木の幹が砕かれた。

「な、に――――?」

ツヴァイは倒れてくる木を躱しつつも、少女が振るった拳の威力に目を見開いていた。
だが、悠長に驚いている暇など無い。
そうしている間にも、このみはツヴァイの懐へと潜り込んでいる。
ツヴァイが気付いた時には、鉄塊のような拳が下から振り上げられていた。

「てやあぁぁぁっ!」
「…………!」

咄嗟に後ろへとステップしたツヴァイの鼻先を、恐るべき勢いの拳が切り裂いてゆく。
尚も追い縋ろうとしたこのみだったが、ツヴァイが着地と同時に銃を構えた事で、銃口との対面を果たした。
それでもこのみは上体を斜めに傾けて、すんでの所で銃弾から逃れていた。

87 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:20:05 ID:W39mfkUo
 

88 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:20:56 ID:GyFrYAkW

「チィ――――」

眼前の少女の恐るべき反応速度に舌打ちしながら、ツヴァイは後ろ足で後退を続けてゆく。
先の一射で、自身の銃――コルト M1917が弾切れになったのは分かっている。
故にコルト M1917を鞄に仕舞い、代わりにニューナンブM60を取り出そうとする。
暗殺者が行うそれは相当に素早い動作だったが、鬼と化したこのみの速度には及ばない。

「駄目駄目、逃がさないでありますよ?」

ツヴァイが銃を構えるよりも早く、このみは再び間合いを詰め切った。
振り上げられる拳。
至近距離から放たれる拳は、今度こそツヴァイを打ち抜くだろう。
このみは勝利への確信と共に、一歩前へ踏み込んで――次の瞬間、大きくバランスを崩した。


「え…………?」


揺れる世界、九十度回転する視界。
このみは訳も分からぬ内に、緑の生い茂る地面へと叩き付けられた。
混乱する思考のままに足下を眺め見ると、そこにはマンホール程の広さの浅い穴。
それは、ツヴァイが予め準備していた落とし穴だった。

――障害物が多い森の中では、狙撃は比較的近い距離から行うしか無い。
故にツヴァイは、反撃を受けた際の保険として、落とし穴を準備しておいたのだ。
地面を少し掘り返し、カモフラージュとして落ち葉や枝を上に重ねただけという、余りにも簡素な仕掛け。
だが、それで十分。
只の一度相手を転倒させる事が出来れば、戦況を覆すのは容易過ぎる。

89 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:21:15 ID:W39mfkUo
 

90 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:21:24 ID:X1krxf7T


91 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:22:58 ID:MuvdCKoZ
      


92 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:23:14 ID:GyFrYAkW

「終わりだ」

倒れ伏すこのみの頭部へと、ツヴァイのニューナンブM60が向けられる。
用意周到な仕掛けが決め手となって、二人の勝敗は完全に決した。
数々の訓練と実戦を経験した暗殺者は、その技能を以って鬼の少女を凌駕した。
だがそこでツヴァイは銃撃を中断して、直ぐに横方向へとステップを踏む。
やはりというべきか、それまでツヴァイが居た場所を切り裂いてゆく剣閃。

「やらせない――!」

このみ達の交戦中に態勢を立て直した烏月は、背後からツヴァイへと斬り掛かっていた。
刀を用いた接近戦こそが、鬼切り役である千羽烏月の真骨頂。
名刀地獄蝶々を自由自在に振るって、一撃、二撃、三撃。
至近距離から振るわれる剣戟は、ツヴァイが銃を構える動作よりも尚速い。
ツヴァイも卓越した身のこなしで躱してはいるが、反撃にまではとても手が回らない。
接近戦を嫌ったツヴァイが後ろへ飛び退こうとするが、そこに追い縋る鬼切りの剣士。

「逃がすものか……っ」

距離が離れてしまえば、再びあの銃撃を掻い潜らなければいけなくなる。
先程はこのみのお陰で助かったが、次も上手く行くとは限らない。
故に烏月はここで敵を仕留める覚悟で、一気呵成に攻撃を仕掛けてゆく。
ダンと踏み込んで、下がるツヴァイを再び射程内へと捉える。
そのまま前進する勢いを乗せて、縦一文字の振り下ろしを繰り出した。
ツヴァイは完全には躱し切れず、肩に掛けていたデイパックの一つを斬り落とされた。


93 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:23:43 ID:W39mfkUo
 

94 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:24:26 ID:GyFrYAkW

剣と銃、鬼切り役と暗殺者。
こと接近戦に限っては、烏月の方に大きく分があった。
しかし、仕掛けられている落とし穴が一つであるとは限らない。
ツヴァイは逃げながらも上手く烏月を誘導して、落とし穴の所にまで誘い込んでいた。

「くっ…………!」

烏月も警戒していた為、落とし穴に足を取られても、転倒するまでには至らない。
強引に態勢を立て直して、次の瞬間には襲い掛かってくるであろう銃弾から逃れるべく、斜め後ろに飛び退いた。
案の定飛来した銃弾は、烏月の流麗な黒髪を掠めるに留まった。
しかしその間にも、ツヴァイは後ろ足で後退を続けている。
烏月が再びツヴァイの方へと向き直った時には、両者の距離は二十メートル近く開いていた。


「このみさん、肩は大丈夫かい?」
「うん。痛いけど……腕が動かせなくなる程じゃないよ」
「そうか。念の為に傷口を確認しておきたい所だけど……先ずはあの男をどうするかだね」

肩を並べる二人の少女。
烏月はこのみと会話を交わしながらも、鋭い瞳で前方のツヴァイを睨み付ける。
敵は並外れた射撃技術を持っている上に、落とし穴のような仕掛けまで準備している様子。
接近戦に持ち込めば勝機はあるが、その前に敗れてしまう可能性も十分あった。
故に烏月は警戒心を最大限まで高めていたが、脅威を感じているのはツヴァイも同じ。


95 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:25:00 ID:X1krxf7T


96 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:25:50 ID:GyFrYAkW


(……不味いな)

暗殺者は一つ大きく息を吐いてから、冷静に現状を分析する。
ツヴァイが烏月達を発見してから、狙撃を敢行するまでの間。
そんな僅かな時間では、簡素な造りの落とし穴を二つ仕掛けるのが限界だった。
そしてその二つを使ってしまった以上、もうツヴァイに残された手は少ない。
対する敵の片割れは、背後からの狙撃を察知してのける五感と、人間離れした膂力の持ち主。
もう片方は、非常時に於ける冷静な判断力と、並外れた剣の技量を併せ持った達人。
それでも一対一なら負けるつもりは毛頭無いが、敵は二人。
このまま戦闘を続ける事は、かなりリスクが大きいと云わざるを得なかった。


鬱蒼と生い茂る森の中、距離を置いたまま睨み合う三人。
そのまま暫く膠着状態が続いたが、やがて烏月が静かに口を開いた。

「……一つ問おう。君は羽藤桂という人物について、何か心当たりが無いか?」

この死地に於いても、烏月の最優先目標は桂を保護する事に他ならない
問い掛けると、ツヴァイは僅かながらに眉を動かした。
その変化を見逃さなかった烏月は、すかさず次の質問を投げ掛ける。

「……心当たりがあるんだね。
 桂さんについて知っている情報があれば、詳しく聞かせてくれないか?」
「確かに心当たりはあるが、敵のお前にタダで教えるつもりは無いな」

それはツヴァイからすれば、当然の返答だった。
敵にわざわざ情報を教える必要など、何処にもないだろう。
そこで、これ以上会話をする必要など無いと云わんばかりに、このみが一歩前に足を踏み出した。

97 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:26:59 ID:W39mfkUo
 

98 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:27:38 ID:GyFrYAkW
「聞く必要なんて無いよ、烏月さん。この人、殺し合いに乗った悪い人なんでしょ?
 ファルさんみたいに、嘘を吐いてるだけかも知れない。だったら今直ぐ殺しちゃった方が良いよ」
「このみさん……どうか、もう少し待って欲しい。桂さんについて、何かが分かるかも知れないんだ」
「だけど、この人はこのみ達を撃ったんだよ? この人の所為で、このみは肩を怪我したんだよ?」

悪鬼の侵食を受けている少女は、一度敵と見定めた相手に容赦しない。
眼前の男を排除すべく、人外の憎悪を膨らませてゆく。
それでも烏月は、何とかこのみを押し留めようとしていた。

「頼むから此処は引いてくれ。やっと掴んだチャンスなんだ」
「でも――」
「桂さんの生死に関わる大事な事なんだ。どうか……引いてくれ」
「……うん、分かった。烏月さんがそう云うなら、我慢する」
「……すまない、助かるよ」

渋々、と云った様子でこのみが引き下がった。
烏月はこのみに礼を云ってから、研ぎ澄まされた視線をツヴァイへと向ける。

「タダでは嫌だ、と云ったね。だったら逆に、どうすれば教えてくれるんだ?」

その質問を受けて、ツヴァイは少しの間考え込んだ。
元々ツヴァイとしては、狙撃で敵の片方を無力化した後に、もう片方からキャルについての情報を引き出すつもりだった。
最初から姿を現してしまっては、その後戦闘となった時に二人を相手しなくてはならないからだ。
だが既に狙撃は外されてしまった以上、今聞いてしまってもデメリットは無いだろう。

「お前達と同様、俺も人を探している。羽藤桂について話す代わりに、俺の探し人について教えて欲しい。
 キャル・ディヴェンスって子を知らないか? 何故か名簿には、ドライとも書かれてあるが」
「…………ドライさん?」

答える声は、このみが発したものだった。
それは、ドライについて知っているからこその反応。
ツヴァイは直ぐに視線を動かして、探るようにこのみの顔を眺め見た。

99 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:29:03 ID:W39mfkUo
 

100 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:29:35 ID:GyFrYAkW
「知っているのか?」
「うーんとね、ドライさんは――」
「このみさん、待つんだ」

このみが答えようとしたが、そこで烏月がすっと横に手を伸ばす。

「烏月さん?」
「貴重な情報を簡単に教える訳には行かない。
 こちらが先に話したからと云って、あの男が桂さんについて教えてくれるとは限らないからね」

それは当然の懸念だった。
烏月達がドライについて知っている情報を全て話せば、ツヴァイにとって桂の情報を話す必要性は無くなる。
情報を一方的に聞き出した後、そのまま襲って来る、もしくは離脱するという事も考えられるのだ。

「なら、羽藤桂について先に話せという事か? それこそ冗談じゃない。
 お前達を信用する理由が無い」

ツヴァイも、安易に自分が知る情報を開示したりはしない。
これは戦闘。
剣や銃を用いたものでは無く、情報を軸とした情報戦だった。
とは云え、このまま牽制し合っていてもキリが無い。
故に烏月は、とある提案を持ち掛ける。

「……だったら、こうしないか? 互いの探している相手について、どうやって情報を知ったのか。
 その相手は何時、何処に居たか。どんな状態、どんな方針だったのか。この三つについて、一つずつ交代で話して行くんだ」
「つまり、お前達がキャルの居た場所や時刻について話したら、今度は俺が羽藤桂の居た場所や時刻について話す。
 こういった形の情報交換を繰り返すという事か?」
「そうなるね。情報を小出しにしていくこの方法なら、お互いに損はしない筈だよ」

烏月の提案は、この状況に於いて最善手と云えるものだった。
互いを警戒するあまり、何の情報も得られないというのは最悪のパターン。
その点烏月が提示した方法なら、『情報の聞き逃げ』のリスクをある程度抑えたまま、情報交換出来るだろう。

101 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:30:08 ID:W39mfkUo
 

102 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:31:29 ID:GyFrYAkW
「……良いだろう。但し、最初に話すのはお前達からだ」
「分かった。このみさん、まずはドライさんについて、どういう経緯で知ったのかを話してくれ」

交渉は成立。
烏月に促されて、まずはこのみが話し始める。

「このみがドライさんについて知っているのは、直接会ったからだよ。
 場所は……まだ云っちゃ駄目なんだよね」
「ああ、その通りだね。では今度は、貴方が話す番だ」
「……俺が羽藤桂について知っているのは、電話で会話をしたからだ」
「次は――相手が居た場所と時刻だね。このみさん」

烏月が話を振って、このみとツヴァイが答えていくという形が続く。
双方共に騙し討ちや奇襲を狙ったりはしない。
探し人に繋がるかも知れない情報を、みすみす逃したりする筈が無い。

「このみがドライさんと出会ったのは、島に飛ばされた直ぐ後。場所は島の北にある教会だよ」
「……俺が羽藤桂と話したのは、第二回放送の直前だ。場所は、歓楽街の辺りに居ると聞いた」
「次は……その時の状態についてかな? ドライさんは、何処も怪我はしてなかったと思う。
 吾妻玲二さんって人やアレンさんって人を探してたよ」
「……そうか」

このみの言葉を聞いて、ツヴァイは内心ほっと胸を撫で下ろしていた。
どうして名簿上で、キャルの所にドライと書かれてあるのか分からなかった。
もしかしたら、自分の知るキャルとは別人では無いか、という懸念があった。
だが自分の事を探してくれている以上、本物のキャルであると考えて間違いないだろう。
何故キャルがアインについて知っているのかは疑問だが、それは後で本人に聞けば良いだけの事。
不安が一つ解消されたツヴァイは、情報の代価として口を開く。

「……羽藤桂は、現在アル・アジフという少女と一緒に行動しているそうだ。
 この殺し合いを止めたいと云っていた。電話で話しただけだから、健康状態については分からないな」

103 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:31:55 ID:W39mfkUo
 

104 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:32:01 ID:MuvdCKoZ
    

105 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:33:11 ID:GyFrYAkW
ツヴァイは未確定情報である恭介については伏せたまま、自分の知る情報を口にした。
これで、互いの探し人に関する情報交換は終了。
主な情報の交換は滞りなく終わったが、このまま手を振ってお別れという訳にはいかない。
ツヴァイと烏月達は敵同士であり、情報交換さえ済めば命を奪い合うべき間柄なのだ。
しかし烏月は刀を構える事無く、更なる質問をツヴァイへと投げ掛けた。

「これで一通り、情報交換は終わったが……。一つ、聞いても良いかい?
 貴方はどうして他の人間を襲っているんだ?」
「答える義務は無いな」
「……答えなくても分かるよ。キャルさんという人を守る為、だね?」
「…………」

ツヴァイは答えないが、この状況での沈黙は肯定と同意義だった。
確信を深めた烏月は、更に話を続けようとする。
脳裏に去来するのは、嘗て恭介が持ち掛けて来た協定。
『羽藤桂を保護する代わりに、自分達や直枝理樹達を襲わないで欲しい』と云った旨のものだ。
あの取引内容は、そのまま今回の状況に応用出来る筈だった。

「これから私達がキャルさんを見付けたら、保護すると約束しよう。
 だから貴方は、私達二人と桂さんを襲わないようにして欲しい」

その提案はツヴァイにとっても、十分にメリットがある筈だった。
ツヴァイの最優先目的はあくまでもキャルを守る事であって、他の人間を皆殺しにする事では無い。
だがツヴァイは首を左右へと振って、烏月の提案を拒絶した。

「ダメだ、それだけじゃ足りない。キャルを守るという重要な役目を、他の人間になんて任せられない。
 俺は今度こそ、自分自身の手でキャルを守り通す。絶対に……絶対にだ」

嘗てキャルは、ツヴァイが家を離れている間に殺されてしまった。
ツヴァイとしては、あの時の後悔はもう絶対に味わいたくない。
ならばキャルを目の届かぬ場所に置いておくなど、到底有り得ない話だった。

106 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:33:23 ID:W39mfkUo
 

107 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:34:06 ID:GyFrYAkW

「……俺がお前の提案を呑むには、もう一つ条件がある。キャルを保護したら、刑務所まで連れて来てくれ。
 時間は、第四回放送が行われる頃が良いか」

ツヴァイが刑務所を選んだ理由は、単純にして明快。
島の端にある刑務所は、位置的に考えて一番人が訪れ辛い施設だろう。
そういった過疎地を待ち合わせ場所にすれば、キャルが襲われる可能性は幾らか減らせる筈だった。

「分かった、その条件を呑もう。これで……取引は成立だね。
 桂さんの外見的な特徴は――」

烏月はツヴァイの突き付けて来た条件を受け入れて、桂の外見的特徴について説明した。
その説明も直ぐに済んで、今度こそ話は終わり。
烏月達とツヴァイは互いへの警戒を解かぬまま、別々の方向へと立ち去ろうとする。
だが最後に、烏月はツヴァイに向けて一つの疑問を投げ掛けた。

「君は、キャルさんと出会った後はどうするつもりなんだ?
 キャルさんを優勝させる為に、他の人間を皆殺しにして、最後に自分も死ぬつもりなのか?」

そう問い掛けた烏月は、僅かながら期待を抱いていた。
もしツヴァイが嘗ての自分と同じように考えているのならば、説得出来るかも知れない、と。
事実、説得が成功する可能性はあるだろう。
主催者が優勝した人間を無事に帰してくれる保証など、何処にもありはしないのだから。
しかしツヴァイの答えは、烏月の予想とは大幅に異なるものだった。


「いいや、俺はキャルを優勝させようだなんて思っていない」


その言葉に、烏月の目が大きく見開かれた。
ツヴァイはそんな烏月に構う事無く、淡々と言葉を続けてゆく。


108 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:34:56 ID:W39mfkUo
 

109 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:35:48 ID:MuvdCKoZ
  

110 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:35:48 ID:X1krxf7T


111 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:35:55 ID:GyFrYAkW

「こんな狂った事をやらせる連中が、約束なんて守る訳が無い。
 優勝した人間が無事に帰して貰えるなんて、そんな甘い話は無いだろうな」
「……だったらどうして、他の人を襲うの? 私、分かんないよ」

疑問の声はこのみが発したものだった。
ツヴァイがキャルを守ろうとする想いの強さは、このみにも十分感じ取れたのだろう。
問い掛けるこのみの声には、少し前までのような憎悪は籠められていない。
純粋なる疑問の声に対し、ツヴァイはゆっくりと答えを並び連ねてゆく。

「あの神父の言葉に踊らされて殺し合いをする奴は、必ず居るだろう。そしてそういった連中が、表立って行動を起こすとは限らない。
 外面では善人のように振舞いながら、裏では隙を窺っているかも知れないんだ。だから俺は、キャル以外の人間を皆殺しにする。
 そうすれば、他の人間が何を企んでいても関係無い。キャルが殺されてしまう可能性を、確実に断てるんだ」

ツヴァイが主催者を信じなくとも、他の人間が全てそうだという保証は無い。
故に『キャルを襲うかも知れない人間』を殲滅して、キャルの安全を確保する。
それが、ツヴァイが積極的に殺し合いを行っている理由だった。
烏月達を今この場で殺さないのも、『キャルを保護してくれるかも知れない』というメリットが、デメリットを上回っているからに過ぎない。

「だけど、仮にキャルさんと合流出来たとしても、首輪にはどう対処する? この島から脱出する手段は?
 貴方とキャルさんだけで、どうにかする目算はあるのかい?」
「そんな事はキャルを保護してから考えるさ。とにかく今はキャルを保護する事、そして他の人間を排除する事。
 キャルを守る為には、この二つが何よりも大切なんだ」
「……迷いが無いんだね」
「ああ。迷いだなんて、そんな余分な事に意識を割いている暇は無い。
 この手がどんなに汚れたって構わない。キャルを守る為なら、何だってやってやる」

烏月の問い掛けにも、ツヴァイはまるで動じず、揺るがない。
首輪の解除も、島から脱出する方法の模索も、自分自身の感じている罪悪感も、全ては後回し。
只キャルを守るという目的の為だけに、暗殺者は修羅で在り続ける。

112 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:38:05 ID:GyFrYAkW

「……最後に、貴方の名前を聞かせてくれないかな。私は千羽烏月だ」
「私は、柚原このみだよ」

烏月達がそう云うと、ツヴァイはくるりと背中を向けた。
ゆっくりとした足取りで森の中を歩きながら、凍り付いた声を洩らす。

「俺はツヴァイ。ただの……亡霊だ」

それで最後。
亡霊は歩みを止める事無く、静かに森の奥へと消えてゆく。
烏月達には、ツヴァイの背中が闇に飲まれていくかのように見えた。



    ◇     ◇     ◇     ◇



ツヴァイが歩き去った後。
烏月は口を閉ざしたまま、ツヴァイについて熟考していた。

(ツヴァイ……亡霊、か。恐ろしい相手だね)

あの男は『人を殺す』という一点に於いて、恐らくこの島の誰よりも優れている。
無感情に的確な攻撃を仕掛けてくる姿は、正に殺戮兵器と表現すべきものだった。
協定のようなものを結びはしたが、決して油断は出来ないだろう。
烏月はそこまで考えた所で、横から注がれるこのみの視線に気付いた。

113 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:39:12 ID:W39mfkUo
 

114 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:39:13 ID:6SWCtnkR



115 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:39:53 ID:GyFrYAkW

「どうしたんだい、このみさん?」
「一つ気になった事があるの。ツヴァイさんはさっき、どうしてドライさんの事をキャルって呼んでいたんだろうね?」
「名簿にはドライとしか書かれていなかったが……恐らく、本名か何かじゃないかな」
「……そっか。そうだよね」

烏月もこのみも、気付く事は出来なかった。
『ツヴァイに支給された名簿にのみ、キャルの名前が書き記されている』という事実に。
それは、ツヴァイと直接名簿を見せ合わない限り気付けない矛盾。
主催者の仕組んだ悪戯は、静かに運命の歯車を狂わせてゆく。

ひゅう、と森の中を風が吹き抜ける。
ツインテールを風に靡かせながら、このみは視線を地面へと落とした。

「ツヴァイさん……凄く悲しい目をしてたね」
「悲しい目?」
「うん。強くて鋭いけど……とっても悲しい目だったよ」
「…………」

烏月は答えないが、内心ではこのみの発言を肯定していた。
考えてみれば当然の事だった。
大切な人を守る為に、他者の命を悉く奪い尽くす。
それは、嘗て自分が完遂出来なかった修羅の道に他ならない。
その道を今尚歩み続けているツヴァイは、このみの云う通り、とても強く悲しい人間なのだろう。
同時に、烏月は思う。


116 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:40:01 ID:W39mfkUo
 

117 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:41:18 ID:MuvdCKoZ
        

118 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:41:30 ID:GyFrYAkW

(この人は――このみさんは、やはり人間として生きるべき人だ)

自分では気付けなかった、ツヴァイの秘めたる本質。
それに気付けるだけの何かを、このみは今も持ち合わせている。
鬼の侵食を受ける前は、自分などよりも余程豊かな心を持つ人間だったのだろう。
そんな彼女には、憎悪に囚われた鬼としての生よりも、人間らしい生き方こそが相応しい筈だった。

「烏月さん、私達も出発しよう?」
「ああ……そうだね」

暫く考え込んでいた烏月だったが、このみに促されて再び動き始めた。
戦いの際にツヴァイが落とした鞄を回収し、足を南へと向ける。
何はともあれ、急がなければならない。
先程ツヴァイと結んだ協定が有効なのは、恐らく第四回放送までだろう。
待ち合わせ場所でキャルとの合流が成し遂げられなければ、あの男は再び自分達や桂に牙を剥く筈。
このみの内に巣食う鬼についても、早い段階で対処しなければならない。
そして、何より――

119 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:42:11 ID:MuvdCKoZ
    

120 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:42:19 ID:W39mfkUo
 

121 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:42:37 ID:GyFrYAkW
(……桂さん)

自身の全てを懸けてでも守らなければならない少女、羽藤桂。
彼女の居場所が判明した。
ツヴァイが電話で桂と話してから、まだ三時間程度しか経っていない。
今から歓楽街の周辺を探せば、きっと会える筈。
そう。
きっと――会える筈なのだ。



「逢いたい……桂さん」


鬼切りの少女が洩らした呟き。
その一言は、紛れも無い少女の本心だった。




【D-4/森林/1日目 午後】
【吾妻玲二(ツヴァイ)@PHANTOM OF INFERNO】
【装備】:コルトM16A2(9/20)@Phantom-PHANTOM OF INFERNO-、スナイパースコープ(M16に取り付けられている、夜間用電池残量30時間)@現実
【所持品】:『袋1』コンバットナイフ、レザーソー@School Days L×H、コルト・ローマンの予備弾(21/36) 、ダイナマイト@現実×10、ハルバード@現実
       小鳥丸@あやかしびと−幻妖異聞録−、コルト M1917(0/6)、コルトM1917の予備弾23、 ニューナンブM60(4/5)、ニューナンブM60の予備弾10発
      『袋2』支給品一式×5、おにぎりx30、野球道具一式(18人分、バット2本喪失)コンポジットボウ(0/20)、
       木彫りのヒトデ1/64@CLANNAD、ハンドブレーカー(電源残量5時間半)@現実、秋生のバット、桂の携帯(電池2つ)@アカイイト 首輪(杏)
【状態】:疲労(大)、右手に小さな蚯蚓腫れ、右腕の骨にヒビ、頭部から出血

122 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:43:02 ID:W39mfkUo
 

123 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:43:37 ID:GyFrYAkW
【思考・行動】
基本:キャルを見つけ出して保護する。不要な交戦は避け、狙撃で安全かつ確実に敵を仕留める。
 1:棗恭介(井ノ原真人?)を警戒
 2:理樹とクリスに関しては、情報だけは伝える。 殺すかは場合による。
 3:烏月とこのみ、羽藤桂はなるべく襲わないようにする。
 4:周囲に人がいなければ、狙撃した参加者の死体から武器を奪う。
 5:弾薬の消費は最低限にし、出来る限り1発で確実に仕留める。
 6:第四回放送の時点で、刑務所に居るようにする。
【備考】
 ※身体に微妙な違和感を感じています。
 ※時間軸はキャルBADENDです。
 ※理樹を女だと勘違いしてます。
 ※静留を警戒しています。
 ※C-4採石場付近に、言葉と鈴の埋められた墓があります。
 ※『この島に居るドライ=自分の知るキャル』だと、勘違いしています。
 ※ツヴァイの移動先は、後続の書き手氏に任せます。





【D-3 森林・南部/一日目 午後】
【千羽烏月@アカイイト】
【装備】:地獄蝶々@つよきす -Mighty Heart-
【所持品】:支給品一式×2、我 埋葬にあたわず@機神咆哮デモンベイン、Love&Spanner@CLANNAD、アルのページ断片(シャンタク)@機神咆哮デモンベイン
【状態】:中程度の体力消費、身体の節々に打撲跡、背中に重度の打撲、脇腹に軽傷、右足に浅い切り傷(応急処置済み)

124 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:43:53 ID:W39mfkUo
 

125 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:44:02 ID:GyFrYAkW
【思考・行動】
 基本方針:羽藤桂に会う。守り通す。
 0:歓楽街の周辺を捜索して、桂を探す
 1:桂を守り共に脱出する、不可能な場合桂を優勝させる。
 2:このみと行動を共にする。
 3:このみの鬼を斬ってやりたい。
 4:このみが完全に鬼になれば殺す。
 5:キャル(ドライ)を見付けたら保護、第四回放送までに刑務所へと連れて行く
 6:恭介、トルタに対する態度は保留。
 7:クリス、トルタ、恭介、鈴、理樹は襲わないようにする。
 8:なつきを探す。
 9:ウェストからの伝言を大十字九郎に伝える。
【備考】
 ※自分の身体能力が弱まっている事に気付いています。
 ※烏月の登場時期は、烏月ルートのTrue end以降です。
 ※クリス・ヴェルティン、棗鈴、直枝理樹の細かい特徴を認識しています。
 ※岡崎朋也、桂言葉、椰子なごみの外見的特長のみを認識しています。
 ※恭介・トルタが殺し合いに乗っている事を知りません。
 ※ドクター・ウェストと情報を交換しました。
 ※蛆虫の少女(世界)、ツヴァイを警戒しています。


【柚原このみ@To Heart2】
【装備】:包丁、イタクァ(3/6)@機神咆哮デモンベイン、防弾チョッキ@現実
【所持品】:支給品一式、銃弾(イタクァ用)×12、銃の取り扱い説明書、草壁優季のくずかごノート@To Heart2、鎮痛剤(白い粉が瓶に入っている)
【状態】:悪鬼侵食率30%、リボン喪失、小程度の体力消費、右のおさげ部分が不ぞろいに切り裂かれている、左肩に銃創(腕は動かせるが、痛みを伴う、倫理崩壊

126 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:44:37 ID:W39mfkUo
 

127 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:44:38 ID:GyFrYAkW
【思考・行動】
基本行動方針:何を犠牲にしても生き残り、貴明と環の仇を討つ。
 0:柚原このみのまま、絶対に生き残り、主催者に復讐を遂げる。
 1:ファルと世界に"復讐"をする。
 2:気に障った人間は排除する。攻撃してくる相手は殺す。
 3:烏月と共に行動し、羽藤桂を捜索。その後に人間に戻してもらう。
 4:ドライに会いたい
【備考】
※制服は土埃と血で汚れています。
※世界が使う“清浦刹那”という名前を偽名だと知りました。
※第一回放送内容は、向坂雄二の名前が呼ばれたこと以外ほとんど覚えていません。
※悪鬼に侵食されつつあります。侵食されればされるほど、身体能力と五感が高くなっていきます。
※制限有りの再生能力があります。大怪我であるほど治療に時間を必要とします。
 また、大怪我の治療をしたり、精神を揺さぶられると悪鬼侵食率が低下する時があります。
※フカヒレのここまでの経緯と知り合いや出会った人物について把握済み。
※烏月と行動を共にすることにより、精神状態はやや安定に向かっています。
※くずかごノートには様々な情報が書かれています。現在判明している文は、
  『みんなの知ってる博物館。そこには昔の道具さん達がいっぱい住んでいて、夜に人がいなくなると使って欲しいなあと呟いているのです』
  『今にも政略結婚が行われようとしたその時、秘密の抜け穴を通って王子様は大聖堂からお姫様を連れ出すことに成功したのでした』


128 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:45:20 ID:W39mfkUo
 

129 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 22:46:31 ID:GyFrYAkW
トウカ完了致しました(・3・)
数多くの支援、有難う御座いました
凄く助かってます
タイトルは『すれ違うイト』で、
また>>74
>敵が何を仕掛けて来ようとも、キャラは絶対に死なせない。
        ↓
敵が何を仕掛けて来ようとも、キャルは絶対に死なせない。

に訂正でお願いします

矛盾・誤字等ありましたら指摘宜しくです

130 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 22:52:45 ID:W39mfkUo
投下乙です!
最初に途中割り込みしてしまって申し訳ありませんorz
それにしてもリアルタイムで読むと先が読めなくてドキドキしましたよ
弾かわす烏月ツエーと思ったらツヴァイがその上を行き
死んだかと思ったらそこでこのみのナイスフォロー
そしてツヴァイが死んだかと思ったら炸裂するトラップ・・・

戦闘だけじゃなく「俺はキャルを優勝させようだなんて思っていない」発言とか
次の文章の投下が待ち遠しいこと待ち遠しいこと!
あ、ここ支援が三人入ってますね、考えることはみんな一緒か!

三人ともとても良かったです
それにしても烏月このみコンビはいいコンビだなぁ・・・

>>102のこのみのセリフで「エレン」が「アレン」になってました

131 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 23:10:48 ID:rRZxgoD4
投下乙です
烏月このみペアvsツヴァイの熱い攻防
そして情報の取引…
とても面白かったです

しかしツヴァイはドライに会ったらどんな反応をするんだろうかw
彼には是非ドライと会って欲しいなぁ

132 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 23:17:17 ID:CO+hqQvd
投下乙!
おお、ツヴァイ。優勝させる気じゃなくて、可能性の全てを容赦なく断とうとしていたのか。
烏月とこのみのコンビも良いチームワーク。
ていうかツヴァイってスペック想像以上に高いな……トラップまで用意できるのか。

133 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 23:21:44 ID:LP+0m0LA
投下乙。
鬼つえええ!
なんていうかツヴァイが弱く見える不思議w


134 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 23:22:28 ID:MuvdCKoZ
投下乙
相変わらず氏の作品は熱いなぁ、先のまったく見えない展開でドキドキしました
三人ともの強さ(武力だけではなく)も上手に引き出してくれたおかげでこの三人好きになりそうですw

あと気になったところ
私もあまり覚えてないのですが最初の銀髪ってのは?ツヴァイって黒じゃなかったけ?
>>102はアインじゃないのかな?

135 : ◆guAWf4RW62 :2008/06/16(月) 23:32:12 ID:GyFrYAkW
皆さん、感想有難う御座います
凄く励みになって、モチベーションに繋がってます

>>130
>>134
指摘有難う御座います

>>102のこのみの台詞は
>「次は……その時の状態についてかな? ドライさんは、何処も怪我はしてなかったと思う。
 吾妻玲二さんって人やアレンさんって人を探してたよ」
              ↓
「次は……その時の状態についてかな? ドライさんは、何処も怪我はしてなかったと思う。
 吾妻玲二さんって人やアインさんって人を探してたよ」

でお願いします
またツヴァイの髪色は、確認し直した所黒色でした
ですので>>74
>未だ高校生程度の年頃であろう銀髪の少年は、凍て付くような鋭さの瞳を湛えている。
           ↓
未だ高校生程度の年頃であろう黒髪の少年は、凍て付くような鋭さの瞳を湛えている。

に修正でお願いします

136 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 23:41:29 ID:6SWCtnkR
投下乙
最強の暗殺者、大分貫禄出てきたな。疑心暗鬼もよし
それにしても名簿の嫌がらせ……主催者の関係の伏線になりそうだな

このみはこの程度の自己再生では侵食減らなかったか
果たして、精神を侵食されずにすむか

一瞬、落とし穴の中にダイナマイト仕掛けていると思ったのは内緒だ

137 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/16(月) 23:46:05 ID:C3Hzlgdq
投下乙です!

今回はバトルも面白かったですが
むしろ情報のやりとりの心理戦がとても面白かったです
あのツヴァイと心理戦で戦うとかもう熱すぎます!

ところで玲二って単独行動しかしないからあまり今まで喋らないイメージだったけど
ようやく今回まともに喋り尽くしたって感じか…

138 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:12:46 ID:wIuEGN7o



139 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:14:26 ID:g1Cxpfub
 

140 :hope ◆UcWYhusQhw :2008/06/17(火) 00:15:44 ID:KsBaYMvl
雨が降っている。

ただ。

ただ絶え間なく。

僕がいる世界を隔絶しているかの如く雨は降り。
僕の見る世界はとても虚ろで儚く。

そう、僕は独りだった。

それでよかった。

僕は何も出来なかった。
シズルも救う事も。
哀しみの連鎖を止める事も。

そして

ユイコを救えなかった……

僕は何をしたかったのだろう?

大切な人達を裏切り続けて。
でもその結果がこれだ。

ねえユイコ?

君は僕を認めて傍に居続けてくれた。
でも僕はこんなにもちっぽけで愚かだ。


141 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:16:22 ID:g1Cxpfub
 

142 :hope ◆UcWYhusQhw :2008/06/17(火) 00:16:45 ID:KsBaYMvl
そして君を守りきることができなかった。

君は人であるのに。
教えてあげたかった。
知ってほしかった。
でもそれはもう無理な事で。

ただ

ただ無力で。

僕は。

僕は。

ああ。

ああ。

僕はいらない。

この世界にはきっと。

いらないんだ。

そう思う事でしか。

ユイコ。
君にできる事がそれしかないと思うから。



143 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:16:49 ID:BdrRLmgN
 

144 :hope ◆UcWYhusQhw :2008/06/17(火) 00:17:24 ID:KsBaYMvl
アル。

今の僕を見て君はどう思うかな?
わからないや。
僕には。

ああ。

無理だと思っても。

君の声を聞きたい。

アリエッタ

僕は……

「……アルちゃん」


え?
今なんて?

アル?

聞き間違いだろう。
でもしっかり聞こえてきた。
もう一度僕の耳に。

アルと。


145 :hope ◆UcWYhusQhw :2008/06/17(火) 00:18:23 ID:KsBaYMvl
僕はもう動けないと思ったのに。

その声に向かって駆け出していた。

何かに縋る様に。

必死に。

必死に。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








「アルちゃん、本当に双七君達から離れてよかったの?」
「ああ、連絡を取り合う約束もしてあるし大丈夫であろう。あそこに固まっていても仕方あるまい」
「そうだけど……」
「それに……あの棗恭介……どこがおかしい……」
「恭介君が?」
「……いや杞憂であろう。汝が気にする事でもない」

あの後わたしたちは双七君達とさらに詳しく情報交換した。
烏月さんのことを知っていて今はわたしを探してるらしい。

146 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:19:09 ID:g1Cxpfub
 

147 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:20:11 ID:BdrRLmgN
 

148 :hope ◆UcWYhusQhw :2008/06/17(火) 00:20:26 ID:KsBaYMvl
早く会えるといいな。

細かいことを教えあった後アルちゃんが双七君達とはなれて行動することを伝えた。
一緒に行動しようと双七君、トルタちゃんはいったけど恭介君はその行動を了承した。
ただし適宜携帯電話で連絡をとり合うにと。
私たちは尾花ちゃんを探さないといけなかったし島の南部を捜索する事になった。
そしてアルちゃんが恭介君達の傷を治した後出発して今は海岸あたりにいる。

「桂、汝の右腕、慣れて来たかの?」
「……うん。だってサクヤさんの腕だもん」
「……そうか」

移植したサクヤさんの腕。
まだそんなに時間は経ってないけどもう前から使ってたような感覚に陥る。
愛してる人の腕だからだろうか?
すごくロマンチックみたいな事だけどそう思う。

うん大丈夫。
サクヤさんはここにいる。
わたしは立っていられる。
だから大丈夫。
頑張って行こう。

「……ん?」
「どうしたの? アルちゃん?」
「……いや、濃い……凄く濃い魔力を感じるのだ」
「魔力?」
「ああ、多くはないが密度が凄まじく濃い……珍しいこれほどの物は……妾も滅多には見んぞ」

アルちゃんは珍しく顔をキョロキョロさせその魔力のありかを探す。
そして導かれるかのように歩き出した。

149 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:20:30 ID:ea8ESI6c
 

150 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:20:49 ID:GMosPUVx
 

151 :hope ◆UcWYhusQhw :2008/06/17(火) 00:21:49 ID:KsBaYMvl
わたしはそれに置いていかれない様に慌てて付いて行く。

そして辿り着いたのは何かのホール。
そこにはこう書いてあった。
『方舟』と。

なんだろう方舟って?
何か意味があるのだろうか?
アルちゃんは顔を挙げでも何処か難しそうな顔をして
「ここじゃ……しかし……」
「どうしたの? アルちゃん」
「……確かに濃いのだが……何処か……なんというか説明が上手くいかんが『暗い』のだ」
「暗い? どういう意味? アルちゃん?」
「それは……」

「アル?……アリエッタ?」

その時、わたしの質問をさえぎるように男の声が聞こえた。
その方舟から出てきた男の人の顔は何処か泣きそうな顔をしていた。
あれ?
こんな顔何処かできいたような?

「今、アルっていったけどアリエッタ? でもいない……」
「汝、妾もアルだ。妾こそアル・アジフなり!」
「そう……アリエッタはいないのか……そうだ……そうに決まってるか」
「って無視をするのでない!」

あれ? アリエッタ?
何処かで聞いたような?
あれは……


152 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:22:42 ID:ea8ESI6c
 

153 :hope ◆UcWYhusQhw :2008/06/17(火) 00:23:24 ID:KsBaYMvl
『へえ アルというんだ。私の姉もアルというのよ。アリエッタ。愛称でアル』

トルタちゃんから聞いた名前。
そしてそのアリエッタという人と一緒にいわれてた名前

『姉さんとクリス……それが私の大切な人達の名前。ずっと大切にしていきたいな……』

そういってたからもしかしてこの男の人が?
深い緑の目。
そうだ間違いない

「すいません……もしかしてクリスって人ですか?」
「……そうだけど?」
「よかった……トルタちゃんが探してたんです」
「トルタ……!? 君トルタを見たの!?」

クリス君が焦ったように身を乗り出す。
やはり気になっていたようだ。

「はい……さっきまで一緒にいました」
「トルタは無事?」
「はい。大丈夫です」
「……よかった」

彼は安堵し溜め息をついた。
私はそのままトルタちゃんについて詳しい事を伝えようとするが

「……雨が酷い……中で話そう」
「……え!? 雨!?」
「振ってるじゃないか……前も見えないぐらいに」


154 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:23:30 ID:g1Cxpfub
 

155 :hope ◆UcWYhusQhw :2008/06/17(火) 00:24:14 ID:KsBaYMvl
雨が降ってる。
そうクリス君は言った。
雨なんか降っていないのに。
蒼く空が澄み渡っているというのに。
でも……私は彼女から少しだけ話しを聞いていた。
だから

「ちょっと待っててください……アルちゃん!」
「なんじゃ……こら! 引っ張るでない!」
「……?」

私はアルちゃんを近くに寄せひそひそとクリス君に気付かれないように話し始めた。

「あのトルタちゃんから聞いたんだけど……」
「ああ、雨が降ってるという幻覚を一時期みてたそうじゃな……どうやらまた再発したようじゃ」
「……どうして」
「……わからん。でもあの濃い魔力。あれは汝のものだった。もしかしたらだか何か呪いのようなものをかけられているのかもしれん」
「……なんでだろう」
「わからんがとりあえずはそれを追求してはならん。とりあえず汝にあわせよう」
「わかったよ」

そう、わたしたちは結論付けクリス君についていき方舟の中に入っていった。

空は何も代わることが無く。

蒼く。


156 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:24:47 ID:BdrRLmgN
 

157 :hope ◆UcWYhusQhw :2008/06/17(火) 00:25:14 ID:KsBaYMvl
蒼く澄みわたっていた。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








「……そっか。トルタはもうそういう人を見つけられてたんだ」

クリス君が呟く。
わたしたちはただ押し黙るしかない。
あの後わたし達は彼と情報を交換をした。
そして勿論トルタちゃんの事も。
双七君から聞いたトルタちゃんと恭介君が恋人だってことも。
でも恭介君はクリス君は知らなかった。
だからここで、出逢って恋人同士になったんだと思う。
……早いなあ。

「うん……それでいいんだ。トルタが幸せなら……」

クリス君が自問するように呟く。
それが正しい。

158 :hope ◆UcWYhusQhw :2008/06/17(火) 00:26:54 ID:KsBaYMvl
それが最もいいんだと。
自分に刻み付けるように。

ただ。

ただ。

繰り返した。

「僕は……なにをしてるんだろうな……本当……ねえ……ユイコ」

クリス君が呟く。
ユイコ。
それは彼がずっと一緒に行動してきた女の人らしい。

彼は楽しそうに。
また懐かしむように。
彼女といた記憶を話した。

でも。

その彼女はもういない。

亡くなったらしいのだ。

クリス君は繰り返した。
救えなかった。
ただ、救えなかったとそう繰り返した。

後悔をだけを口にする。



159 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:27:39 ID:g1Cxpfub
 

160 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:30:24 ID:BdrRLmgN
 

161 :代理投下:2008/06/17(火) 00:54:35 ID:g1Cxpfub
「クリス君……」

わたしはどうしようかとまよっていた。
彼は死に別れていたからずっとここにいたらしい。
ずっとずっとその死に悔やみながら。
ただ落ち込んでいた。

でも。

そんなことユイコさんって人は望まないはず。
そんなのクリス君だってわかってるはず。

「僕は最悪な人間だ……色々な人のことを思って……」

彼が頭を抱える。
駄目。
心を闇に支配されちゃいけないよ。
私がそうだった様に。

「クリス……汝にとって今最も思っているものは誰だ?」
「……え?」

壁に全身を傾け腕を組んでいたアルちゃんが口を開く。
アルちゃんもわかってるんだ。
このままじゃいけないって。
例えあったばっかりの人でも。
心が囚われてる人をほおっておく事なんかできないのだから。
それにトルタちゃんに頼まれた。

『クリスに会ったらよろしくね……クリス一人だったら何にも出来ないんだから』

懐かしむように笑顔でそうお願いされた。

162 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:55:11 ID:ea8ESI6c


163 :代理投下:2008/06/17(火) 00:55:24 ID:g1Cxpfub
だから約束は守らなきゃ。
アルちゃんもわかってる。

「妾は何度も主が変わった……でもその時主に対して妾は尽くしてやったきた。最も前の主も忘れているわけではない、妾の心に確かに残っておる」

アルはこっちを一回向く。
アルちゃん……あの時は有難う。

「クリスよ……汝はどうなのだ。ユイコなる者を失った。アリエッタという者も思っている。しかし今汝がもっとも思ってるものは誰じゃ? 
 その者の為に動かねばならぬだろう……妾が言えるのはそれまでじゃ」

そう言い切ってアルちゃんは目を瞑った。

「僕は……僕は……」

彼は自問して自問し続けて。
そして

「誰か……とか今は決められない……決めるべきじゃない」

でも、と区切って。

「今、この瞬間はユイコ……救えなかった……彼女の事を思いたい」

そう言い切って。
彼の目から涙が流れ始めた。
その涙は止まる事がなく。

ただ。

ただ。

164 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:55:55 ID:ea8ESI6c


165 :代理投下:2008/06/17(火) 00:56:24 ID:g1Cxpfub
泣き続けた。

「僕は……僕は!……あぁぁああぁああああ」

彼女のことを思うように。
必死に悔やむように。

これで大丈夫かな?
そう思ったときだった。

「じゃあ僕はどうすればいいのだろうか?……彼女の為に……わからない」

彼は再び心の闇に埋もれようとした。
彼女を救えなかった後悔から逃げようとして。

「このままでいたほうが……いい……僕はこのまま朽ち果てた方が……」


体が。
心が。

動いた。

「そんな事、言っちゃだめだよ! 絶対!」

私もそうだった。
サクヤさんの死に。

でも。

でも。

166 :代理投下:2008/06/17(火) 00:57:04 ID:g1Cxpfub
今は違うんだ。

きっとそう。

クリス君が言ったユイコさん。

彼女はそれを望まない。
絶対。
彼女のことは分からないけど言い切れる。

大切な人の為に自分が死んだから死んだ方がいいなんて絶対思わない!

なら望む事は……?

そう……

「ユイコさんは今のクリスさんを望まないよ! クリスさん! ユイコさんの望む事をしようよ!」

きっと。
きっと。
彼女が望む事をするのを喜ぶのだから。

私はサクヤさんに護られた。

だからその分まで生きたい。
そう思えたから。

「……ユイコは僕に何を望むのだろうか」
「……知らないよ、そんなの……でもここで閉じこもってることを望む?」

ユイコさんがどう思ってるなんて誰も分からない。
でもそれでもここで閉じこもってる事を彼女は望まない。

167 :代理投下:2008/06/17(火) 00:57:47 ID:g1Cxpfub
絶対に。

でも彼は言ってはいけない言葉をつむぐ。

「生きてていいんだろうか……」

動いた。
手が。
サクヤさんの腕が。

初めて会った人なのに。

でも!

絶対!

生きてほしい!

それは絶対皆望むに決まってる!

しんでほしいなんか絶対思わないから!

クリス君の目は少し潤んで虚空を向いた。

彼はどう思う?

168 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:57:59 ID:ea8ESI6c


169 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:58:48 ID:ea8ESI6c


170 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:58:56 ID:BdrRLmgN
 

171 :代理投下:2008/06/17(火) 00:59:25 ID:g1Cxpfub
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「ユイコさんは今のクリスさんを望まないよ! クリスさん! ユイコさんの望む事をしようよ!」

彼女の声が強く響く。


僕は今はユイコの事を思おうと思った。
楽しい時間をくれた彼女に。
常に支えてくれた。
でも何をすればいいかなんて思いつく訳がなかった。
朽ち果てたいと思う。

それをケイは否定した。

何がいいのだろうか?

わからない。
何が正しくて、何がいいのか。
ユイコは何を望むのだろうか。
ユイコは僕に何を……

―君を信じる――

ユイコ、君は僕を信じてくれた。
でもその結果がこの有様だ。
それでも。

172 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:59:28 ID:ea8ESI6c


173 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 00:59:53 ID:BdrRLmgN
 

174 :代理投下:2008/06/17(火) 00:59:58 ID:g1Cxpfub
それでも君は僕を信じてくれたのだろうか。

この僕を。

哀しみの連鎖が続いてく。


「……ユイコは僕に何を望むのだろうか」
「……知らないよ、そんなの……でもここで閉じこもってることを望む?」

どうなんだろうか?
僕は……何をしたいんだ?

やはり僕は……

考えてはならない。

最もいけない事を思う。

「生きてていいんだろうか……」

バシッ!

え?

乾いた音が響く。

目の前には不恰好な腕を振るうケイ。

175 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:00:07 ID:BdrRLmgN
 

176 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:00:22 ID:BdrRLmgN
 

177 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:00:32 ID:ea8ESI6c


178 :代理投下:2008/06/17(火) 01:00:50 ID:g1Cxpfub
「当たり前だよ……そんな事ユイコさん望まない! 絶対望まない!」

ああ。

僕は。

僕は何をすればいい?
僕が僕であるために。

――ユイコ。

「ユイコさんのことはわたしはわかんないけど……でもそれでもクリスさんには生きて何かをして欲しいと思う! 絶対!」

そうなのかな?

分からない。

頭の中がぐしゃぐしゃで。


ねえ

ユイコ

君は……


――その哀しみの連鎖、止めたいのだろう? 君が。誰かが哀しまない為にも――


ふと。
そんな声が聞こえた。

179 :代理投下:2008/06/17(火) 01:01:13 ID:g1Cxpfub
ユイコ

哀しいな、僕は。

でも君は僕が哀しむのを望まないのかな。

なら

僕はそれを止めなきゃいけないのかな。

シズルやなごみみたいな人の為に。

君が哀しまない為に。
僕が哀しまない為に。

分からないや。

けど

僕は

「……それでもやらないといけないのかもしれない」

分からない。

何も。

180 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:01:19 ID:BdrRLmgN
 

181 :代理投下:2008/06/17(火) 01:02:21 ID:g1Cxpfub
何も。

アルやトルタリセのことも。
フォルテールのことも。

考えない。


僕がユイコにとってのクリス君でいられる為に。

「哀しみの連鎖……止めなきゃ」


ただの人形のように。

今はそれだけ。

信じよう。

雨がやまない。

ザーザーと。

僕の心は癒えない。

何が必要で。
何が不要で。

考えないで

182 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:03:09 ID:mrreXbOe
 

183 :代理投下:2008/06/17(火) 01:03:20 ID:g1Cxpfub
「止めなきゃ」


そう思った。

それがユイコの……僕の望みなら。

哀しくても。

哀しくても。

僕が止めよう。


僕の心が癒える事がなくても。


まだ。

雨がやまなかった。


ねえ、ユイコ。


空虚だね僕は。


こんな哀しみの連鎖を止めないとね。

空が晴れる事がなくても。

184 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:04:07 ID:BdrRLmgN
  

185 :代理投下:2008/06/17(火) 01:04:45 ID:g1Cxpfub
心が晴れる事がなくとも。

きっと。

きっと。

ユイコ





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






あれからクリス君はわたしたちと一緒に行動する事を決めた。
哀しみの連鎖を止めたいと。

ただそれだけで言いと。

それだけ言って。

哀しみの連鎖。

大切な人の為に誰かの大切な人が死んでいく。

186 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:05:17 ID:BdrRLmgN
 

187 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:05:47 ID:BdrRLmgN
 

188 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:05:48 ID:mrreXbOe
 

189 :代理投下:2008/06/17(火) 01:06:00 ID:g1Cxpfub
わたしも止めたいと思った。

「桂……クリスの事を注意せねばな」
「うん……」

彼は生きる事を決めた。
でもそれでも彼の心がいえることはなかった。

ただ目的が出来ただけ。

それ故に非常に危うく感じた。

だから傍で見てあげよう。
トルタちゃんの変わりに。

クリスくんはトルタちゃんに会う事を拒否した。
今はあいたくないと。

彼女が幸せなら邪魔はしない。
今は僕のできる事をとだけ。

それだけ言った。

だからわたしたちはしばらく恭介君達にも伏せようと思う。
クリス君といる事を。

「……ん?」
「……どうしたのアルちゃん?」
「いや……トルタに似た魔力を少しだけこの場所に感じてな……まあ気のせいじゃ」

そうアルちゃんはいうも何か気になるようで周囲を見渡してる。
あれ?

190 :代理投下:2008/06/17(火) 01:07:02 ID:g1Cxpfub
トルタちゃんに魔力はないって言ってたのに?
おかしいな?

「準備できたよ、ケイ、アル」

そんな時クリス君が声をかける。
どうやら準備が出来たらしい。


その時だった。


「……ううん? ここは?」


ホールの真ん中のお立ち台。
そこから光に包まれゆっくりと男の子が現れたのは。

【H-8/リゾートビーチ・屋外ステージ? “方舟”上/一日目/夕方】



【クリス・ヴェルティン@シンフォニック=レイン】
【装備】:和服、防弾チョッキ、アルのページ断片(ニトクリスの鏡)@機神咆哮デモンベイン
【所持品】:支給品一式、ピオーヴァ音楽学院の制服(ワイシャツ以外)@シンフォニック=レイン、 フォルテール(リセ)
      ロイガー&ツァール@機神咆哮デモンベイン 刀子の巫女服@あやかしびと −幻妖異聞録−
【状態】:Piovaゲージ:95%
【思考・行動】
 基本:無気力。能動的に行動しない。哀しみの連鎖を止める
 0:目の前の男の子に対処
 1:哀しみの連鎖を止める

191 :代理投下:2008/06/17(火) 01:08:10 ID:g1Cxpfub
 2:静留を止める。そのためになつきを探す
 3:ユイコの為にそれ以外は考えない


【備考】
 ※雨など降っていません
 ※Piovaゲージ=鬱ゲージと読み替えてください
 ※増えるとクリスの体感する雨がひどくなります
 ※西洋風の街をピオーヴァに酷似していると思ってます
 ※巫女服が女性用の服だと気付いていません
 ※巫女服の腹部分に穴が開いています
 ※千羽烏月、岡崎朋也、椰子なごみの外見的特長のみを認識しています
 ※リセの死を乗り越えました。
 ※記憶半覚醒。
 ※静留と情報交換済み。
 ※唯湖が死んだと思ってます。
 ※島の気候の異常に関して、何らかの原因があると考えました。
 ※リセルート、12/12後からの参戦です。
 ※トルタに暫く会う気はありません。



【羽藤桂@アカイイト】
【装備】:今虎徹@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜
【所持品】:支給品一式、アル・アジフの断片(アトラック=ナチャ)
      魔除けの呪符×6@アカイイト、古河パン詰め合わせ27個@CLANNAD、誠の携帯電話(電池二個)@School Days L×H
【状態】:強い決意、全身に擦り傷、鬼、アル・アジフと契約、サクヤの血を摂取、微妙にふらふら(数時間で回復)
【思考・行動】
 0:目の前の男の子に対処
 1:尾花の行方が心配。
 2:クリスの保護
【備考】

192 :代理投下:2008/06/17(火) 01:09:12 ID:g1Cxpfub
※古河パン詰め合わせには様々な古河パンが入っています。もちろん、早苗さんのパンも混じってます。
 ※魔除けの護符は霊体に効果を発揮する札です。直接叩き付けて攻撃する事も可能ですし、四角形の形に配置して結界を張る事も出来ます。
  但し普通の人間相手には全く効果がありません。人外キャラに効果があるのかどうか、また威力の程度は後続任せ。
 ※マギウススタイル時の桂は、黒いボディコンスーツに歪な翼という格好です。肌の変色等は見られません。
  使用可能な魔術がどれだけあるのか、身体能力の向上度合いがどの程度かは、後続の書き手氏にお任せします。
 ※制限によりデモンベインは召喚できません。
 ※B-7の駅改札に、桂達の書いたメモが残されています。
 ※桂はサクヤEDからの参戦です。
 ※桂は、士郎の名前を知りません(外見的特徴と声のみ認識)
 ※桂はサクヤの血を摂取したお陰で、生命の危機を乗り越えました。
 ※サクヤの血を摂取した影響で鬼になりました。身体能力が向上しています。
 ※失った右腕にサクヤの右腕を移植しましたが、まだ満足に動かせる状態ではありません。
 ※憎しみに囚われかけていましたが、今は安定しています。しかし、今後どうなるかはわかりません。
 ※桂の右腕はサクヤと遺体とともにG-6に埋められています。
 ※クリスの幻覚は何かの呪いと判断
 ※クリスの事を恭介達にはなす気は今のところないです。



【アル・アジフ@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:サバイバルナイフ
【所持品】:支給品一式、ランダムアイテム×1
【状態】:魔力回復、肉体的回復、羽藤桂と契約、微妙につやつや、恭介を微妙に警戒
 基本方針:大十字九郎と合流し主催を打倒する
 0:目の前の男の子を対処 
 1:桂と協力する クリスを保護
 2:九郎と再契約する
 3:戦闘時は桂をマギウススタイルにして戦わせ、自身は援護
 4:信頼できる仲間を探す
 5:時間があれば桂に魔術の鍛錬を行いたい
【備考】

193 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:10:10 ID:04gJK5vV


194 :代理投下:2008/06/17(火) 01:10:15 ID:g1Cxpfub
※制限によりデモンベインは召喚できません。
 ※B-7の駅改札に、桂達の書いたメモが残されています。
 ※アルは士郎の名前を知りません(外見的特徴と声のみ認識)
 ※アルからはナイアルラトホテップに関する記述が削除されています。アルは削除されていることも気がついていません。
 ※アルはサクヤと情報交換を行いました。
 ※クリスの幻覚は何かの呪いと判断
 ※クリスの事を恭介達にはなす気は今のところないです。
 ※恭介達を治療魔法を行ないました。どれくらい回復したかは光景に任せます






【菊地真@THE IDOLM@STER】
【装備】:電磁バリア@リトルバスターズ!
【所持品】:支給品一式(水なし)、金羊の皮(アルゴンコイン)@Fate/stay night[Realta Nua]、
 レミントンM700(7.62mm NATO弾:4/4+1)、予備弾10発(7.62mm NATO弾)
【状態】:背中付近に軽度の火傷(皮膚移植の必要無し)、傷治療中、肉体疲労(小)、精神疲労(中)
【思考・行動】
基本:誠と共に行動する。
 0:ここは?
 1:やよいと一旦距離を置く。
 2:誠さんの行動方針を支える。
 3:やよいや、他の女性を守る王子様になる。
 4:巨漢の男に気をつける。
 5:誠さん、本当に自重できるのかな?
 6:誠さんは駄目な人だけど、それでも……
【備考】

195 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:11:38 ID:mrreXbOe
 

196 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:12:44 ID:04gJK5vV
※天狗秘伝の塗り薬によって休息に外傷を治療しました。大体の軽い傷は治療されました。
 ※誠への依存心が薄れ、どういう人間か理解しました。
 ※愛佳の死を見つめなおし、乗り越えました。
 ※元の世界では雪歩とユニットを組んでいました。一瞬このみに雪歩の面影を見ました。
 ※また、平行世界の可能性で若干動揺しています。
 ※誠も真も、襲ってきた相手が大柄な男性(真人)であることしか覚えていません。
 ※フカヒレからツヴァイの危険性、渚を殺害したことのみ聞きました。
 ※平行世界や死者蘇生の可能性について知りました。



197 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:27:17 ID:BdrRLmgN
投下乙です。
クリス、桂のフォローで欝フラグからこのまま抜け出せるか?
やっとシンフォ勢とアイマス勢が出逢えて、合唱フラグが立ってくれたなw

しかし真……誠のことを考えると、微妙に欝フラグが立った気がするw

198 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:39:33 ID:lvhzuZ7S
投下乙です
うはwwwクリスうぜぇwww
相変わらずの不のスパイラルw
それから真の「男の子」扱いひどすw
とりあえずクリスは次の放送まで頑張って生き残れ!
唯湖が死んだらもともこもないからそっちも頑張って生き残れ!

ところでクリスさんいいもの持ってるじゃないですか

199 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 01:48:42 ID:lPUKX2pR
投下乙
桂ちゃん身体的だけじゃなく精神的にもしっかり強くなってるな
一番大切な人の爆死を目の前で見届けるなんて、トラウマものなのによく頑張ってるよ
恋愛フラグと同時に食べ物フラグがかなり立ってるがアルと一緒に切り抜けてくれ

クリスは多少持ちなおしたとはいえ、まだまだ危険域だなー
これからどうなるか全く分からん

それとちょっと気になったのが、『汝』の使い方
これは二人称だから桂ちゃんと話してるときは『あやつ』の方がいいのでは?

200 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 03:19:15 ID:YI3d4I3V
『人として生まれ』



本。
本本。
本本本。
見渡す限りの、本の山。
ここは古本屋だというが…図書館でさえコレだけ冊数の本を所蔵しているものは珍しいだろう。
見える範囲に在るのは本と本棚だけであり、床と天井がそれに続く。
兎にも角にも本本本と、本とそれを保管する場所しか視界には存在しない。

彼らとしては、まず何処かにあるであろう出口を探さないといけないのであり、多少の危険を承知しつつも二手に別れて捜索となった。
そのついでに、先ほどの声の主の言っていた好きな本一冊、も選ぶ事になったのだが、
「……どれ選べば良いんだよ?」
「うっうー…多すぎて選べないですー……」
高槻やよいとプッチャンの二人(正確には一人と一体)は、悩んでいた。
正直…好きなものを一冊と言われてもどうしようも無い。
やよいはまあ本(主に雑誌)は人並みに読んではいるが…この店の品揃えでは、どれを選んでよいのかまるで検討が付かなかった。
とても高そうなハードカバー本の横に、ペラペラの冊子が置いてあり、その反対側にはどうみても週刊誌にしか見えない本がある。
内容から選ぼうにも、題名なども良く判らない本が多い。
ならば、といっそ金額で選んでもやし大感謝祭だー!と意気込んでみたものの、それすら基準が良く判らない。
適当に取った『今日の献立1000種』という、紙を束ねただけの原稿にゼロが幾つも並んでおり、やよいの目を仰天させたかと思えば、その近くにあるやたら立派な装丁の本の値段はソレよりも桁が2つ低い。
名前だけ聞いた事のあるゲーテの詩集を手にとってみればかなり安かったり、『イ■■スフィー■・フォン・ア■■■■■ンに捧ぐ』という先ほどのと似た原稿は更に桁3つ高い。
ならばと思い、『新世紀に問う魔道の道』という同じような束ねた原稿を手にとってみれば、『特価』の札が付いており、近くにあったハードカバーの『無名祭祀書』という本には『時価』とだけ書かれている。
…と、兎に角(二人の目には)基準も曖昧なのだ。

201 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 03:19:28 ID:dUiM58sA
 

202 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 03:20:05 ID:g1Cxpfub


203 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 03:20:18 ID:YI3d4I3V
 
そうして特に選ぶものもなくぶーらぶーらと歩き回り、葛木先生は選んだかなー、そろそろ一度合流しようかなー…などと、やよいが考えたところで、
「あん?何だありゃ?」
困惑の声を上げたプッチャンの声につられてやよいが目にしたものは、明らかに他とは趣の異なる場所。
机と椅子があり、戸棚やら小物入れなどの細々したものが並んでいる。
椅子の上のクッションは柔らかそうであり、年季を感じさせる机の上には何枚かの書類が散らばっていた。
「ここは、カウンターみたいですねー」
「だな」
二人とも失念していたが、そもそも古本屋という以上は確実に存在している、会計のカウンターであった。
まあ、忘れていた事はどうでも良い。 重要なのは、
「ってこたぁ出口が近いのか?」
「そうなりますねー」
店の形にもよるが、基本的に会計というものは、入り口付近、もしくは一番奥などにあることが多い。
デパートなどでは真ん中にあることもあるが、その場合は大抵エスカレータが近くに存在したりと、いずれにせよフロアに置ける基準になる場所である。
つまるところ、出口は近い(かもしれない)のだ。
「葛木先生ーーーーーー!!」
「相棒ーーーーーーー!!」
とりあえずと、もう一人の同行者である葛木を呼ぶ二人。
同時に叫んだ所為で『くず相棒ーーーーー!!』と聞こえた上に、やたら木霊していた気もしたが、あえては突っ込むまい。


204 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 03:20:26 ID:dUiM58sA
 

205 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 03:21:17 ID:YI3d4I3V
 
そうして、安心したように息をつくやよいに、今の内に出口も探しちまおうぜと急かすプッチャン。
まあ確かに何時来るかも、それ以前に葛木に聞こえたかも不明である以上、それは正しい。
で、とりあえず、とカウンターの付近を捜索…しようとした二人の目に飛び込んできたのは、金庫……では無い。
「なんでしょう、これ?」
カウンターの上に置いてある一冊の本。
やたら年季と高級さを感じさせる本が、一冊だけカウンターに置かれていた。
ただ置かれていた訳では無い。 それは革?の紐で十字に止められ、南京錠で封じられているのだ。
どう見ても……あやしい。
普通本に鍵は掛けない。
まあ人に見られたくない日記帳などには鍵が付いていることもあるが、どう見てもそのような雰囲気ではない。
明らかに、見てはいけないような空気が漂っている。
「…………あやしい」
「…………ですねー」
慎重に、……と言っても何に注意すればよいのか不明だが慎重に、縛られた本を手に取るやよい(ついでプッチャン)。
ずっしりと重い感触が二人の手に伝わる。
「読めませんね…」
「何語だろうなコレ?」
表紙に書いてある字は、二人には読むことが出来ない。
何となくアルファベットに近い気もするが、見たことの無い文字である。
どうしようもないので、とりあえず引っ繰り返してみる二人。
裏面には値札が存在せず、売り物でも無いのかもしれない。
「むむむ…なあやよい、その辺りに伝票とかねーか?」
「え、あ、はいちょっと待って下さーい」
慌ててカウンターの付近の紙をめくり上げるやよいであったが…やがて……
「これですかね…『ナコト…写本』? …聞いたことも無いですねー」
「俺はこれでも割と博識なんだが…知らねーな」
見つけた伝票に書かれていた書名は、二人とも知らない。
いずれにせよ、本にわざわざ鍵を掛けるなど普通ではない。
それに売り物でも無い以上は持っていても仕方が無いかと思いなおし、本を置こうとするやよいであった。

206 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 03:21:48 ID:g1Cxpfub


207 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 03:22:25 ID:g1Cxpfub


208 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 03:22:27 ID:YI3d4I3V

……だが、
「おいおい待てよ、こんなどう見ても曰くがありそうなものを無視する気かよ?」
この漢(?)が、そんな事を許す筈も無い。
「もしかしたもの凄いお宝かもしれねーし、脱出の手がかりになるかもしれねーんだぞ!
 そんな凄いものをこんな所に置いておくなんざ、神さまが許しても俺っちが許さねえ!」
やたらと男前にやよいを責めるプッチャン。
どうでも良いがやよいの声で言っているのでイマイチ迫力に欠ける。
「うー? でもどうすればよいのですかー?」
「とりあえずハサミか何かでこの紐をちょん切って中身だけ見るってのはどうだ?」
「うう……それは犯罪ですー」
「何、そんときゃゴメンナサイってあやまりゃあいいんだよ」
「その場合謝るのは私です〜」
「…………でもよ、気になるだろ?」
「…………そりゃまあ、少し……」
そうして、悪魔の誘惑に屈しそうになるやよい。
とりあえず、と皮ひもを手で引っ張ってみるが、当然切れる気配など無い。
どうしよーかなーなどと考えていた所に…
「何かあったのか?」
漸く、葛木が到着した。
「あ、葛木先生」
「おお、ナイスタイミングだぜ相棒! ちょっとあの変な短剣を貸してくれよ」
「……ふむ」
特に気にもせず、彼の言うとおりに短剣を渡してしまう葛木。
ソレを両の手で起用に持ち上げ、気合の声と共に皮ひもに振り下ろすプッチャン。
もっとも、そんな事では紐は切れる筈が無い。
切ろうとするなら、紐に当てて引くのが普通である。
……普通の、筈であった。

209 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 03:22:33 ID:dUiM58sA
 

210 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 03:24:24 ID:YI3d4I3V
その時ありのまま起こった事を話すなら、皮ひもに短剣を当てた途端、“パキンッ”と乾いた音を立てて、南京錠が外れた。
何を言っているのか判らないと思うが、当事者達も何が起きたのか理解できていなかった。
「は?」
「ふえ?」
「……む」
驚きの声は三者三様。
だがそれも当然。
何処の誰が、皮ひもにナイフを当てたら鍵が外れるなどど思うだろう。
手品とか仕掛け細工なんてチャチなものでは断じて無い、もっと恐ろしい何かを味わったのであった。
そうして、事実外れた南京錠と革ひもはカウンターの上に落ち、やよいの手の中には閲覧可能になった本が一冊。

と、その時、

“フ、フ、アハハハハハハハ!”

再び、何処とも知らぬ場所から響く謎の声。
葛木達をこの場所に誘ったと思われる声が響いてきた。

“ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!”

笑い声は続く。
そうして、
「オイこら、何が面白いんだよ」

“いやいや、何と言う偶然だろうと思ってね。
 まさかそんな物を君たちが持っているなんて思いもしなかったのさ”

溜まりかねたプッチャンの声に、漸くマトモな返事が返ってくる。
その声には、明らかな興奮と興味の色が混ざっていた。

“何と言う偶然だろう。 本来は条件が満たされなければ外れる事は無かったのだけどね”

211 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 03:24:45 ID:dUiM58sA
 

212 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 03:25:05 ID:YI3d4I3V
プッチャン達には、彼女?の言っている事は何一つ判らない。
ただ、どうやらこの鍵はそう簡単に開くものではなかったようだ。

“いささか予定外だけど…うん、凄く面白い。その本は君たちに進呈しよう。
 せいぜい可愛がってあげなよ”

そして、最初と同じく唐突に声は消えた。

“あ、そうそう、出口はそこの通路を少し行った先だよ”

と、思いきや割と親切な助言を残して、
そうして、今度こそ場には沈黙が残った。

「可愛がる…ですかー…」
数秒後、ぼーとしてても仕方が無いと思い直したやよいが、手にしていた本に向き直る。
そして、数秒の黙考の後、本の表紙を摩りだす。
「いや、本を撫でてどうするよ」
自分のお腹の部分を本を撫でるのに使われたプッチャンが、抗議交じりのツッコミを入れる。
確かに可愛がっているのだが、何か違うだろうと、
「えーでも何となく喜んでいるような雰囲気がしますよー」
「気のせいかな、俺にはとてつもなく怒っているように感じられるんだぜ。
 ……こう、『こ、この小娘が、私に触れてよいのはマスターだけです! …まあ扱いは悪く無いですが』みたいな」
「それ怒ってるのですかー?」
「いやまあ、そんな気がしただけなんだけどよ」
無論、本が喋る筈も無く、やよいとプッチャンが感じたのは単なる気のせいのはずである。



213 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 03:25:25 ID:g1Cxpfub


214 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 03:27:09 ID:YI3d4I3V



エレベーター。
穀物を貯蔵するのに使われる火気厳禁の施設……では無い。
飛行機の動翼の昇降舵……の事でも無い。
この場合は、人や荷物を載せた箱を、垂直に移動させる昇降機の事を表す。
で、何が言いたいのかというと、
「何でエレベーターなのでしょうね?」
先ほどの声の通りに進んできた三人が見たものは、エレベーターであった。
恐らくは、コレが出口という事なのだろう。
……だが、
「この案内板を見る限りだとかなり上の階になるんだが…俺らいつこんなに昇って来たんだろうな?」
案内板に書かれている各階の名前は、



215 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 03:27:41 ID:YI3d4I3V


ア■■ー■の箱庭



セラエノ
主催者本拠地
食料倉庫
風架学園



ツインタワー
教会
ビーチリゾート
発電所
地下通路の何処か、ランダム

※注意:一度降りた場合再乗車はできないの。予めご了承下さいなの。
    後別れるのは基本危険だから団体さんは一度に乗るの。


とある。
そして、彼らの横の案内図には“セラエノ”とある。
となると、おそらくここはセラエノという名前の場所になるのだろう。 古書店にしては小洒落た名前である。
だが、そんなことよりも、
「『主催者本拠地』…てオイ、そのまんまじゃねーか」
「……ツインタワーの中ではなくて、ツインタワーが階なのです〜?」
「地図に書かれている場所もあるが、バラバラのようだな」
ツッコミどころが満載どころか、ツッコミどころしか無い。
幾ら最初の時のワープなどがあるにしても、もう少しまとまりを……そういう問題でも無いか。

216 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 03:28:34 ID:YI3d4I3V
あう、すいません、パンダに怒られたので続きは明朝に。

217 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 03:28:37 ID:dUiM58sA
 

218 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 03:31:51 ID:4YKuT2qC
パンダ:GR語。のっそり現れる存在。転じて深夜に親と遭遇すること
『民明書房』より抜粋

219 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 10:20:53 ID:CpXqUuG3

「……でよ…どこに行くべきだと思う?」
「待ち合わせを考えるなら距離的にはビーチリゾート、あるいは…発電所かツインタワーならば三時までに遊園地付近まで到達可能ではあるな」
ひとしきりツッコミを入れ終わった後、取りあえず何処に行くかを考える三人。
まず、現在時刻は、2時の少し前。
ビーチリゾートからなら遊園地は充分間に合う距離といえる。
発電所かツインタワーからなら、電車に乗り三時までに遊園地に到達することは不可能ではない。
約束を優先するならば、その何処かを選択するべきなのだが、
「う…でも真さんたちが…」
菊地真と伊藤誠。
彼らの同行者である二人の身柄も、心配ではある。
二手に別れるという案もあるが、注意の通り非常に危険であるし、
何より、遊園地での再会を約束した人間の一人、真アサシンの名が呼ばれた以上、遊園地が危険という可能性もある。
「なら、決定だな」
つまるところ、目的地は教会。
先ほどの場所となる。
「この、本拠地ってのはどうするよ?」
「現時点では危険すぎるな」
「あー、まあそりゃそうか」
何の情報も無い場所に行くのは、危険きわまり無い。
場合によっては禁止エリアの中という可能性もある。


220 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 10:21:52 ID:CpXqUuG3
 
そうして、エレベーターに乗り込み(見た感じでは普通のエレベーター)ボタンを押す。
少しして、浮遊感と共に、動きだしたのが判る。
「あ、でもそういえば葛木先生は本を貰ったのですか?」
「ああ」
「お?何時の間にだ」
「先ほどだ、適当に見繕ったものだがな」
現在位置を示すランプが順番に移動していき、そうして、チンという音と共に、開く扉。
そこは、教会の入り口。
彼らが出てきたのは、礼拝堂の入り口のドアであった。
振り返れば、そこにあるのは木目調の両開きのドア。
数秒の黙考の後、開かれたドアの先に広がるのは、外の風景。
先ほどまで乗っていたエレベータなど、影も形も無い。
「……どうなってやがるんだろうな?」

そのプッチャンの問いに答える声は、存在しなかった。




221 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 10:22:20 ID:+qbHcHRw
支援

222 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 10:22:50 ID:CpXqUuG3
少女は、歩く。
のんびりと、楽しそうに、幸せそうに。
誰かが彼女の笑顔を見たとしたら、恐らくこう言うだろう。
『なんという幸せそうな少女だろう』と。
だが、今の彼女全体を見たとしたら、恐らくこう言うだろう。
『気がふれた少女だろう』と。
それだけ、彼女の姿は奇怪であった。
至るところが血に染まった服。
乱れ、もつれ、やはり血に染まった髪。
そして、それらとは全くそぐわない、幸せそうな笑顔。

「あのね、誠…」
少女は、西園寺世界は、歩く。
幸せな想いに浸りながら。
「貴方は私の誠じゃないけど、でもやっぱり誠だったたんだよね…」
少女の内面世界において、少女自身の外見など何一つ意味は無い。
彼女は、気がふれてなど居ない。
いや、既に気が狂って久しいが、それでも彼女自身の世界は、未だに人並みに幸せな夢の中にある。
『大好きな人と、一つになれた』
その想いが、喜びが、少女の内面から、溢れだしている。
「私、誠と一つになれて凄く幸せなの」
「誠は…そう、思ってくれる?」
世界は、慈母の笑みを浮かべながら、ただ、穏やかに自身の腹を撫でる。
彼の証。
伊藤誠という存在がそこにいた証。
まるで、その中にいるのは愛しき誠そのものであるかのように。
いや、伊藤誠の血肉を糧に育つという意味では、その子供は伊藤誠そのものであると言ってもよいのかもしれない。
無論そのような道理は無いが、愛に溺れた少女に、道理など通用しない。
愛しき人は永遠に彼女と共にある。
もはや何があろうとも離れる事など無いのだ。

223 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 10:23:15 ID:+qbHcHRw
支援

224 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 10:23:41 ID:CpXqUuG3
 
少女は歩く。
■を探して。
愛しき人と一つになった今、彼女の考える事は一つ。
彼との愛の結晶を、この世に産み落とすのだ。
その為には、桂言葉を捜さないといけない。
彼女から、自分の子供を取り返さないと。
世界の子供を宿した彼女が、死ぬはずがないと。
死んだのなら、彼女を食べて己の子を取り返さないといけないと。

少女は、歩く。
幸せな夢に浸り、確かに狂いながら、それでも母として、西園寺世界として。





殺せて一人。
それが、葛木宗一郎の出した結論であった。
仮に、あのエレベータで主催者という二人に出会ったとして、彼が殺せるのは、恐らく一人のみ。
最初の時に見せた神崎という少年の実力を鑑みて、そう判断した。
彼の実力ならば、殺せる。
ただ、同時に自分も彼によって死ぬというだけだ。
それでは意味が無い。
少なくとも、もう一人を殺せるだけの人間がいなければ。


225 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 10:24:26 ID:CpXqUuG3
今の同行者は、そういう意味では何の役にも立ちはしない。
ただ偶然出会い、今まで共に行動してきただけの相手。
それだけの、相手。
一人と、一つ。
いや、二人。
人形であるプッチャンと、道具である自分。
どちらも同じである。
ならば、自分が人として扱われている以上、彼も人として扱うべきであろう。
いずれにしろ、彼らでは戦闘において意味は無い。
現在探している二人も、同様であり、強力な殺人技能者の心当たりも無い。
(……いずれにせよ、『仲間』というものを探さねばなるまい)
『仲間』
葛木宗一郎にとっては理解の出来ない概念ではある。
同行者とは同じようで異なるもの。
それを、探さなければならない。
何処にいるのか?
どこか遠くにいるのか。
何処にもいないのか。
…あるいは、

「お前は、…西園寺、世界か?」
目の前に現れた少女は、そうなのか?







226 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 10:25:04 ID:+qbHcHRw
支援

227 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 10:25:06 ID:CpXqUuG3
何か言っている。
目の前にいる二人の内、大きい方の人が何か言っている。
私の、名前?
「そう、ですけど…」
何で、知っているのだろう?
心当たりは、無いわけじゃないけど。

…島の中心に向かおうとしたけど、道を変えることにした。
見覚えのある場所が、目に映ったから。
とてもとても、イヤな場所。 あの、『柚原このみ』と出会った場所が。
だから、戻ってきて、そして……匂いがした。
さっきまで、一緒にいた、誠の匂い。
正確に言えば、その残り香。

…だから
「……伊藤誠に、聞いた」
ああ、やっぱり。
誠は、ずっと私の事を探していてくれたんだ。
うん、やっぱり誠はやさしいね。
だって、

私に、

食べ物を用意してくれたんだもの。






228 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 10:25:40 ID:CpXqUuG3
その時、やよいには世界の身体が膨張したように見えた。
無論、それは錯覚。 だが、そう見えるほどの速さで、世界はやよいに向かい飛び掛ったのだ。
その接近に対して、いや、そもそもやよいには、接近とすら認識出来ていない行動に対して、当然、やよいはどうすることも出来ない。 彼女には、何が起きているのかすら、理解できていないのだから。
彼女がその行動の意味を理解するのに要する時間は……おおよそ2秒。
だが、その2秒の間に『全て』は終わる。
やよいが理解した時には、既に世界の牙は彼女の首筋に突き立ち、その滑らかな柔肌から赤い液体を流していた。
……いや、流している筈だった。
「え?え?」
突如として、横に吹き飛ぶ世界。
その喉から苦悶の声を上げ、その身体から土煙を上げ、地に伏す。
やよいには、何が起きたか理解出来ない。
世界の身体が膨らんだ次の瞬間には、彼女が横っ飛びに吹っ飛んでいたとしか判らない。
「高槻…少し下がってろ」
「え…あ、はい……」
己のデイパックをやよいに放りながら、放たれる葛木の言葉。
言われたとおりに、下るやよい。
…そもそも、最初から怖かったのだ。
伊藤誠は、菊地真の仲間。
ならば、伊藤誠の知り合いである西園寺世界は、安心できる筈の相手。
…でも、全身を血に染めて、それで笑顔を浮かべている相手が、恐ろしくないはずが無い。
葛木宗一郎が何事も無いかのように話すので、何とかその場に留まっていたのだ。

「……ふむ、いきなりどういうつもりだ?」
やよいが下ったのを後ろ目に確認しつつ、葛木は問いかける。
今の世界の動きは、明らかにやよいに対して害意が存在していた。
誠の情報によれば、世界は多少やきもち焼きな一般女子学生に過ぎない筈だが…
少なくとも、いきなり襲い掛かるののは、普通ではない。
加えて、今の動きは断じて一般の女子学生ではあり得ない。
動作そのものは普通の女子学生でありながら、その速度は獣のような敏捷性と言ってよいだろう。
明らかに、アンバランスなのだ。


229 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 10:26:14 ID:CpXqUuG3
「……ひどいよ」
少女の答えは、少なくともそれだけでは意味不明なものであった。
「誠の子供を産むには、沢山栄養が必要なのに…どうして邪魔するの?」
子供…つまり西園寺世界は妊娠しているのであろうか?
栄養とは…つまりはそういう事だろう。
邪魔ということは、その事をなんとも思っていないという事だ。
結論から言えば、西園寺世界は狂気に侵されている、そう、葛木は結論付けた。
「…伊藤誠ならば、数時間前までは共にいたが」
それでもなお、葛木は彼女に告げる。
狂っているとはいえ、彼女が伊藤誠の探し人であることには、変わりがないのだから。
少なくとも、その事を告げねばならない。

「誠?」
世界が反応を返す。
その表情は、明るさを増している。
そして、
「誠なら、私と一緒だよ」
その言葉を告げた。
とても嬉しそうに、まるで天上の福音を告げるかのように。
「誠は、私の中に居る。 ずっと、一緒だよ。
 誠と、誠の子供を、生むんだ。 うん、誠……美味しかったよ」
その事実を、告げた。
嬉しそうに、
楽しそうに、
誇らしげに。


230 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 10:26:41 ID:+qbHcHRw
支援

231 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 10:27:35 ID:+qbHcHRw
支援

232 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 10:48:03 ID:wIuEGN7o



233 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/17(火) 10:58:09 ID:+qbHcHRw
携帯から、さる規制されたので残りは仮投下に落としました。

234 :代理投下:2008/06/17(火) 11:02:16 ID:sDnLSa9s
「……そうか」
葛木の後方で、やよいが声にならない悲鳴を上げているが、その事には構ってはいられない。
少なくとも、世界は危険な存在である。
「それで、西園寺はこれからどうするつもりなのだ?」
だが、その上であえて問いかける。
殺人自体は、葛木には取るには足らない出来事だ。
食人という行為にも、忌避感はあれど否定はしない。
故に、問う。 これからどうするのか、と。

「そんなの、決まってるよ」
起き上がりながらも、その視線は葛木と、やよいから離さない。
彼女の目に映っているのは、あくまで食料でしかない。
「誠の子供を生むの」
そのためには、
「栄養を、沢山取らないといけないよね!」






235 :代理投下:2008/06/17(火) 11:03:18 ID:sDnLSa9s
世界の手がデイパックに伸ばされる。
そして、中から取り出されるのは…巨大な銃。
構え、そして発砲。
元より世界に射撃の経験などは無いが、それでも悪鬼の力によって、反動に負けず、狙った地点へと飛ぶ。
だが、葛木は避けない。
銃というのは非常に正確な武器であり、銃口の向いている方向に飛ぶ。
葛木には、彼女の銃が自分を外れる事は、引き金を引くタイミングで理解できていた。
それ故に、彼は前に進む。
顔の直側を通過する弾丸には目もくれず、世界の近くにまで。
「えっ!?」
葛木の動きに世界が驚愕の声を上げるが、それにも構わず進む。
多少の制限があるとはいえ、彼の速度は鬼となった世界のソレを上回る。
彼女にできたのは、何とか銃をもう一度撃つことだけ。
無論、そのようなものなど当たる筈もなく、葛木も気にも留めない。
そして…

「あぐっ!?」
衝撃。
世界の視界が、光に支配される。
何処を殴られたのか判らないけれども、衝撃から考えると恐らく肩。
ついで、胸、あご、腕、
「がっ! グッ! ゲハッ!!」
どこも見えはしないが、痛みだけが伝わる。
その度に、世界の視界が揺らぐ……が、それだけ。


236 :代理投下:2008/06/17(火) 11:03:56 ID:sDnLSa9s
「……む」
異変を感じ取った葛木が、世界より離れる。
彼の拳をこれだけ受けて、幾ら普通ではないとはいえ、女子高生が普通にしていられる筈が無い。
だが、現実に彼女はそこに立っている。
そして、目の光はそのままに、葛木を睨みつけている。
「…………」
少なくとも、既にマトモな人ではない。
そう、葛木は結論付ける。

「ケホッ、ゲホッ…………死ん、じゃえ!」
息を切らしていた世界が、再び銃を構えて発砲。
今度は当たると理解した葛木は、少し動き目標を外す。
そうして再び前進し、接近戦を挑もうとした葛木の目の前に……突如転がってくる丸い物体。
「!」
後退、
後方に向かい、全力で後退する葛木、
そして、彼の居た位置を、爆音が支配する。

手榴弾。



237 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:04:11 ID:+qbHcHRw
支援

238 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:04:49 ID:+qbHcHRw
支援

239 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:05:05 ID:wIuEGN7o



240 :代理投下:2008/06/17(火) 11:05:57 ID:sDnLSa9s
それが彼に向け放たれた世界の武装。
そして……
「あうっ……」
後方から、やよいの悲鳴が上がる。
彼女の目に飛び込んできたのは、その威力を間近で浴びた世界の姿。
全身にその破片をあび、無残な姿となっている。
だが、やよいが声を上げたのは、それだけが理由ではない。
「な、何なんだよ…ありゃあよう……」
世界の傷が、治っていくのだ。
今しがた付いたばかりの傷が、たちどころに小さくなっていく。
その傷口には、白い何かが蠢き、肉を埋めていく。
それは、世界の手にある魔道書、『妖蛆の秘密』の力。
そして、彼女の憎しみにより鬼へと変化した、彼女自身の肉体の力だ。


241 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:06:11 ID:+qbHcHRw
支援

242 :代理投下:2008/06/17(火) 11:06:50 ID:sDnLSa9s

「痛いよ! この!」
そして、憎しみのままに再び銃を撃つ世界。
その痛みの大本が何であったかなど、彼女にはどうでもよいことだ。
ただ、葛木への憎悪を膨らませる。
そして、彼女の銃弾の向かう先は、
「ひうっ!?」
葛木ではなく、後方に控えるやよいの、その足元であった。
憎しみに捕らわれながらも、彼女の思考は、ある意味合理的だ。
葛木に当たらないのなら、やよいにあてれば良い。
そう、考え最後の銃弾を放ち、

243 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:06:56 ID:+qbHcHRw
支援

244 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:07:20 ID:wIuEGN7o



245 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:08:16 ID:+qbHcHRw
支援

246 :代理投下:2008/06/17(火) 11:09:18 ID:sDnLSa9s
「痛っ!!」
その銃弾はあらぬ方向に消えた。
風のような速度で近づいていた葛木の手によって、彼女の手にあった『エクスカリバーMk2マルチショット・ライオットガン』が弾き飛ばされたのだ。
そして、葛木の攻撃は手に留まらず、
「ゴホッ! ゴホッ!  げ」
後頭部、喉、眉間に放たれる。
いくら身体を鍛えようと、どうにもならない部分というのはある。
この場合の世界は鍛えたわけではないが、それでも同じ。
肉体が鬼のそれに変わっていようと、元が人であることには変わりが無い。

……だが

「……くっ」
あがるのは葛木の苦悶の声。
そして、声と共に大きく後退する葛木。
その拳には、細かい無数の傷跡。
世界には葛木の攻撃を見切ることなど不可能。
故に、反撃など出来ない。
だが、見切らなくても、当たっている瞬間、そのとき確かに、葛木の拳はそこにあるのだ。
ならば、反撃することは不可能ではない。

「痛いよ…凄く痛いから…お返しだよ」
彼女の全身を覆う、蛆蟲。
それが、触れた瞬間に葛木の手にダメージを与えたものの正体。




247 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:09:23 ID:+qbHcHRw
支援

248 :代理投下:2008/06/17(火) 11:10:22 ID:sDnLSa9s
憎いよ。
凄く、憎たらしいよ。
桂さんの子供も、誠も、きっと死んじゃった。
でも、直に戻る。
でも、お返し。
何がどういう理由だか知らないけど、出来る気がしたから。
うん、さあお返ししないと。
銃は遠くに飛んじゃったけど、それでもまだもう一つあるし。
でも、その時、何となく思った。

「うん、これにしよう」

凄く、綺麗な剣。
私は剣とか詳しくないけど、それでも、凄く綺麗だと思った。
そして、何より…

この剣は、

「…約束された…」

凄く、

「……勝利の剣!!」

強い感じがしたから。


249 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:10:25 ID:+qbHcHRw
支援

250 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:11:19 ID:+qbHcHRw
支援

251 :代理投下:2008/06/17(火) 11:11:20 ID:sDnLSa9s
音が、消えた。
眩しくて、見つめることも出来ない。
とにかく、大きな光。
でも、こんなものじゃない。
もっと、大きな力がこの剣にはある。
少し、疲れるけど、
凄く強い力が。

光の通り過ぎた部分が、大きく削られている。
学校の廊下くらいの広さが、ずっと遠くまで。
なんだか、凄く、スカッとした気分。
ああ、うん、
でも、

「もっと、スッキリできるよね」
あの男の人を殺せば、もっと気持ちいいはず。
うん、あの人は殺してしまおう。
食べるのは、後ろの子だけで充分だよね。

男の人が、またこっちに向かってくる。
でも、気にする必要はないよね。
痛いけど、あの人のが痛いし。

案の状、何回か殴って、それでお仕舞い。
うん、今度はこっちのばんだね。
もう一度、今度は、外さない。
うん、やっぱり、あの子も殺してもいいかな?
あの子を狙って撃てば、男の人も避けないよね。
そうしたら、二人とも食べられるかな?

252 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:12:07 ID:+qbHcHRw
支援

253 :代理投下:2008/06/17(火) 11:12:15 ID:sDnLSa9s
うん、じゃああの子……………は?

「葛木先生! 伏せて!!」

そうして、瞬間。
西園寺世界の肉体に、強力な衝撃が襲った。





「やよい! アレだ!」
「ふぇ?」

プッチャンの指し示すもの、それは…『エクスカリバーMk2マルチショット・ライオットガン』
西園寺世界の手から跳ね飛ばされた、無用の長物。
ああ、だがそれは無用の長物などでは断じて無い。

何故なら、

葛木は駆ける。
再び、世界の元に、
彼女の注意を、自分に向ける為に。

そこに、弾が存在するのだから。

跳ね飛んだ世界の体に、飛び掛る。
だが、それは大した意味など無い。
元より、彼女には先ほどから致命傷を何度も与えているが、どれも効果が無い。
やよいの放った銃弾も、大した効果が出ていない。

254 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:12:43 ID:+qbHcHRw
sage

255 :代理投下:2008/06/17(火) 11:13:44 ID:sDnLSa9s
次弾が、葛木の腕をかすりながら、再び世界に着弾。
背後でやよいの悲鳴が聞こえるが、問題は無い。
銃の衝撃は、多大。
この威力ならば、腹部に受けた彼女は、とうに致命傷の筈。
常人ならば、とうに致命傷を負っておきながら、それでも彼女は動き続ける。
すでに傷口には不気味に蠢く蛆虫が這い回り、端からその傷を塞ぎ出している。
どう見ても、まともな現象ではない。

ならば…彼に撃つ手段など…………一つしか、無い。

その胸に、持ち続けていた歪な短剣。
普通では無い現象には、それに対しうる力が必要である。
だが、この程度の武器を持ったところで何の意味があろうか?
既に幾たびも打撃を与えながら、その全てから立ち上がってきた怪物。
そんなものに、こんな短剣一本で何の効果があるのだろうか?


256 :代理投下:2008/06/17(火) 11:14:30 ID:sDnLSa9s
だが、それでも葛木に迷いは無い。

……何故なら、

「……破戒、すべき」

……それは、『彼女』の持ち物なのだから

「全ての符」


乾いた、音がした。







257 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:14:41 ID:wIuEGN7o



258 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:14:57 ID:+qbHcHRw
支援

259 :代理投下:2008/06/17(火) 11:15:03 ID:sDnLSa9s
「い、…たい?」

イタイ

「痛い、痛い!」

イタイイタイ

確かに直った筈の指が無い。

塞がりかけていた筈の傷口が痛い。

全身が、痛くて痛くてしょうがない。

何故?

どうして?

さっきまで男とも無かったのに?

怖い

ダメ

殺される

これ以上ここにいてはいけない。

ここにいたら殺される

誠も、私も、

260 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:15:41 ID:+qbHcHRw
支援

261 :代理投下:2008/06/17(火) 11:15:44 ID:sDnLSa9s

逃げなきゃ!

逃げなきゃ!

ああでも全身が痛くて動けない。

あの男は近寄ってくる。

助けて助けて

誰か助けて。

刹那、桂さん、誠

助けて、助けてよ。

腰が抜けて立てないよ。

骨が何本も折れて動けないよ。

直ってよ、何で直らないの?

いやだ、死にたくないよ。

折角、誠と一つになれたのに。

絶対、生きて帰って誠の、刹那や桂さんの分まで幸せになるって決めたのに。

何で、何でこんな所で死なないといけないの?


262 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:16:39 ID:+qbHcHRw
支援

263 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:18:04 ID:+qbHcHRw
支援

264 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:18:08 ID:wIuEGN7o



265 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:18:48 ID:+qbHcHRw
支援

266 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:20:21 ID:wIuEGN7o



267 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:21:17 ID:+qbHcHRw
支援

268 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:30:40 ID:wIuEGN7o
私は、ただ幸せになりたいだけなのに。

必死で、何かを探そうとして、デイパックからそれが転げ出る。

ああ、あの本だ。

刹那が、私の事を助けてくれるっていっていた本だ。

そして、今その本には刹那の姿が見えた。

刹那だけじゃなくて、誠の姿も見える。

ああ、そうか。

……助けて、くれるんだね。

私を、あの殺人鬼から救ってくれるって、そう言っているんだ。

うん、私、やるよ。

◇ 


269 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:31:07 ID:wIuEGN7o
衝撃。
先ほどの聖剣の一撃が光なら、これは正しく闇と呼んでも良いだろう。
いや、闇という表現も、正しくは無い。
『呪恨弾』
それは、妖蛆の秘密に捕らわれた魂の恨みを放つもの。
そこに捕らわれたものたちの慟哭、嘆き、恨み、悲しみなどを糧として放たれる一撃。
世界の目に映ったのは、そこに捕らわれた誠たちの姿。
彼らが、どのような感情を抱いていたのか、それは知りうることは出来ない。
知ったところで、何の意味も無い。
だが、彼女の目には、それは正しく救いに見えたのだ。
そして、救いの手は、その通りに発動した。
命の危機に瀕した哀れな少女の手に、救いは確かに訪れたのだ。




「やっ…た?」

判らない、でも男の人に、確かに当たった。
だから、きっと大丈夫。
うん、そうだよね、誠が力を貸してくれてるのだから、大丈夫だよね。
うん、だから、さっさとあの子を食べ……!? 




270 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:32:12 ID:wIuEGN7o
             痛い?
何?
         殴られた?
痛い?
      直らない?
痛い?
   誰が?
痛い?
決まっている。

男が、そこにいる。
右の拳が、握られて、片方の肩から、赤い何か漏れている。
あれは…なに?
凄く、怖い。
なんだかわからいけど、
美味しそうだけど、
凄く、怖い。
何か、とてつもなく恐ろしい何か。
殺される。
ここにいたら、殺される。
逃げ、ないと。


ふらふらと、世界は立ち上がり、そして歩き出す。
誰一人、ソレを追おうとはしない。
何故なら、

彼女が立ち去って直に、葛木自身がその場に倒れたのだから。





271 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:33:04 ID:wIuEGN7o
……揺れる。
何かに、引きずられるように、動いていく。
体温は既に冷え切っている。
「……高槻か…」
「く、葛木先生!?」
「起きたか相棒!?」
胸の下に、小さな頭が映る。
茶がかった髪の毛を両側でお下げにしている少女と、その手に嵌っている人形。
少女の顔には疲労の色が濃く、息は乱れ、額に汗が光っている。
この姿勢から考えるに、彼女は自分をここまで背負ってきたのだろう。
その小さい身体で、遥かに大きな葛木の体を。

ふと、彼女の格好が先ほどまでと異なっていることに気付く。
上着が無い。
「ほ、本当は、包帯か何かあればよいのですがー…」
今にも泣き出しそうな彼女の声。
どうやら、自分の腕に包帯のように巻かれているようだ。
「……そうか」
失われた、自分の左腕。
あの時の一撃の威力を考えるなら、むしろ僥倖と考えるべきだろう。
「とにかく……もう少しです!
 もう少し、このままもう少し待ってもらえれば、病院に着きます!」
ああ、彼女はずっと、自分の事を担いでここまで来たのだろう。
そうして、このまま病院まで行こうとしている。

……だが、それは無理だろう。
彼女の力では、自分を連れて病院に行くのは遠すぎる。
この傷では、それまでは持つまい。
そして…なによりも…… 

272 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:33:25 ID:wIuEGN7o
「もう、いい。 私の事は放っておけ」

この場に居ては、彼女達の身も危ないのだから。
もう、あまり、時間が無い。

「だ、ダメです!
 そんなこと、出来ません!」
「おうよ!
 やよいの根性を甘く見るなよ!四時までに相棒を連れてこのエリアを出るなんざ楽勝よ!」
「……そうか」
既に、判っていたのか。
そして、もう既に理解できているのだろう。
自分達も、このままでは死ぬと。
このペースでは、間に合わない、と。
だが、……逆に言えば、今ならまだ間に合う。
「どの道、私はもう助からん。 命を無駄にするな」
「な、何を言ってやがる!」
「そうですよ! そんな事言ってはダメです!」
「自分の命だ、自分が一番理解している」
私の事など気にせず、二人で行けば良い。
それで、二人は助かるのだから。

「無駄なことはするな……助かる命を捨てる気か。
 どの道、私を助ける意味などないのだから」

余計な事を、する必要は無い。
私は、とうに役目を終えた道具に過ぎない。
今まで、ただ生きていたに過ぎない。
役目を終えながらも、惰性で存在しつづけていた道具が、壊れた。
ただ、それだけのことなのだから。 

273 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:34:38 ID:+qbHcHRw
支援

274 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:34:40 ID:M21JO26L



275 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:35:36 ID:+qbHcHRw
支援

276 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:37:11 ID:M21JO26L
「…………」
「…………」

力の抜けたやよいの背から、体が滑り落ちる。
さあ、行け。
既に、覚悟くらいは出来ていたのだろう。
道具が、その役目を終えただけなのだから。





……言葉は、無い。
この場にいる全員が、既に理解している。
このまま、葛木と共にいては、全員が助からないと。
葛木の言葉は正しい。
この場に、葛木を置いていくのが、最上の答え。

「……って、何ですか」

……だが、それでも。

「……高、槻?」
「無駄って、何ですか!?」
 葛木先生の命が無駄だ何て、そんな筈、ある筈無いじゃないですか!!」

そのような理屈などに、何の意味があるのだろう。
……そもそも、葛木の言葉は、一つの前提が間違っている。
間違いが起きたのは5年前、あるいは25年前か。
道具であった筈の存在が、自らの意思で道を違えたことか。
あるいは、そもそも道具として生まれた事自体が間違いなのか。

277 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 11:37:59 ID:wIuEGN7o
「無駄なんかじゃないです! 先生はずっと私を助けてくれました!
 無駄なことなんて少しもありません! だから、今度は私が先生を助けるんです!」

無駄ではないと。
葛木の命は決して無駄なのではないと、そう、言った。
嗚咽まじりに、叫びながら、やよいは、確かに告げた。
そう、無駄などではない。

「やよいの言うとおりだぜ相棒!
 簡単に諦めてるんじゃねえ! そんなんじゃ相棒失格だぜ!」

葛木自身が、自分を道具であると認識していていても、他者はそうは思わない。
何よりも、彼がこの島いにあった僅かな時間は、決して無駄ではなかった。
彼らは、葛木の生が無駄では無いと、そう告げていた。

「そうです!
 それに、帰るって言ったじゃないですか!
 奥さんが居るって! そこに帰るんだって!
 そう…………言ったじゃないですか……」

そう、……無駄では無い。
この島での半日の時間も。
彼が人として生きた5年間も。
無駄などでは無かった。
ただ、彼がその事実に気付かなかっただけなのだ。
気付かない、フリをしていたのだ。

「だから……行くんです。
 絶対に、……助けるんです」 

278 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 12:40:00 ID:wIuEGN7o
気付いては、いけなかった。
あの時、あの五年前……彼は……嬉しかったのだ。
一つの機構の為に作られた道具。
20の歳月を賭して作られた道具。
その、成果を発揮出来ると。
自身の、20年の歳月にはどのような意味があったのかと。

そして、彼は知る。 意味など、無いと。
偶然から、目的は容易く達せられた。
20の歳月などに、意味は無く、身に着けた業など、必要すらなかった。
真の意味で壊れたのは、その時だろう。
目的を達した以上、速やかに破棄すべき己を、彼は保ち続けた。
その事を、極力考えないようにしながらも、彼はあり続けた。

(そう…か)

やよいの嗚咽は続く。
すでに声など出ず、唯涙を流しているだけであったが、それでもその場に居続けた。
葛木の片方しかない手を、握り続けていた。
既に葛木のことを背負う体力など無いにも関わらず、何が何でも助けると。

「……プッチャン…よ」
恐らくは初めて、彼はその男の名を呼んだ。
人ではないが、自分よりも余程人らしい彼。
共に居た、仲間の名を。
「高槻を、宜しく頼む。 お前に…お前になら、頼める」
「……相、棒」 

279 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 12:40:22 ID:wIuEGN7o
既に、プッチャンには理解出来ている。
どうにかして、やよいを説得しなければならないと。
葛木の事を見捨てなければならないと。
「そんな事、言うんじゃねえよ!」
だが、理解できているだけ。
納得など、少しも出来ていない。
「それと、すまない、これを、あの人に渡して欲しい」
「自分で渡しやがれ!」
出来る筈も無い。
これで終わりなど、納得してやるものか。
ああ、だが、

「すまない、だが、頼んだぞ……『相棒』」

今になって、その言葉を言うのか。
一方的に呼んでいただけなのに、
偶然であっただけの関係なのに、
そもそも、力の無い人形に過ぎないプッチャンを、

「…………バカヤロウ」

そう、呼んでくれるのか。
……誰が、拒めようか。
一方的な間柄ではない。
互いに、認め合った者が、初めて、そう呼んでくれた相棒が、そう望んでいるのだ。
どうして、……それを無駄になど、出来ようか。 

280 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 12:40:44 ID:wIuEGN7o
「……高槻」
「いや…です」
もう、二度と会えないのだ。
目の前の男性とは、これが永遠の別れとなる。
「すまない、私が同行できるのは、ここまでのようだ」
「いやです!」
誰が、納得なんて出来るのか。
死ぬのは、無論怖い。
でも、それ以上に、親しい人との別れのほうが、怖い。
「絶対に……イヤ、なんです……」
理屈ではない。
感情のままに、告げた。
「高槻…」
「う……?」

パアンと、小さく、それでいて甲高い音。

何が起きたのかは、やよいには理解出来なかった。
ただ、自身の手に、小さな衝撃のみがあった。
「すまないな、もう、これぐらいしか、してはやれない」
手を、鳴らせば、元気が出る。
かつて、やよいが告げた事。
何度か、してくれた、事。
今までで、最も弱い、力で、
その手に、今、どれだけの想いが込められているのだろうか。
「葛木、先生……」
それで、全てが理解できた。
本当に、もう、終わりなのだと。
もう、葛木はやよいとは共には居られないと。 

281 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 12:41:28 ID:wIuEGN7o
再び、泣き崩れそうになるやよい。
だが、泣く訳にはいかない。
元気を貰ったのだから。
元気が出るのだと言ったのだから、元気を出さなければいけない。
「葛木……先生」
何か、言わなければならない。
最後だから、
元気を貰ったから、
助けて貰ったから、
そんな理由では無い。
高槻やよいとして、葛木宗一郎に、言わなければならない。
それなのに、震える口からは、言葉など出ない。
再び、泣き出してしまいそうになる。

「……いいから、もう行きなさい。 ……君は、こんなところに居てはいけない」
判っていると、口にせずとも良いと。

葛木は、最後に確かにそう言っていた。

◇ 

282 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:18:22 ID:fGUJsty7
「今は…泣くんじゃねえ」
「泣いて……ないです」
泣くことは、何時でも出来る。
だが、今は許されない。
泣くのは、後だ。
「後で、幾らでも泣いていいから、今は泣くな」
「泣いて…ないです……」
だが、どうして止めることができようか。
結局、最後まで彼に頼ってしまったのだから。
人に元気を齎すアイドルの筈なのに、元気を貰っただけなのだから。

「……ああ、すまねえ、……泣いてねえな」
「そうです、泣いて…ないんです……」
雨が降っているだけだ。
泣いてなどいない。
泣く訳にはいかない。
歩みを止める訳には、いかない。

気付けば、どれだけの時間。
どれだけの距離を歩いたのだろう。
太陽が、少しずつ傾いていくなか、
遠く、遠雷のような音が、響いた。

「……っ、葛木せんせーーーい!!」




283 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:19:17 ID:fGUJsty7
あと、どれだけの時間が残っているのか判らない。
そもそも、それまで自分の命が残っているのかさえ定かでは無いが…もはや、考えても仕方の無い事柄だ。

……結局、自分は何だったのだろうか?
道具として生まれ、道具になりきれなかった自分。
道具としても、人としても不出来であったもの。

……ああ、だが、

元より、自分は人を殺す為の道具
それだけのモノでしか無かった筈なのに……
だが、こんな自分でも、『人を救う事が出来たのだ』
ならば、少なくとも自分は…『人を殺す為だけの道具』では無かったのだ。

……そう、自分はずっと、悔いていたのだ。

ただ、道具であった、道具で…あり続けた。
自らの、意思で。
人として生きる事を望まず、ただ、あり続けていた。
何も考えずに、一人の人間の命を奪った。

……その事を、後悔していたのだ。

だから、道具であろうとした?
否、その方が、楽だったからだ。
道具であると、人ではなく使われるものとして存在していた方が、楽であったから。
人になってしまうことが、怖かったから。
だから、道具であり続けた。

284 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:19:53 ID:fGUJsty7
ああ、だが、これは、自らの意思だと。

人としての、己の、望み。

ただ、己を頼る相手を、相棒と呼んでくれた相手を、

……助けたかった。

……助ける事が、出来た。

ならば、この生にも、意味はあったのだろう。

心残りはある。
二人は、これから無事でいられるだろうか?

そして、
あの女性は…どう思うのだろうか?
道具が壊れたとだけ思うのか、
便利な道具が壊れたと嘆いてくれるのか、
あるいは、自分という人間の事を悼んでくれるのか、
今となっては、最早知る術も無いが……

ああ、だが……、

願わくば…彼女が、彼女達が、……あるべき場所に、帰りつかん事を……


“ピーーーーーー”


【葛木宗一郎@Fate/stay night[Realta Nua]死亡】

285 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:20:22 ID:fGUJsty7
【A-2 南西部/1日目 午後】
【高槻やよい@THE IDOLM@STER】
【装備】:プッチャン(右手)
【所持品】:支給品一式 、弾丸全種セット(100発入り、37mmスタンダード弾のみ95発)、何らかの書物一冊(詳細不明)
  ナコト写本@機神咆哮デモンベイン、木彫りのヒトデ10/64、エクスカリバーMk2マルチショット・ライオットガン(3/5)@現実
【状態】:深い悲しみ、罪悪感
【思考・行動】
 0:泣いて、ないです。
 1:葛木、先生…………
 2:真を探して合流する。
【備考】
 ※博物館に展示されていた情報をうろ覚えながら覚えています。
 ※直枝理樹の知り合いについて情報を得ました。
 ※死者蘇生と平行世界について知りました。
 ※教会の地下を発見。とある古書店に訪れました。
 ※とある古書店での情報を覚えました。

【プッチャン@極上生徒会】
【装備】:ルールブレイカー@Fate/stay night[Realta Nua]
【状態】:深い悲しみ
【思考・行動】
 0:相棒……
 1:りのと会いたい。

【エクスカリバーMk2 マルチショット・ライオットガン@現実】
全長780mm。総重量4,235g。
イギリスのワロップ・インダストリー開発のリボルビング・グレネード・ランチャー。
特大サイズのリボルバーのような、シリンダー型の大型弾倉を備えている。
撃発・発射はダブルアクション式だが、かなりトリガープルが重いので、指を二本かけて引けるようにトリガーの形が工夫されている。

286 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:21:05 ID:fGUJsty7
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



イタイ

イタイ

イタイ

体が、痛い。

心が、痛い。

何時の間にか、また傷は少しずつ塞がり始めている。

でも、いつまでも痛いまま。

体の痛みは少しずつ消えていくのに、心の痛みが消えない。

私の『誠/赤ちゃん』は、どうなってしまったのだろう。

傷口は、少しずつ塞がっているけど、怖くて見ることが出来ない。

あんなに、酷いことをされて、どうなってしまったのだろう?

怖い、

怖い、

287 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:21:46 ID:fGUJsty7
この子が死んでしまったと考えるだけで、怖い。

誠とのつながりが消えてしまった事が怖い。

どうすればいいのか、わからない。

刹那も、誠も、あれから何も答えてくれない。

あの男の人はあれから追ってきてはいないみたいだけど、それでも怖い。

だから、逃げて逃げて逃げ続けて、どこだか判らない場所まで来て、ようやく、そこで足を止めた。

あれ…

覚えのある匂いがする。

何処かで嗅いだことのある匂い。

とても、美味しそうな匂い。

この匂いには、覚えがある。

「間桐…さん?」

そう、覚えている。
私が、最初に出会った人。
その体は無残にも晒されている。
血の気を失い、既に乾いた血がこびり付いた顔は、それでも綺麗な顔をしていた。
私が、彼女を殺した。
その事自体は、変わる事の無い事実。
でも、未だに、この場所に、居続けていた。

288 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:23:02 ID:fGUJsty7
「……間桐、さん」

それは、何故?

「私に…生きろって、……そう言ってくれるの?」

彼女は何も答えない。
でも、何よりも雄弁に主張している。
ここに居たのは、その為なんだって。
私を、生かす為にここに居たんだって。

「あり、がとう」

少しだけ、元気が出た。

彼女の体は、コレまで食べた中では、一番元気が出た。
あ、勿論一番美味しいのは誠なんだけど、何ていうのかな、栄養抜群?
凄く、体中に力がみなぎってくる感じ。
何か少し変わった味がするけど、とても力がわいて来た。
そして、彼女の服にこびり付いていた、カレーも舐めてみた。
あの時は、結局食べることが出来なかったけど、間桐さんのカレーは凄く美味しい。
今まで食べた中で一番。
学校で作ったカレーよりも、
お母さんのよりも、
もしかしたら、誠の作るのよりも。

何度か味わった気がする、この鉄っぽい隠し味が、たまらなく美味しい。
少しずつ、元気は出てきた、でも、まだ怖いまま。
これから、どうしよう?


289 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:24:10 ID:fGUJsty7
――その、時、

…トクン…

「え…?」

今の、音は、

……ドクンッ!

この、音は、

「動い…た?」

ドクン…ドクン!

「動いた…動いた…よ!」

間違い無い。
僅かな、だが確かな反応。
自分はここに居ると、確かに存在していると。
生の証。

「私と誠の赤ちゃん、動いてるよ!!」

嬉しい。

凄く嬉しい。

でも、どうして?

私の赤ちゃんは、桂さんの中にいる筈なのに…?

290 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:25:18 ID:fGUJsty7
……ああ、そうか。

「桂さん、……本当に死んじゃったんだ」

そうなんだね。

もう、守れないから、

だから、この子を私に返してきたんだ。

私に、生きろって、桂さんも言ってくれてるんだ。

「……うん、私、生きるよ。
 生きて帰って、絶対に幸せになる」

……そういえば、誠が言うには、元の世界には違う誠達がいるんだよね。
誠も、桂さんも、刹那も、
元の世界には居るんだ。
って事は知り合いじゃないだけで、もしかしてもとの世界には間桐さんもいるのかな?
そうか、そうなのかもしれない。
帰ったら、その時は会いに行ってみよう。
何処にいるのか手がかりもないけど、絶対、探し出す。
うん、そうしたら、きっと私たち友達になれる。
そうして、カレーを、カレーだけじゃないいろんなものを、ご馳走してもらおう。
そうだ、誠のお嫁さんになるなら、手料理だって覚えないといけないよね。
誠はとても料理が上手だけど、それでもやっぱり、お嫁さんとしては手料理を作ってあげたいし。
うん、そうだ、間桐さんに習おう。

だから、帰ろう。
帰って、皆と幸せになろう。


291 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:46:59 ID:wIuEGN7o



292 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:50:08 ID:wIuEGN7o



293 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:50:42 ID:wIuEGN7o
でも…その為にはまず生きて帰らないと。

そのためには、
                            ■ね

うん、そう、殺す、しかない。

      ■ね
             ■ね

皆殺しだよ、もう誠も刹那も桂さんも居ないんだから。

 ■ね     ■ね            ■ね
                ■ね

■ね                       ■ね

このみさんとか、あの男の人とか怖い人は沢山居るけど、それでも頑張らないと。
そうでないと、折角元気をくれた間桐さんに申し訳ないから。

■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね
■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね
■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね■ね


この子も、生きたいって、生きろって、言ってくれている。
うん、私…生きるよ。
絶対に、生きて帰って、そうして、幸せなろう。
この子と、刹那と、桂さんと、間桐さんと、……誠と
幸せに、なろう。 

294 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:51:04 ID:wIuEGN7o
歓喜に浸り、母は歩む。
その先に、己が望む未来があると信じて。
傾き、長くなった彼女の影は、
彼女の歓喜を表すかのように、ゆらゆらと揺れていた。





……彼は、思考する。
未だに脳幹細胞は未分化な故に存在していないが、それでも思考する。
無い筈の脳で、
無い筈の頭で、
無い筈の意思で。

元よりソコにあったのは、未だ魂の宿らぬ器でしか無い。
そして、恐らくは宿らぬままにその生を終える事になった筈のモノ。
傷つき、浸食され、生まれ出でる前に消え行く存在。

……だが、 

295 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:52:11 ID:ZDLDkfNo
 

296 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:52:31 ID:wIuEGN7o
もし、ここに、『宿る器の無い存在』があったとしたらどうか?
そして、その存在は本能のままに宿るべきものを求めていた。
ただ純粋に、生まれ出でたいと願っていた。
そして、その存在には、傷ついた肉体であっても生まれ出でる程度の力はあった。
『それ』がこの世に現れたのは60年前。
何の力も持たぬ存在でありながら、その名を与えられたが故に呼び出されたモノ。
そうあれかしと望まれ、その願いの結晶たる存在。
願望機の中に宿り…ようやく世界に羽化しようとした理想。
一度は生まれ出でる寸前に器を破壊され、此度は宿主たる存在を失った為に…それは求め続けていた。
宿るべき、『器』を。
魔力という面では先の宿主とは比べるべくも無いが、確かな肉の器。

……それは人類世界が望み続けていた、願望。

西に傾きだした日によって、長くなった影は、確かに不自然な動きを取った。

……60億の願いの結晶。

ゾワリと、『世界』の影が僅かに蠢いた。

……人類という種族全ての悪性。

それは歓喜の舞。

遂に願いが叶うと、この世に生まれ出でる事ができると。

ここに、願いは現実となる。
二つの『世界』の望みは、ともに叶う。

世界に望まれた存在は、確かに世界より生まれ出でる。

297 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:53:40 ID:wIuEGN7o
…その願いの名は、 


ア ン リ ・ マ ユ
『この世、全ての悪』



【D-3 キャンプ場/1日目 夕方】
【西園寺世界@School Days】 
【装備】:防刃チョッキ、エクスカリバー@Fate/stay night[Realta Nua] 
【所持品】:支給品一式×4、BLOCK DEMOLITION M5A1 COMPOSITION C4(残り約0.60kg)@現実、 37mmスタンダード弾x5発、
      時限信管@現実×2、妖蛆の秘密、ゲーム用メダル 400枚@ギャルゲロワ2ndオリジナル、 
      きんぴかパーカー@Fate/stay night[Realta Nua]、スペツナズナイフの柄、ICレコーダー、 
      贄の血入りの小瓶×1、天狗秘伝の塗り薬(残り90%)@あやかしびと -幻妖異聞録- 
      手榴弾1つ、このみのリボン、89式小銃(28/30)、
【状態】:歓喜、『この世、全ての悪』受胎、精神錯乱、思考回路破綻(自分は正常だと思い込んでいます)、 
     脇腹、左首筋、左肩損傷(蛆虫治療)、悪鬼侵食率60%、 
【思考・行動】 
基本:元の場所に帰還して子供を産む。島にいる全員を自分と同じ目に遭わせる。 
0:よかった……。 
1:誠、刹那、桂さん、間桐さん、……ありがとう。 
2:新鮮な内臓をもっと食べたい 
3:このみ、黒髪の女(烏月)、茶髪の男(フカヒレ)を見つけたら今度こそ喰い殺す 
4:スーツの男性(葛木宗一郎)に多少の恐怖。(性格上、少しづつ和らいでいきます)

298 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:54:03 ID:wIuEGN7o
【備考】 
 ※誠とは今までにあった事ではなく、元の世界の事しか話してません。平行世界の事は信じましたが放送の内容は信じてないままです。 
 ※侵食に伴い、五感が鋭くなっています。 
 ※ゲーム用メダルには【HiMEの痣】と同じ刻印が刻まれています。カジノの景品とHiMEの能力に何らかの関係がある可能性があります。 
 B-2中心部に回収出来なかったゲーム用メダル@現実が100枚落ちています。 
 ※妖蛆の秘密は改造されており、殺した相手の霊を本に閉じ込める力があります。そして、これを蓄えるほど怨霊呪弾の威力が増します。 
 そのほかのルールは他の書き手にお任せします。 
 ※腹の中の胎児に、間桐桜の中に居た『この世、全ての悪』が受肉しました。 

299 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:55:10 ID:ZDLDkfNo
 

300 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 13:59:33 ID:wIuEGN7o
代理投下終了です
タイトルは
>>200
の一行目なのかな

301 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 18:34:03 ID:E9P+8fSI
皆様投下乙です

>>Uc氏
名前ネタか、上手いな……
相変わらず良い台詞の数々でした
そしてアルも驚きなクリスの魔力
今後に期待大だけど、クリスの鬱ゲージが下がると、魔力も下がりそうな悪寒がw

>>うっかり氏
プ、プロデューサーが……
結局妻の下には帰れなかったけど、死に様が凄く綺麗で良かったなあ
まさか士郎がラス1になるとは
そしてワールドw
アンリマユ+悪鬼+魔導書ってチートにも程があんぞwwww

302 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 18:54:18 ID:BdrRLmgN
投下GJ!
く、葛木先生ぃぃいいいいっ!!! 原作らしい最期の台詞、彼の生き様に涙しました。
やよいの「無駄ってなんですか!」は凄く心に響き、相棒の話でさらにジーン、と。
ワールド……どこまで数え役満を重ねれば気が済むというのだw
彼女の都合のよい解釈が妙に彼女らしいwww

エセルドレータまで出てきてしまい、更にはアンリマユ。
妙にナコト写本が可愛いw
とにもかくにも、心の底からGJ!

303 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 19:28:19 ID:Ykcao/uI
悪鬼妖蛆ワールドをあそこまで追い詰めるとは…葛木先生マジで強かった。
なんとか切り札の量の差で辛勝。せっちゃんに救われたな〜w
しかしこの様じゃ遊園地に一人で突っ込むなんてとても…え?まだ変身するんすか…?
とにかくGJ!

304 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 19:35:14 ID:HrrDmKPn
あ、あああ……。
照夫なんぞ目じゃないものを、予想の遥か斜め上なものを喰って受胎しやがった……。

305 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 19:55:25 ID:wIuEGN7o
投下乙です
Uc氏
クリスは当面は姉御一筋に決めたようでひと安心
またまた男と勘違いされる真は悲惨というしか……
やはり、このロワは歌が絡んでくるのか


うっかり氏
葛木Pツキまくりと思いきや、それを上回るワールドの悪運w
葛木の最期もかっこよかったです。ロワで幸せに死ねた内の一人だなあ……
あと、ポルナレフな南京錠に笑いました

306 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 20:45:51 ID:cufWDFTJ
投下乙です
葛木Pーーーーー!!!!
まさかこの男も逝ってしまうとは…
それはともかく葛木Pの最期はとてもかっこ良かったです

307 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 20:57:57 ID:t6D6h4j1
>>Uc氏
ついにアイマス・シンフォ合流ですか
ですが何気に真とであったキャラは酷い死に方をしてるのでクリスが心配ですww


>>うっかり氏
世界と葛木先生の戦い!世界とであった時点一方的に殺されるだろと思っていたが、イヤイヤ倒す寸前までいくとはさすが葛木先生だ
やよいもついに保護者がいなくなってこれからどうなるのか楽しみです

少し気になった点
前回まこまこ達は教会を離れた、再開したいなら時を待てと言われたはずだが、それについて触れておいて欲しい
特に遊園地を諦め教会に戻るといった選択は前話の自由にワープが強引だったにせよ教会から離れるイメージだったのでマコマコ達が心配だか
ら戻ると言った所をもう少し強調して書いて欲しかった

それと、ルルブレを使うならある程度ルルブレの説明を入れないとフェイトやってない人には伝わりにくいと思いました
ルルブレ→妖蛆の秘密(契約破棄)→妖蛆の秘密(再契約)の流れも妖蛆の秘密は改造されていて誰でもすぐ使えるようになっている所が知っ
ている人にしかわからないだろうなって点です

ですがこれらは私的な感想であり、修正しなくても話には何の影響も与えないので私個人のわがままと捉えてください

追伸 あそこからワープするなんて孔明だって読めないぜww


308 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 22:35:04 ID:+kZ4qdu8
みなさま投下乙です!

>Lx氏
ついに奏が本格的に動き出したか、今まで目立たなかった分リーダー的役割に期待
筋肉組はもう一度会うことがあるのかな…

>gu氏
ツヴァイのキャラがさらに深まりましたね、情報のやりとりもかっこよかった
烏月とこのみもいいコンビだなぁ

>Uc氏
クリスはやや持ち直し? 次は誰を落とすのですか?w
シンフォとアイマスの出会いから何が生まれるかも楽しみ

>S7…間違えた、うっかり氏
葛木Pーーーーーーー!!! かっこいい大人は短命が宿命なのか…
でもすごくかっこよかった。最後のとこは本当うるっときました

309 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 22:57:34 ID:vlJgugNo
>Uc氏
クリスはやっぱり唯湖ルートだな! おっとw
桂ちゃんはなんというか、近所のおばちゃん視点でほんまええ子やなぁ……と共感できる良さです。
そして当たり前のように男の子と見られる真www桂アルはともかく異性のクリスにまでwww
ありそうでなかなかなかったアイマス・シンフォの音楽をテーマにした接触。次回に期待が高まります。

>S7氏
葛木P……いや、ここはあえて葛木先生いいいいいいいいいいいいいいいいい!
なんて壮絶な最後だ……回を増すごとに人間味を増していき、そして最後にはやよいを思いやって自ら命を絶つとは
彼の生き様が見られただけで、感無量です。残されたやよい、そしてプッチャンには最大級の幸運を。心の底から応援したい
いやしかしほんと……先生絡みの話は泣けるものばっかりやねぇ

310 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/17(火) 23:13:50 ID:lvhzuZ7S
なんというワールド全開!
なんという食人ロワ!

ヤバッ! ワールド激ヤバッ!
乙女さんが鬼神喰らってアドバンテージ取り戻したと思ったら
ワールドはさらに上を行きやがった!
本当に二大怪物のチート合戦は(対主催にとっては)地獄だぜーっ!!

ハサン先生、虎太郎先生、そして葛P先生・・・
先生には死亡フラグがつきまとってるぜ。
もしかして九鬼先生もヤバいのか?

面白かったです!

311 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 02:56:27 ID:ZXIySXnz
 

312 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 02:57:44 ID:P+B75bt6
 



「………………皆、聞いてくれ」

悪夢のような電話が終わった。
一人の殺人鬼との会話と取引。己の妹の仇との駆け引きが終結した直後の話。
重々しい沈黙を破るように、棗恭介は仲間という名の手駒に語る。
最初は情報交換。烏月と横の繋がりがあることや、赤毛の青年が殺し合いに乗っていることなど。

それらひとつひとつを丁寧に、しかし幾つか大事なことは話さずに。
恭介は『これまで通り』に棗恭介を演じ続け、そして最後に彼は語った。
これから先の行動。彼が考え出したミッションを。

「これから手分けして仲間を集めたい。本拠地はここで、再集合は第四回放送前だ」

場所はカジノ、セキュリティーコントロールルーム。
一人の青年が四人の少年少女に告げる。今回のミッション、もっと多くの仲間集めを。
ある意味でここには十分すぎるメンバーがいる。
リーダーである棗恭介を初めとして、トルティニタ・フィーネ。如月双七。羽藤桂。アル・アジフの五人。

きっかけはアルの提案。
尾花という狐を捜し出したいという提案だった。
もちろんアル自身の考えというわけではなく、桂への思いやりがそうさせたのだ。
双七やトルタは一緒に行動しようと言ってくれたが、桂たちが遠慮したのに加えて恭介がミッションを発表。


313 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 02:58:17 ID:Y3Q/o1S6
 

314 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 02:58:19 ID:ZXIySXnz
 

315 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 02:59:14 ID:P+B75bt6
「桂、アルたちは南部を捜索。尾花って狐と一緒に仲間になってくれそうな奴を連れてきてくれ」
「うん、分かったよ。何かあったら携帯で電話すればいいんだよね?」
「そうだ。俺たちのほうの携帯はトルタに任せてる。出来れば随時報告してくれると助かるな」
「うむ。妾たちに任せておけ」

これで南部方面は決定。
捜索範囲もあまりないし、それほど危険ではないはずだと恭介は思う。
第四回放送前。つまりはそれまでなら何時でも帰ってきてくれて構わない、という意思だ。
前回のようにガチガチにルールを決めるべきではない。連絡手段が取れる以上、柔軟な対応が必要だった。

よほど尾花が心配なのか、詳しいミッションを確認することもなく桂とアルは出発する。
無事に帰って来い、と恭介は言った。双七は桂に対して少し目を逸らしながらも、再会を約束した。

「さて……」

二人を見送った後、恭介は振り返る。
トルタが心配そうに自分を見ていたのに恭介は気づいた。
だが、恭介は気づかない振りをしたまま、次は双七のほうへと視線を向けた。

「如月。それにトルタ……」
「ああ」
「お前たちは待機だ。俺が北を捜索する。そろそろ俺が偵察の番だしな」
「えっ……?」

息を呑む音が聞こえた、気がした。
双七はもちろん、トルタもその決断に驚いていた。特にトルタは息が止まったかと思うほどに。
そんな様子にも構わず、恭介はミッションの説明を続ける。


316 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 02:59:24 ID:ZXIySXnz
 

317 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:00:00 ID:P+B75bt6
「どういう、こと……?」
「安心してくれ、同じく第四回放送前には戻る。北部は広いから、せいぜいがエリアのひとつやふたつを捜索するぐらいだ」
「違う、そういうことじゃない……そうじゃないよ!」

恭介が単独で行動する意味。
本人はただの散策のようなものだ、と告げたその真意を薄々ながらトルタは気づいていた。
あの電話を思い出す。
まるで別人のように殺人鬼に接し、道化を演じ続けた彼の痛々しい姿を思い出す。

そして第四回放送までの時間延長。
これの意味。恭介はできるだけ幅広い場所まで足を伸ばしたいのだ。
何のためか。理樹やクリスを捜すためならいい。だが、妹を殺した殺人鬼を追おうとしているなら止めるべきだ。

「トルタ。お前はもちろん待機だ。その足で散策や探索なんて出来ない。だから本部役をやってもらう」
「わ、私だってスターブライトがいれば!」
「馬に乗る奴は目立つし、肝心のスターブライトを狙撃でもされたら終わりだ。トルタが散策に向かうメリットがない」

トルタは少し悔しそうに俯いた。
狙撃されたという事実、足を撃ち抜かれたという意味からも恭介の言葉は正論だ。
だからこそ、トルタは悔しかった。
本部役という一番安全な役しか出来ない、己の不甲斐なさが悔しかった。

ちなみに双七は何となく、桂たちと出逢ったときを思い出していた。
そういえばスターブライトに乗って駆けつけたなぁ、あはは……などとこっそり冷や汗。
急ぐわけではなく、探索的に考えれば馬には乗らないほうが良いことを改めて双七は学ぶのだった。


318 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:00:07 ID:Y3Q/o1S6
 

319 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:00:31 ID:ZXIySXnz
 

320 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:01:09 ID:P+B75bt6
「そして、如月。お前にはトルタのことを頼みたい」
「……俺が?」
「ああ。お前にトルタを託す。護ってやってくれ。このカジノに篭っていれば安心だろうが、万が一のためにな」

如月双七はお人好しである。
それが恭介の彼に対する分析結果だった。
武術の心得と、金属を引き寄せる異能。そして性格。まさに利用しやすい『駒』だ。
彼なら無条件でトルタのことを護ってくれるに違いない。
双七は刹那の死を悔やんでいる。二度と目の前で女が死ぬことを許容しまい。たとえ、その命を捨ててでも。

人の情や決意すらも利用しようとする己の思考に、恭介は自嘲した。
これでは変わらない。リトルバスターズを謀り続けて来た道化と変わらない。
目的のために何でも利用する。
棗恭介は止まってしまった人生の最期の中で、何も成長することなく踊り続けるのだろう。

今までなら、それで変わりなかった。
目的を履き違えなければ、その考えでも十分だったのだ。


321 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:01:32 ID:ZXIySXnz
 

322 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:01:35 ID:Y3Q/o1S6
 

323 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:02:11 ID:P+B75bt6
「…………だめ」

トルタがぽつりと語る。
このまま別れてはいけないと告げる本能のままに。

「だめだよ、恭介……今の恭介は、一人になったらだめ。だって……」
「俺を信じられないのか?」
「そうじゃない! そうじゃ、ないけど……」

トルタは思う。今の彼を一人にすることは危険だ、と。
嘘を付くのが巧い彼女だからこそ、同族の嘘は見破ることができた。
彼は目的を履き違えている。
その行動は仲間を捜すためではなく、理樹やクリスを捜すわけではない。そんな気がしていた。

「いいか、トルタ。時間がない。鈴が死んだ以上、理樹の精神状態も心配なんだ」
「それはそうだけど……今の恭介は一人じゃだめだって言ってるのよ! 精神状態が不安定なのは……!」

あなたも一緒でしょ、という言葉はかろうじて呑み込んだ。
それでも聡明な恭介には、彼女が何を言おうとしたのか気づいてしまう。
恭介は改めて自身に問う。自分が今、一番に考えていることはなんなのだろうか、と。

(理樹、を保護して護るためだ……そうに、決まってる)


324 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:02:19 ID:Y3Q/o1S6
 

325 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:03:17 ID:P+B75bt6
この黒いもやもやとした気持ちは、大切な親友を安否を知りたいから来るものだ。
この頭が滾るな激情は、理樹を害そうとする奴に向けた敵対心だ。
この苛々した想いも、この復讐という言葉に彩られた殺意も、全ては理樹のため。ただひとつの目的のためだ。

そうに決まってる。
そうに決まっているはずだ。
そうだ、この復讐心は鈴を殺した相手だけに向けられるものではない、はずだ。

「俺は……平常心のままだ」
「………………」

二人揃って、目を逸らした。
言いたいことがはっきりと言えない。それで自分たちの仲が壊れてしまうことをトルタは恐れた。
否定する言葉しか吐けない。ただ、己の復讐心を見破られたような気がして、恭介は目を合わせられなかった。

心は何処かでは分かっているのだ。
トルタの温かさが、優しさが自分の支えとなってくれるその一方で弱さにもなっている現状。
彼女が傍にいては、復讐できない。その温かさが邪魔になってしまう。
だから離れようとした。『ミッション』というもっともらしい理由をつけて、トルタと別れようとしたのだ。


326 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:03:24 ID:ZXIySXnz
 

327 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:03:31 ID:Y3Q/o1S6
 

328 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:04:21 ID:P+B75bt6
「……恭介は、傷だらけじゃない。襲われても、連絡も取り合えない」
「如月と決めたことだ。今更、俺だけが行けないなんて都合の良いことは言えないだろ」
「そうだけど……」
「カジノのUSBメモリを手に入れるためにも、散策は必要だ。仲間、支給品、首輪。集めるものは多い」

すらすらと、言い訳の言葉が口から飛び出していく。
本当に嘘が巧いと自分でも思った。
ただひとつの問題は、同じく『嘘を吐き続けた者』には通じないという致命的なものだったが。
トルタはゆっくりと首を振る。それは承知できないと言う。

若干の苛立ち。子供のように駄々をこねるようなことは言わないでくれ、と怒鳴ろうとした。
言えば、恐らくは終わるのかも知れない。
彼女と続けてきた信頼が、脆くも崩れ去るのかも知れない―――――だが、彼の思考はその一瞬、何も考えられなかった。


329 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:04:38 ID:ZXIySXnz
 

330 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:04:39 ID:Y3Q/o1S6
 

331 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:05:27 ID:ZXIySXnz
 

332 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:06:09 ID:P+B75bt6
じゃあ、双七に押し付けろとでも言うのかよ、と。
彼女の優しさに付け込んだ非道な叫びを上げようとした矢先の出来事。
ぽん、と恭介の肩が叩かれた。
それと同時に、一人の青年の声が恭介とトルタの耳へと届いた。


「それじゃ、俺が行くよ」


たった一言の決意表明。
場の空気が霧散した。ばつの悪い、恭介にとってもトルタにとっても嫌な空気が消えていった。
恭介が振り向いた先には、ツンツン頭の青年がいた。
誰かを考えるまでもない。如月双七がそこにいた。笑顔を少し浮かべながら、真っ直ぐな瞳を向けていた。

「如月……」
「この中で一番怪我をしてないのは俺だし、単独行動は結構得意だし。俺が一番適任だ」
「いや、お前は周囲の散策とか偵察を十分にやってるだろう?」
「ああ、だからまた行くことにする。大丈夫、疲れとかはない。第四回放送なら、もう少し遠くまで足を延ばせる」

ああ、と恭介は溜息をついた。
冷静な部分で計算していたのだ。彼がこんなことを申し出るという可能性を。
最善の選択は確かに双七に頼むことだ。護衛以外にも、斥候として利用するのもひとつの手だ。
敢えて口には出さなかったが、彼自身がそう言えば恭介に反論の言葉は用意できなかった。

だから即座にトルタも含めて納得させなければ、と思っていた。
もしくは双七自身がお人好しであろうと、自分の命が大切である人間であると分析したかった。
莫迦な話だ、と恭介は自嘲する。命が大切なら、あのティトゥスとの命懸けの戦いに参加などしないというのに。


333 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:06:21 ID:Y3Q/o1S6
 

334 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:06:58 ID:ZXIySXnz
 

335 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:07:56 ID:ZXIySXnz
 

336 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:08:44 ID:P+B75bt6
「うん。そっちは二人でカジノに待機してほしい。そのほうが死ぬ気で護れるだろ?」
「……トルタを護る自信がないのか?」
「いや……俺にも捜し人がいる。九鬼先生から話も聞かないといけないし、トーニャと会長たちとも合流したいんだ」

だから、と双七は一度区切って。

「二人は、喧嘩しないでほしい。恋人同士なら、仲良くしてほしいんだ」

飛びっきりの爆弾を投下するのだった。


     ◇     ◇     ◇     ◇


「……………………」
「………………うう……」

カジノ、コントロールルーム。
さっき以上に気まずい雰囲気が恭介とトルタの間に流れていた。
双七はもういない、探索に意気揚々と出発していった。ちなみにスターブライトは今回、お留守番だ。
正真正銘、今は二人きりである。もちろん、新たな来客が現れない限りの話だが。

双七の壮大な勘違い。
確かにそういう風にしようと決めたし、そういう意味では狙い通りのはずだ。
ただ、彼が疑わないように演技していると妙に気恥ずかしかった。ついでに言うと疲れてしまった。


337 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:08:54 ID:Y3Q/o1S6
 

338 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:09:41 ID:ZXIySXnz
 

339 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:10:05 ID:P+B75bt6
「…………」
「…………」

お互いを気にしないようにしながら、カジノに待機していた。
さっきまでの嫌な雰囲気はなくなっている。
あたふたと演技をしている間に、恭介自身にも少し心の余裕が出来たらしい。
双七が出て行ってしまった以上、トルタ一人をおいて出るわけにはいかない恭介は護衛として留まることを選んだ。

ただ、そうなると時間が余ってしまう。
やることはたくさんある。例えば今回の放送についての考察はまだだし、いらない支給品を選定する必要もある。
最終的にはカジノのUSBメモリを手に入れ、首輪を解析しなければならない。
コインの確保や、侵入者に対する対策などとやることは山積みだ。それをこなして行けば時間も経過するだろう。

だが、その前にやらなければならないことがある。
トルタのことだった。何となく別の意味で気まずい。このままではいけない気がした。

「……なあ、トルタ」
「……ねえ、恭介」

沈黙。
同時に切り出したことにより、気まずさ倍増。


340 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:10:31 ID:ZXIySXnz
 

341 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:10:59 ID:Y3Q/o1S6
 

342 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:11:04 ID:P+B75bt6
「な、なんだ?」
「あっ……えっと、恭介はなに?」
「いや……特に。トルタはどうした?」
「…………ごめん、特に用事はないんだけど……」

気まずかった。
すごく気まずかった。
あの公開あーん以来の緊張感というか、そういったもの。
しばらくの無言。ふと、今の自分たちの様子が可笑しくなってしまった。

この温かさだ。このくすぐったい雰囲気が自分を弱くする。
恐らくこの地獄の島でリトルバスターズを除けば、もっとも頼りになるパートナー。
彼女の優しさが、信頼が、温かさが、棗恭介の牙を奪っていく。自分を自制させてくれる存在だ。

「…………ねえ、恭介」

復讐心は今までどおり、心の奥底で燃え続けている。
鈴の死を冒涜した亡霊の存在。『ファントム』をこれ以上ないほど最悪に殺してやりたい。
キャルという少女を保護し、ツヴァイと再会させた上で殺してやりたい。
再会を喜び合う二人の仲を最悪の方法で離別させ、自分の絶望を味わわせてやりたいという気持ちは揺らがない。


343 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:11:17 ID:ZXIySXnz
 

344 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:11:37 ID:Y3Q/o1S6
 

345 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:12:30 ID:P+B75bt6
だけど、そうして磨こうとした牙を彼女が押し留めている。
それが心地よくて、それと同時に不安だった。
仮にもしもの話だが、彼女を失ってしまったとき……棗恭介はどうなってしまうのか、というひとつの過程。

答えは出ない。
考えたくもないから、目を逸らすことにした。
トルタは笑っていた。少し照れくさそうにしながら、それでも温かい心を提供していた。


「少しだけ話そう? それだけでも、きっと楽になると思うから」


言葉が荒んだ心に染み渡っていく。
彼女が恭介を道を正そうとし、おかげで彼の道はまだ揺らがない。

否。

残酷な現実は違う。
揺らがないとしている彼らの目的は、既に瓦解しているという現実を認識できていなかった。
トルタはクリスのために全てを捨てると誓ったはずだった。
恭介は理樹と鈴のために全てを捨てると誓ったはずだった。


346 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:12:54 ID:Y3Q/o1S6
 

347 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:13:39 ID:P+B75bt6
だが、今のこの現実は歪んでいる。
クリスのために全てを捨てるなら、今すぐにでもクリスを捜索するべきだ。
残った理樹のためなら、鈴を殺されたことへの復讐など考えるべきではない。
大いなる矛盾。彼らは薄々気づきながら、目を逸らしている。


「……ああ、そうだな。それもいい」


継ぎ接ぎの理想。
歪み始める誓約。
だからこその不安、互いを失ったときの絶望はいかなるものか。

それは誰にも分からない。
未来を紡がない限り、その答えには至れない。



【G-6/カジノのセキュリティコントロールルーム/1日目 午後】


348 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:14:00 ID:Y3Q/o1S6
 

349 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:14:04 ID:ZXIySXnz
 

350 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:14:34 ID:P+B75bt6
【チーム:BOY DOESN'T CRY MEETS LIAR GIRL】
共通方針、(数字)は恭介とトルタのみの方針
1:カジノを拠点として近郊の施設を探索。
2:他の対主催のメンバーと接触。
3:そこから情報を得る。
4:自分に危害が出ないように、相手のプロファイリングを元に他の対主催の悪評、もしくは真実を伝える。
(5):十分な情報を得たらそのメンバーと別れる。もし理樹、クリスがいるメンバーなら合流。その後隠れながら邪魔な対主催メンバーを排除。
6:もし中々合流できない場合、もっとも安全だと思われるチームに合流。(戦力の面で、信頼関係も含め)
(7):序盤は積極的には人を殺さない。基本同士討ちを狙う。情報最優先。終盤は対主催の中心になりなるべくマーダー排除。のち疲労した対主催から狙う。
(8):最悪クリス、理樹がどちらかが死亡した場合は片方のサポートに徹する。両方死亡した場合は互いに優勝を狙う。二人になった場合一騎打ち。
(9):ただし、完璧に脱出ができる状況になったらそのまま対主催に変更。
(10):また、主催の動向や信憑性次第でも対主催に変更。
11:カジノ近郊を行動範囲にしていることを信頼できる人間に託し、理樹、クリスに伝えてもらう。
12:脱出や首輪、主催者の目的についても真剣に考察する。
13:信頼できる対主催を見つけた場合、カジノに集め、絶対の信頼関係を築く。
14:携帯電話を利用し、不認知の参加者と接触。その際はカジノを拠点にしている事は告げない。
(15):双七を斥候及び護衛として上手く利用。思惑を悟られないようにする。
16:本部組は連絡役と景品確保、考察などをし、斥候組が連れてきた仲間たちと交流する。
17:カジノの景品の確保。特にUSBメモリを狙う。

【備考】
 ※トルタと恭介が特定人物の優勝狙いであることと、アルと桂と双七の素性以外の情報交換済み。
 ※異なる世界等の理解に時間の掛かる情報は未だ交換していません。
 ※首輪のカメラの存在について知りました。
 ※黒幕がいると思ってます。
 ※監視は『上空』『重要施設』『首輪』の3つから、カメラ及び盗聴器によって行なわれていると考えました。
 ※神宮寺奏、プッチャンの細かい特徴を認識しています。



351 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:15:02 ID:Y3Q/o1S6
 

352 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:15:06 ID:ZXIySXnz
 

353 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:15:58 ID:P+B75bt6
【棗恭介@リトルバスターズ!】
【装備】SIG SAUER P226(15/15)@現実、トンプソンコンテンダー(弾数1/1)
【所持品】:支給品一式×2、SIG SAUER P226の予備弾3@現実、コンテンダーの弾44発、デジタルカメラ@リトルバスターズ!、アサシンの腕、首輪(ティトゥス)、カジノの見取り図、ゲーム用のメダル(500

枚)
【状態】:ツヴァイへの強い憎しみ、脇腹に深い切り傷(処置済み)、胸部に軽い打撲、肉体的疲労(中)
【思考・行動】
基本方針:共通方針の通りに行動し理樹を優勝させる。トルタの生存に力を尽くす。ただし慎重に慎重を期す。
 0:トルタと少しだけ、何かについて話す。
 1:カジノのセキュリティを利用して周辺を警戒。景品の確保。
 2:本部役として待機。
 3:筆談などを用いて殺し合いや首輪についてトルタと考察する。
 4:トルタの過去に興味。トルタを見捨てない。
 5:『トルタの好意に気付いている』フリをし、親密にしても怪しまれないようにする。
 6:ツヴァイの目の前でキャルを殺害し、復讐したい。
 7:『首輪の設計図』をとりあえず集める。その為にデジタルカメラやUSBメモリを閲覧できる機器を探す。

【備考】
 ※トルタを信頼し、共感を抱いてます。
 ※トルタとの間に符丁をいくつか作りました。
  『時間』と『動詞』の組み合わせで意思疎通を行います。
  (『分』:名簿の番号の人間、『待つ』:怪しい など。
  『秒』や『時間』、その他の動詞の意味については詳細不明です)

354 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:16:13 ID:Y3Q/o1S6
 

355 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:16:34 ID:P+B75bt6
 ※トルタとはぐれた場合の合言葉は『トルタの知り合い全員の名前』です。
 ※参戦時期は鈴ルートの謙吾との野球対決後、リフレイン以前です。
  故に、リトルバスターズメンバー、特に謙吾に申し訳なさを感じています。
 ※参加者によっては連れてこられた世界や時代が違うと思ってます。
 ※この殺し合いは、『神々のゲーム』であり、自分達はその駒であると考えました。
  ゲームの終了は、『優勝』『優勝以外の何か』を満たした時だと推測しています。
  ただしゲーム終了後の駒の扱いについては疑念を持っています。
  ある程度の信憑性を得るまで、これを誰かに話すつもりは今のところありません。
 ※デジタルカメラに収められた画像データのうちの一つは、『首輪の設計図−A』です。
  外見から分かる範囲での首輪の解説が記されていますが、内部構造については一切言及はありません。
  また、デジタルカメラで閲覧した場合画像が縮小され、文字の殆どが潰れて見えます。拡大はできません。
  記されたデータの信憑性は不明です。
  他に首輪の設計図があるかどうかは不明です。



【トルティニタ=フィーネ@シンフォニック=レイン】
【装備】:Sturm Ruger GP100(6/6)@現実
【所持品】:Sturm Ruger GP100の予備弾4@現実、刹那の携帯電話@School Days L×H、医療品一式 、恭介の機械操作指南メモ、カジノの見取り図
【状態】:肉体的疲労(中)、右脚に貫通射創(処置済み)、左脚に盲管射創(処置済み)、モルヒネによる下半身の感覚の麻痺
【思考・行動】
 基本方針:共通方針の通りに行動し、クリスを優勝させる。恭介のサポートに徹する。ただし慎重に慎重を期す。
 0:恭介と少しだけ話し、気分を落ち着かせる。
 1:カジノで待機し、セキュリティを利用して周辺を警戒。景品の確保。
 2:双七を含めた参加者から信頼を勝ち取れるように演技する。
 3:道中、筆談などを用いて殺し合いや首輪について恭介と考察する。
 4:恭介に対して――――?
 5:『恭介に好意を抱いている』フリをし、親密にしても怪しまれないようにする。
 6:恭介を見捨てない。


356 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:17:05 ID:Y3Q/o1S6
 

357 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:17:23 ID:ZXIySXnz
 

358 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:18:15 ID:P+B75bt6
【備考】
 ※恭介を信頼し、共感してます。
 ※恭介との間に符丁をいくつか作りました。
  『時間』と『動詞』の組み合わせで意思疎通を行います。
  (『分』:名簿の番号の人間、『待つ』:怪しい など。
  『秒』や『時間』、その他の動詞の意味については詳細不明です)
 ※恭介とはぐれた場合の合言葉は『恭介の知り合い全員の名前』です。
 ※登場時期はアルルートのアルが復活した頃です。
 ※神宮寺奏、プッチャンの細かい特徴を認識しています。
 ※参加者によっては連れてこられた世界や時代が違うと思ってます。
 ※怪我の為に走る事はできませんが、時間がたてば多少は歩けるようになる可能性があります。
 ※携帯電話とコントロールルームの操作方法を恭介から聞きました。
 ※刹那の携帯電話には禁止エリア進入アプリがインストールされています。
 ※恭介の過去の話を聞きました。


【刹那の携帯電話@School Days L×H】
清浦刹那の持つ携帯電話。何人かの人間の電話番号が登録されている他、禁止エリア進入アプリがインストールされている。
このアプリを作動させた場合、このアプリがインストールされた携帯電話から
半径2mまでに存在する首輪は禁止エリアに反応しなくなる。
ただし、効果の持続時間は1時間、3時間、6時間の3種類あるが、それぞれ1回ずつしか使用できない。



     ◇     ◇     ◇     ◇



359 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:18:41 ID:Y3Q/o1S6
 

360 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:18:54 ID:ZXIySXnz
 

361 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:19:25 ID:P+B75bt6
「さて、と」

如月双七は歓楽街を北東に歩いていた。
以前は東側を捜索し、桂たちと合流できた。次はもう少し遠くに行ってみよう、と考える。
西側で九鬼先生に出逢ったのだが、さすがに一箇所に留まって酒でも飲んでるはずはない……と思いたい。
とにかく探索しながらも、彼はひとつのことについて考える。

(俺の首輪……金属で出来ていると思うんだけど、呼びかけに答えない)

双七の能力は金属引き寄せ(アポーツ)と呼ばれる能力……だと、双七は思っている。
正確には金属と意思疎通ができる能力であり、引き寄せなどは副産物に過ぎない。
それでも、金属と会話することができることそのものは双七も知っていた。
だからこそ、怪訝そうに首をかしげている。何故、この首輪は自分の呼びかけに答えてくれないのか。

それだけではない。
双七には他の全ての金属の言葉も聞こえなかった。
掌から生み出した赤い糸で意思疎通も図るも、効果はない。これも制限らしい。

(あの黒い侍のときは、確かに聞こえていた)

手で掴み、持ち上げる武装の名を双身螺旋刀。
妖を斬るために作られた刀を強引に捻って作り上げた大業物。
ティトゥスの撃破後は双七の手に渡り、ようやく金属と心を通わせることができた……はずだった。
だが、あれ以降、彼からの返事はない。無念を伝える声も、歓喜の叫びも聞こえてこない。

恐らく、殺し合いという状況が生み出した極限の集中力。
あれが一時的に制限を打ち破ったのか。それとも『金属の声が聞こえづらい制限』なのか。


362 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:19:31 ID:Y3Q/o1S6
 

363 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:20:35 ID:P+B75bt6
(だったら)

双七は目を瞑る。
集中を研ぎ澄ませ、周囲の金属に糸を繋いで語りかける。
心には師匠の教えを。――――――手に綺麗に、心は熱く、頭は冷静に。

(あのときの戦いの集中力さえあればいい)

外界と自信を切り離す感覚。
夢想する。目の前には強敵を幻想。仮想敵はティトゥスから始まり、最後には九鬼曜鋼までを。
そうして得る緊張感。そして集中力。
そうすることでようやく、金属へと語りかけることに成功した。

「…………聞こえるかな、双身螺旋刀」
『……聞こえるぞ、我が恩人よ』

やった、と思うが集中力は乱さず。
用もないので呼んでごめん、と螺旋刀に一言謝って、次は首輪へと語りかけてみた。
だが、彼は無言を貫き通している。
なんと声をかけようとも、まるで意思がないかのように。


364 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:20:41 ID:ZXIySXnz
 

365 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:20:50 ID:Y3Q/o1S6
 

366 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:21:24 ID:P+B75bt6
「…………ダメか。もっと、俺の力が強くでもなってくれればなぁ」

無理ならしょうがない、と溜息をつく。
集中力はまだ切らさない。遊園地を通り過ぎ、リゾートエリアのほうまで歩いていく。
周囲の金属に問いかけ、情報を集めていくことにしたのだ。
だが、その長時間も集中力を保つことはできない。駅周辺まで辿り着いたときには、精神的にくたくたの状態だった。

収穫はなし。
途中では集まりそうな情報もいくつかあったが、全体的に意思を封じられているような違和感。
周りの金属たちでも自我を持っているのは、ほんの一握りらしかった。

これじゃあ、だめかと溜息をつく。
そろそろ集中力が切れる。少し休まないとどうしようもない、と肩を力を抜こうとした。


『―――――――――ッサ様』


ふと、何者かの声が聞こえた。
双七の耳に届いたのではなく、頭に響く声は金属の声だ。
しかも周囲の金属とは違う、はっきりとした声。
自我を持った思念が確かに双七へと伝わった。慌ててもう少し集中してみる。


367 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:21:42 ID:ZXIySXnz
 

368 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:21:57 ID:Y3Q/o1S6
 

369 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:22:34 ID:ZXIySXnz
 

370 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:23:12 ID:P+B75bt6
声はぶつり、ぶつりと途切れている。
それでも双七は走り出した。儚い声を伝っていく。

『アリッサ様……待っていてください、すぐに』

それは悲痛な叫びだった。
打算もなく、思惑もなく。ただ一人の名前だけを叫び続けていた。
一人の人間だけを想っていた。その気持ちが痛いほどに伝わった。
不思議な違和感。それが金属の意思だと分かっているのに、一人の人間の心を読んでいるような感覚。

島の端っこに出たらしい。
海が見えるその場所で、双七は倒れ伏した一人の少女を発見した。
意識は……あるが、朦朧としているようだ。力の入らない身体で地面を這っていたらしい。

「おい、アンタ! しっかりしろ!」
「…………うっ……く……」

怪我だらけの身体で、一人の少女が倒れている。
その姿を見た瞬間、もう集中を研ぎ澄ますことなどできなかった。
彼女の身体を抱きかかえる。
抵抗はない。というよりも、抵抗したくとも出来ないらしい。双七の腕の中に少女は収まった。

双七の頭の中に一人の少女の姿が過ぎる。
清浦刹那。目の前で死んでいった、護れなかった少女だ。


371 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:23:48 ID:ZXIySXnz
 

372 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:24:11 ID:Y3Q/o1S6
 

373 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:24:23 ID:P+B75bt6
「くそっ……!」

繰り返させてたまるものか。
もう、あんな悲しい思いはしたくなかった。
少女を抱きかかえる。まずは怪我の治療をする必要があるだろう。
カジノまで少女を抱えて戻ることはできない。走ってきたせいもあって、些か距離が離れすぎている。

近くに建物でもあればいいのだが、生憎と一番近い施設である遊園地ですら遠い。
せめてトルタから医療品一式でも受け取っておけば、と悔しがるが後の祭りだ。

「待ってろっ……とにかく、治療できるところに連れていくから!」

抱えた少女を励まして、如月双七は走り出す。
出来るだけ震動を与えないように細心の注意を払いながらも、とにかく自分に出来ることを。

彼は気づかない。当然、知る由もない。
少女の名前は深優・グリーア。主催者と繋がりを持ち、殺し合いを肯定した者である。
彼女は呆然としながらも、薄れそうになる意識を必死に繋ぎ止めて思う。


374 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:24:42 ID:ZXIySXnz
 

375 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:24:44 ID:Y3Q/o1S6
 

376 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:25:04 ID:P+B75bt6
(……照合開始。彼を如月双七と断定……)

どうやら彼は自分を助けようとしているらしい。
今の自分は殺されようが、何をされようが抵抗の出来ない身だ。
そんな状況下で自分を救助しようとする人間と出逢えたことは、僥倖と言ってよかった。

(……エネルギー、残量ほとんどなし。自身の戦闘はしばらく不可能。再稼動の予測は不可……)

深優は思う。
今まで自分で手を下してきたが、そのたびにこうしてエネルギー不足になって無様を晒す。
ウィンフィールドのときも、あの大人数のときもそうだった。
それではアリッサ様を助けることはできない。ここまで生き残っているのは、単に運が良かっただけに過ぎないのだ。

ならばどうすればいいか。
答えは簡単だ。利用すればいい。あくまで実力行使は最終手段と定めるべきだ。
例えば如月双七のように、見ず知らずの人間を助けるお人好し。
彼に偽の情報を与えればいい。場合によっては潜伏し、手を組む必要もあるだろう。

鉄乙女のときのように。
そうして扇動するほうが、何倍も効率が良いと演算の結果が告げていた。


377 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:25:19 ID:Y3Q/o1S6
 

378 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:25:31 ID:ZXIySXnz
 

379 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:25:59 ID:P+B75bt6
(とにかく今は休息……それから、彼に与える情報の選択……)

金属で作られたアンドロイド。
金属と心を通わすことのできる人妖。
思惑はいくつも重なり合い、混ざり合って地獄の島を彩っていく。

時刻は太陽がそろそろ沈み始めようとする時間帯。
日ハ沈ム、駒ハ踊ル。
依存する者、依存される者。利用する者、利用される者。
物語はゆっくりと運命の歯車を回していく。島に集められた駒たちは己の目的のために踊り狂う。



【F-8 平原(マップ上方)/1日目 午後(夕方直前)】

【如月双七@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備】:クサナギ@舞-HiME 運命の系統樹、双身螺旋刀@あやかしびと −幻妖異聞録−
【所持品】:支給品一式×3(食料-2)、予備弾丸18、首輪(リセ)、刹那の制服と下着、ファルの首飾り@シンフォニック=レイン、良月@アカイイト
【状態】:強い決意、肉体疲労(中)、精神疲労(大)、右膝と右肩に貫通射創(処置済み)、左肩裂傷(処置済み)、桂の血に惹かれている。
【思考・行動】
 基本方針:仲間の確保と保護。
 0:とにかく少女を安全な場所に連れて行き、治療する
 1:恭介たちと別れ、第四回放送前にカジノへと戻る
 2:九鬼先生と合流する。 できれば愁厳たちとも合流したい
 3:向かってくる敵は迎撃。必要なら手を血で汚すことにも迷いはない


380 :日ハ沈ム、駒ハ踊ル ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:26:43 ID:P+B75bt6
【備考】
 ※双七の能力の制限は使い続けると頭痛がします。
 ※金属との意思疎通が困難になっていますが、集中すれば聞くことができます
 ※贄の血に焦がれています。 見える範囲に居なければ大丈夫です
 ※どこへ向かうかは後続の書き手にお任せします。



【深優・グリーア@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備】:遠坂家十年分の魔力入り宝石、グロック19(拳銃/弾数7+1/予備48)、Segway Centaur@現実
【所持品】:支給品一式、拡声器
【状態】:エネルギー残量(10%)、自身の能力での戦闘はしばらく不可能、落ちた衝撃でダメージ、肩に銃創、刀傷、全参加者の顔と名前は記憶済み
【思考・行動】
 基本方針:アリッサを救うために行動する。
 0:休息し、如月双七を利用する。
 1:"優勝を目指すが、積極的な殺しはしない"。
 2:できるだけ"殺し合いが加速するように他の参加者を扇動する"。
 3:ここにいるHiME(玖我なつき、杉浦碧、藤乃静留)を殺す。
 4:必要に応じて内通者は複数人いると思わせる。

【備考】
 ※参加時期は深優ルート中盤、アリッサ死亡以降です。
 ※理樹、千華留たちから情報を得ました。
 ※場合によってはHiME能力に覚醒する可能性があります。
 ※アリッサが本物かどうかは不明です。
 ※ミサイルの残弾数については基本はゼロ、あっても残り1発。
 ※スパイのルールはでたらめです。
 ※衛宮士郎による羽藤桂、アル・アジフを襲撃した一連の顛末を目撃しました。


381 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 03:27:23 ID:ZXIySXnz
 

382 : ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:28:50 ID:P+B75bt6
投下完了です。
タイトルの元ネタはひぐらしの曲のひとつ。
【月ハ昇ル、私ハ詠ウ】より。ご支援ありがとうございました!
ご指摘、ご感想をお待ちしております。

383 : ◆WAWBD2hzCI :2008/06/18(水) 03:46:29 ID:P+B75bt6
すいません。
379の部分を少し修正します。

金属で作られたアンドロイド
      ↓
人工的に作られた生体アンドロイド
すいませんが、宜しくお願い致します。

384 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 18:00:38 ID:c3UYZ2TO
投下乙です
もうカジノの入り口に「愛の巣 立ち入り禁止」って看板立てちゃえよトル恭はwww
そんなに二人でラブラブになりたいんならさーwww!
双七君は……これから深優とどうなるかは敵対するのかは分からんが、その間にトル恭がやってることを知ったら泣くに違いない


385 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 18:22:09 ID:gLWM+bKM
流石は空気流!空気を読んだな!(酷

386 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 19:02:51 ID:kKee783+
投下乙です

双七…おまえどこまで利用されれば気が済むんだよ…
いつかまたかっこいい姿を見せてくれ…

387 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 19:31:17 ID:QUK75PDa
投下乙
しかしまぁトル恭はニヤニヤさせてくれますなぁ〜もうずっといちゃいちゃしてればいいよw
双七は活躍の場ができると思ったんだがさらに空気になっちゃいそうだなww

あと>>363
外界と自信ではなく外界と自身だと思います


388 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 22:17:11 ID:ZXIySXnz
投下乙です
トル恭は順調のように見えて当初の目的からずれているが……
まあそれも恋愛フラグに変わるような気がするから恐ろしいw
そして双七君wがんばれw


389 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/18(水) 22:49:07 ID:IZoEyW3T
投下乙です
トル恭はいつ見ても良いカップルだなあ
そして双七君……ちょっとは警戒しろ、お人好し過ぎるぞw

390 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/19(木) 02:10:19 ID:neETSbOT
投下乙です!
トル恭は自重www
それに比べて双七くんは
王子様扱いされたと思ったら刹那に旅立たれ欲情した桂ちゃんはガチレズ
挙げ句の果てに今度は危険人物とか、どれだけ女運がないのかとw
もうトル恭は水でも被って反省して
カジノにありがちなタキシードとバニー服にでも着替えて楽しむといいさwww

391 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/19(木) 23:30:49 ID:6ulURsC6
週刊ギャルゲロワ2nd第12号(6/19)
先週の主な出来事

  .'^⌒^丶
 ′ノソノ(ノゞ
 ヽ6トO_Oノy━~~ <白狼のッッ!!!
<~ヽiΨi.ノ
  i_||
   i_/ J

    __)>_
  '´    ヽ
 | /レノ)〉))〉
 /(iゝ゚ ー゚ノ  <偃月刀ォォォォォォォォォォォォ―――――!!!!!
  ()}]!穴[つ
   i' Tj
   |_ノ_j

     _                         __)> 、
    , ´   `ヽ       .'^⌒^丶         '´    ヽ|l     
.  ノ イ,ノメリハ96     ′ノソノ(ノゞ      | /レノ)〉)〉.|l    
  '、ノl!| ゚ ー゚ノjl      ヽ6トO_Oノ       /(iゝ゚ д゚ノ |l 
    {バヽyノヘ   . .:96 ≡≡三 三ニ⌒)   ()}]!穴[つヨ
.  ノ `ヒ∞コ´P .: ゚      i_||           i'Tj  l」   
   ヽノレiテ、ト'        i_/ J ━~~      |_ノ_j


虎太郎九郎ユメイ「「「「切り裂けえええェェぇぇぇぇぇぇ!!!」 」」



392 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/19(木) 23:31:21 ID:6ulURsC6
・東に鬼神あり、強き業に言霊の力、人、これを鬼神乙女といふ。 
・西に邪神あり、数多の宝具に闇の胎児、人、これをアンリマユ・ザ・世界といふ。

・誠よ…綺麗なままで逝ったか……お前は紛れも無い主人公だったぞ!
・加藤先生ーー!! 教育者の名に恥じぬ散り様でした…尾花も御疲れ様。
・葛木先生ーー!! 貴方は立派な人間でしたよ! 相棒は良いなあ。
・遊園地に地獄が生まれる? 多少減ったとはいえ廃墟化の危機高し。
・士郎…立派になったね…(違) 今のお前は紛れも無いチート級マーダーだよ。
・クリス…お前はまた女性のみのパーティと出会ったのかw トルタは恭介と恋人になったから大丈夫さ!
・ツヴァイも漸く貫禄が…でもこのみの方が強そうなのはどういう事だろう…?

先週(6/9〜6/19)までの投下数:12作
死者:3名+1匹(伊藤誠、尾花、加藤虎太郎、葛木宗一郎)
現時点での鬼他:羽藤桂(鬼)、柚原このみ(少し綺麗な悪鬼)、鉄乙女(鬼神)、西園寺世界(アンリマユ・ザ・ワールド)
現時点(6/19)での予約:3件(◆Uc氏、◆HlL氏、◆SwY氏)


393 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/19(木) 23:32:10 ID:6ulURsC6
むう、多少ずれたか…失礼。

394 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/19(木) 23:56:56 ID:bq7KJMBM
まとめ乙!

白狼の偃月刀w
本編では確かにかっこ良かったのにAAで見ると和んでしまう、ふしぎ!

395 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/20(金) 12:31:30 ID:mwkcPUR6
週刊ギャルゲ乙!
今回の死者は綺麗なのが多かったな。尾花除いて

396 :小さな疑問がよぎる時 ◆HlLdWe.oBM :2008/06/22(日) 00:14:16 ID:jaTGTT5V
そこには所謂クレーターと呼ばれるものが存在していた。
おそらく重火器による砲撃か、時限式の爆弾か、または人外による一撃か。
一見しただけでは分からないが、これを作った者が要注意人物であるという事は分かる。
九鬼耀鋼と一乃谷刀子。
彼らは人を探していた。
九鬼は有望な戦力であるアル・アジフと羽藤桂、そして莫迦弟子である如月双七を。
刀子は自身の愛すべき人である如月双七を。


          ▼


刀子の着衣が済むと、九鬼と刀子は連れ立って九鬼がアル達と別れた場所に向かった。
急ぐならば電車を使うほうがいいのかもしれないが、それは避けた。
数時間前、九鬼はアル達と共に電車で移動中に遠距離から襲撃された経験がある。
同じ事が二度あるとは言い切れないが、無いとも言い切れない。
だからこそ多少の時間はかかるが、自身の足を使う事にした。
電車という狭い箱では如何せん襲撃された時の対応が取りづらい。
そのような理由で九鬼と刀子は電車での移動を見合わせる事にして、移動を開始したのだった。

そしてその途上、二度目の放送が行われた。
だが今回は一度目とは違い、神崎という人物が要点だけを言って簡潔に終わった。
だからといって告げられた内容を軽視していいという事など全くない。
この6時間で新たに命を失ったのは14人、前回の放送より多い。
やはりこの殺人遊戯は着実に進行している。
それを望もうが望むまいに関係なしに、人の思惑を越えて進んでいく。
幸いな事に九鬼と刀子の知り合いは名前を呼ばれる事はなかった。
しかし安心はできない。
今この瞬間にも自分達の探し人が命を落としているとも限らない。
だからこそ二人は急いだのだ。


397 :小さな疑問がよぎる時 ◆HlLdWe.oBM :2008/06/22(日) 00:16:17 ID:jaTGTT5V
結果、探し人の行方は杳として知れなかった。
一応その周辺も探してみたが、結果は同じだった。
それも無理のない事だ。
九鬼がアル達と別れてから既に4時間以上は経過している。
双七に至っては6時間も前に別れている。
さすがに別れた場所から既に遠くへ移動していて当然であった。
捜索しようにも行く当てが思いつかないのでどうしようもない。
ここは一度腰を落ち着けて今後の身の振り方を決めようと、九鬼は近くにある最初に訪れた居酒屋に向かう事にした。
同じく探す当てがない刀子ももうしばらく九鬼と同行する事にした。

しかしここでちょっとした事件が起こった。
きっかけは刀子が九鬼から居酒屋での行いを聞いた事だった。
九鬼の持っている酒は主催者からの支給品ではなく、居酒屋から現地調達したもの。
「酒は別だろう」と思ったからこそ九鬼は何も言わなかったのだが、刀子としては九鬼が故意にその事実を伏せていたと若干の勘繰りを入れてしまう。
そしてこの事実を聞いた刀子はある希望を見出した。
つまり衣服の類もどこかにあるのではないかと思ったのだ。
その考えに至るや否や、刀子は勢い勇んで九鬼を説得し始めた。
さすがにうら若き年の乙女、このままウエディングドレスで行動するのはやはり恥ずかしいのだ。

「……分かった。30分だけだぞ。俺はあそこの居酒屋にいるからな」
「はい、では後ほど」

九鬼もとりあえず一休みして今度の方策を考えたかったので、時間つきで刀子の衣服捜索を認めてやった。
同意を得ると、刀子はすぐさま手短な民家へと滑りこんで行った。
今の刀子の姿はウエディングドレスにブルマという通常ならありえない異色のコラボレーションだ。
さらにそのドレスの丈は驚くほど短く、自然と急いで走った刀子は気付かぬうちに九鬼にその躍動感溢れるナイスブルマを惜しみなく披露する事になっていた。
それを見た九鬼は――

「――――――」

――何か言ったようだが、それは風の音にかき消されたのだった。

398 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 00:16:52 ID:yq23umhd
 

399 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 00:17:29 ID:LrPa7dTg



400 :小さな疑問がよぎる時 ◆HlLdWe.oBM :2008/06/22(日) 00:17:43 ID:jaTGTT5V


          ▼


「さてと……」

数時間前、九鬼がこの地に来てから立ち寄った建物、居酒屋。
そこは以前と何ら変わらない姿でそこに存在していた。
そしてカウンターには九鬼が用意したグラスと中身が減った酒の一升瓶。
もちろん減った分の酒瓶は抜け目なくデイパックの中に補充しておいた。
あまり長居は望ましくないが、適度な休息が必要なのもまた事実。
九鬼の考えでは30分ほどしたら、また移動を開始する気だった。
とりあえずそれまでに今度の身の振り方を決めておきたい。

まず優先して探したいのはアル・アジフと羽藤桂、それに如月双七。
3人とも放送では名前を呼ばれなかったからその時点で無事という事は分かった。
加えてアル達はどうやら窮地を脱したようだ。
別れた時は引け目なしで最悪と言っても過言ではない状態だった。
その状態で4時間生き延びられたという事は襲撃を逃れて適切な治療を施せた可能性が高い。
だがあの襲撃では当初の予定通り病院へ無事に辿りつけたとは考え難い。
そうだとすれば何か別の要因で助かったという事になるが、これ以上は推測しようがなかった。
双七に関してもどこにいるのか皆目見当もつかなかった。



401 :小さな疑問がよぎる時 ◆HlLdWe.oBM :2008/06/22(日) 00:18:58 ID:jaTGTT5V
「……佐倉霧か」

実は九鬼にとって聞き覚えのある名前が一つ先程の放送で呼ばれていた。
その者の名は佐倉霧。
九鬼がここに来て最初に出会った参加者だ。
いくらか情報交換をした、ただそれだけの関係だ。
だがそこでふと思い出すのは彼女を探していたあの少年――電車を狙撃してきた少年だ。
彼が放送を聞いて何を思うかは容易に想像できた。
あれほど必死に探していたのだ。
もし彼自身の知らない所で佐倉が死んだと知れば……その先は自ずと見えてくる。

「……俺には関係ないか」

もしかしたら恨まれているかもしれないと思いつつ、九鬼の思考は次の議題に移る。
九鬼はデイパックに手を入れ、共通支給品の地図を取り出した。
もちろん禁止エリアの情報は書き込み済みだ。
今度の行き先をどこにするべきか考えているのもあるが、それとは別に九鬼には引っ掛かる事があった。
それはほんの小さな疑問だった。
しばらくそれについて考えていると、不意に居酒屋の扉が開く音が聞こえてきた。
後ろを振り返ると、案の定一乃谷刀子だった。



402 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 00:19:49 ID:LrPa7dTg



403 :小さな疑問がよぎる時 ◆HlLdWe.oBM :2008/06/22(日) 00:20:28 ID:jaTGTT5V
「その様子だと、やっぱり衣服はなかったみたいだな」

刀子がウエディングドレスの代わりを見つけられたかどうかは、今の彼女の服装が雄弁に物語っていた。
目に映るのは30分程前と何ら変わりない出で立ち――ミニウエディングドレスにブルマという出で立ち。
この辺りの民家に衣服の類がなかった事は明白だった。
「やはり酒は別か」と九鬼が思っていると、刀子はおもむろにデイパックから意外なものをカウンターの上に置いた。
クッキー一箱、シーツ1枚、それに包丁2本。
九鬼の記憶では刀子のデイパックにはこのようなものはなかったはずだ。

「これは?」
「この辺りの民家にあったものです。衣服はありませんでしたが、使えそうなので拝借してきました。
 どういうつもりなのでしょうか、主催者は?」

少し前に九鬼は現地調達など無理だと言ったが、それをあっさりと否定される結果となった。
これはどういう事か。
九鬼はしばらく考え、そして答えを出した。

「考えられる可能性の一つに『救済』というものがあるな。
 包丁なら武器に、食料なら空腹を解消できる」



404 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 00:21:25 ID:LrPa7dTg



405 :小さな疑問がよぎる時 ◆HlLdWe.oBM :2008/06/22(日) 00:22:01 ID:jaTGTT5V
つまりこういう事だ。
この島には殺し合いに乗った者が何人かいる。
だがその一方で自分達のように殺し合いを良しとしない者もいる。
そこで対立が起こるのは必定である。
その時に決着がつけばよいが、そう上手くはいかないだろう。
荷物を捨てて撤退する事もあるかもしれない。
それが殺し合いに乗った者ならその者は牙を抜かれたも同然だ。
殺し合いをしてもらいたい主催者にとって、それは好ましくない状況である。
それを救済するための処置。
牙を抜かれた者が訪れるのはとりあえず休息ができる目立たない場所だろう。
その点、町中の民家なら周辺にいくつも点在していて隠れるのには適している。
そこに食料や武器になりそうなものを置いておけば、殺し合いに乗った者にとって大きなメリットになるだろう。

「これが可能性の一つだ」
「なるほど。では私達が事前にそれらを回収できたのは僥倖なのですね」
「まあ、そうでもないかもしれん。
 もしかしたら殺し合いに乗った者が仕掛けた罠かもしれないしな」
「――ッ!?」

今の仮説は主催者側が設置したという場合のものだ。
もしこれを設置した者が殺し合いに乗った者なら話は違ってくる。
自分の荷物の中で訪れた者が取っていきそうな物に毒や罠を仕掛けて何気なく置いておけば、何も知らない者が拾って比較的労せず参加者を減らせる。
そう考える者がいるかもしれない。
殺し合いに乗った者にとって自分の手を汚さずに参加者を減らす手段の一つだが――

「言っておいてなんだが、この可能性は低いな」
「やはり、非効率だからでしょうか」
「ああ、そうだ」


406 :小さな疑問がよぎる時 ◆HlLdWe.oBM :2008/06/22(日) 00:22:53 ID:jaTGTT5V
仮にその罠を仕掛けたとして、掛からなければそれに意味はない。
地図に載っている場所ならともかく、載っていない民家に仕掛けるなど非効率すぎる。
この辺りでも民家は数多く建っている、島全体ならその数はさらに膨れるだろう。
その中で人が来ると予想して仕掛けるにはどう考えても無謀だ。
不確定要素が多すぎるからだ。
訪れるかも分からない、訪れたとしても手に取るか分からない、まだまだ他にも不確定要素はある。
こんな状態ならわざわざ自分の持ち物を手放してまで罠を仕掛けるメリットはほとんど無いと言っていいだろう。
だから――

「この辺りで調達してきたものに然して問題はないだろう。
 まあ、実は単に主催者側が回収し損ねたという可能性もあるがな」

カウンターの上にはいつのまにか空になった酒瓶と中身が無くなったクッキーの箱があった。
話しているうちに軽い食事代わりに頂かせてもらった。
休息も十分取ったのでそろそろ行動を開始しようかとした時、九鬼はふと刀子に声をかけた。



407 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 00:24:28 ID:LrPa7dTg



408 :小さな疑問がよぎる時 ◆HlLdWe.oBM :2008/06/22(日) 00:24:37 ID:jaTGTT5V
「なあ、お嬢さんは『廃屋』と聞いて何を想像する?」
「廃屋、ですか? そうですね。やはり荒れ果てた家屋が思いつきますが、それがどうかしたのですか」

刀子が答えると九鬼はカウンターに広げていた自分の地図のある部分を指し示した。
その場所はF-5とF-6の中間、若干南寄りのその位置に『廃屋』の文字があった。

「おかしいと思わないか」
「どういう事でしょうか?」
「お嬢さんも言った通り、廃屋なんて普通は荒れ果てて無人になった家屋を思い浮かべるよな。
 つまりは用済みのものだ。なら、なんでそんなものをわざわざ地図に載せる必要があるんだ」

病院、博物館、神社、遺跡、教会、カジノ、温泉旅館、発電所、他にも地図上には参加者にとって有益そうな場所が明記されている。
その中で『廃屋』は異質だった。
どう考えても普通の民家の方がまだ利用価値はあるのに、わざわざ廃屋を載せる意味。

「……つまり『廃屋』はなにかしら特別な場所である可能性があると」

刀子の答えは九鬼の考えとほぼ同じものだった。
そうでなければ、わざわざ載せる意味が見当たらない。
主催者側の気紛れという可能性もあるが、ここまで大がかりな準備を整える事実からそれはいささか考え難かった。
同じような理由で廃校も挙げられるが、廃校と廃屋では建造物としての規模が違い過ぎる。
廃校なら校内を探せば使える箇所もあるだろう。
だが廃屋の中を探ったところで使えるものが見つかるとは思えない。



409 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 00:25:12 ID:LrPa7dTg



410 :小さな疑問がよぎる時 ◆HlLdWe.oBM :2008/06/22(日) 00:26:48 ID:jaTGTT5V
(むしろこの島がどういったものなのかが問題だな)

今までの経緯から主催者側が並行世界や時間軸に干渉できるという九鬼の考えはほぼ確かだろう。
この島も主催者側にとって都合のいい世界の、都合のいい時間軸のものを用意した可能性が高い。
その方が安全に殺し合いをさせられるし、何よりそれだけの力がありながら自分達にとって不利な世界・時間軸で執り行う理由などない。
そしてこの島の由来。
普通に考えれば既存の島を流用しているという考えを抱く。
当然これだけの建造物が点在している島だ、以前は人がいただろう。
その彼らがどこに行ったかは定かではないが、主催者側の力を考えれば人を消すぐらい造作もない事だろう。
だがそこで腑に落ちない事がある――この島はあまりに雑多過ぎる。
例えば宗教にしても、仏教の寺に神道の神社、キリスト教の教会や大聖堂、イスラム教のモスク。
島ならある程度1つか2つの宗教で固まるはずだが、ここは3つ厳密には4つの宗教が同居している。
それにここは島の面積に対して施設の数が多いように思われる。
つまり推測される島の人口と施設の配置がそぐわないのだ。
島を丸ごと一から作ったという可能性もあるが、それなら施設の数にも多少は納得がいく。
地図に記載されていれば人はそこへ行こうと無意識に考えるだろう。
そして参加者同士が遭遇して、自然と殺し合いが起こる確率が高まる。
先の現地調達できたものといい、これなら殺し合いを促進させるという理由で一括りにできる。
だがそれなら尚更『廃屋』はわざわざ主催者側が設置したという事になる。
果たして『廃屋』に如何ほどの意味があるのか。

「何にしても結論を出すのには情報が足らないな。そろそろ行くぞ」
「はい、廃屋へ行くんですか?」
「いや、さっきも言ったが只のブラフの可能性もある。
 だからまずはそれぞれの探し人だ。なるべく早く再開したいところだが、さてどうなるかな」

九鬼耀鋼は探し求める――魔道書とその契約者、そして莫迦弟子を。
一乃谷刀子は探し求める――愛すべき者を。
一乃谷愁厳は眠る――大切な妹とその恋人を想って。

探し人の無事を祈る中、彼らが向かう先は果たして――


411 :小さな疑問がよぎる時 ◆HlLdWe.oBM :2008/06/22(日) 00:28:24 ID:jaTGTT5V



【G-6 歓楽街の居酒屋/1日目 日中】

【九鬼耀鋼@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、不明支給品×1、日本酒数本
【状態】:健康、肉体的疲労小
【思考・行動】
基本方針:このゲームを二度と開催させない。
0:アル達と合流。とりあえず都合が変わるまでは刀子と同行。
1:首輪を無効化する方法と、それが可能な人間を探す。
2:制限の解除の方法を探しつつ、戦力を集める。
3:自分同様の死人、もしくはリピーターを探し、空論の裏づけをしたい。
4:如月双七に自身の事を聞く。
5:主催者の意図に乗る者を、場合によっては殺す。
6:いつか廃屋に行ってみるか。

【備考】
※すずルート終了後から参戦です。
 双七も同様だと思っていますが、仮説に基づき、数十年後または、自分同様死後からという可能性も考えています。
※自身の仮説にかなり自信を持ちました。
※今のところ、悪鬼は消滅しています。
※主催者の中に、死者を受肉させる人妖能力者がいると思っています。
 その能力を使って、何度もゲームを開催して殺し合わせているのではないかと考察しています。
※黒須太一、支倉曜子の話を聞きました。が、それほど気にしてはいません。
※アルとの情報交換により、『贄の血』、『魔術師』、『魔術』、『魔導書』の存在を知りました。
 情報交換の時間は僅かだった為、詳細までは聞いていません。
※首輪には『工学専門』と『魔術専門』の両方の知識が必要ではないか、と考えています。

412 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 00:30:02 ID:LrPa7dTg



413 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 00:34:25 ID:LrPa7dTg




414 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 00:37:35 ID:LrPa7dTg



415 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 00:43:54 ID:LrPa7dTg



416 :代理投下:2008/06/22(日) 00:56:23 ID:meR0unFu
【一乃谷刀子@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備】:古青江@現実、ミニウエディング@THE IDOLM@STER、ナイスブルマ@つよきす -Mighty Heart-
【所持品】:支給品一式×2、ラジコンカー@リトルバスターズ!、不明支給品×1(渚砂)、愁厳の服、シーツ、包丁2本
【状態】:健康
【思考・行動】
基本方針:殺し合いには乗らない。兄の愚かな行いを止める。
1:双七の捜索。とりあえず都合が変わるまでは九鬼と同行。
2:主催者に反抗し、皆で助かる手段を模索する。
3:兄の犯した罪を償いたい。

【備考1】
【一乃谷愁厳@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【状態】:疲労(中)、右肩に裂傷、腹部に痣、白い制服は捨てた状態、精神体
【思考】
基本方針:刀子を神沢市の日常に帰す。
0:気絶中。
1:生き残りの座を賭けて他者とより積極的に争う。
2:今後、誰かに名を尋ねられたら「黒須太一」を名乗る。

【備考2】
※一乃谷刀子・一乃谷愁厳@あやかしびと −幻妖異聞録−は刀子ルート内からの参戦です。しかし、少なくとも九鬼耀鋼に出会う前です。
※サクヤを人妖、尾花を妖と警戒しています。(愁厳のみ)

※二人がどこへ向かうかは後続の書き手にお任せします。


投下終了です。矛盾、疑問などありましたらご指摘ください。支援ありがとうございました。

417 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 00:57:06 ID:meR0unFu
投下乙!
うむ、さすがは九鬼先生。決してナイスブルマの言質を我々に取らせないなw
現地調達についての考察もよし。少し考えたら毒も仕込めるかも知れない
廃屋……さて、彼らの共通の捜し人はいま、何処で利用されているんだろうかw

418 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 01:04:28 ID:TgZnB/+g
投下乙

現地調達で衣服の類は見つからない…
なるほど、つまりいざとなったら素っ裸で戦えということッ!
分かってるじゃないか主催者共め

419 : ◆HlLdWe.oBM :2008/06/22(日) 01:49:29 ID:jaTGTT5V
代理投下ありがとうございました

420 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 08:56:37 ID:xdsyNXBq
音が聞こえていた。

とても綺麗で透き通るような音が。

それはやすらげるような音。
それは落ち着かせるような音。

音が満ちていた。

私の世界に。

私は知っている。
この音を奏でる人を。

私は笑顔を作りながらその人のところに向かう。

彼は一心不乱にその音を奏でる。

ああ、きっと有意義な時間を過ごせる。

私は彼の隣の席に座り目を閉じその音を聞く。

ふむ。
実にいい。

世界は音に満ちて。

私はその中に溶け込むような気がした。
できる事ならそこにずっといたいとさえ思って。

「ユイコ……」

421 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 08:57:05 ID:0xACWcFZ


422 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 08:57:16 ID:jaTGTT5V


423 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 08:58:39 ID:xdsyNXBq
「……何だい?」

奏で手が私に語りかける。
凄く穏やかに。
私はそれを笑みを持って返す。

「この曲はユイコの為の曲なんだ」
「……へえ。それはいいな」

私はその言葉に心が少しだけ踊り彼の言葉の続きを待つ。

「だから……」

しかし声は続かなかった。
そして音は止まった。

世界は唯、静寂に包まれて。

「……クリス君?」

私は眼を開ける。
そこにはクリスがゆっくりと横になっていた。

ああ。

そうか。

そうだったな。

……なあ。


424 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 08:58:57 ID:vKntuYmh



425 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 08:59:05 ID:jaTGTT5V


426 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 08:59:14 ID:0xACWcFZ


427 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 08:59:59 ID:vA+DyJhu
支援

428 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:00:31 ID:xdsyNXBq
……クリス君は。

いなく……なったん……だった……な

……ああ


「……クリス君」




「……ああああああああぁぁぁああああああああああああああぁぁぁあああああああああ!!!」






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「……ああああ!!!……はぁ……はぁ……夢……か」

私はがばっとベットから跳び起きる。
体を震わせながら。

そうか。

429 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:00:49 ID:0xACWcFZ


430 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:00:53 ID:jaTGTT5V


431 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:01:24 ID:0xACWcFZ


432 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:01:26 ID:xdsyNXBq
夢だ。

夢なんだ。

クリス君はもういない。

クリス君の手を離した手が震える。

震えて。
震えて。

震えが止まらないんだ。

どうしてだ?

どうして?

ここまでになる?
私は。

クリス君……

「……馬鹿だよ……君は……」

心があるって?
そうだな、あるのかもしれない。
でもな。

あると気付かせたら最後まで面倒見なくちゃ駄目だろう!


433 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:01:56 ID:0xACWcFZ


434 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:02:03 ID:jaTGTT5V


435 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:02:27 ID:xdsyNXBq
どうすればいい? この不完全な心を。

怖いんだ。

不完全な心を持って。

ああ。

クリス君、逢いたい。

君は今何処……

「目が覚めたみたいやね……唯湖はん」
「……静留君。どうやら無事だったようだな」
「……おかげでね、おおきに」

静留君は多少傷を負ってるものの元気そうに動いてる。
どうやら私は彼女を助ける事ができたらしい。
そうか。
……よかった。

「……唯湖はんの意識も戻ったみたいやし……行きますかな」
「……どういうことだ?」
「どういうことって借りも返したし……もどるだけや」

彼女はそう事もなく言う。
戻る。
それはつまり。


436 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:02:32 ID:0xACWcFZ


437 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:02:52 ID:jaTGTT5V


438 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:03:35 ID:xdsyNXBq
「また、君は殺し合いをするというのかい?」
「……せや」

……やはり。
彼女は変わらないんだな。

ある意味羨ましい。
その強さが。

私は迷ってばかりだ。
私はこんなにも弱かったのかな。

ああ、嫌だ。
この中途半端の心が。

求めて。
求めて仕方ない。

「……止めないんか?」
「……ん?……ああ……どうすればいいのだろうな? 私は」

わからない。
私は彼のような様にやればいいのか。
彼の様に哀しみの連鎖を止めればいいのか。

わからない。

私は……
私は……

そもそも……

439 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:03:38 ID:vKntuYmh



440 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:04:04 ID:jaTGTT5V


441 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:04:13 ID:vKntuYmh



442 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:04:14 ID:0xACWcFZ


443 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:04:22 ID:xdsyNXBq
どうして私はこうなってる?

静留君がふぅと溜め息をつきある名を呼ぶ。

「クリスはん」
「……!?」

ビクッと体が震える。

何故だ?
唯名前が呼ばれただけなのに。

何故?

「……はぁ……やっぱりな」
「何がだ?」
「そんな腑抜けた状態におるんはクリスはんのせいってことや」

……言われなくてもわかってる。
それくらいの事は。

でもそれでも。
こんなになるとは思わなかったよ。

クリス・ヴェルティン。

私にとって彼はどんな存在だったのかな。
こんなにも重たいものになっていたのかな。

「……クリス君……何の為に君は私を生かしたのかな」

私にはしっかりと心があるといって君は消えた。

444 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:04:38 ID:0xACWcFZ


445 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:04:48 ID:vA+DyJhu
支援

446 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:05:14 ID:xdsyNXBq
私はその言葉にこんなにも迷いそして後悔している。

クリス君、君は相変わらず大切な事を忘れている。
君がいなければ心は完成しないよ。
怒りという感情も君を失って手に入ったのだから。

なあ。

クリス君。

もしもだ。

もしも


「……君と一緒にあの時消えていればこんなにも苦しまないですんだのかな? そうすればこのくる……」



パシィィィ!



強く。

とても強く。

乾いた音が響く。

痛む頬。


447 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:05:26 ID:0xACWcFZ


448 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:05:42 ID:jaTGTT5V


449 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:06:18 ID:jaTGTT5V


450 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:06:22 ID:xdsyNXBq
目の前にわなわなと体を震わす静留君。

「何言うとりますのん……このふざけた事を……!」

まるで侮蔑するかのように私を睨む。
私はそれを見つめるだけ。

「クリスはんは何の為に唯湖はんを護ったの……それなのに唯湖はんはそんな事いって……クリスはんの事なんもわかってへんの!」

わかってない?
なにを……

何を……いってるんだ。

私はクリス君といて。
一緒に合唱して。
一緒に温泉に入って。
一緒に笑いあって。
一緒にとても有意義な時間を過ごして。

私は……

私は少なくても



パシィィィ!


「私はこの島にいる誰よりもクリス君の事をわかっている! 静留君に言われるまでもない!」


451 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:06:59 ID:xdsyNXBq
私は強く宣言し彼女の頬を打つ。
なんともいえない怒りだった。
私にとって2回目の。

何故か共に過ごした時間を否定された気がして。
彼と共に培っていったものを否定された気がして。

とても腹立ったしかった。

しかしその直後。

パシィィィとまた強い音が響く。

「なら! ここで沈んでおるのをクリスはんは望まない事を唯湖はんしっとるはずやない! なのに何故それをやるん!」

……そうだが。
……だがな。

だがな静留君。

パシィィィ!

「それを君に言われたくないな! 君が大切にしてるなつきという人は静留君に殺人をして欲しくないと願う事は君自身がわかっていることだろう!」

パシィィィ!

「知っとるよ……でも命懸けてまで護り通したい人なんや!」

パシィィィ!

「だが手段というものがあるだろう! そんな方法誰も喜びはしない!」


452 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:07:21 ID:0xACWcFZ


453 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:07:32 ID:jaTGTT5V


454 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:07:46 ID:0xACWcFZ


455 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:08:43 ID:xdsyNXBq
「やかましいわ……うちはそれをやり通す……唯湖はんみたいに燻ってる暇はないんよ!」

パシィィィ!

「うるさい……静留君は失ってないからそんな事言えるんだ……偉そうに言うんじゃない! 静留君が殺した人間が誰かの大切な人を奪う事になるんだぞ!」

パシィィィ!

互いの頬を打つ音と叫びが広がる。

互いの不安、苛立ちをぶつけ。

相対する人を正す為。

ただ、頬を打ち合っていた。

正しくこれは。

女の喧嘩、女の戦いだった。

その後も私と静留君の喧嘩は続いた。

私は唯この心のざわつきをぶつけていただけ。
唯単純に私達が強情だっただけかもしれない。
それでもこの喧嘩は意味があると思った。

そして暫くの時がたって。

お互い言い尽くして。
お互いの頬が真っ赤になって。


456 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:08:57 ID:vA+DyJhu
支援

457 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:09:00 ID:vKntuYmh



458 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:09:10 ID:0xACWcFZ


459 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:09:33 ID:jaTGTT5V


460 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:09:34 ID:xdsyNXBq
静留君が一息ついて一言私に尋ねる。
それは私にとっても心に波紋を与える事になった。

「唯湖はん……最後に一つだけ……唯湖はんにとってクリスはんは大切な人……それはみればわかりおる……でもどんな大切なんや?……唯湖はんはクリスはんをどう思っておりますのん?」

どんな大切?
私はクリス君をどう思っている?

理樹君や鈴君のようなリトルバスターズの大切とは何処か違うと思う。

私にとってクリス君は……
何か穏やかになれるんだ。
一緒に笑っていたい。
もっともっと傍にいたい。
そう思えて。

何故か。

胸の奥底からその気持ちが溢れて。

溢れて止まらない。

なあ。

この感情は何だ?

教えてくれ。

なんなんだ。これは。


461 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:09:59 ID:0xACWcFZ


462 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:10:01 ID:vKntuYmh



463 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:10:17 ID:xdsyNXBq
心を知れば知っていく程。

空しさ哀しさが広がっていく。

だけど

知りたい。

もっと知りたい。

不完全でない私でないように。

それがクリス君が望む事だろうから。

「何だろうな? よく分からない……でもなクリス君に逢いたい……もっともっと傍にいて欲しい! もっともっと一緒に笑っていたい! 
 あの時間を取り戻したい!……そういう思いが止まらないんだよ……なんだ……何なんだ……この感情は……」
「……それは恋……いや、唯湖はん自身で気付かなきゃあかんね」

そう静留君は言って山小屋の出口に向かう。
何処かすっきり顔をして。

「せやけど……その気持ち……大事にな……うちは道は変えん……でもその気持ちはうちと変わらんから……せやけど次会う時は容赦せんよ。うちも大切な人護りたいから」

そういって山小屋から出て行った。

この気持ち?
自分で気付かなければならない?

なんだそれは。
分からない。


464 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:10:54 ID:xdsyNXBq
知りたい。

知りたいよ。

心をもっと。

……駄目だ。

やはり足りない。

理解するには最も必要なピースが足りない。

私は立ち上がって出口に向かう。


この世にはもう存在しないピースを探しに。


【E-5 山小屋/一日目 夕方】



【藤乃静留@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備:殉逢(じゅんあい)、。コルト・ローマン(1/6)】
【所持品:支給品一式、虎竹刀@Fate/stay night[Realta Nua]、木彫りのヒトデ1/64@CLANNAD】
 玖我なつきの下着コレクション@舞-HiME 運命の系統樹、
【状態】左の太股から出血(布で押さえていますが、血は出続けているが少量に)、
 左手首に銃創(応急処置済み)、 全身に打ち身
【思考・行動】
 基本:なつきを探す なつきの為に殺し合いに乗る。
 1:なつきの為に殺し合いに乗る。

465 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:11:04 ID:jaTGTT5V


466 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:11:59 ID:0xACWcFZ


467 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:12:32 ID:xdsyNXBq
2:殺し合いに乗る事に迷い
 3:太股の傷を治療する為の道具を探す。
 4:なつきに関する情報を集める。
 5:衛宮士郎を警戒。
【備考】
 ※下着コレクションは使用可能です。
 ※理樹を女だと勘違いしてます。
 ※詳しい登場時系列は後続の書き手さんにお任せします。
 ※死者蘇生に関して否定。
 ※士郎より聖杯についての情報を得ました。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






私は唯、歩いてた。

何処に向かっているかさえ理解できない。

唯気の向くまま。

この気持ちを知るために。


468 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:12:33 ID:vA+DyJhu
支援

469 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:13:28 ID:0xACWcFZ


470 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:13:36 ID:xdsyNXBq
私にとってクリス君というものは何か知るために。

心を知るために。

でもその全てを知るには絶対に必要ピースがないものも知っていて。


気が付くと私はある廃れた小屋に辿り着いた。
何となく入ってみる。

「……人? 死んでいる……この子は……まさか……」

ベットに寝かされている小さな体。
転がる小さな首。
そのあどけなさそうな顔。
そのクリス君と同じ校章が付いてる服。

まさかこれは……

「クリス君が言っていたリセルシアなのか?」

推測だったがほぼそれに違いないと私は断定していた。

クリス君に好意を持っていたかも知れない少女がここにいた。
わたしは唯呆然と立ち尽くしその遺体を見つめる。

「……このままにしておけないな」


471 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:14:28 ID:0xACWcFZ


472 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:14:57 ID:jaTGTT5V


473 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:15:31 ID:xdsyNXBq
胸深い傷がある。
これが死因だろう。
だがこの遺体をこのままにしていくわけにはいかない。

私は軽い彼女の遺体を抱え外に出る。

空はもう紅く染まっていた。
彼女のその胸の様に。

私はある大きな木の元を選び廃屋にあったスコップで少し穴を開け彼女を埋める。


なあリセルシア君。

私はクリス君を探し続けていいのかな。
もうこの世界にはいないかもしれないのに。

でもそうしなきゃ私は私で居れない気がするんだ。
心を知ることが無理な気さえするんだ。
そしてこの気持ちを知るために。

どうだろうか?

私は帰ってくるわけがないこたえを求めた。
死者に語る言葉なんてないのに。

でも。

―いいですよ、互いのたいせつなひとなのだから賛成するのはあたりまえです――


474 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:16:14 ID:0xACWcFZ


475 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:16:24 ID:jaTGTT5V


476 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:16:36 ID:xdsyNXBq
そんな答えが返ってきた気がした。
幻聴に決まっているけど。
同じ大切な人という言葉と共に。


「……そうだな。そうするよ。私は探し続ける。知るために」

そう応えないといけない気がして。
私はそういって。

その場を立ち去った。

もう言葉は要らなかった。




空が紅に染まる中私は歩き続けていた。

ただ。

唯知る為に。


なあ。

クリス君。

心はこんなにも重いものだな。


477 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:16:50 ID:0xACWcFZ


478 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:17:04 ID:xdsyNXBq
君に逢いたくて仕方ない。

例え無理だとしても。

逢いたい。

知りたいんだ。

この気持ちも。

心も。

君も。

すべて、すべて。

知りたいから。

私は進むよ。

知る為に。

なあ、クリス君。




【F-5 中央/一日目 夕方】



479 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:17:26 ID:xdsyNXBq
【来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!】
【装備】:デザートイーグル50AE(6/7)@Phantom -PHANTOM OF INFERNO-
【所持品】:支給品一式、デザートイーグル50AEの予備マガジン×4
【状態】:脇腹に浅い傷(処置済み) 、全身に打ち身
【思考・行動】
 基本:殺し合いに乗る気は皆無。
 0:知りたい……
 1:クリス君……どこにいる?
 2:碧達のの安否がきになる
 3:いつかパイプオルガンを完璧にひいてみたい
 4:リトルバスターズのメンバーも一応探す

【備考】
 ※クリスはなにか精神錯覚、幻覚をみてると判断。今の所危険性はないと見てます
 ※千羽烏月、岡崎朋也、椰子なごみの外見的特長のみを認識しています
 ※静留と情報交換済み
 ※来ヶ谷は精神世界からの参戦です
 ※美希に僅かに違和感(決定的な疑念はありません)
 ※太一と第三回放送頃に温泉旅館で落ち合う約束をしています



480 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:17:38 ID:0xACWcFZ


481 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:17:44 ID:vA+DyJhu
支援

482 :know ◆UcWYhusQhw :2008/06/22(日) 09:18:15 ID:xdsyNXBq
投下終了しました。
支援有難うございます。
誤字矛盾があったら指摘お願いします。


タイトルは「know」です。


483 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:18:20 ID:jaTGTT5V


484 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:21:53 ID:0xACWcFZ
投下乙です。
女の戦い……、そして別々に再スタート。
紅い空。その先へと往く彼女達を待つのは……?

GJでした!

485 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:27:58 ID:jaTGTT5V
投下乙です
なんというビンタ合戦w女の戦いw
それと死体損壊が激しいこのロワできれいに埋葬されるとはリセも運がいい
それぞれの想いを胸に新たに歩みだす二人。GJです。

486 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/22(日) 09:33:58 ID:vKntuYmh
投下乙です

Hl氏
おお、やっと空気組動いた。ナ……はきっと幻聴でしょうw
先生はすっかり考察キャラとしていたに付いたなあ

Uc氏
ここでビンタ合戦かw 心理関係のフラグがうまくまとまりましたね
そして、嬉しいリセの埋葬。まあ、既に首ちょんぱですが


487 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/23(月) 02:48:02 ID:4kShCK+2
投下乙です!

>HIL氏
九鬼先生は相変わらずカッコイイなあ!
にしても現地調達で服が見つかりにくい考察付きとは
これは刀子さん以上に裸王様もガケっぷちに立たされた感がwww
廃屋考察をしつつ探し人の方を優先するのも
今後の空気化を避けれてグッドな方針だと思いました

>Uc氏
何というビンタの応酬!
同じ女の闘いなのに、なんでこのみと世界のに比べてキレイなんだw
にしてもクリスを筆頭にシンフォキャラはUc氏に愛されてるなあ

488 :深きに堕ちる者 ◆SwYiTzDO9Y :2008/06/23(月) 23:57:05 ID:AZtKVHP4
「誰か〜誰かいないっすかぁ〜」

彼、フカヒレこと鮫氷新一は美術館の中を歩き回っていた。
このみと烏月の下より逃げ出し町に出たのはいいが、すぐにでも追いつかれ殺されるのではないかと思い至り
怯えたフカヒレは目の前にあった大きな建物、美術館に逃げ込んだのだった。

「なんで誰も居ないんだよ、使えないゴミ共が、この俺が必要としてやってる時くらいさっさと現れろよ」

先程、自分の考え付いたすばらしい作戦「このみ達の悪評を流す」は誰かに会えない限り使えないのだ。
何より今直ぐにでも自分を庇護する者が欲しい。
そう思ったフカヒレはこんな大きな建物なら誰か居るのではないかと美術館の中を一通り探し回ってみたのだが誰も居そうではない。
彼の目論見はアッサリと崩れたのだった。

「ちくしょー、何だよこの建物は変てこな絵や変な置物ばかりじゃねえか……」
探し回っているとそこら中に絵があることに気付く。
美術館なのだから当たり前なのだが何かが変なのだ。
壁や柱に飾るだけではなく天井や床や扉にまであるのはどうなんだろうか?
しかも飾られた絵、絵、絵そのすべてが、冒涜的な蛸の様な物、鳥の様な蜥蜴の様な物、非幾何学的な直線、などなど奇妙で不気味な物ばかりだ。
それに奥の方には、銀色の大きな鍵がぽつんと置いてあったり、何の生物かも解らない今にも動き出しそうな剥製が無造作に置いてある。
(これじゃあお化け屋敷の方がましだよ)
余りの不気味さに今直ぐにでもこの場所から出て行きたくなっていた。
しかしフカヒレは出て行けなかった。例え出たとしてもこのみ達が待ち構えているのではと疑心暗鬼に囚われてしまう。
なので結局建物から出て行く勇気を出せないままずるずると居座ってしまったのだ。
(大丈夫、大丈夫きっともうすぐ諦めるさ)
祈るようにフカヒレはここに潜んで居ればやり過ごせると自分を誤魔化した。

だがフカヒレはプライド故に彼女等に身捨てられた事実を捻じ曲げ、脅えているだけのただの道化でしかなかったのだ。




489 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/23(月) 23:58:28 ID:GtbmZIHM
 

490 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/23(月) 23:59:13 ID:JalG8MPo
 

491 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/23(月) 23:59:38 ID:GtbmZIHM
 

492 :深きに堕ちる者 ◆SwYiTzDO9Y :2008/06/24(火) 00:00:44 ID:JwBi9Zqi


潜む以上もう少し詳しく調べてみよう。
そう思い無駄足と解りつつも人を探しながら展示物を見て回るのだった。
だがやはり奇妙なものしかない。

「これまた変な絵だな生き物なのか?、なになに題名はっと『名状しがたきもの』、ちょっとまて作者!ちゃんとした名前付けろよ!」

「真っ黒の画用紙にに三つの目だけ……『自画像』って手抜きな上にそんなやついるか!」

「『輝くトラペゾヘドロン(改造前)』……ただの閉じた小箱じゃねえかそれに改造後はどうした?まさかこれ改造後は武器だったりしないよな」

「おおーこれは俺にも解るぞこれは『麻婆豆腐』だ……いやいやいやいや違うだろ!明らかにここに並んでいていい物じゃね〜!!」

「――――」


▽▽▽▽


「……はぁ虚しくなってきた」

孤独感と恐怖心を紛らわす為に一人で展示物に突っ込みをいれていたのだがさすがに限界だ。
人探しは諦めとりあえず使える物でも探そうと方針を変えた。


493 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 00:01:06 ID:WQ44vZ1+
 

494 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 00:01:52 ID:JalG8MPo
 

495 :深きに堕ちる者 ◆SwYiTzDO9Y :2008/06/24(火) 00:02:23 ID:JwBi9Zqi
「しかし何にも役にたちそうな物がねぇな、こんだけ変な物だらけなんだから伝説の武器とか青い猫型ロボの秘密道具とかあるはずだろ普通はよ」
彼はすでに伝説の武器が自分に支給されアッサリ失った事など気にしないそれどころか。
「それさえあればそれさえあればあんなやつらなんて……その後はあんなことやそんなことまでヒヒヒ」
フカヒレは圧倒的な力を手に入れ、その力で馬鹿にした奴等を滅茶苦茶にする様を妄想して悦に入っていた。
(ご主人様と呼べ)とか(ワンと鳴いてみろ)とかたまに洩れる独り言からも推測できるだろう。
勝った後の事にまで妄想は進んでいた、勿論その後に書いてはいけない展開も忘れてない。
こんな奴に宝具クラスの武器が渡ったら、その持ち主はきっと泣くだろう。
妄想に満足したころ建物の奥に『倉庫』と書かれた場所を見つけ中に入ってみる。


「うわぁ〜中はボロボロじゃないかよ、しかも何の臭いだこれ?嗅いだ事有るような……え〜とザリガニ?」
倉庫の中は何故か荒れ果てそこら中に物が散らばり、しかも何か生臭い魚と腐った卵が混ざった様な強烈な異臭がしていた。
だがヒカヒレはまあいいかと常人なら遠慮するだろう悪臭の中を平気で入っていく。

例えばレオやスバルがここにいてこの臭いを嗅いだとすると声を揃えてこう言うだろう。
「「フカヒレの臭いだ」」と
そう、よくフカヒレの体臭はザリガニの臭いを例に挙げられるが、それをさらに強力にした臭いがしてるのだ。
簡単に言うとフカヒレ臭である、自分の臭いが気になるはずが無い。
「うるせーよ、ほっとけ今忙しいんだよ。」
お宝はこんな所にこそあるはずと物色し回っていた時だった。

『バキッ』「……え??」
何の音かと足元を見ると床板を一枚踏み抜いていた。

『バキバキバキ』「嘘だろおいおい……」
腐っていやがったと足を引き抜くと連鎖反応を起こし次々割れ。

『ズッドーン』「ぎゃぁーーー」
そしてあっけなく床がくずれた。


496 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 00:02:52 ID:WQ44vZ1+
 

497 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 00:03:06 ID:6FjIKEfd
 

498 :深きに堕ちる者 ◆SwYiTzDO9Y :2008/06/24(火) 00:04:33 ID:JwBi9Zqi

「いてて何だよ畜生…俺が何したって……はぁ?」
フカヒレが落ちた場所を見渡すと、そこに宝箱が――――あるわけも無く。
そこは一部屋分の広さの地面がすり鉢状になっていた
自分はなんとその坂の中腹辺りに落ちているじゃないか。
要するに大きな蟻地獄である。もちろん真ん中にはぽっかりと開いた穴がある。
そのままフカヒレを飲み込まんと待ち構えている。
「じょ、冗談だろ」
冗談の様な光景に一瞬呆然とするがこのままじゃあヤバイと立ち上がる。
だが立ち上がろうにも、表面は物凄く滑らかで掴む所すらなく、その上得体の知れない液体で濡れていて良く滑る。
どれほど足掻いても、いや足掻けば足掻くほど滑り落ちていくのだ。
「だ、誰か助けてくれ〜」
このままじゃあ死んでしまうと思って叫んだところで既に手遅れ。


”そして道化は深い穴へ落ちていく”


▼▼▼▼


499 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 00:05:31 ID:6FjIKEfd
 

500 :深きに堕ちる者 ◆SwYiTzDO9Y :2008/06/24(火) 00:06:12 ID:JwBi9Zqi

「は、ははは、生きてるよ、俺生きてるよ、ははは……」

結論から言うとフカヒレは無事だった。
彼の落ちた穴はまるでウォータースライダーのごとくとぐろを巻き、運ばれるように下に滑っていったのだった。
そしてある程度時間滑った頃、終点に到着した。

ここはどこだと辺りを確認してみる、洞窟の様だった天然物なのか人工的に作ったもの物なのかは判らない。
明かりはある、所々何の光かは解らないが薄く緑色に光っている。
壁は謎の液体で濡れており光に照らされてテラテラと光を反射する。
(しかしこの臭いはさすがにきついな)
先程までの部屋の臭いよりさらに強烈な臭いがする。
耐えれない程ではないので気にしない事にした。
とりあえず此処に留まっていても仕方ないと歩き出す。
「まってろよお宝、トレジャーハンターシャーク様の実力を見せてやる」
彼は全く懲りていなかった。



しばらく歩いていると視界の開けた場所に出た。
家一軒が入るくらいの空間で、壁際には篝火が焚いてある。
真ん中には祭壇があり、美術館に描かれていた様な像が祭ってあった。
フカヒレは祭壇に近づくと看板が立っていることに気づく。


※ここを見付けるなんてすごいの。そんな貴方にプレゼントなの。
 像の前で下に書いてある唄を歌いながら、図の通りに踊るの。

「何だこれ?此処で踊れってか?そんな簡単なことでいいのか」


501 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 00:06:29 ID:WQ44vZ1+
 

502 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 00:07:05 ID:6FjIKEfd
 

503 :深きに堕ちる者 ◆SwYiTzDO9Y :2008/06/24(火) 00:08:04 ID:JwBi9Zqi
(ふふふ近所のゲーセンではダンシング新ちゃんと呼ばれる俺の実力を甘く見たな)
これでお宝ゲットだぜと日本語じゃなさそうな唄を覚えながら彼はそう思った。
そして深く考えずに踊り始める。

「いあ いあ くとぅるふ ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うがふなぐる ふたぐん 」

「いあ いあ くとぅるふ ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うがふなぐる ふたぐん 」

「いあ いあ くとぅるふ ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うがふなぐる ふたぐん 」


―――三十分後―――

「はぁ、はぁ、な、なんだよ何も起きないじゃないか、畜生」
間違えたのかと思い看板を読み直すがあっていた。
もしかして騙されたのかと思いと無性に腹が立ってきた。
こうなるとこの変な口調の看板が気に入らない。
フカヒレは看板を蹴る、蹴る、蹴り倒す。
「みんなみんな俺を馬鹿にしやがって!覚えていやがれ!」
そして出口を探して去っていった。





504 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 00:08:30 ID:6FjIKEfd
 

505 :深きに堕ちる者 ◆SwYiTzDO9Y :2008/06/24(火) 00:08:50 ID:JwBi9Zqi
彼は気付かない―――看板の最後に書いてあった一文を。

※ちょっと間違ったの。『そんな貴方はプレゼントなの。』なの。
 意味わかんないの。でも頼まれたから書くの。



彼は気付かない――全身が何かむず痒く怪我の直りが早くなっているその理由を。

彼は気付かない――洞窟の強烈な臭いが今迄と逆に心を落ち着かせるその意味を。

彼は気付かない――自分の顔が異形に変わりつつあることを。




”そして道化は堕ちていく深淵へ”



506 :深きに堕ちる者 ◆SwYiTzDO9Y :2008/06/24(火) 00:09:31 ID:JwBi9Zqi



【地下洞窟(美術館より0〜3エリアはなれた所の地下)/一日目 夕方】




【鮫氷新一@つよきす -Mighty Heart-】
【装備】:ビームライフル(残量70%)@リトルバスターズ!
【所持品】:シアン化カリウム入りカプセル
【状態】:深きもの侵食率30%(平均的成人男性並み)、このみへの恐怖心、疲労(大)、顔面に怪我、鼻骨折、
     奥歯一本折れ、右手小指捻挫、肩に炎症、内蔵にダメージ(中)、眼鏡なし
【思考】
基本方針:死にたくない。出口はどこだ。
 0:誰か俺を助けろよぉ……
 1:頼りになる人間を見つけ守ってもらう、そしてこのみと烏月の悪評を広める
 2:知り合いを探す。
 3:蛆虫の少女(世界)、ツヴァイ、ドライ、菊地真、伊藤誠を警戒
 4:強力な武器が欲しい。
【備考】
※特殊能力「おっぱいスカウター」に制限が掛けられています?
 しかし、フカヒレが根性を出せば見えないものなどありません。
※自分が殺した相手が古河渚である可能性に行き着きましたが、気づかない不利をしています。
※混乱していたので渚砂の外見を良く覚えていません。
※カプセル(シアン化カリウム入りカプセル)はフカヒレのポケットの中に入っています。
※誠から娼館での戦闘についてのみ聞きました。
※ICレコーダーの内容から、真を殺人鬼だと認識しています。
※深きものになりつつあります侵食率が高まると顔がインスマス面になります。
 身体能力が高まり、水中での活動が得意になります。

507 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 00:09:57 ID:WQ44vZ1+
 

508 :深きに堕ちる者 ◆SwYiTzDO9Y :2008/06/24(火) 00:10:21 ID:JwBi9Zqi
【深きもの化@デモンベイン】
主にインスマス周辺の住民に起きる現象、蛙のような顔になりえらや鱗が生える。
完全に変化すると魚人みたいな姿になる。
デモベの深きものはそれなりに強いが、水中でもない限り大したことは無い。

【地下洞窟@デモンベイン??】
会場地下に広がる洞窟。美術館にそこへ到る穴が開いている。
そこより0〜3エリア離れた地下に像を祭った祭壇がある様子。
出口や他の施設は現段階では未確認。


509 :深きに堕ちる者 ◆SwYiTzDO9Y :2008/06/24(火) 00:12:02 ID:JwBi9Zqi
以上で投下終了です多数の支援有難う御座います

誤字脱字や矛盾、違和感等ありましたら指摘お願いします。

510 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 00:17:29 ID:WQ44vZ1+
投下乙。
フカヒレ……またお前は考えなしなことを。
数少ない一般人だったはずなのに、気づけば人外の中でも最低位のランクにw
どうするんだ、その顔では誰も信用などしてくれないぞ!

さあ、いい加減、鮫とザリガニ、どちらになるか決めるんだ!w

511 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 00:17:49 ID:6FjIKEfd
投下乙です

フカヒレのターン!!
フカヒレを生贄に捧げ、神を召喚するぜ!!

フカヒレのパワーアップより寧ろフカヒレが
召喚するかもしれない神の方が楽しみだったりw


512 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 14:43:27 ID:/FKztWwb
フカヒレw

デモベやクルトゥフネタが細かすぎw
確かトラペゾの小箱って、中のトラペゾ見続けるとナイア様がやってくるって話だよな。
それを閉じて阻止ってどれだけの人間が気付くんだよww
ここには他にもやばそうな物ありそうだなW

513 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 15:48:09 ID:bNYlS9gE
フカヒレはもうダメかもしれないなww
そして誰かが言ってた主催者側にことみの存在。
やっぱりことみは主催者の1人なのか?
いろいろと楽しい作品でした。

514 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 16:44:48 ID:/FKztWwb
スイマセン一つ聞いておきたい事が
インスマス化と人妖は同じ扱いと考えて良いのでしょうか?
同じならネタ的に助かるのですが。

515 :週刊ギャルゲロワ2nd第14号(6/24)@代理投下:2008/06/24(火) 20:25:17 ID:rhhIT8iE
先週の主な出来事
      _,,
    ''´    ヾ
   ル 从リ从)〉
    ゞ(i[゚]-ノii  <■っぱ〜〜い
    くj `i´lヽ
     ll_ハ_iン
     |__l_j

おや、フカヒレのようすが…

                              ,ハ
                           /   !
                        ___〈  ノ
          /|           \  `   ヽ、
         _r7 └、 _            `ー‐'´ll  l
        N、//_∠_〉/ ヽ、              〈l  l
      ハ、/''´ ,.-、ヽ_∠ ン-‐ァ       〈l   l
.     〈`lハ,/─  ヽ_/ __〈        〈,l  l
      ハ〉  (●) ∠ニ-ァく         〈 j.  l   
      ヽ.(__人__)     r‐--' ム-、_,-、_,-、_,ノン  l
       ノ` ⌒´__ / \、 〈----‐──一'   l
       `ヽ、/   l ヽ ノ  ̄            /
スカウター!>´  ̄`ヽ/´               r′
             ヽ、 ー 〉   /___ヽ     l、
                  ヽ/   〈  ヽ、 \__   `i
              /   / ヽ    ̄〉  ハ  l
                /  ハ  l    /  / j  l
             /   /  j   j.  (,_,ノ (,,_,_ノ
            ''‐'ー'′ 'ー'′

おめでとう、フカヒレはフカキモノに進化した

516 :週刊ギャルゲロワ2nd第14号(6/24)@代理投下:2008/06/24(火) 20:26:07 ID:rhhIT8iE
・女の戦い…なんだろうこの迫力は……しかしクリスは本気で罪作りよのう…
・さて、空気コンビの行く末は? 回答によっては『ナイスブルマ!』か『おさけ』のぬいぐるみ(各6点)を差し上げます。
・美術館w展示品は絶対主催が趣味で選んだだろwww
・そしてそろそろ本気で■とみが何処かに居そうな気がしてきたぜ!

先週(6/19〜6/24)までの投下数:3作
死者:0名
現時点での人外になった者:フカヒレ(深きもの)、羽藤桂(鬼)、柚原このみ(少し綺麗な悪鬼)、鉄乙女(鬼神)、西園寺世界(アンリマユ・ザ・ワールド)
現時点(6/24)での予約:7件(◆Uc氏、◆tu4氏、◆Lx氏、◆wY氏、◆I9I氏、◆MY氏、◆S71氏 )

517 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/24(火) 20:43:25 ID:IHkU5Mdl
投下乙です!珍しく死人が出なかったんですね、今週。
あとフカヒレがフカキヒレに…ポケモンみたいだw

518 : ◆SwYiTzDO9Y :2008/06/24(火) 21:49:15 ID:JwBi9Zqi
感想有難う御座います
自分でもやり過ぎたかな〜と不安だったので笑って貰えて何よりです。

ただフカヒレの容姿について説明不足だったことをお詫びします。

「深きもの」は普段インスマスで普通の人間と同じ暮らしをし、周辺の町ともある程度の交流を持っています。
よって見た目的には、なりかけの化け物ではなく不細工な人間に見えるはずなので、見た目だけで警戒される程醜くはありません。
ただ、ものすごく不細工なだけですw
そしてデモベではモンスター姿になる寸前までは人間の姿をしてたと記憶してます。

>>511
これも説明不足でした。
フカヒレの唱えた唄は「クトゥルフ」の為の物でして、他の者を召還するには別の呪文が必要です。
しかも神を召還するにはアンチクルス並みの魔術師と魔道書が必要なので、残念ながら今の段階じゃあ無理なのです。

>>514 
ほぼ同じと考えてください。
細かい部分では微妙に違ったりするのですが、「あやかし」の世界では「深きもの」化は人妖病の一症例となると思われます。

長文になりそうなんですがこういう詳細は本文の備考に入れた方がいいのでしょうか?

>>週間ギャルゲロワさん
いきなりAAにして貰えて恐縮です。

このフカキモノの見てると上に書いた細かい説明が段々どうでも良くなってきましたw

やっぱノリが大事ですかw

フカヒレよ お前はいったい どこへ行くw


519 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 00:29:01 ID:5bwwvk9f
週間乙です
そのAAは深きものですらねえw

フカヒレ人妖程度ってことは双七くんとかと同じか
ならわざわざ騒ぐ程には外れちゃいないな

520 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 00:56:03 ID:v1xO7TU9
>518
どっちかというと深き者というより、
フカキワモノ(際物)って感じの変化だよなあ。

その説明内容だと、今フカヒレがケルプやセラフ
打ち込んだら先祖返りして
浸食率が跳ね上が(って二度と戻れないことにな)るって
ことでよろしいのでしょうかね?

521 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 04:07:04 ID:xfSHnf3f
「はぁっ……はぁっ……おい、アンタ、大丈夫か!? ……クソッ、今度こそ……今度こそ俺が救わなきゃ……!」

ゆっくりと沈んでいく太陽を背に、如月双七は大地を駆ける。
彼の両腕の中にはしっかりと抱きかかえられた一人の少女が苦痛に顔を歪めている。名前は深優・グリーア。
機械と人間の身体を併せ持つシアーズ財団の作り上げた生体アンドロイドである。

この状況は非常に単純なモノと云えるだろう。つまり――救う者と救われる者。
陳腐な姫物語から、ありとあらゆる国に伝承として伝わる神話においてもこの構図は散見される。
例えば日本神話を例に挙げてみてもその抽出は容易い。
この神話を記した文章といえば古事記と日本書紀の二つ。
そして、強い力を持った神々の中でも傑出した存在と呼べるのが三貴子の異名を持つ三人の神々である。

国産みの儀により、日本を誕生させたイザナギとイザナミが産み落とした最後の三神。
つまり、天照大神(アマテラスオオカミ)・月読尊(ツクヨミノミコト)・素盞鳴尊(スサノオノミコト)
彼らが末子、スサノオが天地にその名を轟かせる大蛇・八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治し、奇稲田姫(クシナダヒメ)を見事救い出した一説など、まさに如月双七が行おうとしている行為そのもの。

が、そのような単純な英雄行為にて全てを要約出来るほど彼らの関係は単純な訳がなく、

(如月双七……彼は……どうしてこんなに必死に……?)

深優は自らの表情を偽り、荒い吐息をその可憐な唇から吐き出しながら考える。
このキリングフィールドにおいては誰よりもゲームマスターである神崎黎人と言峰綺礼に近い存在、それが彼女深優・グリ−アである。

F-7の駅周辺での直枝理樹、羽藤柚明との死闘。
ウィンフィールドとの戦いによって負った傷を癒し終え、最良の状態で挑んだ筈の戦いに深優は敗北した。
彼女は虚空を見つめながら、自らの先ほどの戦いを振り返る。
空を銀色の糸に投影したかのような、スカイブルーの髪が風に吹かれサラリ、と舞う。
一般人のグループに潜入し完璧なタイミングで奇襲に成功。
集団内において最も戦闘能力が低いと推測した蘭堂りのに発砲、そして彼女の身を捕縛し、自らにとって最高の状態での迎撃戦だった。


522 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 04:07:38 ID:xfSHnf3f
それ、なのに。

(どうして、私はあの戦いに敗北したのでしょうか。油断でも慢心でもなく、あの二人に敗北する要素は私には無かった。
 私に何か足りない物でも……?)

天使は未だに深い眠りの中。その紅の両翼は羽ばたく事は無い――



一度目の放送終了時に告げられた死亡者の数は九名。そして二度目の放送では十四名。
それではいったい、今回は何人の名前が呼ばれるのだろう。
元の世界で見知った名前は未だに一人も出て来ていない。
つまり玖我なつき、藤乃静留、杉浦碧――ワルキューレ達は未だに三人ともが未だに生存している。

藤乃静留がHiMEである事は、このゲームに強制的に参加させられるまで深優でさえ知らなかった事実である。
その証拠に、アリッサのメタトロンと共に出陣した浜辺での戦闘――ラグナロック作戦の初戦の時点で、彼女がHiMEである証拠は無かったのだ。
神崎黎人と共にその場にいたにも関わらず、である。
あの時点で彼女、いやシアーズ財団には二人を重要な人物であると断定する証拠が不足していた。
砂浜での出来事において、彼らに関して記憶している事実といえばせいぜい、神崎黎人が高村恭司に向けてまんざらでもない好意を示していた事ぐらいだ。

彼女達は少なからず、深優にとって不利益をもたらす存在と云えるだろう。
なつきと碧に関しては既に刃を交えた経験もあり、藤乃静留についてもあの戦いを目撃している。
ゲームが開始されてから、既に半日以上の時間が過ぎ去っただけに、彼女らが深優にとって都合の悪い情報を流布している可能性は非常に高い。

(ワルキューレの存在は私の行動にとって枷となる……しかし、流石に一筋縄ではいかないという事ですか)


523 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 04:08:18 ID:xfSHnf3f
三人を排除するべきか、まず深優はその点について考察を開始する。
しかし、一秒も経たない内にその未来を切り捨てる。つまり、一向に値しないと。
問題は自らの体組織に受けたダメージではなく、他の部分にある。
実際、ボディに関する損害は軽微であり、四肢を動かすに当たって支障は無い。
浮かび上がるのは各種機動系統を動かす――ナノマシンの不備である。


彼女、深優・グリーアはそもそも生体アンドロイドである。
故に電気駆動のメイド人形のように充電を要する訳でもなく、
長期的な運用の際に調整槽などの特別な施設で動力を補給する必要がある訳でもなく、
魔力を持つ人間に螺子を巻いて貰わなければならない……という事もない。

彼女は機械としてのパーツと肉を持った部分のバランスが非常に曖昧なのだ。
人としての臓器を持ち、血液を流す。涙も流れる――極めて人に近い存在。
そのため外部から特別な動力を供給されずとも、十分な活動は可能である。
当然各種ユニットの使用過多がオーバーフロウするケースは存在するとはいえ。

今回の問題は、そのパターンと若干似た様相を示している。
ユメイが放ったメガバズーカランチャーは圧倒的な破壊力を持つ平気であるが、決して人の命を奪う事はない。
つまり、非殺傷設定が組み込まれた特殊兵器なのである。
なるほど、エネルギー源からして摩訶不思議なものをベースに動いているだけの事はある。

今回はメガバズーカランチャーの動力となっているNYP(なんだかよくわからんパワー)が深優の躯体で活動しているナノマシンに対して反作用を起こした可能性が強い。
そもそもメガバズーカランチャーは発射時に凄まじいまでのなんだかよくわからんパワーを要する超強力な武装と云える。
他のNYP兵器と比べても、若干のタイムロスは存在するもののその破壊力はまさに驚天動地。
ウィルスやビームライフル、ライトセイバーなど『サイバー兵器』という括りにおいても、最強の名を欲しい儘にしているのである。


524 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 04:09:03 ID:xfSHnf3f
本来は西園美魚しか使用出来ない筈のその武装を、ユメイという一人の少女が用いた際に生じた不可解な現象と説明するしかないだろう。
勿論、彼女は羽籐桂が絡まなければ比較的まともな人間であるため、西園美魚がソレを使用する際に発生するNYPには遠く及ばない。
(事実、NYPは測定時に竜巻を巻き起こし、測定を担当する科学部部隊を吹き飛ばす事さえあるのだ)

そうユメイの決意と、想いと、強い意志が、本来そのようなシリアス展開で運用される事の無いNYP兵器にノイズを混ぜたのかもしれない。
まさに、なんだかよくわからん事が世の中には数多く存在するのだ。


(時間と共に戦闘は可能になるでしょうが……ひとまず、積極的な行動は避けた方が無難でしょうか……)


物憂げな表情のまま、深優がそこまで考えを巡らせた時、彼女を抱き抱えたまま疾走していた如月双七が突如、その足を止めた。
急な自体に眉を顰め、自身の状態を悟られないように細心の注意を払いながら、深優は周囲を確認。
依然と周りは鬱蒼とした梢と若草色の芝生と膝丈程度の長さの藪に囲まれている。
進行の妨げになるような障害物は散見出来ない。
気付かぬ振りを続けるべきか、僅かながらの逡巡の末、深優は意識の無い振りを終わりにする決意を固めた。


「――ッ、どう……したのですか?」
「眼が覚めたのか!? しっかりしろ! 傷の方は……」
「……私は大丈夫です。しかし、何故このような……それに、貴方は……?」


抱き上げられたまま、深優はガーネットのような双眸を双七へと向けた。
黒いツンツン頭を整髪料か何かで逆立てた少年。おそらく、地毛ではないだろう。
深優の身体を抱きしめる腕や肩の筋肉は非常に逞しく、擦り切れた拳は彼が武術を身に着けた人間である事を言葉も無く語る。
黄昏色に染まった一面の空。
真白い帯状の雲がオレンジに模様を変え、暢気に彼女を見下ろしていた。
時刻は五時を回った辺りだろうか。もう少しで三回目の放送なのか、と取り留めの無い事を考える。

「俺は如月双七。見ての通り怪しい者じゃ……って簡単に信じて貰えるとは思えないけど。君の名前は……?」


525 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 04:09:39 ID:xfSHnf3f
双七は深優に軽く微笑みかけるながら、彼女の深い赤の瞳を見つめた。
アンダーフレームの眼鏡の奥に輝く虚ろげな光。
それは、彼女が既にこの島において一人の参加者を手に掛けた証拠――なのではあるが、

(……今までの行動を見る限り、彼は極端なお人好し……高村先生と同じ部類の人間のようですが……)

少なくとも、敵意は感じない。
深優は自身の思惑を悟られないように再度、双七に向けて注意を巡らせる。
彼がゲームに乗った人間であれば、傷を負った深優を介抱しようなどと馬鹿な事を考える筈もない事は十分に分かっている。
傷だらけの人間に心配りをするような、このような状況に似つかわしくない心を持った人間。
そして、彼女にとって――何よりも排しやすい存在。

(ここは過剰な演技は好ましくないでしょう。押し殺すのは殺意だけ……)

深優の選択は極めて判り易いものであった。
つまり、"狩猟"のスタイルの変化だ。
ユメイのメガバズーカランチャーの直撃によって、未だに各種ユニットを起動させる事は不可能。
駆動部の反応も悪く、しばらく身体を休ませる必要がある。

ならば、ある程度状況に応じた立場で物事を進める。
熱病に掛かったかのように、一心不乱に殺戮を行わなければならない訳ではないのだ。


しかし、深優の胸中に宿るのはある種の違和感があるのは確かな事実であった。
勿論、アンドロイドである彼女が自らと何ら関係性を持たない人間へ感慨を覚えている訳では無い。
問題は自らの役割――バックギャモンにおけるサイコロのような――との齟齬、である。

そう、深優・グリーアはゲームマスターである神崎黎人、そして言峰綺礼によりゲームを円滑に進めるために殺し合いを強いられた存在である。
つまり、彼らの息が掛かった駒、と云ってしまっても差し障りは無い。
ソレはある意味において『二人が深優を必要とした』と云い換える事も可能なのだ。
故に、湧き上がる僅かながらの疑問がある。


526 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 04:47:14 ID:nBC39Ldz


527 :代理投下 操リ人形ノ輪舞 ◇tu4bghlMIw:2008/06/25(水) 04:51:25 ID:nBC39Ldz
(今は目の前の問題を処理しなければ……余計な思索に順じている場合ではありません)

が、そんな類の疑問は所詮心的なノイズに過ぎない事を深優は理解していた。
今専念しなければならない事は、ソレとは同じベクトルではあるもののまるで違う形への変化である。
それはいわば極限まで純度を上げた水のようなモノと云える。
一滴の濁りが、澱みが彼女の首を締め上げる大蛇となり襲い掛かる。それが――自身を偽り、影に潜むものに与えられた宿命なのだから。



「……深優。私の名前は、深優・グリーアです」


深優は双七に抱き抱えられている事に嫌悪感を示すでもなく、淡々と自らの名前を口にする。

彼女は、潜むモノ。
確定しているだけで、現時点で命を落とした人間の数は二十三.
死と狂気に至る病は感染速度を速め、既に三分の一以上の生命を食い尽くしたのだ。
そして、ウィルスは未だ生にしがみ付く者の中でひっそりと好機を伺っているのだろう。
その病は再生する――何度でも、何度でも。

彼女、深優・グリーアは舞台を湧き上がらせる人形として、ただ、ひたすら、孤独な輪舞に身を任せる。


            ▽


528 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 04:58:12 ID:xfSHnf3f
「如月さん。危ない所を救って頂き、有難うございます」
「……深優。いや、それより一人で立っても大丈夫なのかい。まだ身体の何処かに問題があるのなら……」
「その心配には及びません。外的な損傷は軽微、通常の行動に支障はありません」
「……分かった。でも、本当に、大丈夫なのかい。ほら、それにあの事もあるし……」
「あの事?」
「あ、いや、……その、何でもないんだ! ああ、うん。ちょっとした勘違いかな……」
「……そうですか」

如月双七は背筋を駆け抜けた電撃のような感覚に、思わず眉間へ濃い皺を寄せた。
彼が深優を抱き抱え、移動を始めてから数分の時間が経った。
棗恭介とトルティニタ・ファーネという仲間と共に行動をしていた彼は斥候、つまり偵察役として単独行動をしていた際に深優を発見したのである。
当初は、彼女を抱き抱えたまま、予定を繰り上げて自分達の本拠地であるカジノへと向おうかとも考えた。
しかし、そのプランはイマイチ現実性に欠けるモノであると、双七はすぐさま考えを変更。
深優を介抱するために、一路駅へと向かう事に決めた。

(……どうなっているんだ、何故……?)

双七は戸惑っていた。
それは決して、目の前の少女に羽籐桂と遭遇した際に覚えた青臭い強烈な衝動を覚えた訳ではない。
如月双七は不良っぽいルックスとは裏腹に、意外と涙もろく感動屋。
ひたすら純情路線を歩む青少年なのだから。

彼が深優・グリーアに覚えた違和感とは、呈よく云えばすなわち「彼女が"人"の姿をしている」という一点にある。
双七の人妖能力は金属引き寄せ(アポーツ)と呼ばれる能力だ。
そして、正確には金属の意志を読み取る――ある種、対象を限定したサイコメトリとでも云うべきだろうか。

彼は金属からしか意志を読み取る事は出来ない。
しかし、目の前の少女は明らかに人間。抱きしめた感触も、擦り切れた真白い肌に滲んだ血液も、総てがその意見を肯定する。

(でも、この感覚は紛れも無く……おかしい……どうなっているんだ? それにさっき流れ込んで来たあの情景……)


529 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:00:05 ID:xfSHnf3f
脳裏に飛び込んできた光景が鮮明な映像となって再生される。
彼女からまるで洪水のように、強く重い感情が流れ込んでくるのだ。

海。
砂浜。
輝く金色の翼。
黄金の天使。
銅剣。
倒れる少女。
何かが弾けるような音。
堕ちた天使。
海の中に消えた水色の人形。
声無き慟哭。
白銀の月。
そして――その隣で寄り添うように輝く赤い星。

それは荘厳にして侵されざる絶対的な空間だった。
海水が染み込み、肌にピッタリと張り付いた衣服が深優の身体のラインを浮き上がらせる。
水浸しの少女は、濡れた指先で黄金の少女の頬を撫でる。
自身の真紅の瞳からは、一滴の涙を溢すことも無く。

寒気がするくらい、閑かで、そして、哀しみに満ちた世界――


「――如月さん」
「……へ」
「どうかされたのですか。突然押し黙ってしまわれるなんて」
「あ……いや、その……ゴメン」



530 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:00:26 ID:nBC39Ldz
 

531 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:01:16 ID:wGWgbNU9



532 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:01:42 ID:xfSHnf3f
どうして自分は謝っているんだろう、と思うものの、その謝罪の言葉を口にせずにはいられなかった。
双七は曖昧ながらも現状を少しずつ理解し始めていた。
口元は引き攣り、未だに彼女の柔らかな肉の感触と体温が残る指先を小さく握り締める。

どう見ても、深優・グリーアは人間にしか見えない。
だが、おそらく、ソレは偽り。彼女は、完全な人間ではない。
かといって、数刻前に遭遇したティトウスのような明らかな人外の物の怪、という訳ではない。
厳密に云えば、「後天的全身性特殊遺伝多種変性症(ASSHS(アシュス))」、通称「人妖病」に感染した自身もその意味では人間ではないのだ。

(間違いない。彼女の正体は……いや、だけど……。だからって、でも本当に……?)

が、彼の人妖能力が常識との乖離や疑念を振り払う。
金属の意志を読み取る力――そして、深優の意志が、記憶が、断片的ではあるものの双七の身体の中には流れ込んでくる。
さすがに相当な集中力を要する能力であるため、リアルタイムで彼女の思考を読み取る事は出来ない。
それでも深優が人ならざる者、人と金属を掛け合わせた存在であるという事実は、彼の中で確定的な事項になりつつあった。

「そう……だな。まだ身体が辛いと思うんだけど……その、話を聞かせて貰ってもいいかな、深優」
「構いません。昏倒していた所を保護された時点で、貴方が他人に害を為す人間でない事は十分に理解しています」

にこりともせずに、深優は云った。
笑顔の消失した彼女のあまりに無機的な表情を見つめ、双七は自身の胸がズキリ、と痛んだ事を自覚する。
深優の言葉はつまり、双七に対してある種の信頼を感じている事の表明であった。
彼女はどうも感情表現に乏しいタイプらしく、口調や表情、どちらにも殆ど変化は見られない。
それでも、双七と深優の間にはある程度のコミュニケーションが成立していると云ってしまっても構わないだろう。

しかし、双七の胸中は優れない。なぜなら、

(……やっぱり、信じたくない。あの金髪の女の子といる時はあんなにやさしい顔で笑っていた深優が殺し合いに乗っている……。
 しかも、一度清浦を襲って既に人を殺めているなんて……それに……)


533 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:02:13 ID:nBC39Ldz


534 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:02:19 ID:wGWgbNU9



535 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:02:22 ID:xfSHnf3f
彼が深優から読み取った記憶のページは、一つだけではなかったのだから。


双七が深優のメモリーチップから読み取った記憶のは三つ。
それ以上は彼の能力に制限が掛かっているのか、精神に乱れがあるのか、現時点では感じ取る事が出来ない。

一つ。アリッサ・シアーズが絶命し、オーファンと化したメタトロンと深優が戦った場面。
一つ。深優がウィンフィールド・清浦刹那を強襲し、体内に内蔵したミサイルによってウィンフィールドを殺害した場面。
そして――


(あの老人の言葉……どういう意味なんだろう。アリッサ? 優花? アリッサの正体……?)


その光景は寂れた小さな研究室のような場所だった。
登場人物はたったの二人。台の上に横たわる深優と黒衣と十字架を身に着けた白髪の老人。
加えて、どうも深優を整備しているらしきが男の独り言を延々と聞かされる――そんな退屈な場面だった。

しかし、双七は知らない。
その記憶のページこそが、この殺戮舞台にて踊る操り人形を解放するための重要な鍵である事を。

神父の名前はジョセフ・グリーア。アンドロイドである深優・グリーアの戸籍上の父に当たる人物。
そして、深優の外見上・遺伝子的なベースとなった女性――優花・グリーアの実の父親。
『ゲーム』の根幹を支える『主催』に属する人間の一人である。



「――深優・グリーアっ!」
「え……」


536 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:03:04 ID:xfSHnf3f
その時、だった。背後から投げ掛けられる女性の声が一つ。
名前を呼ぶだけ、という単純な好意。しかし、双七はその僅かな響きの中に明らかな敵意を感じ取った。
声のした方向へと振り向いた双七の視界に飛び込んで来たのは、

(あれ……この子は……!? 深優の記憶の中であの天使と戦っていた……!?)

深い藍色の髪の毛を腰まで伸ばした凛々しい少女の姿だった。
彼女の両手には妙な形をした――拳銃が握られている。双七と深優との距離は約七、八メートルといった所か。
熟練した腕前を持つ銃使いにとっては、これ以上無い程都合のよい間合いである。

「玖我、なつき」

噛み締めるように傍らの深優が小さく、呟いた。
そうだ、確か彼女は記憶のページの中で眼鏡を掛けた「先生」と呼ばれていた男からそんな名前で呼ばれていた筈だ。
なつきと深優が元から知り合いであるという可能性は疑いようが無いだろう。
しかし彼女達の関係はおそらく険悪、という領域を一歩踏み越えた段階にあるのではないか――そのような想像を双七は巡らせる。

「玖我先輩」
「下がっていてくれ、美希」
「だめだよ、いきなり銃を向けるなんて危ないよ」

なつきの背後に一人の少女の姿を捉える。
群青色を少し薄くしたような、水色の制服。
フワフワの茶色い髪の毛の女の子が不安そうな顔付きでこちらを眺めている。
少女の表情を染めるのは明確な怯えと自身に害を為すであろう存在を見つめる恐怖の感情だった。

押しつぶそうな憎悪と仔猫のような萎縮した想い。
四つの瞳が深優のスカイブルーの少女へと突き刺さる。そして、その隣に立っていた双七にまで――



537 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:03:05 ID:wGWgbNU9



538 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:03:06 ID:nBC39Ldz


539 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:03:42 ID:xfSHnf3f
「おい、待ってくれ! いきなり銃を付き付けるなんて……何か勘違いをしているんじゃないか」
「勘違いだと? ふん、馬鹿な事を! お前こそソイツがどういう相手なのか知って一緒に行動しているのか!?」
「どういう……相手、だって……」

ドクン、と。心臓が一拍。
概念としては理解していても、言葉には決してしていなかった言葉が、今、形を持つ。

「深優・グリーアは人間じゃない。ロボットかサイボーグか詳しい事は知らないが……私達HiMEを攻撃して来た相手だっ!
 そんな奴を見かけて警戒しない程私はお人好しじゃない!」
「……人間じゃ、ない」
「そうだ。もちろん、人間ではない事が悪い事だなどと言うつもりは更々無い。
 だが深優・グリーアは少なくとも信用出来る人間ではない。既に誰かを殺している可能性だって十分過ぎるほどあるんだ!」


それは、双七も理解していた事実だった。
こうして改めて言葉として伝えられた事で、水面に血を一滴溢したような赤い波紋が彼の中で広がって行く。
新しい情報があった訳ではないのだ。
単純に、頭の中で無造作に転がっていた事実を消化しただけの事。
が、眉を顰め顔面に驚愕の色を刻む双七を見たなつきの反応は違った。
どうやら彼女は双七が深優が人間ではない事を知ってショックを受けたと解釈したようであった。


「――マルティプル・インテリジェンシャル・イグドラシル・ユニット起動……」




540 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:04:05 ID:wGWgbNU9



541 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:04:13 ID:xfSHnf3f
一歩、深優が足を踏み出した。
そして、謳うように紡がれる言葉。音もなく、彼女の左腕から突如刃が出現。
宝石のような流麗な色合いのブレード――ソレこそが深優が人ならざるモノである証明であった。


「ワルキューレ、玖我なつき。貴女は、大きな勘違いをしています」
「な、に?」

一瞬の間。


「私には、他の人間を傷付ける意志は一切存在しません」


翡翠色の刃を翳しながら、深優は臆面も無くそう云い切る。


            ▽

《interlude》

それは、孤独な光景だった。

「ゲーム」のシステムを支えている筈の人間に与えられた施設としてはあまりにも質素。
天井に設置された灯りは無機質な光で部屋の中央に備え付けられた作業台を照らす。
照明は極端に少なく、まるで彼の行いが禁忌に満ち溢れた所業である事を実証するが如くである。

「……深優」


542 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:04:43 ID:nBC39Ldz


543 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:04:49 ID:xfSHnf3f
室内に佇む人間は二人。
台の上で横になり瞳を閉じたまま、微動だにしない深優・グリーア。
そして、虚ろな表情のまま、深優の身体にメンテナンスを施すジョセフ・グリーア。

深優とは、すなわち死亡した優花の細胞をベースに造られたアンドロイドである。
人工的なHiMEの"成功例"として誕生したアリッサ・シアーズの護衛――として、彼が尽力の末に誕生させた存在だ。
が、彼は深優に対して娘の模造品や代替役のような、雑多な感情を持ち合わせている。
彼の感覚の中ではあくまで深優は優花の生まれ変わりなのだ。
まだ、深優は深優であり、優花として行動する事は出来ない未成熟な存在とはいえ……。

「舞姫を決める戦いではなく、このような殺し合いに深優が参加する事になるとは……」

誰に喋る訳でもなく、彼は言葉を重ねる。
あと少しで彼女の整備は終わる。そうすれば、もう二度と彼女と顔を合わせる事は出来ないかもしれない。
そう考えるだけでジョセフは自身の感情に歯止めを掛ける事が出来なくなってしまっていた。

深優とのリンクは現在完全にシャットアウトされており、このやり取りは彼女のメモリーチップの思考媒体には記録されない。
実際、その更に深部、ブラックボックスにだけ保存される事項だ。
とはいえ現在、深優に用いられているプログラムではブラックボックスを検索する事が不可能なのである。
特別な施設や時間、多数の人員を用いなければ解析は不能。少なくとも、ゲームの最中に深優のメモリーが暴かれる事態は起こり得ないだろう。
故に特に気にする必要は無い、ジョセフはそう判断していた。


タイムリミットは迫って来ている。ゲームマスターである神崎黎人と言峰綺礼はああ見えて非常に几帳面な男達だ。
深優に関して云えば、主催の一翼を担うグリーアの娘であるという一点から特例としてジョセフの最終メンテナンスが許されたに過ぎない。
ゲームが始まってしまえば、もはや彼から深優にコンタクトを取る手段は存在しないのだ。


アリッサ・シアーズの死亡が深優の心にどのような影響を及ぼすのだろうか、そうジョセフは夢想する。
深優の心はアリッサのためにあり、アリッサを護る為に総てを費やして来たと云っても過言ではない。


544 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:05:14 ID:wGWgbNU9



545 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:05:21 ID:xfSHnf3f
深優にはHiMEとして覚醒するための条件が十二分なまでに備わっている。
姫舞踏への参加条件はHiMEである事。
多くの研究の末、ソレが人間の女性が有する遺伝子と深い関係性を持っている事が発見された。
遺伝子操作の結果、"オリジナル"のアリッサ・シアーズを素体として誕生したのが"HiME"であるアリッサ・シアーズなのだ。

が、深優の身体にはHiMEであった優花の生体パーツが使用されている。
彼女には「遺伝子」という超えなければならない壁は存在しない。
残す障害は想いの力――彼女が誰かを護りたい、と思い自発的に行動する感情こそが覚醒への一歩となる。
だが、


「クソッ……しかし……深優が優花になるためにはまだ……まだ、感情が足りない。
 プログラムのまま動く人形では、優花へと成長する事など夢のまた夢……。
 ゲームだと? 馬鹿な……アリッサ・シアーズを喪った深優にとって触媒と成り得る人間など……!」


その希望を打ち砕くかのように齎されたのが、今回の「ゲーム」である。
深優も参加者としてリストアップされている。
しかし、「大切な人への想いの力」が原動力となるHiMEに覚醒するために、見知らぬ人間との殺し合いの中で芽生える感情が上等な作用をするとは考え難い。
加えて、深優は黎人と言峰の操り人形として、強制的に他の人間を狩る立場になる事が既に決定している。
様々な世界から集められた参加者の能力は非常に厄介なものだ。深優が破壊されてしまう可能性も決して低いものではない――

「そして……首輪か」

ぼそり、とジョセフは呟いた。
深優の真白い首元には銀色の無骨な首輪が嵌められている。
おそらく、別の科学者が製作に携わったのだと思われる。


546 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:05:52 ID:nBC39Ldz


547 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:06:06 ID:xfSHnf3f
残念な事に、首輪のサンプルは彼の手元には無かった。
が、深優のソレを見る限り、それなりの技術がある者ならば解体作業を行う事は容易いだろうと思われる。
そして、それはおそらく深優にも問題なく遂行出来る事象だ。
彼女が内蔵したアンチマテリアライザー、もしくはマルティプル・インテリジェンシャル・イグドラシル・ユニットを用いれば単独での首輪解除すら可能かもしれない。
尤も、深優を戦いへと駆り立てる存在としてアリッサ・シアーズを用いる以上、それが有り得ない未来である事はジョセフにも分かっていた。


「……どちらにしろ、深優がアリッサが偽者かそれとも生き返った本物なのかを知る機会はないのだな。
 だが、私はその正体を知っている……なんと皮肉な話なのだ。まさか、あのアリッサ・シアーズが――――であるとは……」


老人は深く溜息を付き、再度深優のメンテナンスに没頭し始めた。


            ▽



548 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:06:26 ID:wGWgbNU9



549 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:06:39 ID:nBC39Ldz


550 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:06:48 ID:xfSHnf3f
その光景はとある世界のとある構図と酷似していた。

青い髪の少女。
屋上。
クロスボウ。
剥き出しの敵意。
その背後で怯える少女。
二人の怪獣。
血と惨劇。

永遠に続くような一週間。それは、とある週末のよくある些細な出来事の一つ。



(ふむむ。ロボット、なのでしょうか。いやはや何ともSFチックな人もいるものですねー)

山辺美希は自身の目の前で銃を構える玖我なつきの制服の裾を握り締めながら、ぼんやりと考える。
手から拳銃を取り出す人間に出会ったと思えば、次に出くわしたのは腕から剣を生やす少女とは。
あまつさえ彼女は人間ですらないらしい。
玖我なつきが「ロボット」や「サイボーグ」といった単語を漏らしていたという事はきっとメカメカした存在なのだろう。


「他の人間を傷付けるつもりは無い、だと? ふざけるな、そんな言葉が信用出来ると思っているのか!」
「玖我なつき。声が大き過ぎます。もう少し、落ち着いて頂けないでしょうか」
「なんだと……!」


なつきは完全に頭に血が上っているようである。
背後の美希は誰にも見られないように、心の中で小さく溜息。

やっぱり、使えない。


551 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:07:22 ID:nBC39Ldz


552 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:08:11 ID:wGWgbNU9



553 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:08:23 ID:nBC39Ldz


554 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:08:44 ID:xfSHnf3f
対馬レオのように、正義感があるだけで大して強くもないのもダメ。
杉浦碧のように猪突猛進タイプもダメ。
大十字九郎のように何というか、馬鹿もダメ。
加藤虎太郎のように頭のキレ過ぎる人間もダメ。
玖我なつきは――杉浦碧と大十字九郎をハイブリッドにした感じだろうか。うん、やっぱりダメダメだ。

人を利用するという事は存外に難しいものなのだ。
ループする世界では登場人物はたったの八人だけだった。
しかも全員が全員、立派な群青色。
ある種の精神的疾患を抱えた人間、そして互いの事を十分に知り尽くした閉鎖的な環境。
出会ったばかりの相手、しかも万国ビックリ人間ショーの出場資格を満たした奇人変人のオンパレードである。
あくまで常識的な一般人である美希にはちと厳しい現状。

(このままじゃ、全然話が進まない。……仕方ないなぁ)

故に、深優の言葉へまともな返答を返す様子がまるで見えないなつきへ助け舟を出す事にする。


「やめましょう、玖我先輩。笑うのだ」
「美希!? な、お前まで……!」
「そうやって決めつけるのはよくないです。だって、こんな状況なんですから。
 ほら、人は結構簡単に変わる生き物だと昔の偉い人はいった訳です」
「だが……」
「そうやって火種を撒こうとするのも、ダメです。仲直りしましょう。ねー」

何処かで見たような、
何処かで経験したような、

だけどやっぱりまだ起こっていないような――そんな、光景。似たような場面。

もう生きていない人と、まだ生きている人との他愛もないやり取り。


555 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:09:10 ID:xfSHnf3f
「……美希に免じて話だけは聞いてやる。だが"お前達"が怪しい動きをした時は――」
「構いません、玖我なつき。ですが、こちらも同様の思考の下、動いている事をお忘れなく」
「おいおい、俺も怪しい人間扱いなのか……」
「……名前も名乗らない人間が信用されるものか」
「……悪かったな。俺は如月双七だ。大体、その、お前の後ろにいる娘も云ってたじゃないか。敵意を剥き出しにするのは良くない」

ツンツン頭の不良っぽい少年が不満げに云った。
彼は全身に傷を負っていた。白のワイシャツに結構な割合で血が滲んでいる。
着替えればいいのに、と思いつつも美希は考える。
この時間まで生き残っていた、ある程度の怪我をしている者。
つまり彼も戦える人間なのではないか、と。

そして、この状況で"とある事"に美希は気付いた。……ふむ、この流れならば自分にも必要だろう。
寄生し、擬態するためには山辺美希はあくまでその意志を悟られてはならない。
状況を見極め、最善の行動を取る必要がある。小さく息を吸い込み一言。


「あっ、これはもしかして、自己紹介を済ませていないのは美希だけではっ。
 申し遅れましたです。わたしは美希、山辺美希という者です。えへへ、よろしくお願いしますです、はい」


            ▽



556 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:09:17 ID:wGWgbNU9



557 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:09:49 ID:nBC39Ldz


558 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:09:55 ID:xfSHnf3f
――二十分後。


「ふざけるなっ! 正気なのか!?」


怒髪天に達した玖我なつきの怒声が辺りに木霊する。
美希は不安そうな表情を造り、周囲をおろおろと見回した。少なくとも人が接近してくる気配は無い。
正面で大樹に凭れ掛かっている深優・グリーアは眉一つ動かさず、頬を紅潮させたなつきを興味なさげに一瞥。
如月双七も渋い顔付きで事の成り行きを見守っている。
……ふむ、彼女達が特別な行動を取らないのならば、外敵は無いのだろう。


美希は加藤虎太郎と別れ、玖我なつきと共に行動する事になった直後の出来事を回想する。
虎太郎と尾花に怪物――鉄乙女の対処を任せ、戦闘区域から離脱した二人が最初に行った事は互いの情報交換であった。
しかし、美希にとって、なつきからは有力な情報は殆ど齎されなかったというのが本音である。

玖我なつきが遭遇していた人間はたったの二名。
伊達スバル、若杉葛。共に前回の放送で名前を呼ばれた死人である。
同行していたらしい二人がどうして死亡したのか、彼女は黙して語らなかったが、おそらくは誰かに強襲され死亡したのだと美希は判断した。
当然、相手が誰であるしてもなつきが同行者を守れなかった事実は確かであり、美希は早くも"ハズレ"を掴んでしまった悲劇を嘆いていた。

が、しかし彼女の持っていた支給品に関して云えば話は別だ。
彼女は自身の特殊能力(高次物質化能力というらしい)によって、虚空から拳銃を取り出し使用する事が出来る。
射程や反動などの扱いやすさにも優れている。
しかし、何よりも勝る利点といえば彼女の銃、ELERはリロードを必要としない無限の装弾数を誇っている点だろう。
故に彼女にとって他の武器、特に銃器は無用の長物なのである。
そんな訳で幸運にも美希は彼女に支給された銃を手に入れる事が出来た。
余っていた銃はベレッタM92と――イングラムM10。
さすがに両方を貰うのは気が引けたので、イングラムM10とその予備マガジンだけを譲り受ける。
今までの武装が小さなナイフだけだったのに対し、相当強力な武器を装備出来た訳だ。


559 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:10:32 ID:wGWgbNU9



560 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:10:37 ID:nBC39Ldz


561 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:10:46 ID:xfSHnf3f
加えて――荷物の中から破壊されたと思っていた詳細名簿のディスクを発見。
もちろん、自身がノートパソコンを所持しており、すぐにでもデータを読み取る事が出来るという事実は隠し通した。
そして、他愛もない会話の隙に彼女のデイパックからソレを盗み出す事にまで成功した。

「わっ、玖我先輩、どうしたのです。急にそんな大きな声出して。びっくりです」
「美希、何を呑気な事を……それに、さっきの言葉は本当なのか!?」
「むーさっきの、ですか? もしや、エロ大魔神の太一先輩に会ったらセクハラされるという衝撃の事実でしょうか。
 うーまぁ恥ずかしながら美希もファーストキスをぶちゅーと奪われてしまった訳ですが」
「ば、馬鹿、そんな訳あるかっ! しかもそんな事を訊くのは初耳だ!
 わ、私が云っているのは、そんなキ、キスなどとはまるで関係のない事でだな……!」

なつきが何故か美希の「キス」という単語に過剰な反応を示し、頬を赤らめる。
微妙なドモリが彼女の心境を表しているのか、両手をあたふたと動かし勝手な暴走は続く。
どうも、その手の話題には相当奥手なタイプのようだ、と日々太一との紙一重なエロトークに身を置いていた美希は理解する。


「そうだ、もう一度尋ねるぞ。
 美希、お前がこの見るからに怪しい二人組に付いて行くという決定……別の選択肢を選ぶとしたら今しかないぞ?」
「いいえ、こう見えても美希の意志は意外と固いのです。
 ごめんなさい。美希は、玖我先輩ではなく、深優さんと如月さんに付いていくです」


こくり、と大きく首を縦に。薄っぺらい胸を張り、妙に自信げに。
表情は相変わらずのにへら、という感じの笑顔。
そう、嘘偽りは一切無しの本音として――美希はなつきではなく、深優と双七を選択した。

「妥当な判断でしょう。チャイルドを召喚出来ない貴女と私では戦力に明確な差異が存在します。
 目的地も定まらず、フラフラと行動し続けるだけでは何の解決策も導き出せません」

なつきが茹で蛸のように顔を真っ赤に染めているのに対し、相対する深優はすまし顔だ。
まるで、ソレが当然の事のように淡々と事実だけを口にする。


562 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:11:34 ID:xfSHnf3f
「……おい、なつき。考え直すとしたら今しかないぞ。つまらない意地を張っていないで……その、だな」

この場での唯一の男性たる双七がぼそぼそとした声でなつきに再考を求める。
今回の争いが深優となつきの個人的な因縁に基づくモノであるため、部外者である彼は踏み込んだ言葉を掛けられずにいた。
彼も深優との同行を希望した。
カジノに棗恭介とトルティニタ・ファーネという人間が篭城しているらしいが、深優をこのまま放置して帰還する事は出来ないと云うのだ。


「クッ……何故、こんな……!?」


様相は完全なる一対三。俗に言う八方塞、四面楚歌。
なつきは回帰する。どうしてこんな事態になったのかを…………。


            ▽



563 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:11:43 ID:wGWgbNU9



564 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:11:45 ID:nBC39Ldz


565 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:12:03 ID:xfSHnf3f
事の起こりは深優となつきが武器を収め、若干息が詰まった感覚はあったものの情報交換を始めた席での出来事だった。
美希、深優、なつき、双七と四人がそれぞれ人間の知り合いを挙げ、出会っていないかを確かめる作業。
ある種のルーチンワークにも似た行いではあるが、決して蔑ろにする事は出来ない重要な行程である。
既に情報交換を済ませていた美希となつきはともかくとして、深優と双七の齎した情報は二人にとっても非常に有益なものだった。

「纏めると……深優が出会った人間は黒須太一、源千華留、大十字九郎、ユメイ、蘭堂りの、直枝理樹。
 俺が会ったのは九鬼耀鋼、支倉曜子、棗恭介、トルティニタ・ファーネ、アル=アジフ、羽籐桂。
 美希が対馬レオ、杉浦碧、大十字九郎、直枝理樹、加藤虎太郎。
 なつきが伊達スバル、若杉葛……って所か」

取り出した紙に各自が遭遇した人間を書き出し、双七は小さく頷いた。
四人とも島の東部から南部に掛けて行動をしていただけあって、何人か同名の人間が含まれている。

「この欄で二度名前が挙がった人物――つまり、大十字九郎と直枝理樹の二人は積極的に行動している人間……って事になるのかな」

コレは単純に出会った人間をリストアップしたものである。
とはいえ、単純な抜き出しながらある程度の規則性は見出されるものだ。
が、サンプルがまだ少ないためか、双七が云った程度の事しか現時点では推測出来ないのだが……。

「明確な危険人物が黒須太一、支倉曜子、そして"怪物"か。あ、この二人は美希の知り合いなんだっけ……?」
「はいです。二人とも美希と同じ学校の先輩なのです。あ……それと、名前は分からないんですがもう一人、危険そうな人に心当たりが。
 私と対馬先輩が一緒にいる所へ襲い掛かって来て散り散りに逃げたのですが…………次の放送で、対馬先輩は名前を呼ばれてしまいました」
「……そいつに殺されたのか」

美希達と離れた所で一人、不満げな表情のまま事の成り行きを見守っていたなつきが右の拳でドン、と樹の幹を叩いた。
梢が擦り合う音が響き、数枚の落ち葉がヒラヒラと舞い遊ぶ。
一瞬の静寂。顔を伏せ、悔しさや己の無力さに心を憤らせる――深優・グリーアと山辺美希を除いた二人だけ、の話ではあるが。



566 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:12:30 ID:xfSHnf3f
「美希……その危険そうな奴の特徴とかは分からないのかい? 男か女か、獲物は何を使っていたかとか……」
「特徴、ですか? そうですね……考えてみると、結構独特な格好をしていたような気がしますです」
「独特?」
「はい。男の人で……歳は美希達と同じくらい。武器は刀で、物凄い腕前でした。あとは上下、白の学生服を着ていたような」
「――ッ!?」


美希の言葉を訊き、極端な反応を見せたのは双七だった。
紙に名前を書き込んでいたため座っていた彼であったが、思わず立ち上がり眼を大きく見開きながら驚愕の声を漏らした。

「それって……まさか、愁厳……!?」

双七の脳裏に浮かぶのは自身の親友であり、神沢学園生徒会会長である一乃谷愁厳、その人であった。
男性、同じぐらいの年頃、凄腕の刀使い、白い学生服。
何もかもが彼が知る親友の特徴と一致する。いや、逆に否定するべき材料の方が少ないのでは……?


「そんな馬鹿な! あの会長が殺し合いに乗って無抵抗の人を殺すだなんて、そんな……っ!」


当然のように、双七は自身の中に芽生えた疑惑の種を摘み取ろうとする。
会長が人殺しを? そんな馬鹿な事が……ある訳がない。
あの人は自分が心から尊敬出来る凄い人だ。自分が知る限りあの人ほど、仲間の事を考えて行動する人間はいない。
そしてこんな「ゲーム」などという下らない催しに進んで乗ることは無い強い意志の持ち主だ。

何よりも――そんな事をすれば、刀子さんがどれだけ悲しみだろうか。
そんな簡単な事も分からないほど一乃谷愁厳は愚かな男ではない。だから……!



567 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:12:53 ID:nBC39Ldz


568 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:13:02 ID:wGWgbNU9



569 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:13:53 ID:xfSHnf3f
「如月さん、お言葉ですが」
「……えっ!?」
「この世の中に"絶対"などと云う言葉は有り得ません」
「…………深優、君は会長が人殺しだとでも云うつもりなのかい? さすがの俺だってその台詞は見過ごせないよ」
「誰よりも強く、彼が殺人者である事を否定したがっているのは如月さん、貴方なのでしょう。
 人間とは脆い生き物です。一度信頼しあったような素振りを見せても、容易く裏切る……。
 特に、このような簡易的な集団が形成される場合、その団結力には些かの疑問を感じずにはいられません。
 やはり、元々の知り合いにしか分からない事があります。
 そんな人間を護りたいと思う心があります。貴方ならば――一乃谷愁厳が人殺しに乗るその動機に心当たりがあるのではないですか?」
「なっ……!」


人は重要な選択を行う時に決して、安易な気持ちでその足を踏み出す事はない。
大切な事象であればあるほどその前提は確固たるモノへと変わり、別れ道で立ち止まる旅人に決断を迫る。

――殺し合いに乗るか否か。

白か黒か、これほど重要な事柄について思考を放棄する人間はおそらく存在しないだろう。
一乃谷愁厳のように、厳格で聡明な人物であれば尚更の事。
会長が、殺し合いに乗る動機、だって?
そんなモノある訳がな――――


「あ…………」


刀子、さん?


「でも……あ…………そ、そんな、訳が……!」



570 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:14:03 ID:wGWgbNU9



571 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:14:10 ID:nBC39Ldz


572 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:14:48 ID:xfSHnf3f
一乃谷愁厳は誰よりも仲間を重んじる男だ。
そして、非常に強い責任感を持つ人物でもあり、背中を預けたとして彼ほど頼りになる相手はいない。
自分と会長は親友なのだ。だから、彼の心も痛いほど分かる。
そう、一乃谷愁厳が何よりも自身の妹を大切に思っている事を、確かに双七は知っている。

それどころか――彼ならば、生徒会のメンバーを護るために自ら"殺人鬼"の十字架を背負う事さえ厭わないかもしれない。


「思い当たる節があったようですね」
「いや、ち、違う! ほんの気のせいだ! そんな訳がない、会長には殺し合いに乗る動機なんて……っ!」


それは、まるで小さな子供が割ってしまった硝子について親に詰問され、必死で言い訳をするような仕草だった。
双七以外の人間は完全に悟ってしまっていた。
深優や美希は当然の如く、なつきでさえ心の中の備忘録に『一乃谷愁厳』の名前を刻み込む。
殺し合いに高い確率で乗っている危険で少なくとも簡単には信用出来ない人物として――


「……すいません、如月さん。美希がいけない事を云ってしまったみたいで」
「いや……美希、君が謝る必要は無いよ。本当さ、これっぽちも申し訳なく思う必要なんて、無い」
「殺し合いに乗った知り合いか。難しい問題だな」
「なつき……会長が人殺しだと決まった訳じゃない。そんな決め付けるような台詞は止めて欲しい」
「あ、……ッ……すまない」


重い静寂が辺りを支配する。誰もが手持ち無沙汰で今、何をすればいいのか分からない。
それでも、もうすぐ放送がある事だけは意識の隅に引っ掛かったまま残っている。
このままあのノイズが流れ出すまで、頭の中を整理したい気持ちも強かった。
その時、



573 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:14:52 ID:wGWgbNU9



574 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:15:21 ID:xfSHnf3f
「……湿っぽいのは性に合わない。……そろそろ行くぞ、美希」
「なんと」
「……冗談じゃないぞ。ほら、立て!」
「ぎにゃー。ど、どしたのですか玖我先輩? いきなり、そんな」
「情報交換は終わった。それに……もうすぐ放送だろう。私は自分の知り合いが命を落とした事を喜ぶような奴と一緒に放送を迎えたくない」


なつきはキッと強い眼差しで深優を睨み付ける。
無理やり座っていた美希を立たせて腕を引っ張っているのだ。

一方で、表情を変える事無く考え込んでいた深優は反論する気も無いのだろうか、彼女の視線を受け流す。
確かにメモリーチップの記憶から考えれば、なつきと深優の敵対関係は明確。
そしてどう態度を取り繕おうとも藤乃静留、杉浦碧の死が訪れた場合、深優・グリーアはそれを歓迎する筈なのだから。

「如月。お前はどうするつもりだ? 深優・グリーアとの同行はお前の首を絞める事になると思うが?」
「……俺は深優に着いて行くよ。ああ、勿論なつきと一緒に行くのが嫌だって訳じゃない。
 俺には帰りを待っている仲間が居るのも確かだしな。情報だけを拠点に持ち帰る選択肢もある……だけど、」
「だけど?」
「……守れなかった娘がいてさ。ほんの少しの間だけしか一緒には居なかったけど、本当に悔しくて……。
 だから、倒れていた深優を見つけた時に思ったんだ。今度こそ絶対に守ってみせるって……!」

それが、双七の決意だった。
彼は、護れなかったのだ。ボタンを、そして清浦刹那を。

一字一句正確に記憶している九鬼耀鋼からの教えがある。それが『殺す覚悟』
だが、結果はどうだ? 誰一人殺めることもなく、ただ死者だけは増えていく。
他の人間を護るためにこの力を使うと決めたのだ。今度こそ、絶対に。

心の中で亡くなった人達の姿を思い浮かべながら、双七は強く、強く、その掌を握り締める。



575 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:15:56 ID:nBC39Ldz


576 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:16:16 ID:xfSHnf3f
「き、如月さん」
「……え?」
「あの、そのですね。傍目からすると愛の告白にしかきこえないのですがっ。きゃー♪」
「へ、こ、告白!? いや、ち、違うっていや、本当に!」
「またまた、そんなに照れなくても。男と女が不可思議な環境に押し込まれて、何も起こらない方がどうかしてるっす」
「だ、だから、そんな事は……!」


強固な決意と共に己の考えを口にしただけなのに、にこにこと笑みを浮かべる美希にからかわれてしまった。
全然そういう意味で云った訳ではないのだが。……弁解の余地はないのだろうか?
深優は相変わらず無表情で何を考えているか分からないし……。

実際、なつきの言葉も尤もだと思うのだ。
なぜならば、深優の記憶の中には確かに他の参加者を殺害したモノが含まれていた。
断片的なデータだったために、事の起こりは分からない故に判断が難しいのだが。

しかし、双七にはどうしても深優を見捨てる事など出来なかった。
お人好しと云われても構わない。だけど、自分は少女の死体を抱きしめる深優の姿をを見てしまった。
それは、まるで絵画のように美しく、そして哀しい光景だった。あの時の彼女の虚ろな表情は今も双七の脳裏に焼きついて離れない。
そうだ、自分はこれこそ深優の本当の姿であると思い込みたいのだ。

「きめました」
「…………何を、だ?」
「これは、如月さんの恋の道を応援しない訳にいきますまい」
「……は?」
「つまり、です」

双七が訝しげな表情で尋ねた。
美希は薄っぺらい胸を張りながら、妙に人懐っこい笑顔を浮かべる。
そしてゴホン、と咳払いを一つ。



577 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:16:32 ID:wGWgbNU9



578 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:16:46 ID:nBC39Ldz


579 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:17:02 ID:xfSHnf3f
「美希は玖我先輩ではなく、お二人に付いていきたいと考えているのです」


            ▽


「……クソッ」

なつきは憤っていた。
結局、双七の言葉を承諾する事など出来る訳も無く、なつきは一人で行動をする羽目になってしまった。
単独での活動自体に文句がある訳ではない。
それに、美希や双七が自分ではなく深優を選んだ事に嫉妬しているかといえば……どうなのだろう。

何よりも彼女の心を揺さ振っているのは一乃谷愁厳が殺人者ではないか、という疑いを抱えた双七についてだ。
彼の苦悩は見ているこちらの眼からも如実に伝わって来た。
強く信じていた人間が殺し合いに乗っている――その悲しみは一体どれほどのモノなのだろう。

"会長"と双七は愁厳の事を呼んでいた。
なつきの知り合いの中にも同様の呼称で周りから呼ばれている人間がいる。
震える肩を抱きしめながら一人なつきは思う。

――静留は何をしているのだろう、と。


「……こんな場所で出来た集団の信頼に意味なんて無い、か」


深優の発した言葉は双七だけではなく、なつきの心にまで深々と突き刺さった。
なつきは自身の心が草臥れて来た事を意識する。
出会ってからそれなりの時間が経過していた筈なのに、美希は自分ではなく深優を選んだ。
彼女は恋のキューピッドだのと訳の分からない事を言っていたが、素直に考えれば――選択したのだと思う。


580 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:17:18 ID:wGWgbNU9



581 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:17:22 ID:nBC39Ldz


582 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:17:46 ID:xfSHnf3f
なつきと深優は決して相容れる事の出来ない存在だ。
今回は戦闘にこそ発展しなかったものの、HiMEを排斥しようとするシアーズ財団の手先である彼女と手を握り合う未来が来るとは考え難い。

伊達スバル、若杉葛。

その名前を出すだけで胸の奥がズキズキと痛んだ。
スバルは対馬レオを生き返らせるために、若杉葛を殺害した。
美希と対馬レオを襲ったらしい一乃谷愁厳が間接的に、スバルを狂気に走らせ、葛を殺した――そう考える事も出来るかもしれない。

単純な協力関係の筈だったのだ。
殺し合いに乗った者を許すわけにはいかない。だから、なつきはスバルを撃った。
もう一人のHiMEである杉浦碧も美希を見捨てて何処かに行ってしまったらしい。
常日頃から「正義」を謳っていた彼女に一体どのような心変わりが訪れたのだろう。



ぼんやりと、黄昏色が消えていく空を見つめる。オレンジは薄れ、少しずつ漆黒に近付いて行く。
闇は少女の疑念を更に色濃いものへと変えていく。
これから始まるのは長い永い暗闇の時間。
まるでマリオネットが歩いているかのように、少女の足音は心細く小さい。



夜が、来る。



【F-8/1日目 夕方】


583 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:18:11 ID:xfSHnf3f
【玖我なつき@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備】:ELER(二丁拳銃。なつきのエレメント、弾数無制限)
【所持品】:支給品一式×2、765プロ所属アイドル候補生用・ステージ衣装セット@THE IDOLM@STER、
 、カードキー(【H-6】クルーザー起動用)、双眼鏡、首輪(サクヤ)、
 ベレッタM92@現実(9ミリパラベラム弾 15/15+1)、ベレッタM92の予備マガジン(15発入り)×3
 七香のMTB@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜、クルーザーにあった食料
【状態】:中度の肉体的疲労、疑心暗鬼
【思考・行動】
 基本:静留と合流する
 1:見知らぬ人間と交流する事に対する疑問
 2:静留を探す
 
【備考】
 ※チャイルドが呼び出せないことにおそらく気づいています。
 ※人探しと平行して、ゲームの盲点を探し本当のゲームの参加者になる。
 ※盗聴の可能性に気付きました。
 ※『本当の参加者』、もしくは『主催が探す特定の誰か』が存在すると考えています。
 ※佐倉霧の言いふらす情報に疑問視。
 ※劇場にてパソコンを発見しました。何か情報が隠されているようです。見るにはIDとパスワードが必要です。
 ※深優、双七、美希と情報を交換しました(一日目夕方時点)
 ※美希に詳細名簿のディスクを盗られた事に気付いていません。


            ▽



584 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:18:15 ID:nBC39Ldz


585 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:18:19 ID:wGWgbNU9



586 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:19:07 ID:xfSHnf3f
「……なつきの奴。大丈夫かな」
「むぅ、やはり無理やりにでも引っ張ってくるべきだったのでは」
「アイツが納得すると思うか?」
「ぜんぜん思いません」
「だろ」

なつきとまるで喧嘩別れというか、あまり好ましくない別れ方をした後、美希と双七は互いに腕を組みながらウンウンと唸っていた。
沈み込む太陽を背に謎のポージング。
一見、美希は大人しそうに見えたのだが、ああ見えて中々愉快な性格をしているようだ。

「で、深優。君はどうするつもりなんだ? 望むのなら、恭介達のいるカジノへ案内するけど……」
「その心配には及びません。話を聞く限り、棗恭介というのは中々のキレ者のようです。
 貴方が放送までに戻らなくても、不用意な行動取る事はないでしょう。おそらく貴方の意志を察してくれるかと思います」
「……そうか」

双七が僅かに俯いた。
仲間達と連絡を取る手段が無いのがどうも気になっているらしい。
彼らがカジノに篭城しているのならば、何処かに電話が使える設備があれば連絡が取れると思うのだが……。

「ひとまずここより北、大学のある場所へと向おうかと思います。
 郊外の施設ならば、大規模な研究施設が設置されている可能性もありますから」
「なるほど、分かった」
「いえっさー」

双七が小さく頷く。
そして、美希は右手を額に当てる敬礼のようなポーズを取る。
万事は順調である。

身体の具合は少しずつ戻って来た。少なくとも一人で歩行するのには問題は皆無。
他の参加者の煽動自体は十分に行えるが、一刻も早く万全な状態を取り戻したいという気持ちも強い。
玖我なつきを排除する事は出来なかったが、十分な煽動は行えたと自負している。


587 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:19:28 ID:nBC39Ldz


588 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:19:31 ID:wGWgbNU9



589 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:19:34 ID:xfSHnf3f
(如月双七は見るからにお人好しな人物として……。山辺美希……彼女はいったいどういう人間なのでしょうか)

深優の中に現状、唯一存在する疑問といえば山辺美希についての問題だけと云ってしまって構わないだろう。
少なくとも今の所は彼女はただの能天気な人間にしか見えない。
だがなつきを容易く切り捨てた点にはある種のリアリスト的な側面を垣間見たようにも思える。
もしや、生存する事に関して何らかの拘りがあるのだろうか。とはいえ、確証には至らない。
少なくとも、特別な力を持たない一般人である事は確かなのだが。

(……とはいえ、現状ではただの少女と認識してしまって構わないでしょうが)

虚ろな身体を引き摺り、深優は小さな疑念を振り払う。

(先生……あなたは……?)

もう一つだけ、深優の胸中で燻り続ける想いがあった。その想いはつい先程まで彼女と一緒に居た人間――高村恭司に関するものである。
彼女は思考をAIでプログラムを制御されたアンドロイドだ。
腕を切られれば当然のように出血はするし、基本的な身体構成自体は生身の人間と変わらない。
そして彼女にとって「感情」という概念はある種の経験の積み重ねなのである。

例えば、深優はまるで写真のように正確な風景や人物の模写を行う事が出来る。
しかしソレは見たままの"情報"をデータとして統合、分析し線画として表しただけの物に過ぎない。
彼女自身もその事実は十分承知している。一見、美麗に見えるそのデッサンは単純なコピー品である、と。
だが、同時に繰り返し繰り返し、描画を行う事で彼女は『彼女らしい絵』というものを生み出す事が出来るのだ。

高村恭司は深優に捉えようのない暖かみくれた男性だ。
アリッサも彼の事を心の底から信頼していて、深優以上の笑顔を向ける事もしばしばある。
彼がこの空間にいれば、少しは自身の状態に変化が訪れたのだろうか、ふと考えた。

(……あの銅剣は、高村先生と同じ……)


590 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:20:06 ID:xfSHnf3f
深優の眼は前方を歩く双七の腰に下げられた無骨な剣へと注がれる。
彼の支給品の一つ、星繰りの者の家系に伝わる宝剣――クサナギである。
本来の所持者は深優と、そしてアリッサの理解者である高村恭司。
彼の武器を他の人間が持っている事に対して、特別な想いが湧いてくる訳でもなかった。


少しだけ彼が今、何をしているのか気になった。ただ、それだけの話。


今はまだ深優・グリーアは空虚な人形に過ぎない。
プログラムに書かれた命題を実行するだけの、操り人形。
彼女が自立的に行動し、感情というものを芽生えさせるためには未だ、幾つものプロセスが足りない。


            ▽


如月双七の周囲には暗雲が立ち込めている。
今まで彼は、やけに仲の良いカップルに適当な扱いをされたり、美少女二人組に気絶させられたりとまるでいい事がなかった。
とはいえある程度信頼の置ける仲間は出来たし、何よりも元の世界の知り合いに一人も未だ犠牲者が出ていない点は快挙と云えるだろう。

(……会長……ッ!)

美希から齎された一乃谷愁厳が殺し合いに乗っている可能性がある、という情報。
今すぐにでも美希が彼を見かけたという場所に急行したい所だが、どうもそれは半日近く前の話らしい。
加えて遭遇したD-5エリアは既に禁止エリアになっており、何か証拠となるものを探す事も出来ない。

(嘘だと云ってくれ……! あなたが殺し合いに乗ってどうするんだ……!?
 刀子さんが一体どういう気持ちになるのか考えられない訳じゃないだろ!?)


591 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:20:42 ID:nBC39Ldz


592 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:20:55 ID:wGWgbNU9



593 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:21:15 ID:xfSHnf3f
胸の内で激しく炎のような感情を燃やす双七。
何が何でも愁厳を見つけ出し、事の真相を暴く必要があるだろう。
そして、もしそれが本当の事だった場合――――彼は己の拳でケジメを付けなければならない。

加えて深優・グリーアの問題もある。
彼女は本当に殺し合いに乗っていないのだろうか?
記憶のページで見た光景が確かならば、彼女の力が借りられれば相当な戦力になる事は確かである。
これもまた、明らかにしなければならない事だ。

どちらも、双七にとっては絶対に信じたくない情報だ。
弱い者を護る事こそが、彼の流儀である。
そのために、誰かを殺す覚悟は出来ている――それでも、やはり、その拳を身近な人に向けるのは嫌な事なのであるが。


            ▽



594 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:21:50 ID:nBC39Ldz


595 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:22:17 ID:xfSHnf3f
クルクルと円を描くように、ゴールとスタートが連結して存在する世界、というものが存在する。
平たく言えばそれは美希や太一達が合宿明けに閉じ込められた世界の事なのだが。

それを、山辺美希は『ループ』と呼んでいる。

延々と、
延々と、

一体何回繰り返したのかは覚えていない。
数式で表せば7×Xだから意外と多くの時間が経過している。
それはもう、成長期の少女である彼女の低い背が少しだけ高くなり、薄っぺらい胸が微妙に大きくなるくらいの期間なのだ。

彼女は固有の存在である。
山辺美希の群青色は黒須太一や宮澄見里ほど強烈な適応係数を叩き出す訳ではない。
ただ何よりも自分が大事である、という明確な意志。
生き物にとって当たり前の気持ちが人よりも少しだけ、前に出過ぎているだけ。

自分が自分でなくなるのが怖い。
他の何かに押しつぶされ、汚染され、ナニカ別のモノへと変わっていくのが恐ろしい。
ただただ、純粋で、澄み切った泉のような崇高な感情。


美希はこの閉鎖的な空間、そして世界を見て一つの仮説を打ち立てた。
材料は極端に虫や鳥、野生動物が少ないこの島に覚えた違和感と肌に感じる微妙な既視感。
だから、何の取り止めもなく思ったのだ。
いや、もはや確信していると云ってもいいかもしれない。


――参加者の中に、この殺し合いにおいて『固有』した存在がいるような気がする。



596 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:22:22 ID:wGWgbNU9



597 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:22:44 ID:nBC39Ldz


598 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:23:16 ID:xfSHnf3f
ループ世界の祠のような場所があるのか。
もしくは、優勝=祠という考え方も出来るかもしれない。
だが、漠然とした衝動でありながら、ある種の自信に満ちた思いでもって、この結論を美希は自身の胸の中へと仕舞う。

(玖我先輩には悪いけど……仕方ないよね。如月さんは見るからにお人好しだから問題なしとして……深優さんは……)


深優は……あまりにも無表情で感情がまるで読めない。玖我なつきの言葉を信じるならば、危険人物らしい。
が、少なくとも今は怪しい行動は取っていない。
警戒する必要はあるだろうが、双七もいることだし、逆にこちらのボロが出ないよう細心の注意を払うべきか。

「おい、美希。なに、ぼけーとしてるんだ」
「なんでもないです。というか、如月さんは美希よりも深優さんの心配をした方がいいのではっ」
「……だから、勘違いだ」

双七が頭を抱えながら、小さく嘆息。美希はとりあえずニコニコと。

もちろん、美希はなつきから双七と深優に寄生先を乗り換えたのである。
戦士としての気質もそうであるし、杉浦碧の事を考えるとHiMEという連中はどうも信用出来ない。
盾としては、あまり役には立たなかったが、彼女から入手した道具は非常に有用だ。

虎の子の詳細名簿の入手。これはあまりにも大きい。
さっさとパキン、と割ってしまっても良かったのだが、そこは発想の転換である。
そりゃあ、中身をしてから処理した方がよっぽど賢い。
データの形式によっては、美希の情報だけを書き換えるのも悪くないだろう。

罠を仕掛けて何百分の一もの確立に掛けるのも悪くない。
隙を見て他の人間を殺しに行くのも否定はしない。



599 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:23:19 ID:nBC39Ldz


600 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:23:31 ID:wGWgbNU9



601 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:23:42 ID:xfSHnf3f
だけど、ここは八人だけの七日間の繰り返しではないのだ。
当たり前だが支倉曜子も黒須太一も未だに存命である。ループによって蓄積された経験が少しは役に立つ。
あの二人の怪物が暴れだしたら、美希には対処方法など無くなる。だから、二人に出くわす前に対抗策を整えるのだ。

(太一先輩は太一先輩のままならともかく……支倉先輩はどう考えてもヤバイですよね)

ふぅ、ともう一度。不用意な行動など出来る訳がなく。
それでも生き残るためにそれは必要な行為で。


グルグルと円を描くように踊り続ける輪舞。
円環に囚われた少女は沈んでいく空に、いつかの一週間で見かけた空を重ね合わせる。


【E-7 平原(マップ上方)/1日目 夕方】

【チーム名:INVISIBLE MURDERS+如月双七】

【山辺美希@CROSS†CHANNEL 〜to all people〜】
【装備】:イングラムM10@現実(32/32)
【所持品】:支給品一式×2、木彫りのヒトデ7/64@CLANNAD、投げナイフ4本、ノートパソコン、MTB、
     『全参加者情報』とかかれたディスク@ギャルゲロワ2ndオリジナル、イングラムM10の予備マガジンx3(9mmパラベラム弾)
【状態】:健康、若干の迷い
【思考・行動】
 基本方針:とにかく生きて帰る。集団に隠れながら、優勝を目指す。
 0:詳細名簿のデータを見て、状況に応じた処置をする。
 1:自身の生存を何よりも最優先に行動する
 2:最悪の場合を考え、守ってくれそうなお人よしをピックアップしておきたい。
 3:バトルロワイアルにおける固有化した存在(リピーター)がいるのでは?という想像。
 4:太一、曜子を危険視。深優を警戒。
 

602 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:24:02 ID:nBC39Ldz


603 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:24:04 ID:xfSHnf3f
【備考】
 ※千華留たちと情報交換しました。深優、双七、なつきと情報を交換しました(一日目夕方時点)
 ※ループ世界から固有状態で参戦(支倉曜子が死亡したと思っていないので、INVISIBLE MURDER INVISIBLE TEARSルートではない)
 ※理樹の作戦に乗る気はないが、取りあえず参加している事を装う事にしました。
 ※把握している限りの名前に印をつけました。(但しメンバーが直接遭遇した相手のみ安全と判断)


【深優・グリーア@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備】:ミサイル(1/2)、遠坂家十年分の魔力入り宝石、グロック19@現実(8/7+1/予備48)、Segway Centaur@現実
【所持品】:支給品一式、拡声器
【状態】:肩に銃創(治療済み)、刀傷(治療済み)、全参加者の顔と名前は記憶済み
【思考・行動】
 基本方針:アリッサを救うために行動する。
 1:"優勝を目指すが、積極的な殺しはしない"。
 2:できるだけ"殺し合いが加速するように他の参加者を扇動する"。
 3:ここにいるHiME(玖我なつき、杉浦碧、藤乃静留)を殺す。殺す時はバレないようにやる。
 4:必要に応じて内通者は複数人いると思わせる。
 5:美希を警戒。
【備考】
 ※参加時期は深優ルート中盤、アリッサ死亡以降。
 ※場合によってはHiME能力に覚醒する可能性があります。
 ※アリッサが本物かどうかは不明。深優のメモリーのブラックボックスに記録されたジョセフ神父の独白にその事実が保存されています。
  しかし現在のプログラムのまま動いている深優では検索不能です。
 ※双七に記憶を読まれた事に気付いていません。
 ※アンチマテリアライザー、マルティプル・インテリジェンシャル・イグドラシル・ユニット共に使用可能。
  万全の状態で戦闘可能になるまでは若干の時間を要します。
 ※なつき、双七、美希と情報を交換しました(一日目夕方時点)
 

604 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:24:16 ID:wGWgbNU9



605 :操リ人形ノ輪舞 ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:24:25 ID:xfSHnf3f
【如月双七@あやかしびと −幻妖異聞録−】
【装備】:クサナギ@舞-HiME 運命の系統樹、双身螺旋刀@あやかしびと −幻妖異聞録−
【所持品】:支給品一式×3(食料-2)、予備弾丸18、首輪(リセ)、
      刹那の制服と下着、ファルの首飾り@シンフォニック=レイン、良月@アカイイト
【状態】:強い決意、肉体疲労(小)、精神疲労(小)、右膝と右肩に貫通射創(処置済み)、左肩裂傷(処置済み)、桂の血に惹かれている。
【思考・行動】
 基本方針:仲間の確保と保護。愁厳を探し出し、真相を確かめる。
 0:深優の動向を見守り、彼女が人を殺めようとするならば阻止する
 1:愁厳が殺し合いに乗っているかどうか確かめる。
 2:九鬼先生、刀子、トーニャ、虎太郎と合流する。
 3:恭介たちと連絡を取りたい(電話が使えないかと考えている)
 4:向かってくる敵は迎撃。必要なら手を血で汚すことにも迷いはない
【備考】
 ※双七の能力の制限は使い続けると頭痛がします。
 ※金属との意思疎通が困難になっていますが、集中すれば聞くことができます
 ※贄の血に焦がれています。見える範囲に居なければ大丈夫です
 ※深優のメモリーチップを読み取りましたが、断片的な情報しか読めていません。
  (対ウィンフィールド戦、対HiME戦withアリッサ・シアーズ、OP前のグリーア神父による最終整備)
  また現段階では集中力が高まらず、これ以上の情報の入手は難しいようです。
 ※深優、なつき、美希と情報を交換しました(一日目夕方時点)




606 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:24:57 ID:wGWgbNU9



607 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 05:25:08 ID:nBC39Ldz


608 : ◆tu4bghlMIw :2008/06/25(水) 05:25:17 ID:xfSHnf3f
以上で投下終了です。たくさんの支援有難うございました。

609 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 21:19:08 ID:9CK1VMzq
朝も早くから投下乙です

なんという双七包囲網wあとはファル様がいれば…完璧だ!
もしこれが士郎だったら士郎(笑)で終わりそうだけど
ここまで来ると寧ろすがすがしい程双七がかっこよく見えてきたw
毒吐きでは修正が必要だけど、難しいのでは?と言われてましたが
修正するにしろ、全修正するにしろ私はとても面白いと思いましたので
是非このまま頑張っていただきたいです

610 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 21:54:46 ID:Z1wlbTsU
投下乙です

Sw氏
小ネタの仕込が冴えてますね。フカヒレはもう後には戻れないのか
彼にはこれからも苦難の道を歩いて欲しいものです

tu氏
巧みにフラグ回収していますね。双七君がやっと主人公らしくなってきた
と思ったら、ステルスの双雄ここに集えりとはw
美優のセリフなどに多少の矛盾はありますが、修整を期待してますね

週刊
ポケモンネタで来たかw
今回は死者ゼロだけど、人外が増えてきたなあ

611 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/25(水) 23:30:20 ID:0MAnAoOr
『モノの価値は人それぞれ』


「さて、適当に歩いていたらたどり着いてしまったのだが」

D-6地区、温泉宿。
奥ゆかしく古めかしい日本建築の前に立ち、黒須太一は一人呟いた。
先ほど勧誘した来ヶ谷何某というやたら手強い美少女との待ち合わせがこの温泉旅館。

正義の味方を集めるならやはり五人は欲しいよなー

とか、

そうなるとリーダーはレッドなのだが俺はレッドはイヤだし、かといってホワイトがリーダーというのもイマイチだな。

とかどうでも良い事を考えてぶーらぶーらと北に向かい、山間に見える家々に向かってみたらたどり着きしは温泉旅館。
確か約束だと次の放送くらいに落ち合おう、との事なのだが、時間はまだたっぷり二時間近くもある。

「さて、この黒須太一には三つの選択肢がある。
 一、純愛貴族の黒須太一は何か目的を見付けられる。
 二、来ヶ谷何某もしくは誰かがやってくる。
 三、放送まで寂しく待つ、現実は非情である。
 俺が丸を付けたいのは二番だが先ほど別れたばかりの来ヶ谷がそうそう早くにやって来るとも思えない。
 そして一番と三番良く見ると内容が同じ…つまり!」

バババッ!と大きな身振り手振りをしながら騒がしく目的を述べる。
何はともあれ目的は決まった。
というか元より一つしかないがそれはそれ。

「風呂でも入るかね〜」


612 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/25(水) 23:31:04 ID:0MAnAoOr


「い〜い湯だ〜な、はははん♪ い〜い湯だな♪」 

十人中六人が下手くそという感想を持つであろう鼻歌を歌いながら、黒須太一は温泉を満喫していた。
怪我をした左肩には適当に見つけたシーツを切って巻いてあるためソコだけ多少痛々しい。
が、それ以外は全く綺麗なさらしている。

引き締まった……とはとても言えない気もする腕。
カモシカのような……気がする人間もいるかもしれない太もも。
余分な肉の無い腹……筋肉も無いが。

要するに、一般的な男子の体を存分に晒していた。

「う〜む、湯を浴びて温まりながらも気分が悪いのも治る気がするし、その上俺の美声に誘われて誰か来るという可能性もありで…
 更に来ヶ谷との待ち合わせにも使えて…一石三鳥か四鳥くらいだな〜♪」

そう、太一の右手に握られているのは『拡声器』
よりにもよってこの男、風呂に入りながら拡声器でもって鼻歌を周囲に披露しているのだ。
そんな事をして拡声器が壊れてしまったらどうするのか、など気にもしていない。

「さて、武器も無く服も無い状況でもしなごみんのような危険な相手が来たらどうするのか、などと思われるかもしれないがそこは素人の浅はかさ。
 俺は地上最強だ!どんな奴が来ても0,2秒で叩きのめす事ができるんだ! 武器は持たないカラデだ!
 しかし強すぎるって事も辛いもんだぜ、強すぎるせいで世界中から命を狙われ挙句の果てにこんな島。
 憎い!この俺の力が! この俺の強すぎる力が!!」

意味不明な事柄を大声で語る太一。
拡声器を通して付近に響き渡っているが彼にとっては望むところだ。
むしろ、きてくれた方が嬉しいなあと。


613 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/25(水) 23:31:43 ID:0MAnAoOr
「さて、誰も来る気配が無いなあ…おーい、幾らカラデでもそんなに最強では無いですよ〜だから隠れてないで出ておいで〜」

そう呼びかけてみるがやはり反応は無い。
多分だが、この近くには本当に誰もいないのかもしれない。

「さて、そうなると寂しいな。
 ここを離れるわけにもいかず、そうなると探検するしかないのか?」

何時までも風呂に入っていてはのぼせてしまう。
何もせずに待っているのは暇だ。
ならば、することは一つ。
拡声器を横に置きながら、バシャリと湯船から立ち上がった。



「はあっくしょん!!
 う〜、ず〜〜」

響きわたるくしゃみと、鼻水をすする音。
紛れも無く黒須太一より放たれたものだ。
だが、たっぷり二十分は温まった太一が、何故くしゃみをしているのか。

「やっぱ、冷たいわこれ……」

水に濡れた制服をそのまま着込んでいるからである。
浴衣に身を包む気もせず、かといって他に服も無いのでそのまま着ているのだった。

「うーん、これから暗くなる以上はどこかで篭城するのが最適なんだが…ここは向いてないなあ」


614 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/25(水) 23:32:26 ID:0MAnAoOr
広い敷地に露天風呂、調理場に布団と必要な品は揃っているのだが、肝心の篭城をするにあたっては非常に不向きである。
広い敷地は見て周る場所を増やすだけであるし、バリケードなどを築くにしても入る場所は幾らでもある。
ついでに頑丈でもないし、火を付けたら良く燃えると思われる。

「来ヶ谷が来るかは知らないけども…と、そういえば本名は何ていうのだろう?
 えーと来ヶ谷来ヶ谷……あった、来ヶ谷…ゆい…こかな?ゆいみずうみでは語呂が悪いし。
 えーと、とにかく来ヶ谷が来るのをとりあえず待つとしてその後はどこか篭城できそうな場所…この場所からだと廃校かな?
 知らない場所だと寺か博物館か兎に角そのあたりの場所に移動して一晩過ごして…おおっと、一晩過ごすという単語にいやらしさを感じてはいないぞ。
 兎に角……おやっ?」

やたらとしつこく話し続けている太一の目に、飛び込んでくる不自然な光景。
木の根元に、明らかに不自然な石と、その下に盛られた真新しい土。
具体的に何か不明だが、それは恐らく、

「墓…かな?
 誰かが死んだ誰かを埋めたんだろうな」

死者を弔う為のもの。
墓碑銘は無いが墓であると考えていいだろう。

「……ふむ、墓…ねえ」

ちらり、右を見る。
誰も居ない。
ちらり、左を見る。
誰も居ない。
オドルナライマノウチ……ではなくて。

「やるなら、今か…。
 さてどうしよう」


615 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/25(水) 23:33:18 ID:0MAnAoOr
墓、というなら、そこには半々くらいの確率で首輪がある筈だ。
丸のままの死体が残っている確率が半分。
既に切り離され、首輪の無い死体のある確率が半分。
暴いてみる価値はあるのだがー…

「切られていたら…不味いよなー…やっぱり」

無駄に骨を折るだけではなく、こびり付いた血を見ることにもなるかもしれない。
ついでにいえば、太一には人の首を切り落とせるような道具に心当たりも無い。
だからといって、折角のチャンスを無駄にするのも勿体無い。
墓など、所詮は生きている人間の自己満足に過ぎないのだから。

「うーむ、どうするか……」

考える、

考える、

考える、

考えて、

考えて、

考えて、

「……ぶえっくしょーーーん!!」

とりあえず、着替えを探してみようと心に誓う太一であった。


【D-6 温泉宿/1日目 夕方】

616 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/25(水) 23:33:49 ID:0MAnAoOr
【黒須太一@CROSS†CHANNEL】
【装備】:サバイバルナイフ、拡声器
【所持品】:支給品一式、S&WM37エアーウェイト(5/5)、ウィルス@リトルバスターズ!
 S&WM37エアーウェイトの予備弾12、第1次放送時の死亡者とスパイに関するメモ
【状態】:疲労(中)、やや風邪気味(軽い発熱・めまい・寒気)、左肩銃創痕
【思考・行動】
基本方針:『人間』を集めて『エイリアン』を打倒し、地球の平和を守る。
 0:どうするかねー。
 1:拡声器を使って、人と交流する。
 2:『人間』や『エイリアン』と交流を深め、強大な『エイリアン』たちを打倒する。
 3:『支倉曜子』『山辺美希』や『殺し合いに乗っていない者』に出会えれば、仲間になるよう説得する。
 4:「この島にいる者は全てエイリアン」という言葉には懐疑的。
 5:温泉旅館に行き、来々谷を待つ。
【備考】
 ※第一回放送を聞き逃しましたが、死亡者のみ名前と外見を把握しました。
 ※太一の言う『エイリアン』とは、超常的な力を持った者を指します。
 ※登場時期は、いつかの週末。固有状態ではありません。
 ※直枝理樹(女と勘違い)、真アサシン、藤乃静留、玖我なつき(詳細は知らない)、深優・グリーアを  エイリアンと考えています。
 ※スパイに関するルールはでたらめです。
 ※士郎は死んだと思ってます。
 ※NYP兵器、ウィルス。相手に肉体的疲労を与えます。威力は個人差あり。
 ※来々谷と第三回放送頃に温泉旅館で落ち合う約束をしました。


617 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 23:33:54 ID:wGWgbNU9



618 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 23:33:59 ID:Z1wlbTsU



619 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 23:34:13 ID:MV5Qh4bd


620 : ◆S71MbhUMlM :2008/06/25(水) 23:34:46 ID:0MAnAoOr
投下完了しました。 支援有り難うございまます。

誤字脱字などございましたら指摘お願いします。


621 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 23:36:55 ID:wGWgbNU9
投下お疲れ様です。
太一何をやってるんだw
そして墓暴いちゃ駄目、ゼッタイ!
……なんていっても暴くんだろうなあ、こいつはw

622 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/25(水) 23:52:42 ID:uW43/4Ne
投下乙
太一よ風邪の時に風呂は悪化するぞw
しかも濡れたままの服なんて死ぬきかw

これは太一語?
>>612
それ以外は全く綺麗なさらしている。


623 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:11:44 ID:nR8iTrqy
……何を話せばいいのか。どうしたらいいのか。
馬鹿ばかりやってた俺にはこういう時の勝手など分かるはずもなく。
ただ話そうとして口を開き、何もそこから出るものはなく静寂は揺るぎはしない。

  静かな静かな空間の中で、私と彼は向かい合う。
  必要な事はとても簡単だと思う。
  ……だけど、それを切り出すことの意味は私にはとても大きい意味を持つ。

いや、出ようとする言葉はあるのだ。
……しかしそれは、この場を濁し、先延ばしにしようとする為のものでしかない。

  ……向かい合うよりも、今までの利害のみの関係を維持しよう。
  ただただ、少し落ち着いてもらえばどうにかなるかもしれないのだから。

怪我の調子はどうなっているんだ――――?
  まずは何か、暖かいものでも飲みましょう――――?


 ……そんな、向き合うべきものから目を逸らした台詞では現状は変わらない。変えられない。
 それは俺も彼女もお互いに分かっているだろう/それは私も彼もお互いに分かっていると思う。
 ならば何を交わすべきか。


分かっている。
俺達の間柄か、ファントムとの関わり方か。
そのいずれもが向かい合うべきであり、しかし俺はそれに対して切り出せない。

  利害の一致というだけで繋がっていたはずの私達の関係。
  そこに、私だけに隠しきれていない彼の復讐心が棘を差し込んだ。


624 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:12:41 ID:rzHA4Pvn


625 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:13:11 ID:dWAJw4VR
 

626 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:13:17 ID:nR8iTrqy
……どちらに踏み込もうとも、俺達の関係は崩壊する。
今の関係を見直すことになろうと、俺がファントムへ滾らせる復讐心の矛先をどうすることになろうと。
……その先にあるのは、最早損得を度外視した領域での話だ。
そうなればこれまでの様な、利害だけのパートナーではいられなくなる。
どう転ぶにせよ、最早普通の会話を交わせなくなってしまう可能性だってあるのだ。
俺は、それを恐れている。

  きっと、ここから先はもう利害の一致というだけで誤魔化すことはできないだろう。
  それはつまり、私と彼がパートナーである理由を失わせる結果になる。
  ……私は、それを恐れている。

認めよう。
理解者を得て、俺は弱くなった。
どれだけの間忘れていたかも知れない、涙さえ見せることになった。
……だからこそ、また俺は強くならねばならない。
必要とあれば、彼女を斬り捨てなくてはならないのだ。

  果たして、理由もなくそこに居ていいのか。
  ……理由がなければ、そこに居てはいけないのか。
  どうしても忘れられない、哀しくて、何よりも安心した光景が私の頭にくっきりと浮かび上がる。

……そしてあの暗い闇の中で一人きり、またも俺は必死に手を伸ばすのだろう。
そこにはあるのは復讐、そして理樹のことだけだ。
……復讐と言う明確な目的があるうちはいい。
それが終わればまた元通り。
ただ理樹のため、理樹のため――――、機械のように動き続ける。
それだけの話だ。


627 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:14:02 ID:nR8iTrqy
  不意にクリスが、私にその言葉を告げる為に近づいてくる。
  ……全て、思い出したと。
  今までありがとう、と、ごめん、と、それだけを言いたいが為に。
  それだけで私は私の居場所と意義を全て失い、譲り渡さざるを得なかった。
  姉さんに。
  だってもう私にそこにいる理由はなく、彼の隣には居るべき理由のある人が微笑んでいるのだから。

……何を恐れる必要がある。
決めただろう、理樹を、鈴を強くして生きて返すと。
大切な、大切なあいつらより優先するものなんて、ないはずなんだ。
……だから、その為に俺は一人でもやりとげる、その為に余計なものは必要ない!
たとえそれが復讐であっても……、だ。そのはずだ。

  ……私は彼に、失った居場所を求めているのかもしれない。
  それをはっきりと自覚する。
  それがどれだけ酷い行為かも、……思い知る。
  だけど、だからこそ――――、

……そう、俺は復讐という人間らしい感情を取り戻すほどになってしまっているのだ。
だがしかし、彼女はそれを抑える鞘ともなっている。
彼女が居るからこそ、俺は今までの俺に近い状態で留まれている。

  だからこそ、私は彼に言わなければいけない。伝えなければいけない。
  ……感情をぶつける事を躊躇ってちゃいけない、と。
  そうしないと、彼が私と同じ結末を迎えてしまいそうだから。

彼女は一体、俺にとって何なのだろうか。
俺を弱くしながらも、強いままで止め置く楔。


628 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:15:02 ID:nR8iTrqy
  彼の奥底で燻り広がる復讐の炎。
  それはつまり、失った人が本当に大切だったことの裏返し。
  だったら、それを絶対に否定しちゃいけない。
  大切な人の為の想いが、行動が、失われる辛さを味わって欲しくない。
  例え誰が復讐など許されない事だ、なんて談じても。
  彼自身が認めなかったとしても。
  ……私だけは、それを肯定しよう。

だからこそ――――迂闊なことは言えない。
言葉に詰まり、そこにあるのは時計の刻む定期的な音のみだ。
話すべき事は形を見せながらも、言葉という形に捉えようとするとぬるりと抜け出てしまう。

  だから、私は彼に伝えようと思う。
  一人の女の子の一つの結末を。
  せめて、彼が同じ結末を見届けることのない様に。

……そんな折だった。
不意に、彼女からの声が届いたのは。
その顔に浮かぶのはどういう表情なのか。
……言葉にすることなど出来はしない。
だけど、それでも。

  ……それは誰にも伝えたことのない、秘密。
  お婆ちゃんにも知らせず、クリスが自分で気付くまで続けられた道化のお話。
  だから厳密には彼も知っているけれど、それでも自分からこれを伝えるのは初めてだ。
  これを伝える事の意味。
  ……それは、私には色々な意味で重い。本当に、本当に。
  だけど、それでも。


629 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:15:23 ID:rzHA4Pvn


630 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:15:43 ID:dWAJw4VR
 

631 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:16:02 ID:nR8iTrqy
 それでも彼女は話し始める/それでも私は話し始める。
 後悔だけはなくとも、ただ空虚な心だけの残る。
 頑張って、頑張って、頑張って。
 その果てに報われることのなかった物語を。


「……話をしましょうか。今までの事と、そしてこれからの事について」


彼女はゆっくりとその手を髪に触れさせる。

  私は無理にでもリボンに手をかける。

 ぱさり、という音がして、戦いの中で切られ、肩よりも少しだけ長い程度の髪が宙に舞う。

そこにいるのは俺の知らぬ表情をした少女だった。

  久しぶりにもかかわらず、これだけで私の意思は切り替わる。

……その顔に、佇まいに。ただただ目を奪われた。

  私が私でいるために必要だったのは、結局この程度でしかない。


「あらためて、……私はアル。
 ……トルティニタの姉、アリエッタ・フィーネ『だった』ものよ」


果たして彼女は俺の知る少女なのか。
……それにすら答えは出ず、俺は呆けた表情でその少女を見つめていることしか出来ない。
相対してみれば、一見髪を頭のやや横に結った『トルタ』と似ているのは顔だけのようにも思える。
穏やかで落ち着いた口調からして、あのどことなく人を引っ張る強さを持った彼女の影すら見当たらなかった。

632 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:17:18 ID:dWAJw4VR
 

633 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:17:41 ID:rzHA4Pvn


634 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:17:42 ID:nR8iTrqy
  私は、アリエッタ。
  偽りに塗り固められているようで、それでもトルティニタの半身でもある存在。
  トルティニタは私が大好きで、もう一人の自分と考えていて。
  だからこそ、あの子は私の立場が自分でないことをとても思い悩んでいたの。

「ふふ、ちょっと驚いたかな。急にこんな風に話し出したりしたんだものね。
 ……でもきっと、違和感はないんじゃないかな。とりあえず驚かす意図はないの、ごめんね」

  ……目の前の人は、僅かに目を見開いて何も言い出さない。
  ううん、もしかしたら何も言えないのかもしれないね。
  もしそうなら……、ちょっと都合がいいかも。
  まずは、私の話を聞いてもらいたいから。

「……それでも、今は敢えてこのままアルとして話させてもらうね?
 そうでもしないと……、ちょっと、納得できないかもしれないもの」

  私が『アル』でもある事、それは今までの何よりの証拠。
  さあ、語りましょう。
  その想い、その喜び、その辛さ。
  全ての果てに、せめてその結末を歩んでもらわない為に――――。
  

「……話はね、今から3年前に遡るの。
 『私』とクリスが離れ離れになる、その時に。
 クリスの空に雨が降り始めた時に――――」




635 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:18:13 ID:dWAJw4VR
 

636 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:18:50 ID:nR8iTrqy
◇ ◇ ◇


話の内容は、予想していたものよりも大分複雑だった。
心のどこかで知りたいと思っていたトルタの過去。

ずっとずっと、幼い頃から共にあった三人。
クリス、トルタ、アル。
ずっと続くと思っていたその日々は、ある日終焉を迎えることになる。
……クリスはアルを選び、トルタを選ばなかったからだ。

それを聴いた瞬間、正直な話、俺は僅かにクリスに黒い感情を覚えた。
しょうがない、と『アル』は言う。
アルには何もなく、トルタには歌がある。
だからこそ、クリスは支えるべきなのはアルだと思ったのだろう、と。

……それでも、トルタを放っておくべきなのかといえば、違う。
ずっと、アルよりも前からクリスに好意を抱いていたトルタを捨て置いていいのかと。
しかしそれとは関係なく彼女の話は進み、俺はその感情を消さざるを得なかった。
感情とは別の割り切りで彼女はそれに納得していたのだし、
彼女の口から出るクリスへの感情を知っていく度に、黒い感情を抱いたことが恥ずかしくならざるを得ない。

……そう、その想いはそれ程に尊かった。

並び歩くトルタの想いが届く事はなく、共に天上を見つめる以外の思い出など一つもない日々。
それでもまだ、彼女はそこに幸せを見出していたのかもしれない。
……アリエッタが事故で意識を取り戻さなくなるまでは。

車に轢かれ、アリエッタはベッドで寝たきりになり。
……クリスはその現実を認められずに『事故にあった』記憶を失った。
そしてあたかも自分を責めるかのように、悲しみを表すかのように彼は雨を見るようになる。
永遠の雨を。

637 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:19:09 ID:rzHA4Pvn


638 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:19:50 ID:dWAJw4VR
 

639 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:19:58 ID:nR8iTrqy
だから。
だからトルタは、アルの振りをし続けることを選択した。
アルは元気に今も故郷で生活しているのだと。
そんなお話を信じているクリスにそれを気付かせないために、トルタは嘘をつき続ける。
3年間――――、3年間もの間、だ。

ただ、クリスを守る為に。
無償の想いをひたすらに注ぎ込む。
週一回『アルからの手紙』を書き、日常生活ではクリスの幻覚や言動をフォローし続ける毎日。
そして、年1回のペースでアリエッタとしてクリスに会いに行く。
……決して、彼女自身の想いを表に出すことはない。その余地はない。
事故の前のアリエッタは料理が得意でパン屋に勤める予定だったから、それを悟られない為にトルタ自身も苦手だった料理を習い、パン作りに精を出した。
……こんな生活の為に、悩みを告げられる親しい友人も作れず、買い食いをしたり遊んだり、学生らしいことをする余裕もなかったそうだ。

……少なくとも、俺の3年間はそうではなかった。
例えあの虚構の世界でどんな思いをしていようとも、本当の世界の学生生活は楽しいものだった。
バスターズの皆との、騒がしくも笑いあえたあの日々は、本当に。

……トルタには、それすら無かったのだ。


――――その果ての結末が、クリスの記憶の復活という形で訪れる。
年が明けて数日。
年末年始の僅かな間、会わなかった。
それだけで唐突にこれまでの3年間をねぎらわれ、そこで終わりだ。

……そしてアリエッタは目覚め、最早トルタには隣を歩くことすら許されない。居場所はない。
どこか遠くから彼らを見守り続けるしかなかった。


640 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:20:10 ID:rzHA4Pvn


641 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:20:58 ID:nR8iTrqy
そんな時にこの殺し合いに呼びこまれた――――、と、それを告げて『アル』は溜息を吐く。
静かに、長く長く。
……何かに区切りをつけるように。


報われない。ただただ、報われないとそう思う。
……それでも俺は彼女の境遇について何の反応も出来なかった。
慰めることも、憤ることも。

何故なら――――、語る彼女の顔は穏やかなままで、満足そうな顔をしていたからだ。
それがアリエッタの演技によるものか、トルティニタの本心によるものかは全く判別がつかない。
彼女の嘘と演技は完璧だ。
……だけど、どちらにせよ言える事はある。

無理をしてでもここまで完璧な演技をする程に。
あるいは、本心からそれを喜べる程に。
……トルタは、クリスとアルの事が好きで、大切だったのだと。

それだけは紛れもない事実なのだ。


この事に関して俺の介入できる余地は全くない。
既に終わった出来事であり、変えようのない関係であり、何よりトルタ本人がそれを望まない。
彼女自身が受け入れ、納得した以上はもう過去の思い出でしかないのだ。


だからこそ、過去を象徴する『アリエッタ』の姿と口調で伝える彼女は如何なる心中で俺に語りかけているのだろうか。
……その強さは届いても、その内側までは分からない。

何故。
どうして。
何の為に。

642 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:21:25 ID:dWAJw4VR
 

643 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:22:03 ID:nR8iTrqy
俺の為にそうするのか――――。


その答えは、彼女自身の口からもたらされる。


「――――ファントム」


  ……私は、敢えてその名前を口にする。
  途端に恭介の動きが一旦止まってしまった。
  それでも、私は言葉を止めない。
  もしかしたらそれが、彼の心を抉るかもしれない。
  そのせいでまた、私が居てもいい所が失われるかもしれない。

  ……拒絶されてもいい。
  ただ、伝えておきたい事がある。それが最後になるとしても。

「恭介。あなたはきっと、その男への復讐を考えているのでしょう?
 隠さなくてもいいよ。あなたがどれだけ鈴のことを大切に想っていたか。
 ……あなたの憎しみはその証拠なんだから」


嗚呼……、やはり気付かれていたのか。
……やめてくれ、その目で見ないでくれ。
お前の側にいると俺の中の黒い炎が消えちまう。
そして、氷のような鋭さも溶けちまう。
鈴の復讐と理樹への願い。そのどちらもが、霧霞の向こうに見えなくなる。

「……どうやって、気付いたんだ?」


644 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:22:26 ID:rzHA4Pvn


645 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:23:03 ID:nR8iTrqy
  ……分かるの、それくらい。
  あなたの失ったもの、その大きさは隠しきれるものじゃない。
  他の誰でもない私だからこそ分かる。
  ……死別と離別という違いはあるけど、私も大切な人を失ったから。

「……私は、嘘つきだから。だから他の人の嘘にも敏感になれたの。
 ――――恭介」

『アリエッタ』が俺に、確かに見覚えのある表情でじっと見つめてくる。
それはアリエッタとトルティニタが互いの半身であるが故に、共通する部分なのかもしれない。
……ならば、アリエッタを選んだクリスの気持ちも少しだけ理解できる気さえした。

彼女達は同じくらいに優しくて、どうしようもなく甘えそうになる。
最早見分けがつかないのにそれでも敢えてどちらかを選ばねばならないとしたら、何某かの区別のつく部分だけで判断しなければならないだろう。
……それはきっと、とても辛かったに違いない。
きっとその優しさは、選ばなくともなお献身という形で自分を助け続けるのだから。

「……やめろ」

だからお前は邪魔なんだ/どれだけそれに救われたろう。
ここまで邪魔になるのなら/だからこそ今の俺を見せたくない。
いっその事出会いたくなんてなかった/俺が、俺でいられなくなっちまう。

……そんな事はない。そんな事はないんだ。
お前に出会えて感謝している。そして、俺を俺でいさせてくれている。
それでもだ――――!


「……おい、トルタ。
 じゃあ言ってやるよ、俺が、どんな事をずっと考えていたのか――――!」


646 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:23:09 ID:dWAJw4VR
  

647 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:24:03 ID:nR8iTrqy
理不尽な怒りの覚え方によって生じた激情が、どうしようもなく醜い自分を彼女に刻み込もうとする。
制止する理性の壁とは別の部分で堤防が決壊する。
言うなという意思に反して感情が暴れだす。
きっとそれを告げれば彼女は俺を軽蔑する。
もはや関係を修復する事は叶わない。

違う、止めろ、止めろ、止めろ、止めろ、止めてくれ――――、

一瞬湧き上がる強すぎる衝動を、しかし一つの思考が粉砕した。
……ああ、嫌われてしまえばそれで終わりだ。
最早彼女を断ち切る事は容易となり、後は今まで通り彼女も含めて理樹と鈴の為に全てを捨てればいいだけだ。
それで全ては元通り。

  恭介の目が怖い。
  ……だけど、私はその視線で射殺されても構わない。
  それも含めて初めて彼は彼自身であり、その原因となる想いを否定してほしくはなかったから。


「……俺はキャル・ディヴェンスを殺す。
 まずファントムの奴を四肢を膾切りにして、歯を全て抜いて、目と耳を片方ずつ潰して、肋骨から丁寧に肉を剥ぎ取ってやる。
 その体の上に何百キロもの重しを置いて動けなくした目の前で、それ以上にキャルを辛い目にあわせてやりたいんだ。
 ファントムの目の前で、惨たらしく。
 鈴に奴がやりやがった、その全てを越えるだけの見せしめを与えて苦しませるんだ……。
 ……はは、はははははは、はははは……」

――――言ってしまった。
これで全て終わりだ。

「ははっ、あはははははっ、ははははははははは……っ!」


648 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:24:04 ID:dWAJw4VR
 

649 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:24:19 ID:rzHA4Pvn


650 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:25:03 ID:nR8iTrqy
……ああ、笑えすぎて涙が出てきちまう。
どす黒い感情を見せてしまった以上、彼女は俺に幻滅しただろう。
復讐を公言した以上、彼女は俺との協定にメリットを見出さない。
感情も理性もどちらの面でも、既に俺といる理由はないのだ。

だから彼女はここを去っていって、……それでいい。
俺にとっても彼女にとっても、それぞれの目的がずれた以上は別行動した方が利益は大きいはずだ。
如月たちが帰ってきたら、彼女を託してここを出て行こう。
……ああ、それでいい、そのはずだ。

 
「それでいいの。
 私みたいに、ちょっとしたことではすぐ泣くのに……、本当に泣きたい時には泣けない人間になっちゃうよ」

  ……『アリエッタ』の表情のままで私は本当に告げたい事だけを告げる。
  この話を誰かにする事に、どれだけの覚悟が必要だったろうか。
  その割には湧き上がる感情もなく……、ただ、喪失感と開放感だけが残っている。
  ……クリスが記憶を取り戻したと告げた時よりもなお。
  あの時はまだ、感情を彼にぶつける事ができたというのに。

……どういう事だろうか。
いまだ彼女は立ち去らない。
彼女は静かに静かに言葉を綴りだす。
……俺の何もかもを認めるように。

  ……空洞に入り込んでくるのは今まで私がクリスに抱いていた感情とは別の起源のものだ。
  どうにかしてその穴を埋めようと、私は目の前のものに縋りつく。
  私はこの人の助けになろう。どんな形でもいい。
  憎しみを抑える鞘としてでもいい。
  邪魔になるならば憎しみを肥やし、燃え盛らせる為に殺されてもいい。
  彼が本当に望むならば、私は離れる事も厭わない。


651 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:26:03 ID:nR8iTrqy
  そして私は許せない。
  あの恭介に、ここまでに憎悪を抱かせるファントムを。
  ……そう、そして感情の埋め合わせに彼を利用しようとする自分自身を。

  だからこそ、心の底から彼の力になりたい。
  彼のあらゆる感情と衝動を受け止めよう。
  ……無理をする辛さは、よく知っているのだから。

「恭介。あなたの中で煮詰まっているその感情を隠すことはないよ。
 どす黒くてもいい、醜くてもいい。脆くたっていい。
 そんなものはないほうがおかしいし、堪える必要もないの。
 ……私は少なくとも、それを受け入れるから。共有できるから。
 大切な人が手の届かない所にいるのは……寂しすぎるもの」

  ……ああ、そうか。
  私は多分、とうとう認めてしまったんだ。
  クリスはもう二度と私と共にいることはないって。

……ようやく理解する。
何故、彼女がこの話をしたのかを。

俺の為。
確かに動機はそれだったのだろう。
だが――――、それ以上に。

  おかしいね。
  あれだけ私は彼の事が好きだったはずなのに。
  ……ううん、だからこそ。
  
――――彼女は、救いを求めていた。
目の前の髪を解いた少女は穏やかな表情を浮かべたまま、そこに一切の綻びは見られない。
……だけど、そのあまりにも分厚い雨霧の向こうに、確かに肩を震わせるトルティニタの存在を感じた。

652 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:26:52 ID:nR8iTrqy
その震えをとめたくて肩に手を伸ばそうとして、やめる。
……俺が助けるべきを見誤るな。
何の為に、どれだけの犠牲を払ってきたのか。
それは、俺にとって理樹が掛け替えのない仲間、いや、それ以上の存在である“リトルバスターズ”だからに他ならない。
ああ、それでも。

  だからこそ私にできるのは、ここまで。
  今も私はクリスの事を愛している。
  これは今後一生変わる事はないだろう。
  それでも、私は彼のいない道を歩んでいかなくてはならない。
  ……だけど。

俺にとって、彼女の存在は確かに救いと成り得ている。
だから彼女には進ませたくない。
暗い昏い闇の中で、痛みと暑さと苦しさと、狭さと気持ち悪さと寂しさに押し押されながら。
……誰に知られる事もなく、それでも何か出来ると信じて這いずり回る無限の回廊を。

  一人はやっぱり……、辛いよ。
  あなたもそうなんだよね、きっと。
  そして、あなたは私にとって大切なものになりつつあるのかもしれない。
  だから。


俺のできるのは、ただ――――、

  私のできるのは、ただ――――、



653 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:27:12 ID:dWAJw4VR
 

654 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:27:13 ID:rzHA4Pvn


655 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:27:51 ID:nR8iTrqy
「……お前はトルタだ。トルティニタだ。
 アリエッタじゃない、髪を変えても、服を着替えてもトルタなんだ。
 それでいい、そのままでいいんだ……」

「……私は、あなたの全てを認める。
 たった一人で大切な人たちを助けようとしたその頑張りも。
 喪った人の為に復讐を求める、その心も。
 全て、あってもいいものだから。私が……、全部手伝うから」
 
 良く似ている者として、それぞれを認め合う。
 互いを互いの支えとして、自分を認めてくれた人に寄りかかり精一杯立っていようとするだけだ。

 ……その、取っ掛かりとして。
 どちらともなく、ただ、その手を握った。
 それだけだった。


その途端、俺の中の何かは軽くなる。
……まるで見えない何かが支えてくれているかのように。
そして――――、

「……あ、れ?」

ぽろぽろと、ぽろぽろと。
表情を変えぬまま、彼女の瞳から流れ出す水滴は止むことはない。
まるで降り止まない雨のように。

彼女がいつか言った言葉を思い出す。

……あなただって、幸せにならなくちゃいけない。
報われない想いなんて、私は認めない!


656 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:28:36 ID:rzHA4Pvn


657 :秘密 - da capo/al fine - ◆wYjszMXgAo :2008/06/26(木) 00:28:36 ID:nR8iTrqy
そこに、どれだけの想いが込められているかなど考えるまでもない。
……誰も彼女を認めなかった。
その辛さを俺は知っている。

いつかの時彼女は俺の涙を受け止めた。
ならば、今度は俺の番だ。

……本来は俺が言うべきではないのだろう。
だがそれでも、彼女が彼女としてある為にはこの言葉をかける必要があるはずだ。
もはや存在意義をなくした仮面は、被っている必要はないのだと告げなければならない。
彼女が彼女でなくなったスイッチは、実に単純だった。

「……なあ」
「……ごめんね、急に泣き出しちゃって」


――――言葉が出てこない。
何でこんな時に限ってボキャブラリーが貧困になるんだ俺は!

それでもどうにかして、言葉を搾り出す。
最低限だけど、伝えたい言葉は伝えられるように。

「……リボンをしていた方が、お前に似合ってると思うぜ」


  ――――それは、私がトルタであることを認める言葉。
  アリエッタとトルティニタ、私がどちらであるのか。
  境界が溶け合い曖昧になり、私にすら真実が分からなくなったあの日々の終焉を意味していた。

  それがどれだけ哀しくて、どれだけ嬉しかったか。
  ……到底言葉では表す事はできないだろう。


658 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:29:21 ID:dWAJw4VR
 

659 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:30:16 ID:rzHA4Pvn


660 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:30:29 ID:dWAJw4VR
 

661 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:30:50 ID:rzHA4Pvn


662 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:31:09 ID:vuRXJyKv


663 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:31:27 ID:dWAJw4VR
 

664 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:31:54 ID:dWAJw4VR
 

665 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 00:33:02 ID:dWAJw4VR
 

666 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:07:26 ID:pRiwd3Ws
 
 家族。

 それは父にとって、母にとって、
 息子にとって、娘にとって、
 祖父にとって、祖母にとって、
 愛犬にとって、同居人にとって、

 誰もが、愛してやまない領域だった。

 家族を壊すのはどんな愚か者でしょうか。
 家族を否定するのはどのような愚者か。
 家族を犯すのはどんな非常識人だろうか。

 領域に住まう者は、あたりまえの喪失を恐れた。
 恐れて、予防策は持たずして、喪失感にうちひしがれる。

 一家の家計を切り盛りする、歳不相応に家族思いな長女がいたとしよう。
 死して尚、たった一人の肉親のために現世に留まることを決意した長男がいたとしよう。
 誰かと共に生きる意味を探し、迷走する本心の中で家族という領域に帰ることを望んだ夫がいたとしよう。

 三人が互いに親しくなったとして、はたして家族という領域を共有できるか否か。

 できる。と、私は考える。

 それが例え、上辺の知識のみを元にした、出来損ないの感情論だったとしても、だ。


 ◇ ◇ ◇



667 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:08:13 ID:r1kyF2jQ


668 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:09:13 ID:r1kyF2jQ


669 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:09:28 ID:pRiwd3Ws
 擂鉢状に広がる敷地が、オレンジのカーテンに包まれる。
 薄暮を知らせる暖色系の光は、汗腺を刺激しない程度の心地よい熱気を齎す。
 吹き抜ける緩やかな風も相成り、快適な過ごしやすさを運ぶ暮れの時刻。
 廃れた野球場の一塁側スタンドに、小さく蹲る影があった。

「……きれいですねー」
「……キレーだなー」

 癖のある頭髪を、ツーサイドに結った小柄な女の子が一人。
 ただでさえ小さな体躯を丸めるように座り込み、暮れていく空を仰いでいた。

「……もうすぐ夜、ですね」
「……もーすぐ夜、だな」

 女の子が声を放つと、まったく同じ声色をした声がもう一つ、山彦のように返ってきた。
 声自体は女の子の声帯から発せられているが、言葉を選んでいるのは彼女ではない。
 彼女の右手に装着された、不細工なパペット人形によるものだった。

「……なぁ、やよい。その格好、寒くないか?」
「……平気、です」

 右手の人形が気配りの言葉をかけ、やよいと呼ばれた女の子が短く返す。
 人形は、そっか、と同じく短く返し、オレンジ色の空を見上げた。

「……プッチャンさんこそ、寒くないですか?」
「……俺は人形だからよ。寒さとか感じないのさ」

 やよいが気配りの言葉をかけ、プッチャンと呼ばれた人形がぶっきら棒に返す。
 やよいは、そうなんですか、と短く返し、またオレンジ色の空を見上げた。

670 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:10:00 ID:r1kyF2jQ


671 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:10:36 ID:r1kyF2jQ


672 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:10:56 ID:pRiwd3Ws
「……きれいですねー」
「……キレーだなー」

 夕空に対する感想を言い合って、二人はしばしの間、空を眺め続けた。

 高槻やよいとプッチャンがこの野球場を訪れたのは、ほんの気まぐれだった。
 あの教会を基点とした一騒動に疲れを覚え、どこか休める場所を欲して辿り着いた先が、ここがだっただけだ。
 選手も観客もいない、打撃音もアナウンスもない球場は、寂寥感を訴えているようにも思える。

「……ふぇ、へ、へくちっ」
「おいおい、本当に大丈夫かよ?」
「……すん。大丈夫、です」

 塞がっていないほうの左手で鼻を啜るやよいの姿は、見るからに寒そうだった。
 子供の頃から着古していた、『MARCH』のロゴが入ったトレーナーは、もうない。
 あの人の止血をするために、貧乏性を抑え包帯代わりにしてしまったためだ。
 今のやよいの上半身は、肌着のキャミソール一枚。
 そろそろ夜も更けるという寒空の下、風邪をひいてもおかしくはない格好だった。

「アイドルは体が資本ですから。そう簡単に風邪なんてひきません」
「けど、寒いもんは寒いだろ?」
「……さむい、です」

 着るものを探す気にも、暖を取れる場所を探す気にもなれなかった。
 肌に突き刺さる寒気、その刺激を求めるように、やよいは野外球場を休憩地と定めたのだった。
 あるいは、自分へのせめてもの戒めとしたかったのかもしれない。

673 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:11:38 ID:pRiwd3Ws
「しっかしよー。周りは廃れた街だってのに、この球場も結構な広さだよな」
「ですねー」
「もやし祭りができそうか?」
「え、どうして野球するところでもやし祭りをするんですか?」
「……いや、馬鹿な質問しちまった。忘れてくれ」
「はあ」

 特別、これからの指針を話し合ったりはしない。
 色調を変えていく空をただ眺め、その場その場で思いついた他愛もない話を交わすだけだった。
 介入者も訪れず、状況を好転させようともせず、やよいとプッチャンはこの球場で、止まり続けていた。
 それはきっと、あの人との別れを果たしたときから。

「でもやっぱ広いよな。やよいはよ、こんな広い場所で歌ったりしたことあるか?」
「ありますよ。真さんと千早さんと一緒に、武道館やドームで歌ったことだってあるんですから」
「へー。それってスゲェのか?」
「すごいですよ。テレビにもいっぱい出たりして」
「ほぉー」
「……そういえばプッチャンさん、私のこと知ってます?」
「ん? 高槻やよい、だろ」
「そうじゃなくて、アイドルとしての私です。テレビで見たこととか……」
「ねーなぁ。宮神島に住んでちゃあ、あんまり外のニュースも入ってこねぇしよ」
「……そう、ですか。そう、なんだ……」
「ま、俺のいた世界には高槻やよいなんてアイドルは元々いなかったってことだろ」
「え?」
「例の並行世界の話さ。俺のいた世界じゃ、やよいはアイドルなんてしてなかった。もしくは売れてなかった。そういうことなんじゃねーのか?」
「……そうかも、ですね」

674 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:11:40 ID:r1kyF2jQ


675 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:11:45 ID:rzHA4Pvn


676 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:12:08 ID:r1kyF2jQ


677 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:13:20 ID:r1kyF2jQ


678 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:13:42 ID:pRiwd3Ws
 両者共に、視線は茜空に固定したまま、和気藹々とも言えない微妙な会話を繰り返していた。
 互いに視線を合わせず、笑いも飛ばさず、無為に時間を消費するように、ただ止まっている。

「……ごめんなさい」
「どうしたよ、いきなり謝ったりして」
「私、嘘つきました」
「うそ?」
「本当は、武道館やドームで歌ったことなんてないんです。私たち、まだ駆け出しで」
「へえ」
「アイドルランクも低くて、でもこれから、これからだったんです」
「んじゃ、俺のいた世界でもやよいはちゃんとアイドルやってたのかもだな」
「はい」
「真や千早も、な」
「……はい」

 素っ気ない会話は、人当たりのいい二人からは想像もう出来ないほど異質な内容だった。
 プッチャンを右手に嵌めてかなりの時間が経過したというのに、今は築き上げてきた信頼がすっかり更地の状態になってしまっていた。
 やはり、あの人の喪失がきっかけなのかもしれない。

679 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:14:20 ID:r1kyF2jQ


680 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:15:00 ID:r1kyF2jQ


681 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:15:12 ID:pRiwd3Ws
「やよいは、なんでアイドルになったんだ?」
「ふぇ?」
「アイドルになりたかった理由さ。当然、あるんだろ?」
「私が、アイドルになりたかった、理由……」
「なんとなくだとか、乙女の憧れだとか、そういった解答はNGとする」
「うう……言わなきゃダメですかー?」
「ダメってことはねぇけどさ。知りたいっていったら教えてくれねぇか?」
「いいですけどぉ……ちょっぴり恥ずかしいです」
「はは、こんな人形相手になにを恥ずかしがることがあるよ」
「……オフレコですよー?」
「オーケイ、命に代えても」

 冗談混じりに問いかけるプッチャンの顔は、どこかニマニマしていた。
 やよいは顔を赤らめながら、訥々と口を開く。

「……みんなで一緒に、盛り上がりたかったから」
「盛り上が……なんだって?」
「みんなで一緒に、盛り上がりたかったから。です」

 空に向けていた視線を自らの胸元へと移し、やよいは顔を俯かせた。

682 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:15:21 ID:rzHA4Pvn


683 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:15:41 ID:r1kyF2jQ


684 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:16:20 ID:pRiwd3Ws
「……ん、まあ言いたいことはわかるけどよ、それでなんでアイドルなんだ?」
「子供の頃、町内のお祭りで歌ったことがあったんです」
「ほうほう」
「そしたらみんな、すっごい盛り上がって」
「まあ、祭りだからな」
「それがすっごく嬉しくって、もっとたくさんの人と、もっともっと盛り上がりたいって」
「思ったのか」
「思ったんです」
「へぇ〜。立派な理由じゃねぇか。アイドルになれば、みんなと騒げるもんな」
「あとは……家計を助けたい、っていうのもありました」
「やよいん家は貧乏なんだっけか」
「はい。お父さんの仕事が安定しなくて……」
「そりゃあ大変だな。家族も多いんだろ?」
「大家族ですねー」
「しかも長女だ。苦労してんだろうなあ」
「……そうでも、ないです。私、周りに助けられて、ばかりだったから」

 やよいの声は、なにかを懐かしむように細く、小さく変質していく。
 それが現在の状況とかつての平穏照らし合わせた結果だということに、プッチャンはすぐ気づいた。
 気づいたところで、フォローを入れるには遅く、一瞬の内に失策を受け入れる。

「……帰りたい、んだったよな。ワリィ、辛さを煽るようなことしちまって」
「……よく、プロデューサーが私のこと励ましてくれたんです」
「やよいたちのマネージャーだっけか?」
「違います。プロデューサーです」
「そっか。んで、そのプロデューサーがどうしたって?」
「プロデューサー、私がへこたれるといつも言ってくれたんです。つらさは笑顔で吹き飛ばそう……って」

685 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:16:50 ID:5PA9dmyP


686 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:18:37 ID:pRiwd3Ws
 語るやよいの顔は、完全に腕の中に沈んでしまっている。
 抱えた膝の中に埋没する表情は、右手という範囲でのみ活動可能なプッチャンでは覗けない。
 何者にも素顔を悟らせぬまま、やよいが言葉を紡ぐ。

「私の取り得、明るさくらいしかなかったから。いつでもニコニコできて、つらいときでも、笑えばすぐ元気になれたから」
「なら、笑えばいいじゃねぇか。今がその、つらいときなんだろう? 笑って吹き飛ばしちまえよ」
「……ダメです。笑えません」
「どうして?」
「……どうしても、です」

 やよいの体が、だんご虫のようにまた一段と丸まる。

「理由になってねぇよ。意地張らないで笑えばいいじゃねぇか」
「ダメです。ダメ……ううん。嫌、イヤなんです」
「笑いたくないのか? つらさを吹き飛ばしたくないのか?」
「はい。このままで、いいです」
「……どうしてだよ」
「だから、どうしても、です」

 やよいは、頑なに笑うことを拒否した。
 心中で尾を引くあの人との別れが、彼女に義務感にも似た意志を齎していた。
 笑ってはいけない。このつらさは、笑って吹き飛ばしていいようなものじゃない。
 背負っていかなくちゃいけないものなんだ、と。
 子供ながらに、子供だからこその、愚かな考えを胸に宿していたのかもしれない。

687 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:20:17 ID:pRiwd3Ws
「……つらさは笑って吹き飛ばせ、か。それができたら、苦労はしないよな」
「え……?」

 プッチャンにしては暗い、陰鬱な声色が、やよいの視線を誘った。
 微かな湿り気を帯びた瞳が映し出すのは、いつもと変わらぬ不細工な表情。
 半開きの丸い目、鬣のような頭髪、短い手足、大きめの赤いネクタイ。
 人形としての特徴に変化はなく、しかし雰囲気だけが、どこか沈んでいるように見て取れた。

「俺は……笑えねぇ。笑ってつらさを吹き飛ばすことなんて、俺にはできないのさ」

 筋肉を持たないプッチャンは、表情のバリエーションに乏しい。
 パペット人形にとって喜怒哀楽を表現することは難しく、それは人形ながらに自我を持つプッチャンであっても、同じことだった。

「そんな……プッチャンさんは普通に笑えるはずじゃないですか。今までだって……」
「それは笑ってる風に見えるだけで、真に笑ってるとは言えないのさ」

 やよいとプッチャンの視線が、交差する。
 が、プッチャンのほうがすぐに視線を逸らし、言葉を続けた。

「楽しかったり嬉しかったりしても、俺は笑い声を出すことしかできねぇ。
 どんなに表情を緩ませようとしたって、この不細工な顔は変わらねぇのさ。
 同じように、泣くこともできない。どんなに悲しいことやつらいことがあったってな、涙なんて流せやしねぇ。
 俺はプッチャンである以前に、ただのパペット人形なのさ。それ以上でもそれ以下でもなく、な」

688 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:21:13 ID:rzHA4Pvn


689 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:21:14 ID:pRiwd3Ws
 人形でありながらも、纏う気配は人間のそれと大差ない。
 やよいの目から見ても、元気がない、という一点だけは明白だった。

「……プッチャンさんは、いま泣きたいんですか? それとも、笑いたいんですか?」
「さぁて……どっちかね。長いことこんな体でいるもんだから、そんな簡単なことも忘れちまった」

 遠き日を懐かしむように、プッチャンはまた空を見上げる。
 茜空と白雲が形作るグラデーションは、二人にかつての日常を連想させた。

「昔は、こんなんじゃなかったんだろうけどよ……」
「プッチャンさんの、昔って?」
「そうだな……昔話も、たまにはいいか」

 遠くの空で、カラスの鳴き声が聞こえたような気がした。
 幻聴だとわかっていても、こうやって夕闇を間近に控えた空を見れば、イメージせざるを得ない。
 ああ、そろそろ家に帰らなきゃ。けれど、まだ帰れない。
 ぼーっ、と顎を上方に逸らし、二人とも口だけを動かしていた。

「プッチャンっていうのは、世を忍ぶ仮の姿さ。なにも生まれたときから人形だったわけじゃない。
 もちろん、最初は人間として生まれた。まぁ……大人になる前に死んじまったけどな。
 けど、俺も奇妙な家計に生まれちまってなぁ。母親がちょっと変わった力を持ってたのさ。
 死んだ人間の意識や記憶を、人形に吹き込んで甦らせることができた。まるで神様みたいにな。
 で、俺も頼りない妹を残してこの世を去るのは未練だったもんでよ、その力の恩恵を授かったのさ。
 パペット人形のプッチャンとして、りのを見守り続ける。そんな生き方を選んだんだ、とっくに死んだはずの人間がよ」

 プッチャンの語りは一種の音色となって、空に消えていく。
 聞き手を務めるやよいは、ただ黙って耳を傾けていた。

690 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:21:27 ID:5PA9dmyP


691 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:21:47 ID:rzHA4Pvn


692 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:22:19 ID:s7Jagzjd
 

693 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:22:25 ID:rzHA4Pvn


694 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:22:43 ID:pRiwd3Ws
「それが俺……プッチャンこと蘭堂哲也だ」

 初めて知った――おそらくはあの人も知らなかったであろう――本名を胸に刻み、やよいは驚嘆代わりの呟きを零す。

「プッチャンさんは……りのさんの、お兄さん」
「りのに会っても黙っておけよ。あいつは兄貴がいることすら知らねぇからな」

 この会場内には愚か、帰るべき世界に探したとしても、プッチャンの正体を知る者は皆無に等しいだろう。
 その希少な枠組みに、やよいは今、加入を果たした。
 しかし、赤の他人にも等しい彼女がプッチャンの正体を知ったところで、事態がどう転ぶわけでもない。
 神宮寺の事情も、蘭堂りのの将来も、この地におけるプッチャンの立ち位置にしても、やよいにはまったく関係のない事柄だった。

「……りのさんは、プッチャンさんの、たった一人の家族なんですよね?」
「ああ。かけがえのない家族さ」
「じゃあ、絶対に一緒に帰らなくちゃダメです。こんなところでしょ気てる場合じゃないですよ」
「……だろうな」
「お兄さんなんだから、しっかりしなくちゃ」
「……ああ」
「ほら、早くりのさんを探しに行きましょ?」
「……あー……いや、やっぱダメだわ」

 行動の主導権を握るやよいがすっくと立ち上がるも、プッチャンに覇気は戻らなかった。
 頭を垂れたまま、空ではなく向かいのグラウンドを見下ろし、やよいとは顔も合わせようとしない。

695 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:22:59 ID:s7Jagzjd
  

696 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:23:06 ID:r1kyF2jQ


697 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:23:11 ID:rzHA4Pvn


698 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:23:33 ID:r1kyF2jQ


699 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:23:49 ID:pRiwd3Ws
「もうちょっと休憩していこうぜ。焦る必要なんてねーんだからよ……」
「……お兄さんなんだから、しっかりしなくちゃ、ですよ?」
「あー……いや、そりゃわかってるんだけどよ。やっぱ、ダメなんだわ」
「うう〜……なにがダメなんですか? わかりません……」

 立ち上がったまま、次のアクションに移行できないでいるやよい。
 一つの体に二つの意志を灯す彼女らは、互いに同調を図ろうとしている。
 だからこそ、やよいはプッチャンの意を蔑ろにしたままでは、歩み出せずにいた。

「……今のまま外に出て行っても、俺はきっと、やよいも、りのも守れない」

 曖昧に出立を拒むプッチャンが、その理由を口にした。

「後悔……してるんだと思う。俺には、できることがあった。
 見ているだけじゃなくて、できることがあったはずなんだ。
 ツヴァイって野郎に襲われたときみたいに、やよいを助けたときみたいに。
 俺は……相棒を助けることができたはずなんだ。
 相棒の命を……相棒を、死なせないことができたはずなんだよ!」

 プッチャンが述べたのは、己に対する憤慨だった。
 今の今まで、頑なに話題にはしようとしなかった例の一件を、相棒という禁句を口にしてまで、憤りを喚き散らしている。
 久しぶりに聞いたプッチャンの感情的な言葉に対し、やよいもまた、少しばかりの怒りを覚えた。

「……ずるい、です。今さら、そんなこと言うの」
「……ワリィ。けど、言わせてくれ。俺は」
「……聞きたく、ないです」
「……俺は、相棒を」
「聞きたく、ないっ!」

700 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:23:58 ID:s7Jagzjd
 

701 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:24:01 ID:rzHA4Pvn


702 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:24:22 ID:r1kyF2jQ


703 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:24:35 ID:pRiwd3Ws
 やよいが、声を張り上げる。
 不思議なほど自然に出た怒声に、しかし驚く者はいなかった。
 やよい自身も、プッチャンも、両者の間に蟠る怒りを認識して、口を開くことをやめない。

「わかってるよ……やよいだってつらい。けどなぁ、俺だってつらいんだよ!
 相棒の苦しそうな顔が、いつまで経っても頭から消えやしねぇ!
 泣いたり笑ったりして忘れられるんなら、ぜひそうしたいところさ!
 けど、けどよ! 人形の俺様にはそんな簡単なことすらできないんだよ!」

 プッチャンの素っ頓狂な瞳が、やよいの双眸を芯で見据える。
 やよいはその眼差しを、睨みつけるような鋭さで持って返した。

「……ッ! やよいは……つらくても、笑えるじゃねぇか! 泣くことだってできるじゃねぇか!
 俺にはどっちもできない……相棒が死んだってのに、俺は表情一つ変えることができねぇんだよ!
 わかるのかよ!? やよいに俺の気持ちが……人形のまま生き続ける俺の気持ちがわかるってのかよ!?」

「わからない! わかりたくもない! プッチャンは……ただ卑屈になってるだけだもん!
 葛木先生は……葛木先生は、最後の最後まで私に元気をくれた! だから、だからせめて――」

「なら、どうして笑ってやらねぇんだよ! いつまでも落ち込んで、しょ気てんのはどっちだよ!?
 そんなんで相棒が喜ぶとでも思ってんのか!? 泣くことも笑うこともできない……違う、しようとしない!
 結局やよいは、つらすぎてどうすることもできないだけだろ!? そんなの、ただ逃げてるだけじゃねぇか!」

704 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:24:59 ID:5PA9dmyP


705 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:25:03 ID:rzHA4Pvn


706 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:25:15 ID:s7Jagzjd
 

707 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:25:28 ID:rzHA4Pvn


708 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:25:28 ID:r1kyF2jQ


709 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:25:43 ID:pRiwd3Ws
「違う!」

「違わねぇよ!」

「違うったら、違う!」

「こ、の……わからず屋!」

「わかっ……この、身の程知らず!」

「なっ……!?」

「もう、プッチャンなんて知らないっ!!」

「や――」

 やよいは左手でプッチャンの頭を鷲掴みにすると、そのまま床に投げつけた。
 宿主を失った人形は、途端に物言わぬ抜け殻と化し、論争の相手もまたいなくなる。
 柄にもなく声を荒げたやよいは、息切れを起こしながら足元のプッチャンを見下ろしていた。

「……っ」

 唇をキュッと噛み締めて、空いた右手を強く握る。
 久しぶりに感じる空気がやけに冷たく、右手の皮膚が暖を求めた。
 瞬間、地べたに這い蹲るプッチャンの瞳が、やよいの真っ赤な顔を見上げているような気がした。
 見下ろしているのは自分のほうなのに、やよいにはそれが酷く、攻めたてられているような気がして、

710 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:25:58 ID:5PA9dmyP


711 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:26:01 ID:rzHA4Pvn


712 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:26:18 ID:s7Jagzjd
  

713 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:26:19 ID:r1kyF2jQ


714 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:26:29 ID:pRiwd3Ws
「――」

 たまらなくなり、その場から逃げ出した。
 一人ではなにもすることができないプッチャンを残して。

「……」

 少女が去り、人形から騒がしさが削がれ、風の音のみが残った球場。

 茜色の空には休まることなく雲が行き交い、時間の経過を知らせている。

 もう間もなく夜が訪れ、球場はナイター仕様にライトアップされるだろう。

 それでも、選手や観客は訪れない。

 こんな辺鄙な場所に、不細工な人形を拾いに来る者など現れるはずがない。

 仮にこのゲームが終わりを迎えたとしても、それは変わらないのだろう。

 永遠に、風化するまで、人形は無人の球場に居座り続ける。

 自分の意志では立ち退くこともできずに、時の流れを感じることもできずに。

 誰にも気づかれず、人形の持ち主にすら忘れられて、ただ延々と。

 それがどんな悲しいことだったとしても、運命と断念するしかない。

「……」

715 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:26:32 ID:rzHA4Pvn


716 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:26:49 ID:5PA9dmyP


717 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:27:00 ID:rzHA4Pvn


718 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:27:04 ID:s7Jagzjd
 

719 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:27:09 ID:pRiwd3Ws
 考えれば考えるほど、悲しい話だった。

 一緒に笑い合った友達が、そんな運命を辿るのは居た堪れない。

 一時の感情に任せて非道に走ることすら、少女にとっては困難だった。

「ごめんなさい」

 再び、人形の廃棄された場所に舞い戻って、謝罪する。

 気恥ずかしさからか、拾う手よりもまず、声が出た。

 誰も聞いてはいない、形だけの謝罪が、単なる自己満足として虚無に流れた。

 おもむろに手を伸ばして、ひょいっ、と摘み上げる。

 右手にすっぽり嵌るそれを、数分ぶりに装着しなおした。

 相変わらずの不細工顔と目が合って、反射的にはにかんでみせる。

「……よぉ、久しぶり」
「……時間、ちょっぴりしか経ってません」
「そっか」
「そうです」
「んじゃあ、とりあえず、だな」
「とりあえず、ですねー」

720 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:27:10 ID:5PA9dmyP


721 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:27:21 ID:r1kyF2jQ


722 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:27:33 ID:pRiwd3Ws
 次第に濃くなっていく空の色を、揃えた視線で確かめ合いながら。
 やよいとプッチャンの二人は、

「「ごめんなさい」」

 まったく同時に、頭を下げた。


 ◇ ◇ ◇


 雲の流れはさらに加速して、暖色系の帳も徐々に暗転していく。
 空の移り変わりを観察するのも楽しくなってきたのか、やよいとプッチャンは依然として野外球場の一塁側スタンドに腰を落ち着かせていた。
 これまでのような素っ気ない会話はなく、今は二人とも、黙って口を動かし続けている。
 聞こえてくるのは、むしゃむしゃ、もぐもぐ、という咀嚼音。
 託された食料をただ作業的に、胃袋に貯蔵するつもりで食べていた。
 お昼ちょっと前に取った、遅めの朝ごはんを恋しく思ったのは、おそらく二人ともだろう。
 言葉はなくとも、かつてのような衝突の危険性は微塵も香らせず、不思議な連帯感が二人の間に刻まれていた。

「時間って、スゴイですよね。どんなにつらい目にあっても、時間が経てば自然に回復するんだもん。
 実はそんなにつらいわけじゃなかったのかな……なんて考えちゃうと、ちょっと悲しいです」

 ぱさぱさしたコッペパンを文句もなくたいらげ、やよいは平坦な口調で言った。

723 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:27:33 ID:rzHA4Pvn


724 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:27:54 ID:rzHA4Pvn


725 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:27:57 ID:pRiwd3Ws
「それはあれだ、きっと、疲れちまうからだよ」
「疲れちゃうから?」
「つらいのは、誰だって疲れるだろ? ずっとつらいままじゃ、疲れっぱなしだ。
 だから疲れっぱなしにならないように、時間が経てば自然とつらくなくなるのさ。
 人間ってのは、そういう風にできてんだよ。きっと」
「それって、プッチャンもおんなじですか?」
「おんなじさ。俺も今は……さっきよりは、つらくない」

 項垂れていたプッチャンの姿勢が、心なしかこれまでよりシャキッとしているように見えた。
 笑うことも、泣くことも、結局はできなかったけれど、プッチャンはそれでも、いくらかは『マシ』になったようだ。

「ごはん、食べたから?」
「は?」
「……ううん、なんでも」
「みょうちくりんな発言はスキャンダルの元だぜ?」
「ううう、気をつけますぅ〜」

 足元に散らばったパン屑が、風に吹かれて消えていく。
 突き刺さる寒気が、やよいの柔肌を容赦なく震わせた。

「……歌、うたいたいなぁ」
「歌えばいいじゃねぇか。こんなに広いステージなんだからよ」

 不意に零れたやよいの欲求を、プッチャンが即座に拾って返す。

726 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:27:57 ID:s7Jagzjd
  

727 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:28:03 ID:5PA9dmyP


728 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:28:14 ID:r1kyF2jQ


729 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:28:25 ID:rzHA4Pvn


730 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:28:30 ID:pRiwd3Ws
「一人で騒いでも、全然楽しくないです。みんながいないと盛り上がれないもん」
「おいおい、この俺様がいるじゃねぇか。それでも不満だってのか?」
「じゃあ、プッチャン一人で十万人分盛り上げてみてください。それなら、歌えます」
「じゅうま……無茶振りにもほどがあるだろうオイ」
「それじゃあ、残念ながらライブは中止です。ばいばいサヨナラ。あ、そろそろスーパーの特売の時間かも」
「ぐぬぬ……なんてぇ暴虐武人なチャイドルだ」

 歌は、少女にとって手段でもあり、目的でもある。
 歌のためなら死んでもいい、そんな狂人的な信念を掲げるアイドルがいるように。
 また、歌を単なる自己表現の一環としか捉えず、踊りやビジュアルに熱意を注ぐアイドルがいるように。
 楽しいという気持ち、これを得るための術として、拙いながらも発声練習を繰り返す、未熟なアイドルが世の中にはいる。

「……けど、一人じゃない、ですよね」
「ん? なんか言ったか、やよい?」
「プッチャンを右手に嵌めてれば、私は、一人ぼっちにはならないんですよね」
「おーい、ぼそぼそ喋ってちゃ聞こえねーよ。業界人は声量が命だろ?」
「なんでもありませーん。空耳ですよー。きっと風の音かなにかですよー」
「……ま、そういうことにしといてやらあ」

 自分と同じ声を出す男の子との会話も、随分と慣れてきた。
 濁ったような声で舌足らずに喋るのも、随分と慣れてきた。

 腹話術の人形を、こんなにも長く嵌めていたのは、初めてかもしれない。
 妹以外の手に、こんなにも長く嵌っていたのは、初めてかもしれない。

 互いに、えへへ、と微笑み合って。
 互いに、ふふふ、と微笑み合って。

 本格的に落ちていく西日を、薄れていく喪失感と共に見送るのだった。

731 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:28:48 ID:rzHA4Pvn


732 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:29:15 ID:5PA9dmyP


733 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:29:21 ID:pRiwd3Ws
「これから、どうしましょうか」
「そうだなー、一度教会に戻ってみるか」
「え、どうしてですか?」
「真はもうこの辺にはいねーだろうしよ。あの古本屋からワープして、別の場所を捜すのさ」
「でもでも、古本屋さんに繋がってる階段やエレベーターは消えちゃいましたよ?」
「頼めばもう一回入れてくれるんじゃねぇか? なんせ、俺はまだ本を貰っちゃいねぇからな」
「あ〜、そういえば……」
「ま、戻ったところで、やよいの貰ったナコト写本以上のお宝なんてなさそ……どうした、やよい?」

 プッチャンの提案によってなにかを思い出したやよいは、がさごそとデイパックを漁り始める。

「なんだなんだ、食いモンならさっき全部食っちまっただろ?」
「違いますよ〜。確か、葛木先生の貰った本がこの中に……」
「あー、そういや相棒もなんか貰ってたな。適当に見繕ったって言ってたがいったい……」

 やよいとプッチャンが、揃ってデイパックの口を覗き込む。
 目的の書物はやがて、やよいの左手によって、静かに姿を現した。

「「あっ」」

 間の抜けた声が、重なる。
 掴み取ったそれが、意外な姿形をしていたせいだろう。

 本自体の厚みはそれほどでもなく、書物というよりは冊子というほうが相応しい。
 表紙は、可愛らしいイラストと、フォントの大きな文字に彩られている。
 ペラペラと中を捲っていくと、記されている文面も正に予想通り。
 やよいとプッチャンはさらに間の抜けた声を出して、

734 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:29:30 ID:r1kyF2jQ


735 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:29:48 ID:s7Jagzjd
  

736 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:29:51 ID:5PA9dmyP


737 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:30:09 ID:rzHA4Pvn


738 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:30:39 ID:pRiwd3Ws
「やよい。一緒にタイトルを読み上げてみようぜ。ひょっとしたら俺の視力が落ちただけかもしれねぇ」
「の、のぞむところですっ!」
「よーし、いくぞ。せーの……」

 同一の声色で持ってして、おそらく誰にでも読めるであろう表題を、揃って口にした。


「「かんじドリル」」


 二人の間に、微妙な間が築かれる。
 わざわざ漢字を使わず、ひらがなとカタカナで構成された文面は、幼児以外なら誰でも読み上げられる。
 漢字の書き取りから読み、書き順の覚え方までなんでもござれな万能学習ドリルは、表紙の端に『小学校高学年用』と記されている。

「……そういやよ。やよいって何歳だったっけ?」
「十三歳、中学生です」
「相棒は、そのこと知ってったっけ?」
「う〜ん、たぶん……教えてなかったと思います」
「嘆くなよ。まだ成長の見込みはあるぜ?」
「うぐっ!? わた、私、まだなにも嘆いてません!」
「認めちまえよー。小学生に間違えられたやよいちゃんよぉ」
「ううう〜、そんなまさかぁ」

 心当たりなら、あった。
 おそらくはそう、直枝理樹や真アサシン、伊藤誠や菊地真と接触し、情報交換を行ったときか。
 もしくは、二回の定時放送の際にペンを握ったそのときか。
 いずれにせよ、プッチャンの相棒にして、やよいの保護者代わりを務めていた、勤勉すぎる教師は、見過ごせなかったのだろう。
 高槻やよいという少女の、見るも無残な悪筆ぶりを。

739 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:30:39 ID:rzHA4Pvn


740 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:30:51 ID:5PA9dmyP


741 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:31:06 ID:s7Jagzjd
  

742 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:31:23 ID:rzHA4Pvn


743 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:31:38 ID:pRiwd3Ws
「いま、ちょっと興味が湧いた。相棒が先生やってた学校ってのは、どんな堅苦しい場所だったんだろうなぁ」
「私、成績悪いけどそれはアイドルのお仕事が忙しいからでぇ、がんばればできる子なんですぅ〜」
「んじゃ、がんばって漢字の書き取りな。相棒の残してくれた宿題、精一杯やってやれよ」

 葛木宗一郎という教師は、優秀すぎるが故に、融通が利かないところがあった。
 問題用紙に誤字が一箇所あっただけで試験を中断したりと、一般的に見れば変人的なまでに優秀な教師だった。
 彼のような教師ならば。
 実の教え子ではないとしても、指導するに値する子供を前にして、無視することができただろうか。
 大事の途中においても、学力の低下を容認することができただろうか。
 有力な物資の調達が見込めないと判明し、その権利を教師としての職務にあてず放棄することができただろうか。

「あ、あれ?」

 きっと、どれもできなかったんだろうなぁ……と、二人して心の中で笑う。
 他愛もない笑みは、表面に出さないからこそ、自然に作れた。
 自然に笑えたら、不思議と涙が零れてきた。
 我慢していたはずの感情が、意識せず、内側の壁を突き破る。
 抑制の効かない衝動は、人間であるやよいだけの特権だった。
 頬を濡らしていくやよいの顔を見て、プッチャンは口元だけで笑む。

「あの、えっと、その、ごめんなさい。えぐっ……ちょっとだけ、あっち向いててもらえますか?」
「やーだね。さっき捨てられた仕返しとして、やよいが泣き止むまでずっと側で見ててやる」
「ふ、ふぇぇ〜? ぷ、プッチャンのいじわるぅぅぅ……」
「はっはっは。今頃気づいても遅いぜ。このプッチャン様は、紳士であると同時に意地悪なヤツなのさ」

 やよいの泣き顔を肴に、プッチャンがゲラゲラと声だけで笑う。
 やよいは顔を赤らめながら、プッチャンの視線による集中砲火を浴び続けた。

744 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:31:46 ID:rzHA4Pvn


745 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:31:52 ID:BAnV14X8
しえんー

746 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:32:05 ID:r1kyF2jQ


747 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:32:17 ID:pRiwd3Ws
「ぐへ、ぐへへへ……」
「うわ、なんだそれ。きもちわりぃ」
「泣き顔を見られるの、恥ずかしいから、泣きながら、笑ってみました」
「余計に恥ずかしいぞ、それ。ファンが見たら泣くって」
「ぐへへぇー」
「ぐへへへー」
「あうっ! 真似された!?」

 時計の針が六の数字を刻むその直前まで、やよいとプッチャンの二人は、談笑を続けた。
 仮初の日常もどきを、偽った心で楽しみ、明日への希望として繋いでいく。
 実際はまだ四分の三日ほどしか経過していないが、次の放送でもう、四日目くらいのような気がしてならなかった。

「まー……それはそれとして、だ」
「はい?」
「景気づけしようぜ」
「ケーキ漬け? あ……ああ、あ〜」
「ほら、わかったんなら手ぇ出せ、手! 一人でもできるなんて、なんだかすっごくお得じゃねぇか!?」
「本当だ! なんだかとっても得した気分!」

 容易い伝心を受けて、ほんの少しだけ、お互いの距離が近づいたような、 そんな気がした。

「うっうー! ハイ、タァ〜ッチ!」

 フェルトの手と人肌では、パンッ、という乾いた音はならなかったけれど。
 ぽむっ、という柔らかい音が、やよいとプッチャンの絆の証にも思えた。


 ◇ ◇ ◇



748 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:32:48 ID:s7Jagzjd
 

749 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:32:55 ID:5PA9dmyP


750 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:32:55 ID:pRiwd3Ws
 他事に気を取られ、大切な人たちの存在を忘れてしまう。
 自分ひとりだけ苦労していた気になって、それを認めようともしない。

 だが、もしも。
 離れ離れになることのない、『自分』を見つめてくれる『家族』が、
 限りなく側に――例えば、右手に――居続けてくれたなら。

 同じ希望に燃える仲間同士、その存在を、真なる家族と呼べる日が来るのだろうか。

 ――私が、こうやって生徒でもない他人を思っているのも。

 家族という概念の本質を、知った風に語っているのも。
 あるいは……そうだな。そういうことなのだろう。

 言葉だけでは言えない熱い気持ちも、

 一人で、なければ。

 ……共有が、幸せということか。

 だとしたら、きっと。


 ――家族とは、無敵なのだろうな。



751 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:33:13 ID:r1kyF2jQ


752 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:33:26 ID:rzHA4Pvn


753 :i ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:33:30 ID:pRiwd3Ws
【A-2 野外球場/1日目 夕方(放送直前)】

【高槻やよい@THEIDOLM@STER】
【装備】:プッチャン(右手)
【所持品】:支給品一式(食料なし)、弾丸全種セット(100発入り、37mmスタンダード弾のみ95発)、
      かんじドリル、ナコト写本@機神咆哮デモンベイン、木彫りのヒトデ10/64、
      エクスカリバーMk2マルチショット・ライオットガン(4/5)@現実
【状態】:元気、上着無し
【思考・行動】
 1:教会に戻る?
 2:真を捜して合流する。
 3:暇ができたら漢字ドリルをやる。
【備考】
 ※博物館に展示されていた情報をうろ覚えながら覚えています。
 ※直枝理樹の知り合いについて情報を得ました。
 ※死者蘇生と平行世界について知りました。
 ※教会の地下を発見。とある古書店に訪れました。
 ※とある古書店での情報を覚えました。

【プッチャン@極上生徒会】
【装備】:ルールブレイカー@Fate/staynight[RealtaNua]
【状態】:元気
【思考・行動】
 1:やよいと一緒に行動。
 2:りのを捜して合流する。

754 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:33:31 ID:5PA9dmyP


755 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:33:34 ID:r1kyF2jQ


756 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:33:54 ID:rzHA4Pvn


757 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:33:54 ID:BAnV14X8
支援ー

758 : ◆LxH6hCs9JU :2008/06/26(木) 03:34:11 ID:pRiwd3Ws
投下終了しました! 夜分遅くにたくさんの支援ありがとうございます!

759 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:34:22 ID:5PA9dmyP


760 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:35:02 ID:5PA9dmyP


761 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:39:59 ID:r1kyF2jQ
投下乙
夕焼けの休場で少女と人形、寂しい、悲しい、喧嘩、仲直り――かんじドリル!
じわりときました……GJです。

762 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:40:57 ID:5PA9dmyP
tu氏
美希のキューピット発言が彼女らしいこじつけでしっくりきたw

S7氏
太一、何やってんだ、お前wマイペースだw

WY氏
恭介とトルタは本当にいいコンビだな〜






763 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 03:43:34 ID:5PA9dmyP
LX氏
ハートフルだなあ。
なんつうか、心に染みる。
葛木先生の残したものも感じられてGJですw

764 ::秘密 - da capo/al fine -(代理投下):2008/06/26(木) 06:10:37 ID:ns4m/Jpx
  それに報いる為に私が彼にできる事は何なのか。
  無力で足手纏いな私にもできる事。
  それは、きっと、この程度しかない。

「覚えておいて。
 ……もし私があなたの隣にいられなくなった後でも、私はあなたの苦しみを一緒に担おうとしたという事実を。
 その確かにあった事実はきっと、あなたの救いになれると思うから」

  恭介の顔は確かに歪む。
  ……罪悪感と嬉しさとが相混ざった感情が浮かび上がる中、彼の言わんとする事を遮って私は早口で全て伝えきる。

「そんな事を……」

「ごめんなさい、でもこれだけは事実。
 これからあなたが一人で道を進む必要はないって、それだけだから」

  ……この殺し合いで私が生き残れる可能性は、きっと低いだろう。
  いや、低いに違いないはずだ。
  足を怪我した以上まともな戦力にもならないし、他の人と交流する機会だって少ない。
  果たせる役割が少ない以上、このゲームの場においては『事実上死んだ』といっても過言ではないのだ。
  それが分からないほど愚かじゃない。
  だから、今のうちに伝えておかねばならない。
  たとえ一人になったとしても、彼が彼のままで居られるように。


 ……その言葉を境に、ただ場には沈黙が満ちる。


  不意に、恭介がどこか遠くを見つめて何事かを呟きだした。
  
「……なあ、覚えているか? 初めて会ったときに言ったよな。
 最後に残ったのが俺たちなら、一騎打ちをして優勝を決めよう……、って」

765 ::秘密 - da capo/al fine -(代理投下):2008/06/26(木) 06:12:02 ID:ns4m/Jpx
「……うん、覚えてるよ」

  ――――そんな事を話した事もあった。
  今となっては……、もう、どうでもいい気にもなっている。
  どんな結末であろうと、彼が私を突き放さない限りは覚悟できそうだから。

「……思ったんだけどな。
 確か主催の連中は、このゲームに時間制限を施していない。
 少なくとも今の所は何も言ってないはずだ」

「そう言えば……、そうだったかもしれないわね」

  ……彼が見つめているものは何か。
  手を伸ばしたいと思っている光景は何なのか。
  薄々分かるが故に、私は敢えてそれを明言しない。
  ……希望というのはある意味、最も辛い責め苦なのだから。

「ああ、……だから。
 もし時間制限がなくて、最後の二人が首輪を外して禁止エリアを無効化していて、尚且つ争う気もないのなら。
 ……このゲームの終わりはどうなるんだろうな」

「……分からないよ」

前提条件が多すぎる、夢の果てのそのまた果て。
俺は何を口にしているのだろうか。
こんな事を話しても意味はない。
もっと建設的に、今からどう動くかなどを話し合ったほうがいいに決まっているのに。

「……はは、そうだな。その通りだ」

それでも俺は何かを口にしようとして――――、

766 ::秘密 - da capo/al fine -(代理投下):2008/06/26(木) 06:13:34 ID:ns4m/Jpx
「なあトルタ。もし俺たちが最後の二人になっちまった場合は、敢えて戦いなんかせずに――――、」

……ようやく、自制を働かせる事ができた。
夢は夢、俺たちは今を生きている。
大切な大切な人達の為に、まだまだできる事はあるに違いない。
それらを一つ一つ、しっかりと話し合うことにしよう。

「……いや、何でもない。何でもないんだ。
 ……気にしないでくれ」

  それでいいの。
  ……今は、今を生きましょう。
  私は再度髪を結んで、ようやくトルティニタとしての言葉を紡ぎだす。
  少し無愛想かもしれないけど、それでも面倒見のいいトルタとして。

「……じゃ、始めましょうか。
 これからの事を、これからの為に。何をすべきかまとめていきましょ。
 恭介の言葉を借りるなら、ミッションスタート、かな」


……そう言う彼女の笑顔に、俺はこれまで救われてきた。
今ここに至るに当たって、強く強く思うことが一つある。

――――この手を汚させる訳にはいかない。
俺の中では未だに薄れる事すらなく、どす黒く醜く淀んだ感情が確かに鎮座している。
彼女はそれを認め、手伝うといってくれた。
そんな彼女だからこそ、俺は彼女に俺の復讐を付き合せたくない。

……ならば、どうすべきか。
彼女の信頼を裏切ってでも、俺は彼女を引き離すべきなのかもしれない。

767 ::秘密 - da capo/al fine -(代理投下):2008/06/26(木) 06:14:52 ID:ns4m/Jpx
気付く。
……それはまさしく、俺が理樹や鈴を救う為に幾度となく繰り返した思考と同じだ。
大切だからこそ、引き離す事を考える。
確実に確実に、彼女の存在は大きくなり過ぎていた。

しかし、この心地良さを失うことに怯えたまま――――、


今は答えの出ない問いを頭の片隅に、俺はただ彼女と意見を酌み交わし続けている。

768 ::秘密 - da capo/al fine -(代理投下):2008/06/26(木) 06:20:35 ID:ns4m/Jpx
これらは>>657よりの続きです。間をおいてさらに続きを投下します。

769 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 06:23:00 ID:ns4m/Jpx
◇ ◇ ◇


豪奢な空間、亡者達の見果てぬドリームワールドの扉。
キンキラキンに輝くお金と見栄の成れの果て。

……そんな衆人の抱くイメージとは裏腹に、その場所は静かに穏やかに来客を歓迎する。
クラシックな基調に整えられた内装は、彼ら以外誰もいない事も相まって馴染みの喫茶店のような雰囲気でただ己が役を果たすのを待ち望んでいた。
立ち入るのは二人の男女。
先刻まで両者の間にあった緊張感は最早なく、それぞれが頷きあって一つの装置の前に辿り着いた。

トルタの過去の話を終え、棗恭介とトルティニタ・フィーネは具体的にこれからどうするかという事を話し合い、決断を下す。
……ひとまずカジノの景品を確保すべし、と。
如月双七やアル・アジフ、羽藤桂に外の捜索を任せた以上、こちらとしても本分は果たさねばならないだろう。
第4回放送。
その時が訪れるまで不用意に動いて合流を妨げる必要性は微塵もない。
おそらく放送などの折や、何らかの事態が起これば向こうも連絡を入れてくるだろう。
携帯電話を持つアル達は元より、もし公衆電話などが見つかれば如月双七との接触も可能なはずだ。
外部の情報を手に入れる事は可能。
ならば、こちらはこちらで防備を固めておくべきだろう。

とは言えとりあえず物品の少ない現状は、セキュリティコントロールルームの機材を用いての防護くらいしかできはしない。
カジノの各所に仕掛けられた赤外線センサーに侵入者が引っかかれば、自ずとカジノ内に警報が響くようになっている。
そうなった場合、セキュリティコントロールルームに即座に帰還して監視カメラで対策を練る事くらいはできるだろう。
防火隔壁やスプリンクラーを作動させればある程度の足止めも望めるはずだ。
勿論逃走ルートは完璧に押さえてある。
その上で、実際に逃走するか侵入者と相対するかを決めればいい。

770 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 06:24:06 ID:ns4m/Jpx
勿論、懸念はある。
例えば発電所などがあるからして、この島にはライフラインが通っている事は確実だと恭介は推測している。
……それを破壊されればこちらのプランは脆くも崩れ去る事だろう。
だからこそその為にも、最悪の場合、即ちセキュリティコントロールルームすら寄る事をしない時の逃走ルートは構築済みだ。
ライフラインを遮断すればこのカジノは地下である以上、照明等にも確実に問題が発生するはず。
一部のゲームなども動かなくなる事だろう。
それを察知したら即座に予定通りのルートを経由して最短経路で脱出。
裏口のスターブライトで一目散に禁止エリアに向かい、携帯電話のアプリを起動させて様子を見ればいい。
次の連絡の時にこれらの事項をアル達に伝えておけば、合流も容易だろう。

またそれらとは別に、今回の放送についての考察は一つの結論が出ている。
……主催者達も一枚岩ではないということだ。

明らかに混乱と参加者への挑発を狙っていた言峰のそれに対し、神崎の放送はあまりに事務的だ。
前者が担うのが殺し合いの促進なら、後者はそれの調整といったところか。
この時点で参加者の減少が加速するのは望ましくないと判断したのだろう。

……まだ恭介は己のこのゲームへの考察を、トルタには伝えていない。
が、ある程度それは形は見えてきている。

これらの意味する事が、それぞれの盤上の“駒”としての動きだという可能性は高い。
ルークが縦と横にしか進めないように、ビショップが斜めにしか進めないように。
この殺し合いがゲームだとするならば、各々に果たすべき役割があるわけだ。
ゲームを盛り上げる為に、そして戦術の幅を広げる為に。

ならば、と恭介は考える。
『殺し合いを促進する=優勝させる事が勝利条件』側の駒が言峰であるのなら。
『殺し合いを停滞させる=優勝以外が勝利条件』側の駒が神埼なのではないか、と。

771 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 06:24:49 ID:ns4m/Jpx
これなら神埼が中立に徹そうとする理由も説明可能だ。
基本的に、参加者に最初に与えられる情報は『優勝すれば生き延びられる』だけ。
ゲームだとするならば、それ以外の勝利条件を開示すれば全く盛り上がらなくなるだろう。
参加者が探してこそ意味がある、という訳だ。
つまり、神埼の立場は優勝以外の勝利条件を模索させつつも、しかし情報は開示できない、という微妙なもの。
もし彼と接触できるなら、『優勝以外の条件』で脱出する算段が見えてくるかもしれない。

……とは言ってもあくまで神埼の役割がそうであるというだけの可能性であって、神埼本人の意思はそこにない。
もし彼が立場上その動きを担っていても、彼が協力的である保証はない以上当てにすべきではないだろう。


――――それだけを考えて、恭介はこの事に関する考察を打ち切った。
今為すべきは現実に起こりうることの対処だ。
その為にも、カジノの景品を手に入れることを考えねばならない。
最優先事項はUSBメモリであるが、それ以外のアイテムも上手く使えば自分たちの装備の強化に役立ってくれるだろう。

例えば、と恭介は景品の一覧に眼を向ける。
そこにあるのは一つの音楽家の名前だった。

――――レノン。

それは虚構の世界にて恭介が意のままに操る事のできた猫の名前だ。
もしそれが思った通りのものならば、直接的な戦闘力は望めないだろうが偵察には非常に有効だ。
要するに、自立行動可能な遠隔探査装置。そう考えればいい。
これを手に入れられれば警備も容易になるだろう。


こうした意図の下に彼らは今ひとつのスイッチの前に立っている。
ディーラーロボを起動させる、その為の装置。
各々に半分ずつカジノのコインを分配し、為すべき事を為す為に。

772 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 06:27:13 ID:ns4m/Jpx
その手にあるのはそれぞれ250枚相当。
当初は不要な支給品をコインに換えるつもりだったが、幸か不幸かどれにも使用価値を見出せた。
現状の装備をこれ以上減らすのは流石に愚かと考え、偶然カジノに放置されていたコインのみを元手にする事に決定したのだ。


「……さて、始めようぜ」

「……うん」

互いの手を重ね、そのスイッチを、押す。
……特に何の変哲もない、ただのプラスチックの塊だ。
然して、それがどのような意味を持つのかも知る事はなく。

押した。


――――静寂が満ちる。

何も変わる事はなく、ただただ沈黙が支配する。

「……恭介」

「どういう事だ……?」

顔を見合わせて首を捻るも何も変わる事はない。
もしかして何かの手順が必要なのか、それともそもそも何かの罠だったのか。
後者の可能性に関してはゲームである以上主催もルールは遵守すると考えたい。
だからこそ否定したい所だが、0ではないというのが難しい所だ。

不安が二人の間に満ち、耐えかねて何かを口にしようとした、その時。

773 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 06:28:42 ID:ns4m/Jpx
『成程な。
 コレが起動させられたという事は、ようやくこのヒトという種の根源、その醜悪なる本質を
 剥き出させる空間に立ち入る者が現れたという事か』

ぽん、とそれぞれの肩に一つずつ小さく冷たい手が置かれ、聞き覚えのある野太い声が届く。


「……誰だッ!」

顔を引きつらせるトルタを守るように間に割り入ってみれば、その目の前にいたのは。

「……女の……子……?」

『ほう……。これはこれは、よりによって君達かね。
 実に愉しい一時を過ごせそうだ、我らが御父に感謝を』

長い髪の一部を所謂ツインテール状に纏め、残りは流したままの黄色がかった制服を着た少女がそこにいた。
……否、少女といっていいものだろうか。
その肌や目こそ人間そのものではあるが、耳を覆う妙なカバーは決してヒトのものではない。
まさしくその正体は人形なのだろう。
しかしソレはそうした事実を全く感じさせない表情をその顔に深く深く掘り込んでいく。
どこかで見た愉悦の表情を。
場所が場所なら、最強の吸血鬼と間違えても可笑しくないその声と共に。
右手を腰の後ろに、左手を僅かに掲げたその独特なポーズを見せつけながら。

『……ふむ、では早速始めようではないかね。
 そして見せてくれ、君達が破滅に追い落とされ足掻き藻掻き、
 希望と絶望の狭間にて己の矮小さと卑小さに打ち拉がれ夢の果てを見据えることすら苦痛となるその瞬間を、な」

……その口上に二人は即座に直感する。
目の前にいるのが何者であるのかを。

774 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 06:37:35 ID:YHMGx6AJ



775 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 06:38:48 ID:YHMGx6AJ



776 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 06:44:29 ID:YHMGx6AJ



777 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 07:09:08 ID:ns4m/Jpx
場が、一気に冷え切り緊迫。
……その最中、恭介は眼光で相手を射抜くかのように、少女の人形の向こうにいる誰かに言葉を叩きつける。
誰かのおかげか、唐突な事態にも既にその意思は揺らぐ事無く、確かに自分の為すべきことを過たずに選択できるようになっているのだ。
それは確かに宣戦布告であり、その存在に相対する決意表明である。


「……麻婆豆腐は美味かったか? 言峰、綺礼……!」


『――――ほう』

少女の姿をしたソレが、よりいっそう破顔する。
まるでその対応こそが、自分が望んでいるものであるかのように。

『では問おう。何故君はそれだけの確信と共に断言できるのかね?』

その深く昏い笑みに向かい合い、棗恭介は自明であるかのように推理を述べる。
この程度は分かって当然であると言わんばかりに。

「簡単な話だ、放送の時お前は何かを食っていた。
 ……あの時鳴っていた何かを打ち合わせる音、あんな澄んだ音が出るのは景徳鎮どうしをぶつけた時くらいなもんだ。
 つまり、あんたはレンゲと皿で何かしらの中華料理を食っていたんだ」

淡々と、淡々と。
傍らにいるトルタと確かめ合うように視線を交わしながら、目の前の存在に告げていく。

「……そして、あんたの咀嚼音と乱れた吐息。
 前者からは食ってる料理の状態を知ることが出来る。
 あんたが食ってたのはスープの多い、柔らかい何かに間違いない。
 後はあんたの息が乱れたってとこから辛い何かだって事までは想定できる」

一息。

778 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 07:10:42 ID:ns4m/Jpx
「……ここまで材料が揃えば、推理は簡単だ。
 生憎俺のボキャブラリーでそれに該当する料理は一つしかなかった。それだけだ」

パン、パンと手を打ち鳴らす音がした。
見れば、人形が褒め称えるかのように。
歓迎するかのように悠然と一歩踏み出した。

『……見事と言っておこうか、棗恭介。
 だがしかし、ここで話しているのが言峰綺礼だと何故確信できるのかな?」

「そっちに関してはそもそもあんた、隠すつもりもないだろ。
 最初っから自分はこの子を遠くから操作しています、なんてニュアンスが滲み出てるぜ
 しかも対応が柔軟すぎる。どう考えても人間が機械の向こうで喋っている以外に解答はない」

……その言葉を聞き、人形――――、いや、言峰綺礼は喜色を隠す事無くゆっくりと立場を明確にする。
彼が訪れたその理由を語りだす。

『成程……、成程、確かにな。全く的を射た意見だよ。
 おっと、そんな目でみる必要はないだろう?
 まあ、余興のようなものだ、小手調べと考えてくれたまえ』

睨みつけるトルタを受け流しながら、言峰は自身の目的を果たす為に語り――――、

『……さて、本題に入るとしよう。
 いくら進行は神崎黎人が主体とはいえ、私も放送までには彼らのところに向かわなくてはならないのでね。
 ああ、何故私が出向いたかは疑問だろうから答えておこう。
 まずこのロボット、引いてはカジノの使用法の説明だ。そして――――、』

ただ、決定的な一言を告げる。

『そうだな、しいて言うなら娯楽だよ』

779 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 07:10:50 ID:rSHhYYWk


780 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 07:12:34 ID:ns4m/Jpx
◇ ◇ ◇


ポーカー。

コントラクト・ブリッジ、ジン・ラミーと並び世界三大トランプゲームの一角に位置するこのゲームは同時にギャンブルとしての歴史も古い。
一説によると19世紀半ばには既に賭博として用いられていた事もあるのだとか。
勿論それに順じ、そのルールは今もなお多様化し、どのルールを採用するかについても作戦は大いに変わってくる事だろう。

最も基本的で、全ての札を隠してプレイするクローズドポーカー。
一部の札だけを公開してプレイするスタッドポーカー。
札の強さを逆転させてプレイするローポーカー。
自分の札を相手だけ見えるようにして、自分自身は見ずにプレイするインディアンポーカー。

他にも多々の様式があり、ジョーカーの有無でも全く性質は変わってくるのだが、そのどれもに共通するルール、プレイの手順がある。
プレイヤーに札を配り、たった一度だけ手札を交換して役を作るのだ。
無論、その役を作り上げるのにも高度な戦略戦術計算力、そして運が必要とされる。
……だが、ポーカーの醍醐味は結果的な役の強弱を比べることだけではない。
役を比べるその際に賭けた金額や相手の態度、言動から自分以外のプレイヤーの作った役の強さを想定し、駆け引きをする。
勝てると思ったらより賭け金を吊り上げ、負けると思えば潔く引く。
ブラフを駆使し相手を退かせ、時に真実で勝負を仕掛け徹底的に叩きのめす。
……それこそが、ポーカーというゲームなのだ。

賭けのやり方も交えて、それを一般的なルールであるクローズドポーカーを用いて説明しよう。
なに、実にシンプルなルールだ。
役を覚えるのがやや手間がかかるくらいで、初心者でも簡単に参加できる。

まず、ディーラーがプレイヤーに5枚ずつ、裏返しでカードを配る。
この際ディーラーはプレイヤーを兼ねていても構わない。
全員に配り終わり、それぞれの札をプレイヤーが確認したら1回目のベットタイムだ。

781 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 07:12:44 ID:rSHhYYWk


782 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 07:14:47 ID:ns4m/Jpx
この時配られた札を見て、どの役を作りやすいかを見極める。
その『作れそうな』役の強さに応じて、ベット――――賭け金をディーラーから時計回りで順に提示していくのだ。
もちろん、ノーペア(役なし)になりそうだったり、相手に勝つ自信のない役ならこの時点でフォルド(ゲームを降りる)しても構わない。
尤もブラフ次第ではその回でも勝利できる可能性はある以上、必ず降りなければならないという訳ではないが。

そうしてプレイヤー全員がベットし終わった時、残っているのはこの回のゲームに参加するものだけだ。
その面子で今度はレイズ(賭け金を吊り上げる)、コール(前の相手と同額を賭ける)、フォルドのいずれかを選択する。
これはフォルドしなかったプレイヤー全員の賭け金が同額になるまで続けられる。
一度ベットしてしまった上でフォルドを選んだ場合、賭け金は没収されるのは言うまでもない。
ちなみに、この時一人を除いて他のプレイヤーが全員降りたなら、そのプレイヤーの一人勝ちである。


そしてこれからが本番である。
各々の5枚のカードのうち、任意の何枚かと山札の同数のカードを交換し、役を完成させる。
これを終えた後、完成した役の強さによって駆け引きを始めるのだ。
2回目のベットタイム。これこそゲームの真髄なのである。

前のベットタイムと同じ様に、順番に『レイズ、コール、フォルド』をプレイヤーは選択していく。
単純に自分の札に自信があるから強気な金額を提示してもいい。
自信がないからこそ、相手に降りてもらいたいが為にブラフを仕掛けてレイズするのもアリだ。
無難にフォルドだって立派な選択肢である。
ポーカーではゲーム中の会話も認められているため、口八丁でどうにかする事も可能だろう。

こうして全てのプレイヤーの賭け金が再度同額になったとき、ようやく決着の瞬間が訪れる。
役の強さを見比べ、その中の最強の役を完成させたたった一人がこのゲームでの賭け金全てを手に入れることが出来るのだ。
途中でフォルドしたもの、そして実際に役を比べ合ったもの。
そうした敗者は何も得る事はなく、儲けられるのは残酷にも一人。
それが、ポーカーだ。

尤も、先述の通り他のプレイヤーが全員フォルドしたなら、敢えて役を比べるまでもなく勝てる。

783 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 07:16:27 ID:ns4m/Jpx
その意味で全員に希望はある。
これが役を揃えるだけのゲームにはない魅力だろう。

このゲームでの役の強さは、以下の通り。
下記のものほど強力な役とされている。

ノーペア:通称ブタとも。役ができていない状態。
ワンペア:同じ数字のカード2枚のペア一組(残り3枚は問わない)。
ツーペア:同じ数字のカード2枚からなるペアが二つ(残り1枚は問わない)。
スリー・オブ・ア・カインド(日本ではスリーカードの通称が一般的):同じ数字のカード3枚(残り2枚は問わない)。
ストレート:3〜7のように、5枚のカードの数字が連続していること(スートは問わない)。
フラッシュ:5枚全てが同じスート(数字は問わない)。
フルハウス:ワンペアとスリーカードの組み合わせ。
フォー・オブ・ア・カインド(日本ではフォーカードの通称が一般的):同じ数字のカード4枚(残り1枚は問わない)。
ストレートフラッシュ:ストレートで、かつフラッシュ。
ロイヤルストレートフラッシュ:10、ジャック、クイーン、キング、エースの組み合わせで、かつフラッシュ。
ファイブ・オブ・ア・カインド(日本ではファイブカードの通称が一般的):同じ数字のカード4枚とワイルドカード(ジョーカー)が1枚。

これらを揃え、競い合わせるのだ。


……では、実戦を御覧頂こう。
参加者は三名。
棗恭介、トルティニタ・フィーネ、言峰綺礼。

三柱の織り成すカードの舞踊を、とくと御覧あれ――――。

784 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 07:21:15 ID:ns4m/Jpx
◇ ◇ ◇



『せっかくの機会だ、次の放送までしばし私が君達の相手を勤めようではないかね。
 機械相手に賭けをしても面白くないだろう?』

カジノのゲームの動かし方、ディーラーロボの運用方法。
それら全てを説明した後、唐突に言峰はそんな事を言い出した。


当然、何かの罠と言う可能性は充分ある。
そもそも言峰の賭けの能力は未知数とは言え、下手すれば機械よりも強い実力者をわざわざ相手取る事になるのではないか。
実際自分達はカジノのコインを必要としているのだし、そんな不利な条件をわざわざ汲んでやる必要はない。

故に、ふざけるな、と言おうとしたものの、恭介はしかし考えを改める。
言峰は明らかに何か干渉しようとしている。
ならば、これは好機であるのに間違いはない。
娯楽と言い切った言峰の真意を問いたださねばならないし、何より情報が手に入る可能性もある。

……そこで、運の要素だけでなく、相手との駆け引きの場ともなりうるポーカーを提示した。

故に、使用するカードも新品であることを、中身を自分の目で全て検め確認したうえで了解を出す。
妙な模様や磁気加工の痕跡などもなく、明らかに細工はされていない。

ワイルドカードはあり、クローズドポーカー。参加者は3人。
……そんなルールの提示にも言峰はあっさり頷き、故に滞りなくゲームは開始される。

そんな言峰の様子を見て、恐らくは真剣に勝負をするつもりだろう、と恭介は推察する。
勿論イカサマに長けている可能性もあるが、ロボットの動きを見るにややぎこちない上、言峰自身が、

785 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 07:23:50 ID:ns4m/Jpx
『神父として、そして監督役として。
 私は小手先の詐欺を一切合財行なわない事を神前と規律に誓おう』

と告げた為、一応の信頼をすることにした。
神父として云々はともかく、ゲームの駒であるならルールの遵守は絶対のはずだ。
なればこそ、規律に誓ったという発言はある程度信ずるに値すると考える。

現に、今のところイカサマを行おうとする雰囲気はない。
彼も彼なりに、ゲームに向かい合っている可能性は高いだろう。
……ただし、それはあくまで遊びを真剣に行なうに過ぎない。
結局は言峰の操るロボがディーラーである以上、彼の側のコインは無尽蔵なのだから。

そして始まった初回のゲーム。
配られた5枚のカードを元に、まずは言峰が己の賭け金を宣言する。


『ベット。50枚を賭けよう。次は君の手番だ、トルティニタ・フィーネ』

……トルタ、恭介共に持っているコインは250枚。
全体の1/5という事で、初回の賭け金としては無難な所だろうか。
その言葉を聞き、恭介は確信する。
……相手の目的が娯楽という事に相違はないらしい。
叩き潰すのが目的ではなく、あくまで適正な範囲で対処しようとしているからだ。

そんな事を脳の片隅に置きつつ、恭介はトルタのほうを見る。
と、彼女は思案し、一つの言葉を告げた。

「……コール。私もそれで問題ないわ」

それだけを紡いだ後、トルタは恭介にアイコンタクトで接触する。

――――無難な手札だ、と。

786 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 07:27:30 ID:ns4m/Jpx
何も言わずともお互いにある程度の意志は汲めるようになっている。
故に、それを利用して二人で連携をしながら言峰からコインを搾り取ろうと言う算段だ。
何せこちらは二人。
ポーカーと言うゲームの『勝利者が全ての賭け金を手にする』という性質上、どちらかが勝ちさえすれば結果的にコインは戻ってくる。

事実上、1対2の戦いだと言えるだろう。
だがそれでも言峰はそれでもまだ遊ぶ余裕を残しているのが空恐ろしい。

……それは無尽蔵のコインという気負うものの少なさよりも、実力によるものが大きいからだ。
絶対的な自我を確立し、いつ如何なる時でも揺らぐことのない真の強者。

ティトゥスや理性の怪物に相通じる何かを、言峰綺礼は持っている。

それも当然だ。
言峰綺礼と言う男は超一流には決して達さずとも、その手前までは恐るべき速度で何物をも飲み込んでいく存在なのだから。
それは賭けに置いても変わることはない。
そうした『努力で辿り着ける範囲の極限』に加え、十年前に自己の起源を認めることで辿り着いた最果ての心の境地は、ただただ悠然とそこにある。

それでもなお食らいつき、少しずつでも立ち向かわんと。
棗恭介は最初の攻撃を仕掛け始める。

「レイズだ。……追加50枚、計100枚を賭けるぜ。どうだ?」

現在の恭介の手札はスペード3、ダイヤ3、ダイヤ4、ハート6、クローバー11。
カード交換前で既にワンペアが揃っているという好機だ。
ここで強気に出ない理由はない。

言峰の人形を睨みつければ、やはり態度は変わらない。
相変わらずを笑みを浮かべせたまま、少女の顔に不釣合いな野太い声を呟きだす。

『良かろう、コールだ。トルティニタ・フィーネ、君はどうするかね?』

787 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 07:30:55 ID:ns4m/Jpx
……その視線からトルタを守りたい衝動に駆られるが、しかし恭介はそれに耐える。
この戦いは彼女自身も望んだことなのだ。
足を怪我し、戦線に臨む事の出来ないトルタ。
せめてこのような場くらいでは力になりたいと、共同で戦うことを申し出た。
……それを否定することなど、恭介に出来はしない。

「……構わないわ、コールよ。さあ、さっさとカード交換に移りましょ」

恭介をちらりと横目で見つめ、お互いに頷くのを確認する。
これは恭介に任せたと言うサインだ。
駄目元のカード交換でいい役が揃えばよし、そうでなければ自信のある恭介に後を託す。
……ルール上完全な意思交換は出来ずとも、この程度の事は容易なことだ。

『承知した。さあ、救いとなる札を手渡そう。そして斬り捨てられる何某かを哀れみと共に寄越し給え』

冗長な言葉を無視し、トルタが2枚を、言峰が1枚を交換するのを確認し、恭介は己の手札を取捨選択する。

まず、既に揃っている2の2枚は手元に残すのは確定だ。
これがあるだけでブタという事態は避けられるし、交換でもう一つのペアがくればツーペアを、
残りの2のカードが来ればスリー・オブ・ア・カインドを狙うことも可能だからである。
余程運がよければフォー・オブ・ア・カインドを拝むことも出来るだろうが、まず無理だろう。
他の役――――、ストレートやフラッシュを狙うにはスートも数字もバラバラだし、それ以前に2を残す時点で完成は不可能。
よって、交換する枚数は2以外の3枚全てだ。

……結果。
恭介の手元の札は、スペード3、ダイヤ3、ハート3、スペード5、ダイヤ13。
幸先の良いスタート、文句なしのスリー・オブ・ア・カインドが完成することとなる。
計5枚を要するストレートより上位の役など滅多に完成しない以上、現実的な役としては最も信頼に足る役といっても過言ではない。

……だが、もしもと言う事もある。
言峰とトルタの動向を確認してから全てを決断すべきだと判断。

788 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 07:32:39 ID:ns4m/Jpx
……と。

『……レイズだ。150枚を提示する』

ディーラーでもある言峰が、金額の吊り上げを宣言した。
その途端トルタの顔がくしゃりと歪む。
……既に、最初に持っていたコインの半分以上の額が提示されている。
トルタの手にした役ではそこまでの金額を信頼するに値しなかったのだろう。
客観的に見たならそれは自明のように思われた。
言峰も当然それを理解したのか、愉悦の篭った声色でトルタに決断を促している。

『さあ少女よ、君はどうするのかね?
 無謀と勇気は別物だ、如何なる道を選ぼうと私は君に惜しみない賞賛を贈るだろう』

それを言い終える前に割り込んで、トルタはしっかりと選択を告げた。

「……フォルド。私は降りるわ」

既にその顔に悔しさは浮かんでいない。
後の事は頼んだと、仲間に純然たる信頼を寄せる相貌がそこにある。

「……恭介」

無論、それに答えない理由はない。
ニヤリと口端を歪め、二本指を振って返す恭介を見届けて、トルタはポーカーテーブルの上に自身の5枚のカードを伏せる。

トルタが降りた以上、初戦は恭介と言峰の一騎打ち。
……できればこれを制し、波に乗りたいがどうするか。

考える、考える、考える。
言峰の持つ手札が何かを考える。

789 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 07:42:55 ID:rSHhYYWk


790 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:01:01 ID:ns4m/Jpx
レイズしたと言う事は何かしらの役が揃った可能性が高い。
だが、ブラフである可能性もある。
……言峰の態度はそれ自体がポーカーフェイスの様であり、どちら寄りかは全く見分けがつかない。
ならば、真実であると言う前提の下で考えた方が最悪の場合は回避できるだろう。

……着目すべきは、交換した枚数だ。
1枚。
果たして如何なる意図の元にそれを交換したのか考えねばならない。

大前提として必要な要素は、言峰に最初に配られた手札は、あと一枚交換するだけで役が完成する状態だった――――という事だ。
この時点でその時完成していた役からワンペアとスリー・オブ・ア・カインドは消える。
どちらも4枚も必要ない役だからだ。

そしてもう一つ考慮すべきなのは、言峰の役が実際完成したか、カード交換が成功したか否かということ。
仮に成功した場合、言峰の今持つ可能性のある役は5枚で完成する役。
ストレート、フラッシュ、フルハウス、(ロイヤル)ストレートフラッシュ、ファイブ・オブ・ア・カインド。
失敗した場合は、ノーペア、ワンペア、ツーペア、スリー・オブ・ア・カインド、フォー・オブ・ア・カインド。

このうち、フルハウス以上の役は考慮しなくてもいいだろう。
強力すぎてどう行動しようが対処できない。
そもそも言峰は遊んでいるとはいえ真剣な訳で、だからこそセオリー通りに強力な役なら勝負を仕掛けてくるだろうと考える。
それがせいぜい150枚程度で留まっているというのは、強力な役を揃えていない可能性が高いということだ。

そして、それを前提とした場合にカード交換に失敗した場合の言峰の役を考える。
……いずれも恭介の完成させたスリー・オブ・ア・カインド以下の役。
最悪、引き分けだ。要するに大方勝てるだろう。
……ただ、もし相手がスリー・オブ・ア・カインドを完成させているなら恭介の負けだ。
同じ役の場合はその役を構成するカードの数値で強弱が決まる。
恭介の完成させたスリー・オブ・ア・カインドの3と言う数値は、下から2番目の弱さなのだ。
……それでもやはり、勝てる可能性は高い数値を叩き出す点は変わらないが。

つまり考えるべきは、言峰はストレートもしくはフラッシュを完成させたか否か、だ。

791 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:02:09 ID:YHMGx6AJ



792 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:02:14 ID:ns4m/Jpx
ならば決定の余地は、恭介の行動から言峰は何を見出したかだろう。
相手の立場になり、チェス盤をひっくり返して考える。

……言峰が見た要素は二つ。
恭介が最初の時点でレイズしたことと、3枚のカードを交換したこと。
この2つから、最初にワンペアが揃っていたのが見抜かれているのは確実だろう。
最低で、ワンペア。
考え得る他の可能性はツーペア、スリー・オブ・ア・カインド、フルハウス、フォー・オブ・ア・カインド、ファイブ・オブ・ア・カインド。
これは相手の読みで保証されているはずだ。
しかしそれ以上の確証は得られていないのではないだろう、と恭介は判断する。

……その上で。
先述の通りランダムに3枚交換しただけでは5枚全てを要する役が完成する可能性は低い。
つまり、こちらが揃えたカードは最高でスリー・オブ・ア・カインドだと言峰は見込むはずである。
だからこそ、150枚という中途半端な数で様子見に出ているのだろう。
つまりそれは、言峰がストレートやフラッシュを完成させているならば在り得ない判断だ。


故に、次の一手で棗恭介は勝負を仕掛ける――――!


「……レイズだ! 200枚、これでどうだ……ッ!」


トルタが驚くのを尻目に、恭介は自身満々に言う。言ってのける。
万一自分より強いスリー・オブ・ア・カインドを完成させている可能性を前にしても臆さず、
総枚数の4/5という具体的数値で以って自分のカードは強力だというその自負を相手に叩きつける――――!

793 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:02:30 ID:YHMGx6AJ



794 :Third Battle/賭博黙示録(前編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:03:42 ID:ns4m/Jpx
――――されど、それを覆してこそ悪性の担い手――――!


『来るがいい……、コールだ!!』


開示は刹那。
決着は一瞬。
明暗は転換する。



スペード3、ダイヤ3、ハート3、スペード5、ダイヤ13


ダイヤ1、スペード6、ハート6、クラブ10、ダイヤ10



「……退いときゃ良かったのにな。しかしビビったぜ、正直な……」

『ふむ……、成程な。認めよう棗恭介、私の敗北だ。
 だが、これは初戦だ。まだまだ先は長いぞ?」

「……心臓に悪いな、あんたはほんとに強いよ。
 ……それでも立ち止まってる暇はないのが厳しいな。
 さあ、続きを始めようぜ、言峰。こんなのはまだまだいくらでもあるんだろ?」

『くく……、さて、どうだかな。いずれにせよ私を楽しませてくれるには違いないだろう?』

「……やれやれ。ここからが本当のゲームスタート、か」

795 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:04:21 ID:YHMGx6AJ



796 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:04:56 ID:ns4m/Jpx
◇ ◇ ◇


斯くして鳴らされた開幕の喇叭は留まることを知らず重奏し続ける。

『――――レイズだ。さて、そろそろ引き際ではないのかね?』
「……フォルドだ、ここは退くさ……」

強者たる言峰綺礼との血を伴わぬ争いは、それ故に緊張を途切れさせることはない。
ただ、掴みかけた答えを探り当てるように、共に支えあう二人は大敵に挑む。

「……私はストレート。一人勝ちよ」
「結果的に……、俺と言峰の駆け引きは無意味だった訳か」
『了解だ、認めようトルティニタ・フィーネ。君の勝利だ』

然して、言峰はのらりくらりと勝利にこだわらないからこそ、次第に押される。
愉悦の為に彼は全力を注ぐのだから。

『ふむ……フォルドだ。あとは君たちで決着をつけたまえ』
「……えーと、私がフォルドするから、恭介にコイン渡しておく事にするね」
「……せっかくコインが増えたばかりなんだから、もう少し大事に使っておくべきだと思うんだが……」

――――押されていく。

『……コールだ』
「ぐ……」
『虚栄が仇となったな、しかしそれもいい経験だろう?』

……それも全て、カレの待ち望む一時の為の布石だと知ることもなく。
少年は少女の為に勇気を示し、少女は少年を守ることに喜びを覚える。

797 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:05:37 ID:YHMGx6AJ




798 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:05:58 ID:YHMGx6AJ



799 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:06:36 ID:ns4m/Jpx
「レイズ。さて、どう見るの、言峰綺礼?」
『……フォルド、と答えておこう』

コインはただただ積みあがっていく。その事に少年も少女も一抹の不安を抱きながら。

「フォルド。……ごめん、恭介……」
「ここは退いておくのが最適解だ、気にする事はないさ」
『……両者共に退くと物足りなくあるものだな』

だからそれを顧みず、増えゆく希望に溺れていく。

そして――――、


来るべき崩壊は訪れる。


「……コール。私の手札は、3のスリー・オブ・ア・カインド……!」


少女が勝てる、と信じ託した一撃。
それは奇しくも彼女の側にいる少年がかつて敵を打ち倒したそのものであり。
……しかし。

『フラッシュだ。……読み違えたな、少女よ』

800 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:08:49 ID:ns4m/Jpx
いともあっさりと、脆く容易く崩れ去る。


「……え?」


――――トルタの掌から、札が木の葉のように舞い落ちる。
……勝てると信じた。
言峰の賭けた金額は現在トルタの持つコインの7割方相当、3000枚強。
あからさまな強気な言動、交換した枚数は0。

その全てが、ハッタリだと読んだはずなのに。
あまりにも怪し過ぎて、そんな事はないと確信したのに。

……単純な話だ。
こんなのは偶然が重なって、たまたま言峰の手に最初からフラッシュが完成したという運の産物でしかない。
そこにセオリーで動いた彼女の非は全くなく、ただ運命を廻す女神の悪戯を憎むことしか出来はしないのだ。


「……トルタ、しっかりしろ! 気を取り直せ、次で挽回すればいいんだ!」

……心配するような恭介の声に、ようやくトルタは気を取り直すことが叶う。

「大……丈夫。うん、まだまだ取り返せるよね……」

……しかし、事実は変わらない。
二人のうちいずれかさえ勝利すれば良かった為。
連携しあうことができた為。
言峰が遊ぶ余裕を見せていた為。
恭介とトルタは順調に枚数を増やしてきていた。
その数はもうすぐ合計で9000、目標の10000にも達する。
それが急激に2/3まで減ったのだ、その心理的影響は決して軽くはない。

801 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:08:59 ID:YHMGx6AJ



802 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:10:16 ID:ns4m/Jpx
――――この、転落の一瞬こそが賭けの本性である。

一度落ちてしまえばそこはもう油塗れの坂の上。
あとは余程の運と這い上がる意志の強さがない限り、ずるずる、ずるずるとひたすら奈落へ堕ちていくだけだ。
その時の表情、言動、行動。
……ありとあらゆる要素は言峰綺礼の愉悦となって、彼の力と化すことだろう。

声もなく、しかし言峰は確かに笑う。嗤う。哂う。
嘲い続ける。

深く。深く。
誰よりも何よりも愉しそうに――――。


◇ ◇ ◇


そして予感は的中する。

『……ベットだ。100枚でいかがかな?』
「……余計な気遣いよ。コール」
「OK、コール。……トルタに同じでだ」


……一度勢いのついた落下を止めるには能わない。

803 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:13:46 ID:ns4m/Jpx
悔しそうに、自分が情けないとの意思を露に。
震えそうな手でぎゅう、と手札を握り締める。
1000枚単位で賭けていた先刻の姿は既にそこになく、なけなしのコインを捻り出す少女の姿がそこにある。
彼女自身は気遣いと言ったが、しかしその100枚は事実上最後の賭け金だ。
現在持つコインは恭介は6500枚強、トルタは100枚と数十枚。
相場を考えてもトルタのレイズ可能な金額は、もはや場違いとしか言えないレベルだ。
最初と同じく、事実上は恭介と言峰の一騎打ちという形になる。

……あっけない、と言峰は思う。
合計額で見れば少しずつ先刻の大負けを取り戻してきているものの、それはやはり恭介とトルタの連携があってこそのもの。
その連携にしてもトルタは負け続きでサポートに徹し、恭介がそれ以上の働きでカバーするという歪な構造に成り下がった。
このままトルタが賭ける資格を失うならば、単騎の恭介はいずれ敗北必死だろう。
今はその姿を見ていて愉しいのは事実だが、出来ればもう少し長く続かせたかったというのが本音だ。

自らの手札を交換しながら、ならば、と言峰は考える。
放送もだいぶ近づいたことだし、そろそろ本題を切り出す頃かもしれないと。
このポーカーはあくまで余興だ、こうした駆け引きも中々に面白かったが潮時かもしれない。
好機が来たなら一気に叩き潰しつつ、勢いで相手にその話を持ちかけようと決める。

……待ちに待ち望んだ愉悦に溢るる切開のその時を。

来た。

――――破顔とは、こういう表情を示すのだ、と、その見本を。
人形越しが故に誰にも気づかれる事もなく、言峰綺礼はその顔に刻む。


……見回せば、二人共に様子は芳しくない。
トルタは俯き、恭介はそんな彼女に僅かに目配せをして下唇に力を込めている。

804 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:14:44 ID:YHMGx6AJ



805 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:15:11 ID:ns4m/Jpx
先刻から続くアイコンタクトから察するに、恐らくどちらにもいい手札が来ていない。
それを見抜けぬほど言峰綺礼の眼力は未熟ではない。
だからこそ――――、始める為に告げる。
絶望を孕む言の葉を。

『……ふむ、ならばレイズだ』

「――――ッ!」

この時点でのレイズ。
それの意味するものはつまり、とうとうトルタを完全に排除しようとしているということだ。
理解していないはずはなく、トルタはびくりと肩を震わせつつも気丈に言峰を睨みつける。

そして、追い詰めに追い詰められた彼女を守らんと、果敢に切り込む少年が一人。
……当然だ。
もはや、トルタには賭けるべきコインはない筈なのに、更なる上乗せを加えようというのだから。

「……何だと? 何を賭けるつもりだ、言峰……」


……その言葉を待ち望んでいたと言わんばかりに。
ただ――――言峰は紡ぎだす。
さあ、来るべき時は今まさに。

『――――なに、簡単なものだ。……権利だよ』

「……権利? 放送で言っていたあれの事……?」

そんなものではない、と。
……確実に、根本から、不可逆の。
それだけの意味を持ちうる『賭け金』で、抉る、抉る、抉る。
トルティニタ・フィーネの傷を抉じ開ける。

806 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:19:09 ID:ns4m/Jpx
切開する。


『いや、それとは別のものだよトルティニタ・フィーネ。
 ……感謝したまえ。
 私はここに“アリエッタ・フィーネの【体】に干渉する権利”をレイズとして提示する』



「――――ぁ、」



……比喩でなしに時が凍る。
トルタの全思考は瞬間とは言え考えることを放棄する。
時間とは主観であり、周囲の一切合財を認識する観測者の思考が停滞するならばそれはまさしく時間停止であるだろう。

「トル……、」

恭介は何某かを言おうとして、

「あぁぁああぁああああぁぁぁあああぁああっ!!」

「……く、」

――――しかし、口にすることなど出来はしない。
足の怪我すら見向きもせず躍り上がらんとし、しかしその場に倒れこむトルタを止めることなど出来ようか。
アル。
アリエッタ。

807 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:23:15 ID:rzHA4Pvn


808 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:23:44 ID:rzHA4Pvn


809 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:25:14 ID:rzHA4Pvn


810 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:39:10 ID:ns4m/Jpx
……その言葉が、名前が、存在が。
どれだけ彼女にとって掛け替えのないものであったか、どれだけ彼女を苛んだか、どれ程の重みを持つのか。
……既に恭介は、そんなものは知らないというには踏み込みすぎている。

今ここで彼女を止めるのは、それこそ彼女の望みでないと。
自分に告げてくれた時の様に彼女自身から答えない限り、触れてはいけない聖域を蹂躙された痛みが分かるからこそ。
彼女は言峰に、自分がファントムに抱くのとよく似ている何かを抱いているのだと。
恭介は動き出しそうになる体を必死に止める。

激昂するトルタは今にも泣き出しそうな声で、それでも毅然と神の代行者に立ち向かう。

「言峰、綺礼……っ!! あなた、私やクリスに飽き足らず、ようやく目覚めた姉さんまで……っ!」


ああ、それだ。それが見たかったのだ。
実に、いい。
全てを曝け出さんと、嘘の奥の奥の奥に秘めた脆さと弱さと崩れやすさと嫉妬と欺瞞とエゴと心の底からの愛情と。
それらに圧し掛かられ潰され耐え忍び堪えんとする自我の鎖の鬩ぎあいは真に尊い混沌だ。

『そう、その通りだ。……だからこそ君の心配を失くそうというのだよ。
 君たちが勝てば、アリエッタ嬢の【体】への干渉の悉くを今後一切我々は行わないことを確約しよう」

――――故に、その調整は丁寧に丁寧に行なわなければならない。
完全に絶望させても、完全に開き直られても面白くない。
僅かな希望をちらつかせて、酸の沼を渡らせ針の山を歩かせ炎の駕籠に揺らせなければ実に勿体ないというものだ。

「…………! ……本当、なんでしょうね」

だからこそ、伝える言葉は真実を。
一つ一つの言霊の重みというのは確かなる存在感を以ってヒトの魂に圧し掛かる。
真実というどうしようもない鎖と鉄球の下、ソレは絶望に追い落とされたその後も苦痛と疲労を保証するのだ。

811 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:40:44 ID:rzHA4Pvn


812 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:41:05 ID:ns4m/Jpx
――――何故、あの時掴めなかったのかと。
いくら後悔しても飽き足りぬ永劫の責め苦に嘆き嘆き嘆き続けよ。


「落ち着けトルタ、罠だ! ……冷静になれ、何処までが本当かの保証もない」

……勿論そう考えるのも道理だ。
現に、ある一面ではそれは正しい。
言葉というものは便利なものだ、決して嘘は言わずとも、全てを言わないだけで聞く者に勝手な思い込みを抱かせる。
……アリエッタの【体】以外に干渉しないとは一言も言っていないのに、それに気づいているのかいないのか。
……実に愉快ではないか、まさしく道化。

だがしかし、罠と分かっていても譲れぬものはある。
たとえ勝機はないと感づいていたとしても、時として騎士は風車に突撃せねばならないのだ。
だからこそ――――、道化ゆえに人間は素晴らしい。

「……ごめんね、恭介。これだけは譲れない。
 アルは、姉さんは私の半身。……私そのものといってもいいくらい、大切な人なの」

「……ああ、知ってるさ」

僅かに涙を湛えたまま、肩さえ震わせあまりにも弱々しく。
それでも少女は覚悟を示す。

「……だから。それが姉さんの為なら、私は躊躇わない。
 私の持つもので姉さんの安全に相当するのはたった一つしかないとしても」

下す。
あまりにも愚かで、誰よりも高潔なその決断を。

「……私の首輪でコールするわ、言峰綺礼。負けたらその時はこれを好きにして構わないから」

813 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:41:18 ID:rzHA4Pvn


814 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:41:41 ID:rzHA4Pvn


815 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:42:04 ID:ns4m/Jpx
それの意味するものは、少年に告げた誓いを反故にすることだと。
少年を選ばなかったのだと、分かっていながらも。


 
「トルタッ!」

――――誰かの必死に止めようとする声が届く。
少女のどこかはそれに歓びを感じつつ、それでもなお大切であり続ける半身の為に振り返る事はしない。

……否、一度だけ振り返る。
気遣いさえ苦しくなるからと、しかしそれでも嬉しいと。
僅かに笑みを見せつつも、呼びかけを無視して少女は自分勝手なお願いをする。
確かにそこには自分の名前を、存在を認められた喜びが込められており。
――――それ故に、名残惜しさと切なさ、悔しさもまた、滲み出るのを避けられていない。

「……ごめん、恭介。助けるって言ったのにね。
 ……あなただけでも逃げて。こんな私の我がままには、あなたを巻き込めない。
 ……巻き込みたくない。
 そして、何分間でもいいから、このゲームが終わるまで私の側から離れてて。
 もし私の首輪が爆発したのなら……、そんな光景、あなたには見せたくないの」

……その頬から、涙が一筋滑り落ちる。
顔にはしかし穏やかで、今にも儚く霧散しそうな笑顔を浮かべながら。
契約でもなく、利用でもなく。

……ただただ、親愛ゆえに、お願いすることしか少女には出来はしないのだ。

「……もし私が勝ったら、また会えるから。
 だから、ゲームが終わるまでの何分間かだけでもいいの。……逃げて、お願い……」

816 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:42:23 ID:rzHA4Pvn


817 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:43:09 ID:ns4m/Jpx
その顔に一瞬口を開くのを止め、ぎゅう、と手を握り締める少年。
それを見届けて、彼に何某かを言わせる暇も与えず少女は一人、神父に向かい直る。
絶望の中での最後の光として選んだであろう、姉への想いだけを縁にするかのように。

「……もう、いいわ。始めましょう、最後のゲームを」

『いい覚悟だ、トルティニタ・フィーネ。……では、札の開示を――――」


……そうして、一つの報われない結末が紡がれようする。
最後まで一人、たった一人。
願わくば、彼女が最後のその時まで抱いたその想いが、決して誰にも愚弄されぬ様――――、



「待てよ」



――――願う以前に、出来ることはまだまだある事を示してみせるは影一つ。

悠然と、泰然と。
戦地に向かうは数多の策を培いし抵抗者。
打ち破る、打ち破る。
さあ少年よ、全力で心身を尽くし、打破せよ進撃せよ望むものを掴み取れ――――!

そう、君にはその意思が確かにあるのだから!

にやりと口端を歪めつつ、棗恭介は不適に臆せず代行者の前に立ちはだかる。
それは勇気か無謀かはたまた蛮勇か。
見極めるには今はまだ早く、しかし指を突き付け己が戦意を捻じ込み刻み込んでいく。

818 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:43:54 ID:rzHA4Pvn


819 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:44:19 ID:rzHA4Pvn


820 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:44:25 ID:ns4m/Jpx
「俺のベットはまだ終了していない。だろ? 言峰。
 ……勝手にゲームを進めるなよ」


トルタが息を呑む傍らで、嗚呼、と言峰は思う。
何と。
何と、面白いのだろうと。
これでこそ人間、その本質こそが言峰の愉悦となるのだ。
いつの世も人間は、自分の予想を超える行動をする。
何故なら――――、

『ふむ……。だが棗恭介、この状況で君はどうするつもりかな?
 君たちが先刻から、役なしの場合はサインを送りあっているのに私が気付かないとでも思ったのかね?』

先刻の最初のベット。その時の恭介のサインは間違いなくロクな札がきていないことを示していたのだから。
それでも敢えてこの場に踏み込んできたのは何故か。
もしかしたらカード交換で良い役が完成した可能性もあるが、それは結果論でしかない。
言峰のレイズした条件は、言峰本人の役の強さを示唆するものでもある。
この上なお踏み込むとするなら理由はたったの一つしかありえない。


「へぇ……、あんたにはそう見えたのかよ。
 まあ、そう思うなら勝手に思っといてくれよ」

不敵な笑みを湛えた彼の後ろにいる一人の少女。
彼女を孤独にせず、なお死地から奪還しようとする試みに他ならない。

素晴らしくいい具合に熟成し始めたご馳走を前に、言峰綺礼はただ待ち受ける。

果たして如何なる行動を、感情を見せてくれるのか。
それら全てを咀嚼し飲み込まんと、今にもお子様ランチを待ちきれない子供のような表情で。

821 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:45:18 ID:ns4m/Jpx
「さて、俺もそろそろ気楽に本気を出すか。
 どうするつもりかなんて一つしかないしな。……レイズだよ」

……まさしく。
過剰すぎる自信と共に告げられたのは、望み通りのアンティパスタ。


「……トルタが賭けたのは自分の首輪だ。だからまず、俺はこのティトゥスの首輪を……賭ける。
 そしてレイズ。……今まで俺たちの手に入れたコインも全て、賭ける」

強気な言葉がもたらすのは、これまでの彼らの成果の全てを費やした大打撃。
分かっていても逃げること適わないハッタリの鉄槌。
たとえ実際がどうであったとしても、相手に『ここは退くべきだ』と思わせれば恭介の勝ち。
一歩間違えれば奈落へ落ちる細い細い綱渡りだ。


『それで終わりかね? 宜しい、では勝負と――――』

急かす言葉とは裏腹に、待ち望むは更なる累積。
まだだ。まだまだ。
こんなものではないだろう。
見せてみせろ、人間として全ての尊厳を以って泥中に溺れ対岸を求むその姿を……!

「何勘違いしてるんだ? まだ俺のベットは終了してないぜ」

822 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:46:29 ID:ns4m/Jpx
好機と見たか挑発と見たか。
自分の意図が気付かれていると分かっているのだろう、棗恭介は攻める。
視線で射抜く。
挙動で穿つ。
仕草で斬る。
態度で潰す。
呼吸で叩く。
言葉で砕く。
攻める、攻める、攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める攻める――――!

駆け引きの全ての要素を展開し己が牙を突き立てる!

『おや、これ以上何を賭けるというのかね?
 君は自らの保身を考えたまえ、それがトルティニタ嬢の望みでもあるだろう?』

涙に濡れ、乞い願う様なトルタのその顔に、口の動きだけで、馬鹿、と伝えた後、恭介はあらためて言峰に向き直り言葉の刃を重奏させる。
それ自体がトルタに僅かばかりの歓喜と巻き込んだという絶望を味合わせる事に気付いているだろうに、なお。
この背反する感情の鬩ぎ合いこそ至高にして究極の馳走なのだ。
ああ、それが結果的に言峰自身の身を焼き尽くしたとしても、自身の手でそんな状況を作り出すという愉悦に勝る苦痛などでは決してありえない。

ただそれでも、棗恭介はその言葉を止める事はない。
たった一人の少女の為に。

「おいおい、俺がそんなケチ臭い人間に見えるのか、心外だな。
 ……だったらこのデジタルカメラも賭けようか」

ぎり、と歯を噛み合わせながら余裕の表情を形作り、恭介はデイパックの中からそれを取り出す。
彼が持つ首輪の設計図の収められたデジタルカメラ。
それをこの場に提示するという事は、彼の本気の度合いを示している事だろう。

――――首輪を外す鍵となるやもしれない、とっておきの交渉の切り札を。
言峰の心を揺るがす為に、容赦なく使い倒す。

823 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 08:47:27 ID:ns4m/Jpx
『いいのかね? それは君がとても重視していたものだろうに』

……それ以上の価値を、トルティニタ・フィーネに見出して。
同時に、確実に確実に。
想定通りとは言えども避け得ないはずだ。
どれだけ冷静であっても、余裕があっても無理な話だ。
恭介が強力な役を揃えたのではないかという疑念が、言峰綺礼の中に浮かび上がって来ないはずはない――――!

恭介は口端を吊り上げ、言葉を無視して更に攻め続ける。

「……ついでにこいつも行っとくか。SIG SAUER P226。
 ゲーム開始時からの相棒だが、賭けとくことにするよ」

物量で畳み掛けるシンプルさというのは抗しようもない。

……退け、と。
降りろ、と。

それだけを念じて、恭介は己の身を守る武器すらその場に差し出す。
否、武器として突き刺していく。
僅かでも疑念を抱かせて、それを膨らませる為に。

本当に、恭介はトルティニタを取り戻したいからこそ賭け金の吊り上げをしているのか?
そこまでの思い入れを抱いたのか?
こちらが『コイン以外』の条件を賭けの場に提示したからこそ、食いついてきているのではないか?
だとするなら、冷静な判断力で以って確実に勝てる要素があるからこそ勝負に出ているのではないか?

そんな思い込みは、しかし徐々に判断力を奪っていく。
確かに言峰はあまりに余裕を持っており揺らぐことはない。
完成された自我というのはそれほどまでに強固。
それでも彼の理性に穴を開け、その奥の何某かに勝負する事を無駄だと思わせられたのなら。
その価値はきっと、あるはずだ。

824 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 08:58:30 ID:4fUiAOek


825 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:00:46 ID:rzHA4Pvn
 

826 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 09:02:57 ID:ns4m/Jpx
……無論、言峰は望めば恭介の手札を知る事はできるだろう。
だが彼はそれをしない、と恭介は確信している。遊びとは言えこれは真剣なゲームだ。
そこに無粋な既得権益を持ち込むつもりなら、神父として、何より監督役としての沽券に関わるのだから。

「トンプソンコンテンダー、清浦の形見だな。……こいつもレイズだ」

だが、現実は無常だ。

恭介の怒涛の攻めにも限界はすぐに訪れる。物資は次第に尽きようとする。
あの侍を打ち破りさえした、一撃だけに特化した必殺にして必滅の銃。
これさえも言峰綺礼に届くかどうかは怪しい。
だが、それでも武器にせねばなるまい。

ああ、だけど、だけど。
言峰綺礼は未だ悠然とそこに在る。
その一旦、一抹でさえ揺るがすことができたのかも分からない。
それほど遠い高みに言峰綺礼は位置している。

……たとえそうであったとしても。
ここで退くという選択肢はありえない。
何故なら棗恭介はトルティニタ・フィーネを信じて、彼女を孤独にさせたくないと、信頼に応えたいと思ってしまったのだから……!

そして。
彼の想いとは無関係に、言峰の本質は恭介がある言葉を口にするかどうかは今か今かと待ち望んでいる。
言え。言え。言え。言え。言え。言え。言え。言え。言え。言え。言え。言え。

両者の思惑は今ここに一致する。

命の輝きを、今ここに示してみせろ、棗恭介。


「……レイズだ。賭けるぜ、俺の首輪を。……言峰綺礼ッ!」

827 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 09:04:01 ID:ns4m/Jpx
――――言った。


『――――素晴らしい』


「……馬鹿だよ。馬鹿だよ、恭介……」

誰かの嘆くような涙声の呟きも、今は遠い。
まるで虚像のような薄っぺらさで現実感がない。
目の前の人形のそのまた奥の大敵を見据えるので精一杯だ。

……負けるわけにはいかない。
何としてもここで自分たちの勝利を掴み取るのだ。
もう二度と彼女の傷を抉らせない為にも。
胸の空洞を開かせない為にも。

言峰綺礼に、宣戦布告を叩き込む――――!


「……今から独り言を言うぜ、どうせ俺の妄言だ、取るに足りないな。
 トルタも一緒に、聞いてくれると助かる」

「……え?」

涙のあとの残るトルタに頷き、恭介はようやくそれを伝えていく。
……安易に伝えればきっと、決意が鈍ってしまう。
それを恐れるが故に敢えてずっと考え、悩み、秘めていたことを。

828 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:04:55 ID:rzHA4Pvn
 

829 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 09:05:03 ID:ns4m/Jpx
「……あんたの態度を見ていて確信したぜ。
 あんたは徹底的に『自分が愉しむ』事を優先している。
 放送だけじゃない、今ここにいることもそうだ。
 ……俺たちに何をやらせる訳でもなく、ただ混乱を巻き起こして悦に浸っているだけ。
 正直……、何が目的なのかさっぱり分からなかったよ」

直に言峰と会話し、ますます強くなったその考え。
彼の態度から得られた情報を、ひたすらに疑いぬいた可能性と統合し、一本の仮説と為していく。

「だったら逆に考えればいい。目的は愉悦そのものだ。
 あんた達が最初に言った通り、この殺し合いはゲームだ。
 ルールに乗っ取って、参加者という名の駒は生き残りを強制される」

『……続けたまえ』

人形越しに届く言峰の語調は全く変わらない。
……だが。

「……ここで、この『ゲーム』の開始前に神崎が言っていた『お前たち主催者も駒』という発言を組み込めば、筋は通る。
 あんたも所詮はルールに従って動くことしか出来ない。
 俺達との違いは駒であることに楽しみを感じているかいないかって、その位だろうな」

だが、恭介には壁よりなお厚い空間の向こうにいる言峰が、にぃ……、と笑みを深くする光景を幻視した。

「そして、それは要するにこのゲームにも『プレイヤー』がいるってことだ。
 ゲーム、つまり競う要素がある以上はプレイヤーは最低でも二人。
 対戦相手のいないゲームなんて面白くないからな」

勿論これは恭介が一方的に喋っているだけの内容だ。
実際にはそんな事はないのかもしれないし、当たっていたとしても一部だけなのかもしれない。

830 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 09:05:59 ID:ns4m/Jpx
「だけど、誰かが優勝する、という最終目的はそれにはそぐわない。
 だってそうだろ、俺たち参加者は一緒くたにここに集められただけ。
 別に対立する二つの陣営に分かれているわけじゃない以上、誰が優勝するか、なんてのは些細なことでしかないんだ」

だが、そんなのは瑣末事でしかないだろう。
今重要なのは彼が主催者に向けて、そして傍らの少女に向けてこう呼びかけているという事なのだ。

「だから俺たちはこう推測できる。
 『優勝』ってのは、どっちか片方のプレイヤーの勝利条件にしか過ぎない、ってな。
 つまり。
 つまりだ……!」

……告げられた思惑以外にも、道はあるのだろう? 、と。
ただ、それだけを。

「このゲームの脱出方法は優勝するだけじゃないって事だ!
 ああ、返事の必要はないぜ、言峰。
 お前にその意味はないし、そもそも立場上答えられないだろうしな」

「……恭介、それって……」

呆然としたトルタに目と目を合わせ、無言のままに己の意思を伝える。
……自分は、この道を選び直すと。
口にして告げることは、確かに棗恭介を構成する『何か』を打ち砕くと分かっていながらも。

「希望が見える限り。……俺は、たった一人だけしか助けられない道は選ばない……!」


――――それは、決意の破棄だ。
直枝理樹のために全てを捨てると誓った、何でも為してきた。
……いつしかその思考は破綻し、掛け違えた矛盾は何かを圧迫し続けている。

831 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:06:39 ID:rzHA4Pvn
 

832 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 09:06:45 ID:ns4m/Jpx
破綻する前に戻りたかった。
大切なあの少年を自分の手で助けたい。その想いは今も確かに根付いている。
しかしそれはもう叶わない。
得難く捨て難い、もう一つの何かを見出してしまったのだから。

その時点で少年の為だけに何もかもを捧げるという彼の今まで歩んできた道は崩れ、その残滓の上で何処へ向かうとも知れぬ闇の中を彷徨ってきた。
目を逸らし続けてきた現実をようやく自覚する。

……だが、両方とも救えないと誰が決めた?
ならば両方とも自分の手で救えばいい、それだけの話だ。

そう。
新たな決意を以って、今までの道を引き継ぎながら別の所を目指す事に何の迷いがあろうか!

どれだけ小さな光明だろうとも、見当たれば縁とするに充分だ。
そこに道が見当たらなくとも。
……彼女とならば、本当に辿り着きたかった場所に辿り着けるような気さえしたのだから。

誰も彼も自分の大切な仲間たちと共に脱出する、最初からずっと願っていたその想いの行き着く先へ。


「……トルタ。ついて来てくれるか?」

少年はゆっくりと、目と口を開いたままの少女に手を差し伸べる。
その手を取ってくれることを期待して。いや、確信して。
彼女が必要だ、と、名前を呼んで証明する。

833 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 09:07:50 ID:ns4m/Jpx
「いい加減嘘をつく時間は終わりにしようぜ。
 理樹も、クリスも俺が、俺たちが助けてやる! 誰か一人なんて選択はなしだ。
 そして利用するとかしないとかは関係無しに、如月や桂、アルみたいなお人好しな連中と、今度こそ本当の仲間になろう。
 糸口が掴めた以上、烏月だって手を貸してくれるかもしれないしな。
 どうせやせ我慢するのなら、本当に進みたい道を進もう。
 今度こそ報われるその道を……だ」

ぼろぼろと、ぼろぼろと。
――――少女は涙で顔をクシャクシャにして、それでも強く頷いて見せた。

「うん。……うん!」

二人で手を取り合い、見据えるは人形を支配する代行者の影。
望むべき道を進む為にも、まずはこの男を退けねばならない。
既に二人とも手は尽くした。
後は男の動向がせめて自分たちの望んだほうであることを祈るだけ。

もし、この時点で言峰綺礼が退くのであれば――――。



……そんな甘い見通しは、この男には通用しない。
人の成し得るあらゆる分野を収め学び体得し、全ての悪性をも肯定する神罰の代行者は、高望みの塊、傲慢なるバベルを破戒するに躊躇いはない――――!


『来たまえ……、私は自らの愉悦の為に、ただ躊躇いなく君達の抱くその全てを打ち倒すとしよう』

「吠え面かくなよ、オッサン! そのうち直に殴り込みに行ってやる、待っていやがれ……!」

834 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:07:59 ID:rzHA4Pvn
 

835 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:08:25 ID:rzHA4Pvn
 

836 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 09:08:38 ID:ns4m/Jpx
そして決着のその時は訪れる。



「『コールだ……!』」






斯くして、一人の希望はただただ現実に蹂躙される。

『真に残念だが――――、棗恭介。どうやら君の負けのようだ』


恭介の手札は、ストレート。
言峰の手札は、フルハウス。

どう見ても、何度見ても間違えようのない一つの結末がそこにあった。

棗恭介は、言峰綺礼に敗北した。

それだけ。

それだけの結末だ。

――――静寂がただ、夢を謳う欲望の館に満ち始める。

少年は何一つ言葉をもらさず、ただ、少女に差し伸べたはずの手を眺めていた。
眺め続けていた。

837 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:09:02 ID:rzHA4Pvn
 

838 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 09:09:39 ID:ns4m/Jpx
◇ ◇ ◇




そして静寂はもう一つの結末によって破られる。

「――――そうね。そしてあなたも負けたの、言峰綺礼」

「だ、そうだ。真に残念だったな」


どうしようもない、トルティニタ・フィーネの勝利という現実がただただそこに具現化していた。

一人の希望ではなく、二人の希望ならば現実の蹂躙に立ち向かいうるのだと。
それを証拠立てるかのように、少女の手には4種の札が揃っている。
剣と聖杯と棍棒と、そして道化師の刻印が、くっきりと。

その瞬間に初めて、言峰の声色に動揺が走る。

『な……、フォー・オブ・ア・カインドだと……?」

――――エースを3枚、ジョーカーを1枚。
全ての役の中でも三位の強さに位置する、強力無比な力の象徴がトルティニタ・フィーネの手の中にあった。

839 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:09:42 ID:rzHA4Pvn
 

840 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 09:10:15 ID:ns4m/Jpx
だが何故だ。
何故、彼女の手にそれがあるのか。

理解はできる。だが納得は出来ない。
彼女は持ち札に希望がなかったからこそ、嘆いたのではないか。
泣き、気丈に振る舞い、僅かに喜び、打ちのめされ、乞い願い、救いを少年に託したのではなかったのか。

何故。
何故。
何故――――。 


その疑問は単純明快な解に打ち砕かれる。

「ごめんなさい。それも全て、嘘なの」

にこりと笑うトルタの笑みには先刻までの翳りは全く見られない。
まるで、被っていた仮面を脱ぎ捨てたように。

『な……、』

見れば、棗恭介も腕を組んで相変わらずの飄々とした顔を浮かべている。
何処となく安堵が見え隠れするとはいえ、それはむしろ作戦を無事に終了させられた、という時の顔に良く似ていた。

彼らがこの結末に至るに用いた要因は二つ。
ここに至ってようやくその存在に思い至る。

どちらも言峰が知っているはずだったものだ。
まず一つ目は、トリックとも呼べないトリック、その正体。

841 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:10:27 ID:rzHA4Pvn
 

842 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 09:10:56 ID:ns4m/Jpx
『……そうか、符丁――――』

思い至ると同時。
くっくと笑いながら恭介が告げるのは、実に明快な意思疎通のその過程だ。

「……『逃げる』と『分』の組み合わせ。それも『何分』って形で具体的な主語を特定していない。
 こいつの意味するのは……『目の前の奴』は『信頼できる』、ってこと。
 つまり状況を鑑みれば、今回の場合は『何があろうと自分を頼れ』、だ。
 ……トルタが俺に伝えたかったのはな」

50音順の名簿と動詞を組み合わせた暗号。
たとえ存在を知っていても意識しなければ気付かないし、よしんば気付かれていてもその全てを把握している可能性は低い。
……トルタは主催陣に対してこう判断したのだ。

監視員がどれだけいるかは分からないが、仮に少ないとすれば島全域の監視の最中に細かい符丁の内容まで記録するかどうかというと、怪しい。
多いとしても、おそらく彼らの上役にあたるであろう言峰にまでその内容が伝わる可能性は低いだろう。
いずれにせよ細かい内容が伝わっていなければ充分実用に値する訳で、最後の逆転を引き込む為にトルタは敢えて符丁で恭介に連絡を取ったのである。
万一伝わらなくても、逃げてもらって構わないと思っていた以上構わなかったのだ。


そして、トルタの役割が伏兵だとするなら恭介は陽動を担うことを行動で示してみせた。
彼は無謀な勢いとハッタリだけでベットを重ね、言峰に張り合おうとしていたわけではない。
自分達は勝てるという確信を頼りに、言峰への挽回の手はずを整える。
勝利した際の見返りを限界まで引き出すために、挑発しつつ勝負に持ち込ませる。
彼の役割は、いわば目晦ましであり囮だった。


そして、何よりの要因は『トルティニタ・フィーネ』という少女の存在そのものだ。
……言峰綺礼は洞察力に長けている。恐らく、この殺し合いの“駒”の中ではトップクラスに。

843 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:11:14 ID:rzHA4Pvn
 

844 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:12:43 ID:rzHA4Pvn
 

845 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:21:51 ID:YHMGx6AJ



846 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:26:09 ID:YHMGx6AJ



847 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 09:26:14 ID:ns4m/Jpx
とは言えそれはあくまで傷を開くことのみに特化しており、その他も含む駆け引きという概念の全てにおいて真の一流という訳ではない。
それでも努力で辿り着く所までは神速の勢いで辿り着く彼のその能力は相当なものがあるだろう。
……しかしながら。

トルタの嘘は、真の一流だった。

人の心に精通した言峰綺礼すら欺き通す、3年間休みなく続いたトルタの演技。
言峰綺礼の修めたありとあらゆる駆け引きは、真の一流に達しなかったが故に真の一流たる嘘つきの嘘を見破る事はできなかった。
そして、ポーカーとは嘘つきこそが真の勝利を手にするゲームなのである。
本当のポーカーフェイスとは、無表情ではなくあらゆる感情を駆使して思惑を悟らせないものであるべきだ。

そんな嘘さえも認め、信じた者がいる。
それが……、言峰綺礼の真の敗因だった。


「俺は……嘘や演技も含めてトルタを信じた。それだけの話さ」

――――少女は振り返らなかった。
それは決して少年を選択しなかったのではなく、きっと彼ならば言葉にせずとも隣で道を切り開いてくれると信じたから。

――――少年は突き進んだ。
確かに自分だけでは手が届かなかろうと、きっと少女なら背中を支えて押してくれると信じたから。

少女だけならば、如何に強い力を持っていたとしても、正面から代行者と向かい合う気概があったかどうか。
少年だけならば、如何に壁を穿つ勇気があったとしても、力を及ばせることが出来たかどうか。

……二人が揃っていたからこそ、今彼らは確かにここにいる。
その覚悟に相応しい褒賞を受け取りながら。

848 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 09:27:16 ID:ns4m/Jpx
「……俺たちは嘘つきだ。どれだけそれを止めようとしても、そこから逃げることは叶わない。
 だけどな、……嘘をついて何が悪いんだ?
 俺はそれを認めるぜ、いくらでも嘘をついてやる。そして誰かの嘘も認めてやるさ」

それがトルタにとってどれ程の救いの言葉になったか、彼が理解できるか定かではない。
……ただ、少し笑みを浮かべる彼女を気遣うように、今は彼が言峰と相対する。


『……先刻の口上すら嘘……という訳か?』

大方は納得した。
だが、いくつか腑に落ちないことも言峰には残っている。
……『優勝以外の条件』を告げたあの時の恭介の言葉。
そこに嘘があったとは思えず、問えば恭介の返事はそれを肯定する内容だった。

「……本気さ、一つだけ保証できないだけだ。
 クレタ人のパラドックスを知ってるか?
 嘘つきが自分は嘘つきじゃないって言ってもな、何の保証にもならないんだよ」

その事に言峰はらしくない安堵の吐息を吐き、彼らの行く末を思い浮かべそれを抉ることを夢想する。
おくびにも出しはしなかったが。


そして、全ての褒賞をトルタが受け取り終える。
アリエッタの体に関する誓いはこの場で確かめる事はできないが、残りの賭け金――――、
恭介のコインと提示した支給品に相当する額のコインの合計額を手渡されるや否や、

「……姉さん。やったよ」

……それだけ口にして、トルタはその場に糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちた。

その背を支え、先程の問いに対する答えの続きを込めて恭介は高く高く宣言する。

849 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:27:32 ID:rzHA4Pvn
 

850 :Third Battle/賭博黙示録(後編)(代理投下):2008/06/26(木) 09:28:05 ID:ns4m/Jpx
「……言峰、嘘つきが真実を口にしちゃいけないなんて事もないんだぜ。
 さあ、ゲームセットだ! 結果は見ての通り……!」

締めは二人合わせての小さな呟きを。
力を合わせて強敵を撃退したその証を共に口に。


「「俺/私たちの、勝利。お前/あなたの負けだよ、言峰綺礼……!」」

851 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:28:14 ID:YHMGx6AJ



852 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:29:23 ID:rzHA4Pvn
 

853 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:30:00 ID:ns4m/Jpx
◇ ◇ ◇


――――よもや。
よもやここまで、彼らが熟成しているとは。

くっくっ、くっくっと、どす黒く煮詰まった歓喜の小片を堪えきれずに洩らし続けるは言峰綺礼。

来るべき闇色に輝かしき未来に思いを馳せ、悦楽と酩酊を齎すに違いない一幕に彼は如何に関わるべきかを考える。
……この調子では、片割れと別れざるを得ないその時の苦悶と絶望と悲嘆はどれ程か。
其れを想起するだけで、恰も極上の美酒の栓を開けたかの様に周囲に赤黒い芳香は満つる。

……だが。
だがしかし、ただの死別では確かに彼らの想いが残ってしまう。
最後まで互いが互いの支えとなっていたというその事実は、死した後ももう片方を支えることだろう。
その時彼らに迷いはなく、完全なる現実への屈服というには些か易い。

それでは物足りない。
まだまだ物足りない。
もっともっと救いのない、とこしえの暗闇の底へに彼らを突き落とし追い落とし誘い未来永劫彷徨わせる苦痛にはとてもとても足りていない。

ああ、ならば。
ならばと言峰綺礼は熟慮する。

彼らにとっての最高にして最大の、この上ない天元たる懊悩煩悶辛苦悲嘆は果たして。
死とは救いであり、解脱である。
残された者は死屍たるヒトの想いを受け継ぎ、確かにその願いと救いを叶えんと奮起する事だろう。
この様なモノなど責め苦ではありえない。
真なる拷苦はただただ生きる事。
何があっても生きることを強制される事。
其れこそは天地万物あらゆるモノに共通する底無しの業。六道魔縁の艱難。
之を味わわずして片割れの死別などという結末は、実に実に勿体ない――――。

854 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:31:10 ID:rzHA4Pvn
 

855 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:31:21 ID:YHMGx6AJ



856 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:31:30 ID:ns4m/Jpx
懺悔の時はこれより始まる。

さあ、切開を始めよう。


『……さて、命を賭けて私を愉しませてくれた君達には何某かの権利を与えよう。
 何がいいと思うかね?』

「……いきなり、何のつもりだ?」

……当初の予定、棗恭介達を敗北させ、その心の芯を摘み取った上で交渉を行なおうと考えたがこれはこれで都合がいい。
言峰の目的は単に事務的なものだけでなく、本人の趣味も多分に入ったものなのだから。
余興とは言え遊戯でもそこそこ盛り上がれた上に、彼らの熟成がなお進んだとあらば歓迎しない理由はないのだ。

『何のつもりだ……とはこちらの台詞だよ、棗恭介。
 私はアリエッタ嬢の身柄に干渉する権利を賭け、敗れた。
 だがそれの対価は首輪1つ分だ。
 君はレイズとして首輪2つを提示しただろう? その差分を払おうと言うのだよ』

……差分、という名目を引き合いに、本題に切り込むことにする。
実に都合のいい彼らの勝利もあったものだ。
これで違和感なく話を繋げられるのだから。
最初に話しかけるのはトルティニタ・フィーネ。
それは単に彼女が勝者だという理由だけではない。

「私は……、演技をしただけよ。
 実際にレイズをしたのは恭介だし、彼に任せることにするわ」

857 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:33:24 ID:YHMGx6AJ



858 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:33:52 ID:ns4m/Jpx
予想通りの返答だ。
……現状を確認し、ほくそ笑む。
トルティニタ・フィーネは棗恭介のサポートという名目で依存しつつある事を自覚している。
故に、支えを失った時の慟哭は如何なる天上の楽器より美しい音を奏でることだろう。
年甲斐もなく、早くその声を聞きたいと思う。
元々彼女は歌を歌う事が本業。はてさて、その高みはどれ程のものか。

……そんな誘惑を断ち切り、向かい合うはその支え。
彼女を崩すにしても、この男を堕とす事以上に有効な事例といえばクリス・ヴェルティンを引き合いに出すくらいだろう。
トルティニタにとって最早手の届かない彼は、ある意味神格化されて捉えられるだろうからだ。
アリエッタの身体を使う事も可能といえば可能だが、戯れとは言え一度その権利を破棄した以上そのつもりは全くない。
ルールはルールとしてしっかり遵守する、それは最低限の尊厳なのだから。

故に、棗恭介を零落させる事こそ、この二人に阿鼻叫喚を味わわせる最適解なのである。

『……では、問おうか棗恭介。
 君が欲し求むモノは何かね?』

あらためて見据えてみれば、既に彼の眼光には油断無くこちらの言動の隙を伺おうとする輝きが見られる。
……それでいい。
その足掻きに足掻く生き様こそ、言峰の興味を示したモノなのだから。

「おいおい、いいのか? 主催者様がそんなのを持ちかけて。
 例えばどんな事をしてくれるって言うんだよ」

……探る様な言葉の押収。
これこそ。
これこそ、言峰が本分を果たすに足る問い掛けの糸口となる――――!


『――――そうだな。
 ゲームの間、君達が我々の庇護下に入る……というのはいかがかね?』

859 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:33:57 ID:rzHA4Pvn
 

860 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:34:34 ID:ns4m/Jpx
……婉曲なその言い回しに何の意味が込められているか。
即座に察した恭介は僅かな驚愕を隠し、忌々しげな表情を浮かべて人形を睨みつける。

「……呈のいいスカウトだな。
 要するに、援護をしてやる代わりにお前達の操り人形になれって訳か」

――――言峰は、トルタがポーカーテーブルに置いたままの先刻の役の中から一枚のカードを抜き取り出す。

『そういう捉え方もあるか。
 ふむ、それならばそれで構わないが、誰かの優勝を目指すに当たって有利な条件になる事は変わりないぞ?
 ……どうかね、悪い条件ではないだろう」

そこに記されているのは泣き笑いの道化師だ。
ご丁寧にもその相貌は、目の前の少年にそっくりに作られていた。
とは言え。


「お断りだ。
 ……どうやらよっぽど人材に困窮してるらしいな、派遣会社にでも打診してみたらどうだ?
 案外あっさり解決するかもしれないぜ?」

その程度の条件ではこれが自明の帰結だろう。
彼が妹を喪った原因は、そもそもがこの殺し合いの場を作り出した主催、言峰達にある。
下手人であるファントムを憎むのは当然としても、ある意味それと同程度に怨嗟を抱いているはずだ。
並み程度の条件では与する気など起きるはずもない。

『それで済むのなら構わないのだがね。
 やはり、部下は優秀であるに越した事はないのだよ。
 ……棗恭介、トルティニタ・フィーネ。
 あの魔人を打ち倒し、激戦を生き延びてきた君達ならば上も文句は言うまい』

くく……と、建前を告げるも、無論そんなもので誤魔化される筈もない。

861 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:35:41 ID:YHMGx6AJ



862 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:36:05 ID:ns4m/Jpx
「……何故俺たちを選んだ?
 内通者不足にでもなったか? それにしても新たに人材を投入するって手もあるだろう」

故に言峰綺麗は事実を告げる。
どうしようもなく単純明快が故に反論のしようのない、彼自身の在り様を強く、強く。

『……言っただろう? 娯楽だ、と。
 君たちを目に付けたのはそれだけの実績を持ち――――、尚且つ私の興味を強く惹いたからだ」

ああ、そうだ。娯楽だ。
恭介への言葉をあらためて胸の内に宿し、そろそろ頃合かと機を測る。
言峰綺礼が、彼自身の本分を本懐を果たす為に。

『……ふむ、コレでは確かに只の労働契約と何ら変わりはないな。
 賭けの差分とするには些か条件が悪いか。
 ならば、前払いの報酬として一つ条件を追加しよう』

言峰はあたかも今思いついたかのように、前々から用意していた言葉を紡ぎだす。
それはまさしく、いつかどこかで誰かが見た光景だったのかもしれない。


『――――喜べ少年、君の願いはようやく叶う』


口にしながら、見据えるのは恭介本人ではなく――――、

「……え?」

一人の少女。
その少女を視線から守るかのように、少年は立ち塞がり抗いの意思を見せる。

863 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:36:38 ID:rzHA4Pvn
 

864 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:37:02 ID:ns4m/Jpx
「……願い? 何が願いだとでも言うつもりだ、言峰……!」

そう、彼女の存在が彼を変えた。
彼女の存在は、棗恭介に“たった一人しか救えない道は選ばない”とまで言わせたのだ。
それはつまり、彼にとって彼女と直枝理樹の優先順位の境界が曖昧になってきているいうことである。

『なに、君がこの会場に至るよりずっと前から抱いていた願望をも叶え得るというだけの話だよ』

そして、彼の中でトルティニタ・フィーネの大きさが直枝理樹と並び立つほどであるのなら。


『――――君が我々と契約した時点で、君の望んだ人間をたった一人だけ、君の望んだ世界へと帰還させる……というのはどうかね。
 虚構でも現実でも、はたまた異世界であろうとも――――な』


……そのいずれかを選ばねばならない苦しみは、如何程になることか――――!


「……え、」


言葉の意味は正確に精細に厳密に、これ以上ない程詳しく恭介は理解。
なのに、それを直視したくない自分が全身のありとあらゆる挙動を止めている事を自覚する。
……そう、それを用いれるのなら、あの虚構世界どころか本当の現実の、確立した世界に理樹を帰還させられることが出来るのに。
それをどれ程、どれだけの間希ってきたかすらも最早時の彼方なのに。

彼のために修羅にもなると誓ったはずだ。
その為に、ここに来るまえからずっとずっと、報われなくとも頑張ってきた筈だ。

なのに何故、自分は即断できない?
たとえそれが言峰の冗句と言う可能性が高かろうと、それでもその一縷の灯火に縋ろうとしないのは――――?

865 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:37:16 ID:YHMGx6AJ



866 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:37:36 ID:rzHA4Pvn
 

867 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:38:02 ID:ns4m/Jpx
『……そして、優勝した人間の生存はまた別個に扱おう。
 二人。二人もだ。
 ――――君は自分の手で、二人も誰かを助ける事ができるだろう』

生存可能なのは二人。
その言葉は、彼にとって暴力的なほどに身を苛む希望のはずだ。

だがしかし、そこには一つの欺瞞が存在する。
……実際には『主催との契約で帰還させる』人間を、『優勝させることで生存させる』人間よりも上に優先順位を位置づけているのだ。

「あ、――――」


事実を曖昧にし続けようとする彼に、『確実に誰かを帰還させられる可能性』というあまりにも測ること抗いがたい天秤を設けただけ。
ただそれだけで、切開は完了する。
そして棗恭介の脳髄は行動を否定、それ以上考えてはならないと。
しかし考えざるを得ない、本当に救いたいのは誰なのかと。


実際に帰還を行なうか否か、というのは問題ではない。
最も重要な事項は“棗恭介に直枝理樹とトルティニタ・フィーネを取捨選択する思考を与えた”事だ。

彼はどちらも捨てたくないが故に、たった一人しか救えない道を否定した。
逆に言えば、それは優先順位を決定しようとする事を避ける逃げ道であるのだ。

その逃げ道すら、言峰は塞いで眼前を直視させている。


「あ、ぁ……!」

これだ。
この表情が、見たかった――――!

868 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:39:19 ID:rzHA4Pvn
 

869 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:39:36 ID:ns4m/Jpx
『――――更に、だ。
 我々は君の復讐を手伝う事ができる。
 それに必要な情報と力を与える事ができる。
 そのついででいいのだよ、君の私たちへの“協力”は』

駄目押しの一つ。
復讐の甘い蜜を、その耳にゆっ……くりと流し込む。
喪った者への愛情が、天秤に大切なもの二つを掛ける事に更なる魅力を与えるのだ。


「あぁぁああぁあ、あ……!」

棗恭介は理解する。
言峰綺礼の本質を。

たとえ人形越しでも分かる、彼は今のこの自分を見て――――愉しんでいるのだ。
今にも堕ちそうな自分を見て悦を抱き、しかしそれが分かりながら彼の提案に抗えない。
その悔しさが、なおいっそう恭介を苦悩させている。

この苦しみから逃れるにはどうすればいいのか。

ああ、あの甘い言葉の先にはどれだけの安息を齎す暗闇があるのか。

『……求めよ、さらば与えられん。
 尋ねよ、さらば見出さん。
 門を叩け、さらば開かれん。
 ……君には願いを叶える資格が充分にあるのだよ、棗恭介』

その在所に手を伸ばし、足を進ませようとして――――、


「…………恭介!」

870 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:40:11 ID:rzHA4Pvn
 

871 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:40:24 ID:YHMGx6AJ



872 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:41:12 ID:ns4m/Jpx
握る手の暖かさに、ようやく我を取り戻す。
不安げな彼女の顔。
そこに引き止めてくれた感謝と、天秤にかけようとした罪悪感を感じながらも。

「……大丈夫。大丈夫だ、トルタ……」

すぅ……、と大きく息を吸い、棗恭介は確かに己の足で立ち上がる。
震える足で。

「……冷静に考えてもいきなり参加者を帰還させるとか、あからさまな与太話だ。
 確かに駒の役割次第ならできるだろうが、わざわざ殺し合いに呼んだ連中をそうやすやす帰すとは思えない」


――――そうでなくては面白くない。
苦悩と煩悶の時間は、長く永く続かねば。

『……賢明だな。その見方は当然だ。与太話か、言いえて妙だな。
 さて、それは置いておいても……どうしたいかね?』

そんな言峰の寄せる期待に、恭介は見事に応えてみせる。

「……悪いが、今は断らせてもらうぜ言峰綺礼。
 あんたの言っているのは将棋で言う成り、チェスで言うプロモーションだ。
 確かに色々強化される面もあるだろう。だけどな、」

今は、という事は確かに選択として刻まれたということ。
本人は無意識のその台詞を反芻しながら、言峰は今はこれ以上の干渉を中断することに決定する。

「……一度成っちまった駒は、もう二度と元の動きは出来ないんだよ。
 桂馬や香車の動きを金で代用する事は無理なんだ。
 ……そして、俺はしばらくは優勝以外の条件を探ると誓った。
 だから――――、」

873 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:41:22 ID:rzHA4Pvn
 

874 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:41:53 ID:ns4m/Jpx
まるで虚勢のようなその言動を、その意思が為さんとすることを、もう少し見ていたかったからだ。

「――――まだ何か、今のままでもできる事はあるかもしれない。
 いや、今しかできない事があるはずだ。
 それすら分からないまま、のうのうとお前達の人形に成り下がる訳にはいかないんだよ……っ!」


棗恭介は、告げる。
それは高潔であり――――、どこまでも愚かであった。
先刻の少女のそれと同じく。

やせ我慢をしながらも彼は気付いているはずだ。
彼は、己が破綻を暴かれた。
かもしれない、程度の理由で千載一遇の直枝理樹の帰還を棒に振る。

そこに苦悩し、その果てに彼が見出すものは何だろう。


……願わくば、彼が己が意思で一番大切なものを決めることを。
それがトルティニタ・フィーネなら、言峰にとっては最高の展開だ。
何故ならばそれは彼らの両方から救いを剥奪する事になる。

トルティニタ・フィーネ。
彼女は長い永い苦行の果てにようやく得られたと思った居場所、彼の隣を、彼自身から拒絶されることになる。
たとえそれが気遣いの結果とは言え、またも報われない世界に一人放り出される彼女。
そこで永劫の暗闇に身を包まれながら生き続けねばならない孤独は如何ばかりか。

……そして、棗恭介本人。
トルティニタが死亡するという理不尽な別れではなく、自らの手で突き放させる。
それは彼が自らの意思で、孤独な道を歩む選択だ。
そして同時に直枝理樹を何よりも優先するはずだったかつての自分すらも完全に否定することで、最早戻る道はなくなるだろう。
理樹を裏切ったも同然の行為はその果てに、かの少年への贖いとして一心不乱に理樹を生き延びさせんとする、愉快で哀しい存在に彼を変えるに違いない。

875 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:41:58 ID:YHMGx6AJ



876 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:42:50 ID:ns4m/Jpx
天秤は揺れる。
今の二人の人間を載せて、ゆらゆらと、ゆらゆらと。

……少女への想いが一線を越え、天秤が完全に傾いたその時に、棗恭介はきっと、必ず。

ナオエ リキ   トルティニタ・フィーネ
自らの願いも、自らの救いも手放すことになるだろう。


後に残るのは復讐と残されたモノへの贖罪の為だけに動く、憐れで無慈悲な道化人形でしかない。
堕ち行くまさにその瞬間が実に実に愉しみだ。
しかしそれはこの時ではない。
……今は彼の苦悩と煩悶を、酒の肴と変えて来たるべき時を待つとしよう。


『……ふむ、ならば今ではないいずれにまた答えを聞くとしようか。
 そろそろ放送の時間も近づいた。
 決断を下したならば呼びかけてみたまえ、運が良ければ返事を返せるかもしれんな』

そして言峰綺礼は帰還する。
少女の人形という殻を動かして、最後に形式的な問いだけを告げて。

『さて……、私の用件はこれだけだが、君達には何かあるかね?
 ゲームの進行に干渉しない限りは用件を承ろう』

その、形骸でしかないはずの質疑にいらえが一つ。

「……そうだな」

877 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:43:13 ID:rzHA4Pvn
 

878 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:43:29 ID:YHMGx6AJ



879 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:43:55 ID:ns4m/Jpx
にやり、と。
トルタに腕を握られたままではあったが、どうにか気勢を取り戻した恭介は一つの不敵な笑いを投げかける。
決して、お前の思う通りにいくものか、と。
戦意と余裕を昂らせながら。

「負けた奴の特権だ。俺達のルールに従って言峰、あんたに称号を送ってやるぜ。
 これからお前は勝負の度にこう名乗るんだ、“麻婆中年フィジカルことみ”ってな!
 必要とあらばエースとかストライカーズとかつけても構わないぜ?
 フィジカルマジカル爆肉鋼体とか言いながら時間を縮めてお送りしていますな親バカトリガーハッピーと殴り愛してやがれ!」

そう、それが頼りになるリトルバスターズのリーダー、棗恭介だ。

「プッ……!」

吹き出すトルタにようやく自身も柔らかい笑みを向けながら再度言峰に向かう彼は、いつもと変わらぬ雰囲気で佇んでいた。


『……ほう。ならばありがたく拝借しようではないかね。
 それではいずれまた、生き延びていたならば会うとしよう。棗恭介、トルティニタ・フィーネ』

捨て台詞とも取れる言峰の最後の言葉が人形より放たれ――――、
人形の瞳の色が切り替わった。

そして静寂はその場に満ちる。

後に残るのは他愛ない二人きりの会話、それだけだ。

880 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:44:32 ID:YHMGx6AJ



881 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:44:55 ID:ns4m/Jpx
「……なら恭介、あなたにも称号を私から送ってあげなきゃね」

「おいおい……、お手柔らかに頼むぜ」

「大丈夫、誰にも言うつもりはないよ。
 ……私達だけの、秘密にしとくから」


確かに心の内に巣食う怪しい輝きの天秤を見えない所に仕舞いながら。
柔らかなトルタの笑みを見据えて恭介は思う。
心の底から。

「そうね、あなたの称号は――――」


……本当に、自分の大切な者たちが誰も彼も、選ぶことも選ばれることもなく。
帰還することは叶わないのだろうか、と――――。



◇ ◇ ◇


余談ではあるが。


『……コトミ。カタカナみっつでコトミ。呼ぶときは、コトミちゃん……。
 よろしく、なの』


ようやく本来のAIで起動し始めたメカコトミの声が、相変わらずの所謂ジョージボイスであった事は、まさしくどうでもいい事実として全力で見逃され続けていた。

882 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:45:09 ID:rzHA4Pvn
 

883 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:46:01 ID:rzHA4Pvn
 

884 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:46:09 ID:ns4m/Jpx
【G-6/カジノ地下ホール/1日目/夕方(放送直前)】

【チーム:BOY DOESN'T CRY MEETS LIAR GIRL】
共通方針、(数字)は恭介とトルタのみの方針。ただし対主催転向により【 】内は現在無期限凍結中。
1:カジノを拠点として近郊の施設を探索。
2:他の対主催のメンバーと接触。
3:そこから情報を得る。
【(4):自分に危害が出ないように、相手のプロファイリングを元に他の対主催の悪評、もしくは真実を伝える。 】
【(5):十分な情報を得たらそのメンバーと別れる。もし理樹、クリスがいるメンバーなら合流。その後隠れながら邪魔な対主催メンバーを排除。 】
6:もし中々合流できない場合、もっとも安全だと思われるチームに合流。(戦力の面で、信頼関係も含め)
【(7):序盤は積極的には人を殺さない。基本同士討ちを狙う。情報最優先。終盤は対主催の中心になりなるべくマーダー排除。のち疲労した対主催から狙う。 】
【(8):最悪クリス、理樹がどちらかが死亡した場合は片方のサポートに徹する。両方死亡した場合は互いに優勝を狙う。二人になった場合一騎打ち。 】
9:カジノ近郊を行動範囲にしていることを信頼できる人間に託し、理樹、クリスに伝えてもらう。
10:脱出や首輪、主催者の目的についても真剣に考察する。
11:信頼できる対主催を見つけた場合、カジノに集め、絶対の信頼関係を築く。
12:携帯電話を利用し、不認知の参加者と接触。その際はカジノを拠点にしている事は告げない。
【(13):双七を斥候及び護衛として上手く利用。思惑を悟られないようにする。 】
14:本部組は連絡役と景品確保、考察などをし、斥候組が連れてきた仲間たちと交流する。
15:カジノの景品の確保。特にUSBメモリを狙う。
16:危険と判断した場合はカジノを放棄、スターブライトで禁止エリアに向かい、アプリを起動させて身を守る。

885 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:46:21 ID:YHMGx6AJ



886 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:46:58 ID:ns4m/Jpx
【備考】
 ※トルタと恭介が特定人物の優勝狙いであることと、アルと桂と双七の素性以外の情報交換済み。
 ※異なる世界等の理解に時間の掛かる情報は未だ交換していません。
 ※首輪のカメラの存在について知りました。
 ※黒幕がいると思ってます。
 ※監視は『上空』『重要施設』『首輪』の3つから、カメラ及び盗聴器によって行なわれていると考えました。
 ※神宮寺奏、プッチャンの細かい特徴を認識しています。

【棗恭介@リトルバスターズ!】
【装備】SIGSAUERP226(15/15)@現実、トンプソンコンテンダー(弾数1/1)
【所持品】:支給品一式×3、SIGSAUERP226の予備弾3@現実、コンテンダーの弾44発、デジタルカメラ@リトルバスターズ!、アサシンの腕、首輪(ティトゥス)
【状態】:ツヴァイへの強い憎しみ、脇腹に深い切り傷(処置済み)、胸部に軽い打撲、肉体的疲労(中)、やや精神不安定(トルタの存在により緩和中)
【思考・行動】
基本方針:共通方針の通りに行動し、理樹と共に脱出する。トルタの生存に力を尽くす。ただし慎重に慎重を期す。
 0:俺は……。
 1:カジノのセキュリティを利用して周辺を警戒。景品の確保。
 2:本部役として待機。
 3:筆談などを用いて殺し合いや首輪についてトルタと考察する。
 4:トルタに対して――――? トルタを見捨てない。
 5:『トルタの好意に気付いている』フリをし、親密にしても怪しまれないようにする。
 6:ツヴァイの目の前でキャルを殺害し、復讐したい。
 7:『首輪の設計図』をとりあえず集める。その為にデジタルカメラやUSBメモリを閲覧できる機器を探す。
 8:言峰の誘いに対して迷い。
 9:USBメモリを交換した後、コインの運用方法を考える。可能ならレノンを確保。
10:『優勝以外の条件』を模索する。

887 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:47:15 ID:rzHA4Pvn
 

888 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:47:47 ID:ns4m/Jpx
【備考】
 ※トルタを信頼し、共感を抱いてます。
 ※トルタとの間に符丁をいくつか作りました。
  『時間』と『動詞』の組み合わせで意思疎通を行います。
  (『分』:名簿の番号の人間、『待つ』:怪しい 『逃げる』:信じるなど。
  『秒』や『時間』、その他の動詞の意味については詳細不明です)
 ※トルタとはぐれた場合の合言葉は『トルタの知り合い全員の名前』です。
 ※参戦時期は鈴ルートの謙吾との野球対決後、リフレイン以前です。
  故に、リトルバスターズメンバー、特に謙吾に申し訳なさを感じています。
 ※参加者によっては連れてこられた世界や時代が違うと思ってます。
 ※この殺し合いは、『神々のゲーム』であり、自分達はその駒であると考えました。
  ゲームの終了は、『優勝』『優勝以外の何か』を満たした時だと推測しています。
  ただしゲーム終了後の駒の扱いについては疑念を持っています。
 ※デジタルカメラに収められた画像データのうちの一つは、『首輪の設計図−A』です。
  外見から分かる範囲での首輪の解説が記されていますが、内部構造については一切言及はありません。
  また、デジタルカメラで閲覧した場合画像が縮小され、文字の殆どが潰れて見えます。拡大はできません。
  記されたデータの信憑性は不明です。
  他に首輪の設計図があるかどうかは不明です。
 ※神埼は『優勝以外の条件』に関与していると考えました。
 ※トルタの過去の話を聞きました。
 ※トルタに依存しつつある事を自覚しました。
 ※言峰の誘いに乗るつもりは今の所はありません。

889 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:48:26 ID:ns4m/Jpx
【トルティニタ=フィーネ@シンフォニック=レイン】
【装備】:SturmRugerGP100(6/6)@現実
【所持品】:支給品一式、SturmRugerGP100の予備弾4@現実、刹那の携帯電話@SchoolDaysL×H、医療品一式、恭介の機械操作指南メモ、カジノの見取り図、カジノの見取り図、ゲーム用のメダル(14000枚相当)
【状態】:肉体的疲労(中)、右脚に貫通射創(処置済み)、左脚に盲管射創(処置済み)
【思考・行動】
 基本方針:共通方針の通りに行動し、クリスと共に脱出する。恭介のサポートに徹する。ただし慎重に慎重を期す。
 0:……恭介?
 1:カジノで待機し、セキュリティを利用して周辺を警戒。景品の確保。
 2:必要ならば双七を含めた参加者から信頼を勝ち取れるように演技する。
 3:道中、筆談などを用いて殺し合いや首輪について恭介と考察する。
 4:恭介に対して――――?
 5:『恭介に好意を抱いている』フリをし、親密にしても怪しまれないようにする。
 6:恭介を見捨てない。
【備考】
 ※恭介を信頼し、共感してます。
 ※恭介との間に符丁をいくつか作りました。
  『時間』と『動詞』の組み合わせで意思疎通を行います。
  (『分』:名簿の番号の人間、『待つ』:怪しい 『逃げる』:信じるなど。
  『秒』や『時間』、その他の動詞の意味については詳細不明です)
 ※恭介とはぐれた場合の合言葉は『恭介の知り合い全員の名前』です。
 ※登場時期はアルルートのアルが復活した頃です。
 ※神宮寺奏、プッチャンの細かい特徴を認識しています。
 ※参加者によっては連れてこられた世界や時代が違うと思ってます。
 ※怪我の為に走る事はできませんが、多少は歩けるようになりました。
 ※携帯電話とコントロールルームの操作方法を恭介から聞きました。
 ※刹那の携帯電話には禁止エリア進入アプリがインストールされています。
 ※恭介の過去の話を聞きました。
 ※恭介のゲームに関する考察を聞きました。
 ※恭介に依存しつつある事を自覚しました。

890 :名無しくん、、、好きです。。。:2008/06/26(木) 09:48:41 ID:rzHA4Pvn
 

891 :この魂に憐れみを -Kyrie Eleison-(代理投下):2008/06/26(木) 09:48:59 ID:ns4m/Jpx
※赤外線センサーにより、カジノに不審者が侵入すると警報が施設全体に鳴り響きます。
 ただし、カジノの機械はライフラインが遮断されることで稼動しなくなります。
※スターブライトはカジノ裏口に係留されています。


【メカコトミ@ギャルゲ・ロワイアル2ndオリジナル(ToHeart2)】
どこかの女子高生そっくりな姿のロボット。
恐らくHMシリーズのメイドロボをベースにしていると考えられる。
来栖川エレクトロニクスの最新鋭程の運動性能はなく、動きはややぎこちない事から恐らく旧式。
自立行動は当然として手動の遠隔操作も可能であるが、そのためのコンソールはカジノには存在しないようだ。
だが、最大の特徴はAI起動時であろうと誰かの声を中継している時であろうと、言葉が全て野太い美声に変換されるということだろう。
そのダンディズムの極地は何時何処であろうとも、きっと君を麻婆な固有結界にいざなってくれるに違いない。
もちろん、AI起動時の口調はモデルとなった女生徒そのものである。

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